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人狼物語 三日月国


47 【半再演RP】Give my regards to Jack-o'-Lantern【R18】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


── 修道院 ──

  糧食というよりは主食、でしたね

  ……もっとも夢の中の話ですが
  まぁ、そもそも──いえ、なんでも


[そこでは自分は猫だった。
 そう打ち明けるのは些か抵抗がある。

 感じる視線からはつい、と顔を逸らし
 採寸しやすいよう両腕を上げ]


  ……そうですね、普通のパン
  院長の許可が下りるかどうかですが

  そのまえに『妻』というのも
  証しになるものもありませんし
  巫山戯てるだけと思われるのでは?


[それでもきっと、彼女が押せば通るのだろう。
 従者でも友人でもない立場、これからは何をすれば良いのだろうかと思いながら]

[『恥じらい』との言葉に怪訝な表情を。
 彼女の着替えは日頃から手伝っているし、お風呂の供もする。
 それなのになぜ恥じらわなければならないのだろうか、と紐を持つ彼女の手元へ視線を落とせば]


  ……?

  ──ぁ。ちょ……
  ……っ、 ぁふ


[驚嘆したような声が聞こえ、不意に胸が揉みしだかれた。
 くすぐったさとむず痒いような感覚、それにどこか痺れるような感覚が触れられたところ中心に広がって]


  ……な、にを?
  はぃ?むねの、差?

  わかりません……が、その……っ
  あまり揉まれる、と


[揉んでいる当人は、それどころではないようだけれども
 多分、今、恥ずかしい。

 跳ね除けるわけにもいかず、どうしたら良いのだろうかと戸惑ったような視線を彼女へ**]
 

 
[ 男の手で白桃のような片胸が
  その姿を着物の中から覗かせる。

  勿論、水面に己の姿が
  映っているのは気付いていた。

  気付いてはいたけれど、何故か
  それを止めようという気にはなれず。

  彼の弄る動きに身を委ねるばかりで。]
 

 

   んっ… や、ぁ… はぁ、 ん……


[ 胸の頂が指先で摘まれれば
  甘い吐息を漏らしながら身を捩る。

  摘まれれば摘まれるだけ
  胸の先端の赤い実は芯を持ち
  その存在を主張し始めていく。]
 

 
[ 浴衣の帯の下が左右に割り開かされる。

  男の骨ばった手が空いた隙間に伸びた。

  水面に映るは男に身体を弄られ
  頬を赤く染め、蕩けた表情を浮かべた
  淫らな女の姿。

  ───何と淫らな姿を晒しているのだろう。

  気恥かしさに身体の熱が更に増す気がする。

  上方から伸びた指が着物の隙間から忍び寄り
  その奥へ、秘められた色白の丘へと伸びた。


  …───その時。]
 

 

[ 宿の仲居らしき人の声が
   耳まで届いた。]

 

 
[ 安心したような、残念だったような。
  肩の力が抜けていく。

  けれど、耳に落とされる彼の声は
  何処か愉しげな響きで鼓膜を震わせるばかりで。

  中断されるというのに、何故愉し気なのだろう。

  疑問に思っていれば
  続いて落とされる言葉。]


   ……え?


[ 一体どういう事なのか。


  …なんと、彼は身体を弄る動きを止めないまま
  仲居を部屋の中へと
  招き入れてしまうのであった。]
 

 
 
   っ…! ん… 
ふぁ
、 っ…、 ん…!


[ 彼の指が脚の付け根に、一点に触れれば
  その瞬間、下腹部に走る甘い痺れに腰が自然と揺れる。

  それと同時に唇のあわいから零れる艶めかしい声。

  懸命に唇を結び、声を押し殺そうとするけれども
  次から次へと漣のように刺激が齎されれば
  小さく音が漏れ出だす。

  聞こえてしまうのではないかと気が気でない。
  とてもじゃないが、話す余裕などないもので。

  水面越しに潤んだ瞳を、
  少しばかり訴えかけるような表情を向けて。]
 

 
[ その間にも、弄る彼の指先には
  花弁から滲み出たとろりとした蜜が絡みつき。

  身体の熱はより温度を上げて行って。

  そのまま、指先の動きが止まらなければ

  その内限界を迎えて、気を遣っては
  くたりと彼の身体に凭れ掛かっただろう。]
 

[開き直って始めて見たらこれがなかなか楽しかった。

くだらない事で少し妬いてみたり
どうでもいい事で喜んでみたり
二人で楽しめる共通の話題を増やしたり
去年は無視した互いの誕生日に
ちょっといい店を予約して二人で食事をしてみたり

積み重ねて、あいつが傍に居る事じゃなくて
俺があいつの傍に居ることが当たり前になって行けば

だんだん、誰を騙しているのかわからなくなった。

ハロウィンの飾り付けがクリスマスのイルミネーションへと
変わる時期が気付けばまた、近付いて。

他に女を作るでもなく、他が居ないからという理由でもなく
当たり前に一緒に過ごすつもりでいるみたいな顔をしていたら
本当に、わからなくなって。

だってちょっと楽しみだった。
特に何をするでもない、ちょっと気分が浮かれるだけの
その日を、一緒に過ごすことが。

何処か店を予約しようかとか
何処も混むから家でゆっくり過ごそうかなんて
二人で考えてる時間も含めて、全部。]

[会社から近くて便利なんて理由だけで
半分同棲してんじゃないかってくらい
あいつのものが家に増えて、
お湯変えないで同じ風呂に入ってくのも
なんか当たり前になった頃。

新聞の経済蘭眺めながら野球を聞き流してた筈なのに。
何故だか唐突に気になって、尋ねてみた]


 なぁ、おまえさ。
 まだ俺のこと抱けるのか?

 抱きたいと思う?
 それとももう……


[何だこの会話は。レスの夫婦か。
明日の天気の話でもするみたいな声色で
場違いに零れた質問に自分で少し驚いて。

ああでもここ最近ずっとぼんやりと
気になってたことだったと自分で納得して落ち着く。

なぁ、まだおまえは
俺を性的な意味で求めてくれるんだろうか。
それともいつかの俺みたいに
そっちは相性のいい誰かと割り切って
俺以外の誰かと済ませてしまうんだろうか。]

[べつにそれならそれでいいって思いながらも
ほんの少し苛つく自分にまた困惑して
でも最初に拒んでそのままなんとなく
騙し騙し避けてはないがしろにしてたのは俺で
だから口を挟む筋合いなんてなくて。

ただの雑談みたいなノリで話したくせに
考え出したら割とごちゃごちゃ悩んでる自分に気付いて
面倒になって、やっぱりいい、と投げ出す様に
返事を遮ろうと思ったのに……

何と答えるかが気になって、声が出なかった。*]

―― 修道院 ――


  え、主食?
  それは……何とも奇妙な夢ね。


[...はカザリの胸を揉みながら瞳を瞬かせた。
 どんな夢なのか興味があるのは煌く瞳を見れば分かるだろう。
 ただ、それは胸を揉んでいるからそうなっているとも言えないことはないのが現状である]


  『妻』の話は……そうね。
  最低でも私と同格にロンダリングして、
  それから嫁入りになるから……。
  一先ずは話だけでも通しておけば良いわね。


[...は戸惑うような視線を向けるカザリに微笑を浮かべた]


  でも――嫌そうではないわね。
  私の貴女ということになるのよ?


[問いかけては胸を揉む手付きを変えていく。
 外側から触れるように揉んでいたものを、
 全体的に触れて柔らかさを楽しみながら円を描くように揉んでいく]

  なぁに?
  あまり揉まれると……どうなるのかしら?

  うん、差、よ。
  ふふ……揉まれる程も私の胸はありませんからね。


[見事な平原、見事な絶壁。
 つるーんとした胸は使う布地が少なく済み、
 装飾も簡単だと職人には人気であるとか。許せん]


  で、どうなのかしら?


[夢の話、妻の話、胸を揉まれる話。
 そのどれをと示すでもなく問う言葉を投げかけながら、
 固くなってきた胸の飾りをシャツ越しにカリと引っかいた**]

[何か転機のような事が起きるわけじゃない。
けどほんの少しずつ距離が近付いていって
一緒にいるのが当たり前の日常が続いていく。

でも一緒にいる『だけ』じゃなくて
当たり前なのに『特別』みたいな
小さなキラキラが散りばめられた生活に
俺は非常に満足していた。不満なんてない。

若い奴の間じゃバニラとか言う
性行為のない関係が浸透しているらしいとか
そんなゲイ界隈の変化を友人から聞いていたから、
そう言うのもありなんだなって
自分達の関係に重ねて納得したりした。

本格的に寒さを感じるようになる頃、
今日から日本シリーズの第一戦が始まっていた。
俺は野球好きだから割と真剣に見ているけど
相手はそうでもないらしく、
今日もBGM代わりにして新聞を読んでいる。]

あ、すみませ――

[いつもテレビに向かって独り言を言って
たまに声がでかいだとか叱られるから、
きっと今聞こえたのもそうなんだろうって流しかけて。]

……。

ええ?!
何ですか、いきなり……

[頭の中で反芻した言葉が信じられなくて
もう一度、反芻して
ようやく理解して動揺が分かりやすく声に出た。

現状に満足してて、バニラってものを知っても
性欲自体がすっぱりなくなるわけじゃない。
キスは相変わらずしているし、
近くなった距離の分、身体に触れる機会も増えた。

けど、全然そう言う雰囲気にならないから。
彼の方が全然そこから盛り上がった風じゃないから
性的な何かはまだ近付いてないんだなって
それ以上踏み込めないまま今に至る。]

[率直にセックスしたいと言ったところで
相手にその気がないなら
前と同じ事になる気しかしなかったら話し合いもない。

状況や距離感が変わっても
俺が臆病なのはあまり変わらなかったし、
その変わった部分だって動かしたのは彼の方だ。
情けないのは自覚してる。]

そりゃ、まだ枯れてないですし…
聡さんの事が好きなのは、変わらない、ので。

[これ、何の確認なんだろう。
まだ諦めてないのかって呆れられるんだろうか。
よく分からない問いに不安が顔に出る。

俺は臆病で卑怯だから
自分で踏み込んで、確かめる事なんて出来ない。
いつもみたいに与えてもらって、甘やかされるのを
無意識に新しい変化が訪れるのを待ってしまう。]*

[背後より聞こえる配膳の音と
年かさの仲居の気安い世間話。


その音に、紛れるように。


腕の中で身じろぐ琴羽が
甘い甘い喘ぎ声を決死に噛み殺して。

その健気な様子に
────つい、興が乗る]

[指先に絡む蜜を塗り込める様に
彼女の花弁をつま開き。

骨ばった関節を曲げ、
己が存在を知らしめるかの様に擦り上げた。

何せ、彼女自身以上に知り尽くした身体である。
目を瞑っていたとしても、
その身が感じる場所を違える事など無く。

腰を引く事も、逃れる事もできない中。
ちゅぷじゅぷと、掻き混ぜられた愛液が
足湯の中へと泡立ち落ちて。


結果、食事の準備ができた頃には
腕にかかる重みはくてりと増していたのだった]



 …────おやぁ、我が妻よ。

  俺を煽っておいて、
  この程度で終わると思ってか?


[月下の湯煙に白き髪を揺らしながら。
獰猛な猛禽類の瞳で琴羽の顔を覗き込む。


まぁ、とは言え。
折角の料理が冷めてはいけないし
何より琴羽に風邪を引かせてしまっても良くない。

俺は優しい旦那なのだ。


故に────…]



 色々あったしな。
 腹が減っただろう、琴羽。


 実は俺も、腹が減っていてな……?


[それは、嘘ではない。

先程の戦いで限界を超えて力を使ったその結果、
腹の虫が鳴く程に空腹なのだ。

当初傷の回復にすら手が回らず、
お陰で宿の亭主に不審がられずにすんだのは
不幸中の幸いではあったが。


ただ、一つ違うのは。
琴羽がこれから味わう主食が山の幸なのに対して
俺の主食が琴羽だという点で]

[気をやったばかりの
ふわふわと蕩けた琴羽の腰に腕を回し。

浴衣の乱れもそのままに、
軽く浮かせる様に抱き上げる。

夜風に嬲られた可憐な果実が
つん、と天を向き。


己の膝で、湯に浸かり
薄く桃色がかった琴羽の両脚を割り開かせれば。
しっとりとした茂みに包まれた
濡れそぼったクレヴァスが露わとなっただろうか]

[そうして、その背後で指を動かす。

程無く、取り出した固く熱い焼きごてを
琴羽の下肢に押し当てて]


 
……さて、いただこうか。



[足湯より、立ち上がりがてら腕を緩める。


 ず、 く  … ……、 と。
 

──普段とは違う、強烈な反発と
千切らんばかりの圧迫感。

場所的に、角度的に。
突き挿れたのは、不浄の場所だった。

元より排泄の為の器官。
固く反り返った肉の楔といえど、
その三分の一を咥え込むに留まって]



 ……よいしょ、と。


[そのまま、後ろから抱き上げた琴羽を
揺さぶりながら部屋へと戻る。

美味しそうに盛り付けられた料理の前へ
どかりとあぐら座に座り込み]


 ッ、 は……
 俺は、美味しいものは後に取っておく主義でな?

 琴羽はどうだ?
 どれが食べたい……?


[まぁ、今の段階で
既にメインディッシュではあるのだが。
ぎちり、ぎちりと。
ほんの僅かずつ琴羽の後孔を味わい穿ちながら、
宿自慢の料理を互いの口に放り込んでいくのだった]

──告解──

[ 強大な魔物となってしまった最後の勇者と対峙し、
 聖都では人魔の一時的な協力関係は生まれたものの。
 3000年の信仰を突き崩すのは容易いことでは無かった。

 しかし、真の壁はその先に存在していた。

 明らかになった真実は、魔族に正当性を生むものではなかった。
 正体不明の禍つ木の影響を受け、変わり果てた同族だったモノ
 旧き時代が滅びた直接の要因も、彼らの祖先であったのなら
 何を語ろうとも永きに渡り人類を殺めてきたのが事実ならば。

 戦争が終わった世界で、魔族を自分達と対等に扱い
 平穏の中繁栄させる理由は、彼らにはありはしなかったのだ。 ]



[ 生きる為には、指導者が必要だった。

 命を奪い合ってきた異種族と共に歩む道を民に示す、
 新たな魔族の姿を人類に見せる、そんな御方が。

 すぐに王となれなくてもいい、暫くは参謀やベアが政治を代行する。
 今必要なのは存在そのものなのだから。

 人類が魔族の処遇を決める前に、
 民衆を前にして赤子を掲げ、宣言する。
 王には遺児がいたことを、これからの魔族の在り方を。

 それが正当な血筋の子であり、人類に寄り添う言葉を語るのなら
 偽りの歴史の元迫害した教会という負い目があった彼らは、
 少なくとも、すぐに魔族を滅ぼすことは出来なくなる。 ]


[ 魔王城の地下で長年復元を試みられていた機械は
 引き入れた背信者達と水人族によりついに蘇り、用途を解明される。

 しかしヤドリギの破壊も勇者の打倒も出来ないものだった為に、
 使用されること無く一つの時代の幕切れまで眠り続けていた。

 そして、誰もが思わぬ形で目覚めさせることとなる。
 それは────交わりなくして子を産み出す為のものであったから。 ]



[ ただでさえ伝説のその先にあった遥か遠き時代の遺物、
 本当にそんなことが出来るのか、皆が疑問を口にした。
 また、多くが命はそのように産まれるべきではないと抵抗を示した。 ]

なら聞こう。あの方は何の為に死んだ?
陛下が守った民達が、このまま人類に滅ぼされていいと言うのか!

[ それでも、最後には何も言うことは出来なくなる。

 本当に我々の手で王と王妃の子供を抱くことが出来るのならば、
 どれ程幸せか、どれ程民の希望となるか誰もが知っており、
 人類が自分達を受け入れられていないことも分かっていた。 ]



[ 勇者にとって魔族はただの倒すべき人外、
 故に命さえ絶ってしまえばそれでいい、肉への執着などは無い。
 我々が帰還した時、王と王妃の亡骸は
 常冬の気候により形を保って横たわっていた。

 王妃リヴァイアサンは、海上領域にて勇者と交戦、敗北。
 無残な姿で岸に流れ着いていた。

 メフィスト王は玉座の間にて勇者と対峙、そして討たれる。
 その身体の半分程が、空間を構成する青の結晶に包まれかけていたのは
 この場所は初代王の魔法で満ちているせいだ。

 初代王は自身が没した後も領土の氷雪が形を保つ為、
 その身を魔力で満ちた氷へと変えてしまったのだという。
 きっと、メフィストも同じように死しても民を守ろうとした。

 “やるべきこと”を果たした瞬間、結晶は音を立てて彼の全身へ広がる。
 きっと全てを理解し、待っていてくれたに違いない。 ]




[ ────真に盲目的な思い込みである。 ]



[ 両親の身体の一部から、肉体を構成する為の要素を抽出する
 機械が女の胎の代わりとなり、命を育む。

 400年前、魔王が倒れ、最後の勇者が潰えた後。
 硝子に包まれた円柱形の機械の中で、ウロボロス様は産まれた。

 産声一つ上げぬまま、母に抱かれることも出来ないまま。
 絡み合った細長い身体に二つの頭、二対の瞳。
 変異種を示す、本来の真祖竜とは違う異形の姿で。 ]

ああ、……

[ 俺は涙し、一晩中機械に縋り付くようにして眺めていた。

 黒い瞳は、お二人が人型でいた時の色だ。
 赤い瞳も、竜になった時のそれとよく似ていた。

 何の為にこの方を望み、創り上げたのか。
 それすらも一時は忘れ、この奇跡の如く出会いへの喜びが胸に満ち。 ]



[ そこに愛情は存在した。しかし、今思えばもっと他にも……
 例えば狂気のようなものも、含んでいたのではないか。

 異質な身体のことなど、少しも目に入っていなかった。
 ついに果たしてしまったこの所業について、
 何も考えることなくただ湧き上がる感情に浸っていた。

 自身の罪を自覚するのは、この出来事からずっと後となる。

 ウロボロス様の生まれについて罵声を浴びせた者は、
 あのオーガだけでは無かった────** ]



 あぁ、これは……
 とろける様に美味いな……


[ほろほろに解した山女魚を箸で摘み。
琴羽にあーんと食べさせた後に、
自らの舌の上でも転がして。

その間にも、押し入るばかりでは芸が無いだろうと
少し腰を引いてはまた打ち付け。
下の方での"食事"も続けていくのだった。

何せ今迄手付かずだった箇所である。
琴羽が身動ぎするその度に、
異物を押し出そうとするかの様に収縮し。

つい、たまらず]



 …────ッ 、 く、 フ……

 どうにも……
 そなたは何処もかしこも名器過ぎるな……

  ほら、お代わりはいるか……?


[琴羽の中に粘つく熱い欲望を吐き散らす。

上の口には炊きたての白米を。
下の孔には俺の精を。

たっぷりと、味合わせて。


けれど夕餉が終わるまでずっと、
愛液滴る蜜壺に触れる事は無かっただろう。

たまには俺だけでなく
琴羽もお預けの辛さを
噛み締めてみるのも良いと思ったのと──…

また、その。
飯の間に理性が飛んだら不味いと思ってだな……*]

── 修道院 ──

  ええ。奇妙な──でも夢は夢

  いくら華やかで色に溢れていたとしても
  夜が終われば消えてしまうもの……です


[それでも心のどこかで夢の名残り惜しむ想いがある。

 我が儘をいい、反抗し、そして甘える。
 灰色ではなく、鮮やかな色彩に溢れた世界。
 それは、自分には決して手の届かないものだから。

 届かないからこそ憧れる。
 知らずに膨らんでいたその願望こそが、夢を見させたのかも知れない。と半ば無理やり結論づけ]

[胸に触れる手指の感触。
 触れ方が徐々に変わっていくのを肌で感じる。

 興味本位から、意思のある動きへ。
 明らかに採寸とは異なる動きに、瞳に困惑の色が浮かび]


  どう……なる、のか
  わからない……の、です

  ただ、なにか。熱く……て


[説明下手な幼子のよう。
 問いかけに辿々しく答える。

 この修道院で生き、終わる身としてはおそらく子を抱くこともない。
 着飾ってどこかへ出かけることもきっと。
 だから、他の者から羨望の眼差しを注がれても、自分にとって胸はただの肉の塊でしかなかったのに。
 
 知らない感覚が恐ろしい。そのくせ、やめて欲しくはない。
 この感覚はなんだろうか、と煌めく瞳を見つめ返せば]


  ────っ。ぁ、ひ


[その瞬間、与えられた刺激に体が弓形になり、軽く跳ねた。
 答えを催促するような言葉に、意のままに操られているようで悔しいと小さく呻き] 


  私が貴女のものになるのなら
  貴女は誰のものに……?

  ……私だけ奪われるのは、いやです


[問いには答えを。
 奪われ支配されるのならば、与えられるのを待つだけ。
 欲しいものをねだることもできないのはいやだ、と**]

 
[式を滞りなく済ますために
 頭を寄せ合い
 また共に画面の文字を追っていく。


  (誓いの…… キス?!)


 それを、好きなひと同士でする
 特別な行為だと認識したのも
 ここ7日程のことだ。

 勝手な想像で描かれた作品と分かっていても
 あなたを王子に見立てて
 口吻を交わし合うイラストや夢小説を
 見つける度に酷くもやもやして
 思い出す度に嫌な気持ちになってしまうから、

 頭から追い出して
 なるべく考えないようにしていた。]
 

 
[でも、
 自分が出来るかもってなった途端に
 脳内があなたとする妄想で
 溢れかえってしまうのだから、我ながら現金だ。

 食い入るように見つめてしまう唇が
 言葉を紡いで動く様子に、こく…と喉を鳴らす。



   うん、 しようか



[自分がしたくて堪らないせいで
 希望的観測が入っているかもしれないけれど、
 色づいた頬も、眼差しも
 拒んでいないように俺の目には映ったから
 緊張しながらも、徐々に距離を詰めていく。]
 

 
[おいで、というように
 繋いだ手を軽く引き
 もうひとつの腕で肩を抱き寄せると
 息がかかるほど近づいた
 淡い色の形のよい唇を、ぱく、と喰んだ。

 結婚式でよくあるような
 浅くて軽い、一瞬触れるだけの口吻ではなくて]



   っ、 ふ、…… む、…ぅ、ん



[そのまま味わうように
 もぐもぐ、と不器用な動きを繰り返して
 初めての唇の感触を
 長く、長く、長く堪能する。]
 

 
[指先とは違い
 血が透けるほど薄い皮ごしに
 感じ取ったあなたは…滑らかで柔らかくて。
 あまりに気持ちよすぎるから
 いつまでも無限に貪っていたくなる。

 でも、息の限界が来てしまって
 勿体ないと思いつつ、ぷ、は!と唇を離した。]



   はぁ、…… は、… っ、



[あなたに溺れるのは、苦しささえ愛おしい。
 脳が白むような揺蕩う快感に、
 とろり、と溶けた笑みを
 一生を捧げようと誓った相手に向けながら
 
俺は知らず、欲情していた。
]*
 

 
[貴方の視線が、僕の唇に突き刺さっている。

 日頃の手入れは欠かしていないし
 母がそこも綺麗だと言ってくれたから
 不安な要素はない筈なのに、気になってしまう。

 貴方の目から見て、変じゃないかな。]


   う、ん……


[誓いのキスを貴方も望んでくれて
 優しく呼ぶように手を引いてくれる。
 胸が高鳴るのを覚えながら頷き足を動かし
 元々近かった距離を詰めた。
 邪魔なスマートフォンをポケットに戻す。
 肩を抱かれ、眼鏡を掛けたままの貴方の顔が近づく。]
 

 
[空気を伝って熱を感じる。
 貴方の濃い匂いがする。
 ああ、治人が近い。
 そう思った時には、唇がぱくりと包まれていた。]


   
……っ、 
ん、む
……、っ……


[そこの柔らかさ、温もりを教えられる。
 漏れる声は貴方の中に吸収されて。
 唇の内側、少しだけ湿った感触は、
 貴方の体液なのかな……?
 そんな考える迄もないことを
 溶けていく思考の中に置きながら
 皮膚の薄い部分同士擦られて、背筋が震える。]
 

 
[大人しくなんてしてられなくて
 繋いだままの手の指を深く絡めて
 自分からも柔い肉を動かして
 治人の温かくてとびきり柔らかい部分を貪った。
 触れ合っているのは唇だけ。
 舌はその奥に在るのに、堪らなく甘く感じる。]


   (治人のキス、気持ち良い……)


[比べる他を知らないから拙さにも気づかない。

 ただ貴方の掌も、唇も、気持ちよすぎて
 どうにかなりそうだ……ということだけ。

     いや、もうなっているのかも知れない。]
 

 
[愛おしい貴方に鼻息をかけたくなくて
 息を止めていれば苦しくて。

 けれどこの苦しさも生きている証だと思うと狂おしい。

 溺れそうになった時、彼の方から離される。


   ……っはぁ、……、はー……


[息継ぎを知らない不慣れさをお互いに晒し合い
 上下に動く肩が二対。
 見つめ合うとろりと蕩けた表情も、ちょうど二つ。]
 

 
[自らの生を望んでくれる王子様に
 こんなに気持ち良いことまで
 教えられてしまったら
 眠りの世界になんて戻れる訳がないよ。]


   ……
Guten Morgen



[ホテルのチャペルでは返せなかった挨拶。
 意味が通じなくて構わないから自国の言葉。
 僕の中に生じた確かな変化、その証だけの。

 呟いたあと、ぎゅっと抱き締めたなら
 この神聖な場所には似つかわしくない
 熱同士重なったろうか。**]
 

[上司との話題の一つになんとなく把握はしている
程度の俺と違って真面目に中継の画面に食い入っては
一喜一憂している後姿を眺めるのは楽しい。

デカい声にうるせぇと笑えば
叱られたと思っていちいち縮こまるが
学習しないというより出来ない程度に
はしゃいでいるのは見ていて微笑ましい。

一度球場に見に行くか誘ってみたが
チケットの取り方はさっぱりなので
行くも行かないも相手任せだ。

なお、試合中寝ない自信はない。
何処でも眠れる特技を持つとつらい。]


 あ。打った……


[動揺している間に見逃した瞬間を指さして。
見なくていいのかと視線で訴える。

これは中継の合間の雑談くらいで丁度いいんだ。
真面目に向き合われると俺が困る。]

[暫く悩んで出した答えに、そうか、って
自分で聞いておきながらそっけなく答えつつも
内心喜んでいる自分が居ることを
見ない振りしきれなかったので
そろそろ潮時なのかなぁと思う。

いい加減認めるべきなのかもしれない。
「そこそこ」でなく、たぶん、わりと
こいつの事が気に入ってるし
手放すのは惜しいと思っている自分を。]


 ひとつき……くらい、いや……
 確か11月後半に連休あったな。

 あけとけ。


 なんか……
 勿体ぶるようなもんでもないような気がしてきた。

 いい加減若くもないし。
 早いうちの方がマシかな、って……

[相手が考えたのと同じくらいの沈黙ののちに
新聞を捲りながらぽつりと告げる。
合間の雑談で良いと思いながらもCM中以外を狙うのは
聞こえていなければそれでもいいやって気持ちの表れだろう。

主語はない。が、抱かれてやろうと告げている割に
恥じらいも動揺も緊張もとくになくて
なんだか本当にたいしたことでもない気がしてくる。

本番に満たない触れ合いすら求められることはなくて
今の返事だって俺に不満を抱かせない程度に
当たり障りなく答えたんだとしても、だ。

俺がやると言ったらヤるのである。
聞いていようと、いまいと、
こいつにその気があろうと、なかろうと。

覚悟を決めてしまえばそれだけのことだった。*]

 
[ 口を結び、必死に耐えていれば
  さらに彼の指が大胆に動く。

  中から擦り付けてくる動きに
  身体が小さくぷるぷると震える。

  唇から吐息混じりの甘い嬌声が、
  下腹部の方からくちゅりと水音漏れる。


  最早聞こえてしまっているのではないか。

  実は聞こえていて、それでも
  知らぬふりをしているのではないか。

  そうは思いつつも、下唇を噛み
  彼の腕をほっそりとした指でぎゅっと握り
  次々と襲い掛かる快楽の波に懸命に耐えて。]
 

 
[ その後、
  どれだけの時間が経ったのだろうか。

  何度となく花芯を、
  花弁の奥をその指で弄られ、
  その度に気を遣りそうになるのを
  堪え続けていた。


  しかし我慢するのにも限界はあるもの。

  身体を震わせつつ、これ以上は無理だと、
  そんな考えが頭に過った、丁度その時。

  仲居から投げ掛けられる声と
  扉の閉まる音が耳まで届いた。]
 

 
[ ようやくほっと一息、
  緊張から解放されるのと同時。

  身体を小刻みに震わせて、
  白い喉を反らしては]


   ふ…あ、 は ぁ… ん……


[ 彼の腕の中でその身を
  くてりと果てさせるのであった。]
 

 
[ 意識がぼんやりとする中
  彼が横から覗き込んでくる。

  獰猛な肉食獣の、猛禽類の瞳。
  それが此方を見据えていた。]


   
いぢわる……。



[ 唇を尖らせて、
  少しばかり不貞腐れたような声音で。

  けれど上気した頬、とろんとした瞳は
  彼の行いがこの身にとってどうであったか。
  雄弁に物語っていただろう。]
 

―― 修道院 ――

[...は背筋を仰け反らせたカザリを見て目を細めた。
 強調していないのに強調されていた胸が強調される。
 その揺れ方や質量感は堕落に導く悪魔の咆哮のようである。
 敬虔なる神の信徒として断じて負けるわけにはいかない。

 ...はカザリの腰へと片手を回した。
 逃げられないように捉えてしまってからベッドへ誘う。
 ベッドの端へ脚が付けばそのまま押し倒して更に逃げ場を奪った]


  私は私のものよ。
  なぁに、私に貰われるのは奪われることなの?

  それは……貴女は私を欲するということかしら?


[...は瞳を見つめて問うた。

 問いかけながらも胸を討伐する手の動きを再開した。
 シャツを押し広げるたわわな実り。
 その一部が更に押し上げられて誇張する尖りを、
 優しく転がしていき、稀に弾いては押し込んでいく]

  色が喪われるのは夢だけではないわ。
  現実も同じこと。
  華やかな時間は何時しか終わってしまうもの。

  だからこそ――煌びやかな時間は謳歌しないとね。
  それがこんなところに押し込められて……。


[...はカザリの股座へと片足を滑り込ませた。
 膝を持ち上げ、膝頭を付け根に触れると緩く擦りつけていく]


  分からないなら教えてあげるわ。
  これからもっと熱くなっていくのよ。

  でも残念ね。
  私の分はあげられそうにないの。
  ……
胸より肩甲骨の方が出てる
とか言われたしね。


[...は冷笑を浮かべた。
 向けたのはカザリにではない。
 言い放った男は既にこの世にはいないが、
 彼が遺した言葉は胸に刻み込まれている]

  どいつもこいつも胸、胸、胸と煩わしい。
  その点猫なら良いわよね。
  何も言わないし、吸えるもの。


[...は熱い吐息を漏らした。
 夢の中で吸う、マイ猫は可愛らしい。
 吸い放題なのも良いことだ。

 吸う。
 ...は、にんまり、カザリの胸を見て笑みを浮かべた**]

そりゃ構いませんけど。

[何となくいつもの予定確認とは違う
歯切れの悪い物言いに疑問符が浮かびつつ答える。
その後、何をするって言葉が続かないのも違和感がある。
何もしない日だって当然あるのだけど
わざわざ空けとけなんて断定的な言い方をされた事はない。

続いた言葉も要領を得なくて、
いまいち野球に集中出来なくなってしまった。

勿体ぶるものでなくて、早いうちの方がマシな事。
…全然分からない。

遡ってその前の文脈から考えてみたら
何となく明言を避けた言葉の内容が見えてくる。
でもあまりにも都合が良すぎて
現実らしかぬ答えだったから飲み込むのに苦労して]

…あの。

本気ですか?

俺の勘違いだったらすみません。
抱かれる覚悟決めた、みたいに聞こえたんですけど…。

[なんて聞いたら怒られてしまっただろうか。]

[それから連休までは気が気じゃなかった。
抱きたいと思うのかと聞かれたわけだから
俺が抱く側、って事で間違いはないとは思う。

しかしそれが問題なのだ。
なんせ、俺は今まで誰かを抱いた事がない。
セックスの経験は多いが童貞だ。

抱くってどうやるんだっけ。しかも相手初めてで。
自分がどうやって抱かれていたか思い出したくても
結構前の事だからいまいち思い出せない。
そもそも入れるのに慣れた尻と初めての尻は別物だし。

痛い思いさせたらどうしよう。
それがきっかけで関係に亀裂が入ったらどうしよう。
プレッシャーで胃がおかしくなりそうだ。
多分、人から見ても明らかに落ち着きがなかっただろう。

けれど時間は容赦なく進む。
約束の連休はすぐにやってきた。]

[コンドーム、予備を含めてローション三本。
指と陰茎の間くらいの太さのスティックディルドと
万が一傷付いた時用に軟膏を鞄に入れる。

いくら確認しても準備万端とは思えないし
不安と緊張は強まるばかりで
セックスってこんなんだっけと虚無になりかけたりして。

それでも一年越しに彼が踏み込んでくれたから
それを無碍にしたくない一心で喝を入れる。

まあ、あの人は信じられないくらい可愛いし
めちゃくちゃかっこいいから
多分目の前にしたら自然に欲情するだろう。
自慰してる時みたいに。

…そうやって無理矢理思い込もうとしないと緊張で吐きそうだった。]

お、お邪魔します。

[まるで初めて部屋に呼ばれたみたいに
よそよそしい声で呟いて鞄を抱えたまま
借りてきた猫みたいに縮こまって床に座った。]*

 
[ 彼がこの程度で終わるなど
  これまでの経験から思う筈もなく。

  けれど、今回無理をさせてしまったし。
  それに、愛されるのは嫌いじゃないのだ。

 
今回亡霊たちによって離れ離れになる事があった。


 
それはとてつもない恐怖と心細さを己に齎し。

 
同時に改めて彼への愛おしさと、

 
傍にいてくれる有難さを知った。


 
気付けば、もっともっと彼と愛し合いたいと。

 
自分からも彼を求めるようになっていた。


 
今だって身体の奥は

 
彼が欲しくてじんじんと疼いては、

 
とろりと甘い蜜を溢れさせている。


  とはいえ、食事前からこんなにも
  積極的になるのは予想していなくて。

  そこは少しばかり
  考えが甘かったのは言うまでもない。]
 

 

   ふぁ……?


[ 此方を気遣う様子を見せつつも、
  自分もお腹が空いている事を伝えてくる彼。

  その言い草に、
  何を考えているのだろうと思いはすれども、
  回らない頭では深く考えるまでもなく。

  ただ、目の前に
  無防備になった姿を曝け出すばかり。]
 

 
[ 腕が腰に回ってきて、
  軽く浮かすように抱き上げられる。

  運んでくれるのだろうか。

  そう思い、
  大人しく身を委ねていれば
  突然両脚が割り開かされた。]
 

 
[ 熱の籠った、蜜で濡れた花弁が外気に触れる。

  少しの間の後
  熱く昂るそれが脚の付け根に
  けれども何時もとは少し違う場所に触れて]


   へ…? ちょ、ちょっと、まっ……!


[ 止める間もなく、剛直が
  柔肉を押し開きながら突き進んでくる。

  その圧迫感に息が詰まりそうになる。
  背筋にぞわぞわとするものが走る。
  脂汗のようなものが全身に浮かぶ。

  揺さぶられる度に身体がふるふると震えた。]
 

 
[ 気付いた時には
  目の前には美味しそうな料理。

  普段であればこのようなご馳走。
  目を輝かせながら口に運んだだろう。


  けれど、今はそれどころではなくって。]
 

 

   ふぁ……ぁ、 ぁん…… あぁぅ……


[ 箸で口に運ばれる食事はどれも美味しい。
  しかしゆっくり味わう余裕など無きに等しく。

  彼が腰を動かせばその度に上半身が跳ねる。

  自分の意志とは関係なく、後孔は収縮し
  身体の奥に感じる剛直がぶるりと震えたかと思えば
  その直後、奥に熱いものが迸るのであった。]
 

 
[ そうして、座卓の上に並んだ料理が
  すっかり姿を消す頃合い。

  何度となく欲望を注がれる事はあっても
  蜜を滴らせる花弁に触れられる事はなく。

 
身体の奥はいまだに疼いていた。

 
彼が欲しくて欲しくて堪らないと。


  彼の方に振り返り、
  物欲しそうな眼差しを向けながら]


   
お風呂、いきましょ……?



[ 切なげな、けれど甘さを含んだ声音で
  問い掛けてみるが……]*
 



[ 硝子の外側から、いつも小さな姿を見つめていた。 ]


[ きちんとした形になる前、
 指の先にも満たない小さな球体にしか見えなかった頃から。
 漸く大きくなり始めて、
 透けた表皮から骨格が見て取れていた頃も当然。 ]

────殿下。
俺は早く貴方に会いたい。早く俺達のことを知ってほしい。
貴方の父上と母上がどのように生きたのかも……。

[ 時間を見つけては食い入るように眺め、
 未だ名前も無いその方に譫言のように呼び掛けていた。

 旧き時代の技術とは畏れ敬うべきものだ。
 人の子が母に抱えられている時間よりもずっと短い期間で、
 産まれる筈は無かった命が、花開く。

 完全な形態が作られ、開いた四つの目が外を見た日を
 誕生日として定めると我々は決めた。
 その日、彼と共に幾多の魔族の命が救われる未来が産まれた。]


[ 性別が分かったのは外に出した後だった。
 何しろ竜族は絶滅してしまったもので、水人族が苦心して特定に至る。

 あのように集団に身体を眺められ何度もひっくり返され過ごすのは、
 きっと中々に居心地が悪い。
 必要な行為と分かりながらも、可哀想に思わずにはいられなかった。
 思っていたのに、もっと酷いことをしてしまった。

 ────あの日。
 幾重にも重ねられた防御魔法に包まれた彼を、
 民衆の前へと連れて行き、よく見えるように掲げた。

 ベアによる魔族の民、そして人類への宣言の最中。
 光の珠のような魔法の中で、もつれ合う身体は酷く暴れていた。

 今までは円柱の中とその機械がある研究所しか知らなかったのだ、
 彼を見る目の数も桁が違う、物も語れない赤子には怖かっただろう。
 戻ってきた後、二つ頭を押し付けるように甘え俺から離れなかった。

 しかし、思い至ることは無かったがもしかすれば
 怯えた原因は他にもあったのかもしれない。
 その頃から既に悪意の視線が存在していたのかもしれない。 ]



[ 人型になったのは彼が40歳になった頃だろう。
 いつものように水槽から出し、室内を散歩させて差し上げようとした。
 未だ足は未発達の、こちらに向けて這い寄る御方が
 唐突に金髪の幼児に姿を変えたのだ。

 ああ、本当に王子だったのかとぼうっと眺めてしまって
 気づいたオルフェウスに殴られ
 早く服を持ってこいと怒鳴られたのをよく覚えている。

 騒々しい俺達を見て笑っている姿も愛らしかったが、
 幼い頃からウロボロス様は既にウロボロス様だったと今は思う。

 悪い意味ではない。我々は皆、王の全てを愛している。
 その気まぐれさも、掌で転がすような物言いも。
 向こう側に存在するいじらしさを知っているから。

 そんな風に楽しげな姿を眺めていられることが、
 どれ程尊い時間なのか、すぐに思い知らされることとなったから。 ]



申し訳ございません、陛下……。

[ その年、戴冠式の後のこと。
 凍土には決して降ることなど無い筈の雨が、
 ついに我々の王となった小さな御方の上に降り注いだ。
 抱き締める腕は今日ばかりは加減が利かなかった。

 ────暗殺を目的とした、襲撃事件。

 未遂に終わった。ウロボロス様には当然、傷一つ付けさせなかった。
 しかし、犯人は拘束され連れて行かれる間最後まで陛下を罵り
 決して認めないと叫んでいた。

 彼の知らない時代を寝物語に毎夜聞かせ続け、
 その生まれも隠すことなく教えてある。
 それでも、今まで周りには彼を愛する者しかいなかった。
 否定され、加害を試みられるのは初めての経験だった。 ]



[ きっと、神を真似るような所業への報いだったのだ。

 産まれた幼子に罪はない、しかしそれを目論んだ者は
 純粋な愛ではなく、周囲の為に一つの命を創り上げた者は────

 人の姿は見目良くとも、竜としては異形だと奴は言った。
 その見目すら王と王妃の面影一つ無いと奴は言った。

 我々もそのことに気づいていない筈は無かった。
 恐らくそれは、産まれ方が影響していると結論を出していた。

 彼にはどうしようもない、他の誰かの行いのせいで
 きっとこれから何度も、同じように詰られる。 ]



 どうしてあやまるの。ボクは、どこも痛くない。
 みんながボクを守ってくれたから。
 ……辛いのはボクじゃなくて、フォークでしょう?


[じっと目の奥を覗き込み、白く柔らかな手は頭を撫でる。
人の形となる前から、何度もされていたものを真似るように
ぎこちなく、優しく、雨が止むまで何度でも。]


[ 女神も聖木もこの世界にはありはしない。

 救いを差し伸べたのは、罪を赦したのは
 小さな小さな、人造の魔王だった。

 遥かな寿命、唯一の竜。
 その身に永きに渡り降りかかることとなる苦を思えば、
 決して許されてはならない。

 それでも雨は勢いを増して、暫くの間優しい子を濡らし続けた。
 真に尊き、光のような御方だと知った。 ]


[ 裏切りが教会に知れた後、故郷の村は焼かれてしまった。
 復讐を志した、同じ孤児院で育った少年が
 変わらない姿の俺の前に、成長した男として現れた。

 彼の命を摘み取った時の虚しさが、何百年経とうと忘れられない。
 仲間達の亡骸と同じく、死に顔が目に焼き付いた。

 目的が存在した。仰ぐべき御方と、仲間達がいた。
 そうでなければきっと心も喪っていただろう。

 異能を見に宿し、しかし魔族のようには変わらない姿。
 人の寿命を遠く過ぎて、誰にも分からない終わり。
 その日が来れば魔物へと成り果ててしまうと定められた運命。
 これは人類でも、魔族でもないと言うべきではないか。

 俺は何なのだろう、どうして存在しているのだろう────
 胸に空いた穴は、一人きりになると開いてしまう。 ]



[ 君は我々の血を受け入れ王に仕えたまごうこと無き魔族だ。
 守るべき方に逃される苦渋を共に味わった仲間がそう語った。

 あなたは教会と戦争の真実を暴き、未来で喪われる命を救った。
 やはり勇者と呼ばれるべき人間だと、聖都で助けた人類が言った。

 元より我らは一つであったのだから、お前はどちらでもある。
 そんなことを口にしたのは水人の研究者と迫害された者達であった。

 その全てがこちらを想っての、心よりの言葉。
 それでもどうしても、受け入れることが出来ずに今に至る。 ]



[ だが────、 ]



  
「ふぉーく?」


いいえ、フォルクスですよ殿下。

  
「ふぉる……う」


その調子。フォルクス、です。

  
「ふぉううぅ」


ああ、遠のいたな一気に……

  
「……んっ!」


いてっ、痛い痛い!分かりましたフォークでいいです!いいですから!
……フォーク、か。なんだろうな、これも、運命ってやつかな。



[ 培養管の中からこちらを見つめていた四つの目が、

 巻き付き噛み付き、言葉にならない愛情を示した異形の身体が、

 抱き上げた腕の中の幼子の笑顔が、

 優しく頭に触れたその光が、

 果てしない時間の中、穏やかな流れで美しく成長していく姿が

 共に未来を見据える時間が。

 己が何者か定めることすら出来ない男に、
 この方の従者であるという一つの答えを、与えてくれた。 ]

【人】 エガリテ

 
[週末で人気の少ない大学。
 その一室、資料室の窓が
 時折ポワリと明かりを漏らす。]


   mh... .....liom.. ....guise......
     .... ..m’f.. ....cé...e a fh.. ....áil.


[置かれた資料の一つ一つに淡々と
 防御魔法を付与していた。

 死者の魂が帰ってくる日が近く
 歴史ある道具は魔を宿し易い。
 取り憑かれることのないように、とは
 本来の職務の枠を越えた雑務であるが
 負うことを厭わなかった。

 古今東西の術を試すのに良い機会だし。]
 
(12) 2020/10/31(Sat) 22:31:37

【人】 エガリテ

 
[受け取っていたリストの
 最上段からきっちりと施していき
 最下段に届けば、はて、と首を傾げる。

 リストに載っていない品が
 部屋の片隅には在った。]


   ……おかしいな


[一度見聞きしたものは忘れない。
 忘れることが出来ない。
 灰色の布で覆われたそれは随分と大きく
 去年は確実に無かった。
 その様なものが搬入された話も聴いていない。]
 
(13) 2020/10/31(Sat) 22:31:40

【人】 エガリテ

 
[けれど、そのシルエットは
 どこかで見たことがあった気がした。
 そうここでは無いどこかで。

 ――頭がズキリと痛み米神に右手を添える。
 手にしていたリストに皺が寄った。

 忘れる筈がない頭脳と記憶が矛盾している。
 整然としないことは気味が悪くて仕方ない。]


   ……、記憶を弄られたか……?


[一体誰に。何のために。
 決して、敵が居ないわけではなかった。
 認識できていないものもあるから
 直ぐに当たりをつけられそうにはない。]
 
(14) 2020/10/31(Sat) 22:32:01

【人】 エガリテ

 
[手が伸びかけるが、恋人の言葉が過り、拳の形とした。

 知的好奇心で飛びつきたくなるのを
 何度抑えられ、また何度救われて来たか。

 布で覆われた謎の品がどんなものか
 気になって気になって気になって気になるが
 下手に手を出さない方が良いだろう。

 愛おしい人を傷つけたく無い。]
 
(15) 2020/10/31(Sat) 22:32:47

【人】 エガリテ

 

   ……週明けに学園長に報告してからだ


[踵を返し、扉へ向かう。
 自分自身にも防御魔法は施して在った。
 不老不死理論第一節から第伍節迄、それなりに強固な物。
 害なすものは容易にこの身を冒せぬ筈で。]
 
(16) 2020/10/31(Sat) 22:33:02

【人】 エガリテ

 
[ドアノブに手を掛けた時
 それは気配もなく背後に迫って来ていた。

 ばさり、と重たい布が落ちる音。]
 
(17) 2020/10/31(Sat) 22:33:44

【人】 エガリテ

 
[咄嗟に振り返れば、小さな其奴と目が合った。**]
 
(18) 2020/10/31(Sat) 22:34:17


 ────ふぅ……

  いや……、実に、美味だった……


[中から白濁が垂れ溢れぬよう、
きっちりと琴羽の菊座を串刺しにしたまま
二人羽織の夕餉は終わり。

食後の甘味の柿羊羹を、
薄く開かれた彼女の口腔へと。
次いで己自身の口の中へと流し込んだ。

果実ならではの上品な秋の甘さを
舌で転がしていると]



 …────ッ……


[振り返り見上げる琴羽の妖艶さに
思わず言葉を失って。

──けれど、言葉など無くとも。
行き場の無い隘路の奥で
再び下肢に血流が巡り。

埋め込まれた裡で勃ち上がる屹立が、
何より雄弁に答えを返していただろう。


だが……]



 …──あぁ、俺はそれで構わんが。

  まさか琴羽が、
それ
を望むとはな。


[少しばかり意味深に。
にぃと口の端を曲げて微笑もうか。

先程まで扮していた吸血鬼であれば、
それこそ犬歯が覗く程に笑みは深く。

柿羊羹を取り分けた和菓子楊枝の先端で
浴衣に包まれたままの方の果実を軽くつつく。
そなたの心のうちは、
固く尖った実の先端は此処にあろうと
ヘラの横合いで擦り上げ。

そんな戯れの後に、再び彼女の身体を持ち上げる。


そうして、
・・・・・・・・
部屋に拡げられた、
・・・・・・・・・・・・
食べ終わったばかりの料理を後に
足湯の先、部屋に備え付けられた露天風呂へと向かうのだった]

[人工的に配された岩に囲まれた風雅な露天風呂は
今や青く輝く月光に照らされ、
ある種幻想的な佇まいを見せていた。

その縁に、腰を下ろし]


 突然、不浄の場所を使わせてもらって悪かった。

 そなたの負担を
 少しでも減らせないかと考えてな……

 何度も何度も夜通し逝かされ続けるより、
 半分をこちらに注いでしまえば、と。


[言いながら、
琴羽と繋がっていた昂りを引き抜いていく。

栓代わりだった肉杭との結合部からは
栗の花の薫りと共に粘ついた精液が滴り落ちて。
ほんの一時、温泉の湯を白く染め]



 ──まぁ、だが。

 こんなにも感じやすくては、
 その企みも水泡に帰した様だがな?


[膝の上に、琴羽を今迄とは逆、
向かい合わせに腰掛けさせれば。

ようやく。
そう、ようやく琴羽の顔と
間近で向かい合わせになり。


後孔も、膣も、胸も。
俺は琴羽のすべてが好きだが、
やはり一番惹かれるのは、この──、表情だと。


改めて実感し、何度と無く惚れ直すのだ]



 そんな所も含め、
 愛しておるぞ……、琴羽。


[互いに向かい合い、抱き締め合い。

ぐずぐずに濡れた琴羽の秘所に
己の肉茎を割り入れていく。


琴羽の霊力を喰らう妖であればこそ
今宵何度も精を放ったというのに
俺の屹立は未だ収まりを知らずそそり勃ち。
たっぷりと伝い落ちた白濁が霞むほど
赤黒く、物欲しげに脈打っていた。

ぐちぐちと、わざと内壁にぶつからせながら
彼女の蜜壺へと鉾をねじ込み]

[焦らされ切った花弁の奥に
すっかりと、埋め込んだその後に]

[満面の笑みで囁いたその直後、
頃合い良く部屋の入口を外から叩く音が聞こえ。

──どうやら俺は理性が飛ぶと、
代わりに悪戯心が召喚されるらしい。



さてと、と、容赦の無い突き上げを開始して]


 片付けも布団も、
 やってもらわねば困ってしまうなぁ……?

 今は半開きになっている部屋と露天の境の引き戸。
 そこを閉めれば音はともかく、姿は隠れるだろうが……


 まぁ、兎にも角にも。
 俺は琴羽を愛でるのに忙しいのでな。

 対応は任せるとしよう。


[愛しき妻に、そう、告げたのだった*]

[言いたいことだけ言って満足すればもう
この話題は終わった気になって
眺めているだけで余り頭に入っていなかった
細かな文字を目で追い始める。

大人しくなったのであいつもまた
野球観戦に戻ったのかと思えば
あいつの中ではまだ続いていたらしい。

なんとなく言い難そうに尋ねてくるから
やはりもうそんな気分じゃないのかもなと思いはしたが、
そんなもんは正直関係ないのである。

俺がやると言ったらやるし、そこは揺らがない。
もし全くその気になれなくて役に立たず出来なくとも
それはそれでひとつの結果として受け入れるだけだ]


 …………冗談の方が良かったか?


[こいつの言葉に嘘が無かろうと
まだ枯れてなくともまだ俺のことが好きだろうと
まだ俺を抱きたいか、とはまた別な話だと思う。

別段俺の体を好きになった訳でもないだろうし
顔が好きな訳でもないだろう
スタイルが良い訳でも顔が良い訳でもない事は
最低限自覚くらいはある。

ちょっとモテていい気になっていた時代もあったが
その後紹介された姉の夫になった男が
その辺の歪んだ自信をずたずたにしてくれたので
自分が外見だけなら所詮並程度の存在だと
今は正しく理解しているつもりでいる。

中身だけでも善くあろうと外面の良さは保ち続けたが
それもこいつの前では放棄し続けている訳で。
じゃあこいつ俺の何がまだ好きなんだろうって考えたら
もうよくわからなくなっていた。

結論として……あるのは、初恋、って付加価値だけで。
多分刷り込みなんだろうな、と今は思っている。]

[俺はどうかと問われれば
相変わらず恋愛的な意味合いでの「好き」だなんて感情は
まるで理解出来ないままで
こいつの事を好きなのかと問われても
「気に入ってはいる」としか答えられない。

けれどこの関係をずるずる続けられたらいいと思っている。
気楽で、気安くて、心地いいから。
人生にパートナーが必要ならこいつでいい。

もう少し歳をとってこいつの方が先に駄目になったら
介護くらいしたって別に構わないし
逆は……、下の世話をさせるのは少し抵抗があるが
それ以外なら他の誰かよりは、こいつがいい。

俺はずっと、自分は、好かれるのが気持ちいい性分なんだと
そう思って生きてきたけれど。
裏を返せば「嫌な顔をされるのが苦手」なだけなんだと
最近ふと気付いてしまったから。

それが本心であるか、気遣いであるかは知らないけれど
こいつは何を言っても、されても、嫌な顔はしない。
そんな可笑しな信頼と安心感が
手放し難さの由来だなんて話す心算はない。

黙ってた方が良い事なんて幾らだってある。]


[けれど伝えようと碌に努力もせずに
都合のいい物だけ汲み取れというのは無理な話で
こうして黙っていれば何もかも伝わらないままだ。

だから伝えるための、嘘ではない言葉を探して
けれど見当たらないので早々に投げ出した。
すぐ投げ出すのは悪い癖だ。
けれど何もかもをそう簡単に変えることは出来ない。

まぁいい、ここまで考えられるようになっただけでも
かなりの進歩だと思う。

結局こいつがはずれを引いた事実は覆らないし
俺じゃない方が良い現実は隠したままだが
その想いに誠意を返すことも報いることも出来ないのなら
せめてすこしくらいマシになろうと思うのは
悪い事ではないと思う。]

 
[ お風呂へ行こうと問い掛ければ
  何処か意味深な言葉が返って来る。

  心なしか楽しそうな微笑みに
  頭の中では疑問符が浮かぶばかり。

  真顔になってぱちぱちと瞬きを繰り返して。]


   え…? 私、何か変な事でも……?


[ 心配になってぽつりと零れてしまう声。
  おかしな事でも口にしてしまったのだろうか。]
 

 
[ 回らない頭で考えてみるも、
  答えは浮かびそうになく。]


   ひゃっ…やぁん、…擽ったい。もう…。


[ 和菓子楊枝で浴衣の上から
  胸の先端を突かれたり擦り上げたり。

  擽られている内に過った疑問は頭の片隅へ。

  彼にそのまま抱き上げられて
  露天風呂へと運ばれるのであった。]
 

 
[ 備え付けの露天風呂は
  周囲を岩に囲まれて。

  天からは青白く煌々と輝く月が
  雲の合間から顔を覗かせており。

  微かに波打つ水面には、
  天から降り注ぐ月光が
  弾かれてはきらきらと輝いて。

  暗く、けれど澄んだ湯からはほこほこと
  夜の闇に白い湯気を立ち昇らせている。


  その幻想的な佇まいにはっと息を呑む。
  なんて美しいのだろうと。

  改めて、湯治へと誘ってくれた彼へ
  感謝の気持ちが沸き起こっていた。]
 

 
[ 彼が縁の岩へと腰を下ろせば
  突然の謝罪の言葉が述べられる。

  聞こえてきた言葉に、瞬き二つ。

  首をふるふると小さく振っては口を開いて。]


   あんまり……その、気を使い過ぎなくても……。

   別に死ぬとか取り返しのつかない事に
   なる訳ではありませんし。


[ 彼なりの気遣いがとても嬉しい。

  情を交わした翌日、腰やら身体が
  怠かったり辛かったりするのは事実。]
 

 
[ けれど、それは……
  彼が自分を深く愛してくれるからこそで。

  そして、そんな彼だからこそ。
  私は───…。]


   それに私は……貴方の妻ですから。
   だから、その、
あの……。



[ 続く言葉は喉の奥へと消えてしまった。
  下を向いてはもじもじしてしまう。

  部屋からの明りに横顔が照らされれば
  赤く染まっているのがきっと彼にも分かる筈。

  ひんやりと冷たい夜気が流れていく中
  自分でも頬が熱を持つのを感じていた。]
 

 

   んっ、ぁ……は、ぁん……。


[ 自分の中に埋め込まれた熱い屹立が
  引き抜かれる感触に背筋がぞくぞくとする。

  身体を小刻みに震わせては、
  呻きのような声が零れた。

  抜かれた後、
  そこは切なげにひくひくとひくついて。

  おもらしでもしたかの如く。
  白濁が滴り落ちては湯の中へと広がっていく。

 
それを見て、少しばかり勿体ないなと

 
思ってしまったのは内緒。
]
 

 

   そんな事言われても……。


[ 続く言葉には
  口を尖らし、少し不貞腐れた顔。

  貴方のせいだもん、
  なんて言いたげな眼差しを向けて。


  けれど互いに向き合う姿勢となれば

  すぐにふにゃりと、
  蕩けるような微笑みを浮かべて。]
 

 



   私も……愛してます。……あなた。



 

 
[ 自分からも腕を伸ばし、
  身体を密着させては抱きしめ合う。

  腕に力を込めて、隙間なくぴったりと。


  逞しい胸板。肌の感触。
  重なり合う胸から伝わってくる鼓動。
  ぬくもり、匂い。心。

  …────何もかもが愛おしい。]
 

 随分待たせたからな。
 今は抱かれる方がマシなら早めに教えてくれ。


[聞いた俺がそれに従うかどうかは別の話だが。
俺がやるといえばやるしやらないといえばやらないのである。

それを怒るでも憤るでも責めるでも無理強いするでもなく
素直に受け入れる行儀のいい犬みたいなこいつに
甘えている自覚はある。
こいつは犬ではなくて人間だし俺は飼い主ですらない。
故に俺に従う義務もなければそれを信頼と呼んで
互いに喜び合っているわけでもない。

ただ一方的に好き勝手をしては
甘やかされて、受け入れられているだけだ。
多分こいつ自身は無自覚だろうけれど。

恋だの、愛だの、そんなものは良く解らないままだ。
けれど、それでも、この関係を
手放し難いと思う程度には、

今は割と、こいつのことを気に入っている。
都合がいいと言ってしまえばそれだけの話だが。

……ひとに懐かない野良みたいな性分の俺が
そこまで甘えるのなんて、お前くらいなんだと
いい加減気付けばいいのにと思う。]

[おまえの望む形ではないかもしれないが
俺の中でおまえはとっくに特別なんだということを

きっとおまえは未だに知らないんだろう。]

 

 
[ そうして彼と、深く、深く繋がった後。

  ふと、彼が満面の笑みを浮かべ、
  耳に言葉を流し込んできた。

  突然告げられた内容に
  頭の理解が追い付かない。

  そういえば食後、やけに意味深な言葉を
  彼が口にしていたような。


  数度瞬きを繰り返した後、ようやく
  今になってあの時の言葉の意味を理解し。]
 

 

   え、あ……ぁ……うそ!?


[ 室内の方、部屋の入り口を叩く音。
  思わず目を見開いてしまった。

  どうしよう。
  とにかく宿の人に見つからないように。
  急いでどうにかしなければ。

  隠れる? 何処に?
  何にせよこのままじゃマズいだろう。

  動かなければと、
  とりあえず立ち上がろうとした。]
 

 
[ けれどそれよりも早く
  彼の腰が動き始めて。]


   ひぁっ…、はぁん…ぁ、だ、めぇ……


[ 焦らしに焦らされ、
  いつも以上に敏感になっていたそこを
  容赦なく彼の屹立が責め立てた。

  奥を穿たれる度に全身が跳ね。
  艶めかしい声が喉の奥から
  押し出されるように吐き出される。

  頭がおかしくなりそうだ。]
 

 

   あっ、やぁん、…聞かれちゃ、んっ……


[ 突き上げられれば突き上げられるほど
  これまでとは比べものにならない
  快感が押し寄せてくる。

  それと共に理性はどんどん溶けていって。

  扉が開く音が
  微かに耳に届いた気がするものの
  今更止められそうになく。]
 

 
[ 気付けば自分からも腰を動かしており。

  口はだらしなく開きっぱなし。
  口端からは透明な液体が
  顎を伝って滴り落ちていく。

  彼の首の後ろに両腕を回し、
  ただひたすら振り落とされないように。
  それだけしか今は考えられなくて。

  最早羞恥などどこ吹く風となっていた。]*
 

今さら冗談はなしですよ!
やっと覚悟決めてくれたって言うのに。

[嬉しさを隠す気もない顔で思わず飛びついた。
テレビでは2死満塁、一打逆転の手に汗握る展開だが
もうそっちの事はどうでもいい。
逆転されようと俺が死ぬわけじゃない。
けどこっちは逃がしたら二度と掴めない気がする。

きっと俺が犬だったなら千切れんばかりに
尻尾が振り回されていたかも知れないが
生憎人間なのでぎゅうと抱きついて歓喜を表現した。

今の関係に不満があるわけじゃない。
けどもっと近付いてもいいって言われたら
喜ばないはずがないじゃないか。

けど、と考える。
抱かれる以外の可能性を示唆するみたいな言葉は
もう少し我儘を言ってもいいのだろうか。
もっといっぱいをお願いしてもいい、って事だろうか。]

…怒らないで聞いて欲しいんですけど。

どっちも、って駄目ですか?

[どっちもと言うのは言葉の通りだ。
入れるのも、入れられるのも。
この人の全部、許してくれるもの全てが欲しい。

最初は距離感も何も分からなくてごねていたくせに
しばらく甘やかされてきたせいで
俺もずいぶんと我儘で図々しくなったものだ。

でも仕方ない。だって彼が俺をそうした。
俺が飲み込んできた声を言葉に出来るようにして
手を差し伸べて行動出来るようにした。

貴方が俺を甘やかして、調子に乗らせてるんだ。]

最初は聡さんの事、温和で紳士で優しくて
こんな人が俺に抱かれたからどんな顔するのかなって
めちゃくちゃ可愛いんだろうなって思ってたけど、

素の聡さんは雑なところあって、いじわるで
ちょっとしたとこが色っぽかったり、かっこ良くて
でも根っこのところは変わらずにめちゃくちゃ優しくて。

どっちかじゃ、聡さんの色んな顔見れないから。


抱かれてる時の聡さんも、抱いてる時の聡さんも、
全部、見たいです。

…駄目ですか?

[なんか、すごい面倒そうな顔するんだろうなって
面と向かって言えない代わりに
抱きついたまま相手の肩に顔を埋める。

嫌われたくないって気持ちは変わらない。
けど彼なら嫌いだと突き放す前に
ちゃんと言葉で駄目な事を伝えてくれるのを俺はもう知ってしまった。
だから去年みたいに臆病にはならない。
落ち着いた気持ちで彼の反応を待った。]*

[こいつは犬ではないと言ったなあれはうそだ。
幼子みたいなノリで飛び疲れて、半目になった。

何だ子の生き物は。いぬか。そうか。
ならしかたないな、と頭をわしゃわしゃ撫で廻す。
はいはい、どうどう。

浮かれてたと思ったら急に真剣な声をするから
何事かと思って勢いでずれた眼鏡を直す。

どっちもってなんだ。
ああセックスの話ね。

理解するのにワンテンポ遅れる。
だって今迄こいつからそんな話
一切聞くことも無かったし。

あーどうだろうべつに。うん。
いけるんじゃねぇの抱くのなら。
何なら今からでも。と思うけれど。
答えるより先に怒涛の勢いで喋り出して

こいつ俺の何処が好きなんだろうって謎が解けた。
なるほど、此奴は間違いなく偶像を見ている。
間違いないな、そのまま夢見てたらいいと思う。
多分それが一番幸せなので。]



 あーーー、浮かれてるとこ悪いんだが。
 すっごい夢のない話していいか?

 一日で、って話なら。
 …………俺にそこまでの体力は、ありません。


[若くないからって納得の仕方をされたら
今この撫でてる手で殴ろうと思う。
そのくらい許されると思う。

取り合えず殴ると決める前の手で張り付いてるのを引き剥がす。
首が締まっても襟が伸びてびろびろになっても知らん。
張り付いて話すほうが悪い。]

 
 それと。
 ……そういう話はせめて顔見てしないか。
 煽てる心算か知らんが効果半減だぞ。

 前は確か下「でもいい」だった筈だし
 何時からそう思ってたかは知らんが。

 言いたいことあるなら何時でも言えばいい。
 受け入れるかは随時検討するから拒む事もあるだろうが

 面倒な事言ったくらいで今更、蹴り出したりしねぇから。
 お前が割と面倒なのは、もう知ってる。

[多分今も面倒だと思っていると、
思われていることは何となくわかる。
何もかも面倒くさくなることが多々あるので
そう考える事を否定はしないが。

別に抱くくらいは面倒でも何でもない。
重そうだから重労働ではありそうだが。それだけだ。

或いはこいつにとっては誰かを抱くことは「面倒な事」に
分類されうるのだろうかと考えはしたが。
そんな事は関係がないので気にするのをやめた。

どっちが先が良いかは特に聞かずに
また今度なら、と答える事で抱かれる方が先になったが
別に今でも出来るんだから順序逆でもよかったなと
後から気付いて、今更面倒くさいので、そのままになった。

そうとも、俺は些細なことが面倒になる性質である。
おまえも知っての通り、だ。*]

[いざ当日を迎えたら、
不安よりも達成感よりも虚しさがすごかった。
お蔭で緊張もない。
別にここまで一人でしなくてもよくない?
いやでもあいつに手伝わせるのは精神的に
もっと無理だったんだから仕方ない。

ここで風俗を頼ろうとしなかったのが
最大の進歩ではなかろうかなんて気付いたけれど
風俗頼ったほうマシだったわという結論にもセットで気付いた。

何事も適度にプロを頼るのは大事だ。たぶん。

外と中の洗浄を済ませておいて今更
きっちり服を着込むのもなんかもう馬鹿馬鹿しいし
そもそも今日はヤるつもりで呼んでいるのだから
もういいやって、部屋着のスウェットの上だけ着て
下はパンツまるだしだ。

色気なんてモンを追求するのは上級者のやることだ。
今の俺には無理なので諦めて欲しい。

この日の為に買った防水シーツを仕込んだベッドの上
胡坐を掻いてスマホを弄ってたら
なんかびくついてるのが恐る恐る顔を出して吹いた。

なんか向こうの方が初めて捧げに来たみたいな面だ。
……実際初めてだなんて知らないので。]


 はは、ふッ…、シャワー浴びてくるなら待ってるけど。
 なにおまえ、緊張してんの?

 だぁいじょうぶだって。
 緊張して役に立たなくても笑ってやるから。

 よしよし、リラックスできるよう面白ぇモン見せてやろうな。


[膝に掛けてた毛布を取っ払ってベッドの上に膝立ちになり
若干裾がだるだるな着慣れたスウェットの裾をたくし上げて
ほら、こっち見てろ。
視線で促して反対の手で下着のゴムをゆっくり摺り下ろせば
其処に在ったはずの毛がきれいになくなっていた]


 ふふっ、なかなか笑える光景だろ?
 整えようとしたらミスったから全部刈ってやった。

 自分でも何十年ぶりかにみたわ、この辺の肌。


[すべったら死ぬので笑って貰いたいところだが
初手で笑わせて貰ったので甘んじて死んでおこう。
ドン引きしねぇなら許容範囲内だ。

半ケツのままベッドの縁に座り直してこいこい手招きを
大人しく寄って来たらすべすべにはなりきらず
若干じょりじょりしてる肌へ手を誘って触れさせてやろうか。*]

【人】 エガリテ

 
[目蓋を持ち上げ、二度、三度、瞬いた。

 冷たく硬い床の上で身体を起こし
 小さな頭を斜めに傾けると
 緩く編まれた三つ編みが背を撫ぜる。]


   ……?


[どうして自分は
 柔らかなベッドの上に居ないのだ?

 寝心地が無駄に良いからつい眠り過ぎて
 本を読む時間が減ってしまうのだけれども
 言いつけを守って夜はそこで寝ていた筈だ。]
 
(22) 2020/11/01(Sun) 18:35:15

【人】 エガリテ

 
[ボーーーーン……、と予鈴がひとつ響く。

 いけない。
 どうしてこんな場所で寝ていたかはさておき
 授業に向かわなければならない。

 教科書は――枕にしていたみたいだ、
 ちゃんと近くに在る。
 両腕でしっかり抱えると資料室を出た。]
 
(23) 2020/11/01(Sun) 18:35:31

【人】 エガリテ

 
[様々な方向から視線を受けるが
 初日で慣れたことだ。
 気にすることなく黒外套の裾を揺らす。]


   ……?


[中途、同窓生に雰囲気が良く似た
 教員らしき隻眼の男を見たが――、

 もしかしたら親戚か。

 その程度の認識で、
 時間も愛想も無ければ挨拶は省略される。

 周囲より頭一つ、二つ分小さな体躯は
 人と人の隙間を縫うように進み
 目的地に届くまで止まることがなかった。]
 
(24) 2020/11/01(Sun) 18:35:55

【人】 エガリテ

 
[講義室の最前列、中央。
 どの授業でもその席に座ることにしていた。
 歳上に囲まれるから、身長的な問題で。

 今日は何と、既に座るものが在る。

 空いている席は彼の左右だけのようだが
 長机の上には彼の荷物がはみ出している。

 どうしよう、……悩んだ挙句。]


   すまない、隣良いだろうか


[出来れば譲って欲しいがそこは我慢して
 ボーイソプラノで声を掛けた。
 彼に見覚えがないけれど
 彼の方には、きっとあっただろう。]
 
(25) 2020/11/01(Sun) 18:36:03

【人】 エガリテ

 
[職員室の廊下に飾られている成績優秀者の写真。
 その入学当時の姿のままのエガリテ=ヒューゲルが
 リアン=キースリングに話しかけているのだから。**]
 
(26) 2020/11/01(Sun) 18:36:08
[一日でって、この人とセックス出来る機会は
たった一日、一回こっきりなのだろうか。
どっちかだけ、選べって事なのだろうか。

ずれた受け取り方をして
身体が離れて顔が見える距離になったら
相手の目にはしおしおに落ち込んだ俺が見えただろう。]

おだててるつもりはないですよ。
本当の事ですから。

でも片方だけなんて選べません。
俺は聡さんといっぱいシたいです。

ヤるのが貴方といる目的じゃないし
一緒にいるだけで楽しいですけど…っ

たった一回だけなんて嫌です!

[いつかみたいにぶつかる事を許してくれるから
今度は抱きついて誤魔化したりせずに
じっと顔を見据えて胸の中身を全部吐き出した。

この後、俺の心中を聞いた彼が呆れて
勘違いだって気付いた俺が浮かれたりしたかも知れない。]*

── 修道院 ──

[寝台へと仰向けに倒され、身動きを封じられる。
 まるで捕食される寸前の動物のような状態に、脈が早くなるのを感じた。

 これ以上は危険だ、と本能が告げる。
 一刻も早く逃げ出さなくてはならない、と。

 そのくせ、奇妙に昂ぶる自分がいる。
 恐怖と隣り合わせの快楽、それはまるで危険な遊びのようで]


  貰われるだけなのは、いや。です
  だって、私の持ち物は私だけ
  それしかないのに、貰われたら
  私には何もなくなってしまいますから

  だから、その代わりに何かを……


[不明な関係。
 愛情や友情で繋がっているわけではきっとない。
 どこまで委ねて良いのか、許して良いのかもわからない状態。
 けれどそれが逆に面白いと思えてしまうから]

[胸の先を弄られるたび、喉奥からくぐもった声が漏れる。
 鳥の鳴き声にも似た、声というよりは音のようなもの。

 仰向けに体を好きにされる、この状態は確かに夢の中で見た。
 思えばあの時、猫であった自分も微かに喉を鳴らしていたと苦笑を浮かべ]


  失った時間を埋めるため……ですか?
  ……っ、それならば、私では不足かと
  
  私は私にしかなれません
  男性や、他の誰かの代わりには
  どうあがいても、なれませんから


[胸に関する何かがあったのは理解できる。
 その様子から、根の深さも容易に想像は出来はする。

 では、彼女が求めているのはこの胸なのだろうか、と。
 擦り寄る膝頭から逃れるよう腰をくねらせ、僅かな抵抗を試みながら]


  ……猫?

  あぁ、それ。夢の中で不思議でした
  なぜ人間は猫を吸いたがるのだろう……って
  あとなぜ、お風呂に入れたがるのだろうって


[聞こえた単語にぽつり。

 人間は猫を吸う。それは夢で体験した、吸われた。
 けれど今の自分は人間の姿。
 吸われることはないだろうと、ぼんやりと彼女を見て*]

―― 修道院 ――


  代わりの何か、ね――。


[...は小首を傾げた。
 我が身はカザリを捕えて離さない。
 瞳で制し、身分で制し、動きで制し、熱で制する。

 腰が動くに合わせて器用に膝頭をあててやり、
 僅かな抵抗が翻り絡めて攻勢に繋げていく]


  何もなくなるわけではないわ。
  それに私には貴女が丁度良いの。
  個を持ち我があるようでいて、
  与えられるものを望む貴女が。


[...は苦々しい記憶に眉間に皺を寄せた。
 それでいて口元には自嘲気味の笑みを湛えている]

  男はダメよ、あれは奪うだけだもの。
  自分勝手なのよ。
  貴女がカザリだから良いのよ?


[...は夢の中で猫をかいぐりするように、
 カザリの胸の飾りをかいぐりしていく。
 既に隠しようがない程に主張するそこを摘まみ、
 捏ねてあげていった]

  それでも言葉が疑わしいなら……。
  私が貴女に悦びを教えてあげるわ。
  快と楽……愛されることを覚えさせてあげる。

  それはきっと新しい景色よ。
  これまで貴女が見たこともないもので……。


[...は飾りを摘まんでいた指先を離した。
 指先はシャツの上をなぞり腹へ移る。
 シャツの裾を指先で捉えれば摘まみあげて捲りあげた。

 布地はあっさりと捲れることはない]

  ……本当に、胸って。


[胸にひっかかって捲れないとはこれ如何に。
 大きな双子の丘を乗り越えさせて露わとしてしまおう。

 それにしてもカザリは妙な事をいう。
 まるで同じ夢を見ていたかのようだ]


  夢? あなたも猫が出る夢を見るの?
  猫を吸うのはね、落ち着くためよ。
  それに洗い立ての方が良い香りがするもの。
  でも不思議よね。
  温かいお風呂に入ると気持ち良いのに、
  猫はどうしてかお風呂を嫌がるもの。


[...はカザリの胸の飾りへと唇を近づけた]

  吸うのは良いことよ。
  こんな風にね?


[ぼんやりと見つめるカザリへと、悪戯っこのように目を細めた。
 ...が目の前の飾りへと吸い付いた。
 羽付きネズミの断末魔よりも軽やかな音を立てて、
 華麗に色づきに華を添えよう*]

[そりゃ緊張するだろうって心の中だけで突っ込んでおく。
それに比べて相手の方はやる気があるのか、ないのか
微妙に判断の困る恰好をしていた。

ある意味初めての共寝にロマンティックを求めるほど
歳も若くないし純粋な脳はしていないが
あまりにもこれはムードもへったくれもなさ過ぎだ。
そう、例えるなら袖をまくって
よっしゃ!仕事片付けるかくらいのノリに見える。

まあヤりたいのは俺だけで
彼はそれを受け入れただけなら分からなくもない、が。]

…ふふ。
別に整えたりしなくていいのに。

[呼ばれて行った先で彼の言の通り
気合が入っているのか何なのか分からない惨劇を目にする。
ムードも何にもなくてもやっつけなんかじゃなくて
彼なりに誠意を持って考えてくれてるって分かる。
さすがに向き合い方が度を越して
後孔を慣れさせようとしていたとまでは思わないが。]

変なところ、真面目だなぁ。

[笑っていたのも束の間、
不意に掴まれた手が茂みの刈られた場所に誘われて
かなりきわどい位置にこっちのスイッチが入ってしまった。
自分の意思でその肌をへそまで撫で上げると
余裕かましている相手の耳たぶへ
吸い付くように不意打ちのキスを食らわす。]

ありがとうございます。
リラックス、出来ました。

[シャワー借りてきますね、と断って
先程までとは違うかなり落ち着いた様子で
彼の傍を離れると鞄から下着だけ持って行った。]

[しばらくシャワーの流れる音をさせた後
相手よりもずっと身軽な格好で戻り
さて、とベッドに腰かけて足元の鞄を漁る。

取り出した歯磨き粉のような黒いチューブを
ベッドの中央近くに投げ置いて]

じゃあ、いいですか?

[嬉しそうな満面の笑みで彼の頬に手を伸ばした。]*

[欠片のそれらしさも残さなかったのは
あんまり張り切ってるみたいだと居た堪れないという
ほんの少しの照れ隠しと
こんなもんは日常の延長だろうと
こいつに言ってやりたかったのもある。

ムードなんてなくて、特別なんかじゃなくて
気紛れにじゃれつくようなキスをするのと
然程大差ないこれは日常の延長だ。

俺に差し出せるのは其処が限界だと思う。

抱かれてもいいといった時の俺の心境なんて
寒くなってきたからそろそろ鍋くいたい程度の感覚だ。
おまえが今になって抱かれたいと言い出したところで
俺にとっては、土鍋の用意めんどくせぇ程度で
ぼやくだけで発言すること自体を拒みはしない。

そこ迄のこだわりも、そこまでの興味もない。

今迄の相手が如何だったかは知らないが
そこに愛があるかと問われればないなと応えられる程度に
わりと冷静な侭事に及ぼうとしている訳で。

欲に流されるわけでもなく、熱に浮かされる訳でもなく。
正気の侭、実験的に
生々しい行為が可能であるか試そうとしている。]



 変ってなんだよ、失礼なやつだな。

 体毛気を遣うのは最低限の身嗜みだと思ったんだが。
 男同士だと違うのかね。
 ボーボーの方が男らしくていいのか?
 その辺よくわかんねぇけど…


[胸毛とかないんだけど、って
ふざけて胸元を掌で隠していたら
耳を食まれて良く解らない悲鳴が零れた。
色気があるない以前の普通に驚いただけのやつ。

100%驚きだけでばくばくしてる心音を持て余して
不満を訴える言葉が出てこずにいたら

急にきりっとしだした面が見えて思わず笑う]



 あー。なるほど?
 格好つけたくなるタイプかぁ。
 おもしれぇなぁこういうの……


[知りもしなかった一面をこんな場面で垣間見るとは
思ってもいなかったのでちょっと楽しい。
下着くらい置きっぱなしのがあるだろうに
勝負下着なんだろうか、とか考えたら笑える。

別に馬鹿にしたい訳じゃない。
純粋に、たのしいきもちなだけだ。
俺の知らない誰かは知っていたかもしれない
俺の知らないあいつが増える。

なんだ、わりと悪くないもんだと
ベッドに転がって、戻るのを待ちながら
しあわせ、と、形容しても違和感のない気持ちを噛みしめた]

 あーーー……その、なんだ。
 最中に、今はここまでが限界だ……って
 俺が言い出してもへこむなよ。


[シャワー浴びてる間に如何なる
モチベーションの劇的変化があったやら
やたら張り切って見えるいきいきした顔に
一応、念のため、注釈をいれておく。

先言っといてもどうせ
この世の終わりみたいに凹むんだろうな。
それは面倒くさいので限界までは頑張りたい。
それ以上は頑張るもんでもないだろう。

放り投げられたものを手に取る。
なるほど、気に入りのがあったのか。

取り合えず暖めとくかなぁと背中の下に挟み込んで
ひんやりとしたチューブの温度に鳥肌が立ったが
あんまり気にせず此方からも手を伸ばす。]



 すきなのあるなら先いえよな。
 なんか、余計な事した気がする。

 中にジェル仕込んであんだけど……


[混ざると微妙かもなぁなんてぼやきながら
体を起こして唇を迎えに行く。
それが相手にとってどれだけ予想外で
爆弾発言になり得るなんて自覚もなく
無防備な唇に勝手にキスをした*]


[ 痣に熱を感じることがあるのは、殆どは精神的要因の所為。
 先代が語ったように、それは勇者候補に付けられた目印に過ぎない。
 お前の人生に大きな影響を及ぼしたから、
 今でも意味があるように心の何処かで思ってしまっている。

 しかしその精神的要因に問題がある。
 体内の魔素が不安定となる理由は異能の使用過多が多く、
 恐らくは心の乱れも多少関わってきている。

 “だからお前には軍を辞めてほしかった“
 そんなことを話の最後に呟いたオルフェウスは、
 今回ばかりは暴力も罵声も浴びせてこなかった。 ]



ぐっ……

[ あっさり突き落とされる。此処は無慈悲な蛇の胃袋の中である。 ]

それは……かつて勇者だったと思われる魔物の目撃情報です。
以前から陛下に黙って部下に調べさせて……倒しに行っていました。
反省しておりますので、返していただけませんか。

[ 目前の二つの青紫を見下ろし、最後まで視線を逸らさないまま
 絞り出すような声で全てを打ち明けた。

 どうしても、彼らを楽にするのは自分でありたかった。
 同類の成れの果て達は、他の魔物と比べ物にならない程強い。
 心配をさせず、出来る限り早く向かうことで被害を抑える。
 いつでも心は王に在るつもりでも、
 やはりそれは裏切りの一つであったのだろう。 ]



 よく出来ました。
 まあずっと前から知っていたし、これからは許さないけどね

[満足げに両眼を細める。
更に奈落へ追い詰めんとばかりの支配者の言葉。

しかし、それは表面上は戯けただけのつもりだった。
故に彼の様子を見てすぐに引っ込め、真意を伝える。]

 ああ、……そんな顔をして
 分かっているさ、それが君にとってどれだけ大切なことだったのか。
 だから今まで望むようにさせてあげていたじゃないか。

 許さないと言ったのは一人で行くことだよ。
 これからは軍から一人同行者を必ず用意するんだ。いいね?
 
[ほら、と言えば宙を舞って紙片がその手の上へと落ちてくる。]



[ 五指の内二本が、動かなくなり金属の光沢を保っている右手へと。 ]



陛下……

[ ああ、なんと愚かな間違いをしたものか。
 王は秘匿を裏切りと認識し憤っていたのではない。
 ただただ自分を心配し、話してほしいと思っていたのだろう。

 今までの我慢を解いたのは物的証拠を手に入れただけではなく、
 きっと、この結局戻らなかった手を想ってのことでもあるのだ。 ]

はい、ここで誓います。
もう陛下に隠し事など決して致しません。

そして……他の者を頼り行動します。
最期の時まで、貴方に抱かせてしまう憂いは少なくあるように

[ 左手でそれを取り、側にある小さなテーブルの上に置いた。
 今度こそ忘れないようにしよう、覚えていよう。
 大切なただ一人の心を。 ]

[改めて告げられる補足に浮足立った気持ちが
急に冷静に現実味を持って落ち着いてくる。

ああ、そうだった。
この人は別に同性愛者じゃないし
男とのセックスって行為自体に興奮したりしない。
俺を受け入れる行為の一環として
コミュニケーションとして応じてくれるだけなのだ。

頭で理解したらムラムラした気持ちよりずっと
この人を愛おしく思う気持ちが強くなる。]

大丈夫です。
上手くいかなくても拒まれたんじゃないって
今はちゃんと分かるから。

その代わり、俺が下手でも笑わないで下さいね。
こっち側は…その、初めてなので。

[迎え入れられるように距離を詰めて
どさくさに紛れて黙っておくつもりだった告白を。]

え――

[何か、聞こえた気がした。
聞き直そうとした声は相手の唇で塞がれて
耳に残る言葉を思い出しながらぐるぐる考える。
唇を離すのはもったいないから
角度を変えながら黙らされているふりをしておく。

中に、ジェル。
準備をしていたって事だろうか。
そりゃ痛い思いするのは彼の方だし
予防って意味じゃ範疇ではあるかも知れない、けど。
そこまでするか普通。
アナルセックスやりたくて仕方ない訳でもないのに。

それこそ適当なとこで痛いから無理とか言えば
一応は頑張った体は保てるだろうのに。]

自惚れだったら笑って欲しいんですけど、

……聡さん、俺のこと好きなんですか?


[好きだ愛してるなんて言われた記憶はない。
恋人でもないこの関係を何と呼ぶのか分からない。
俺自身、好きの経験が乏しいし
分かるのは今まで自分に向けられた『好き』が
彼からは感じないって事くらいだ。

けどこれって受け入れる、の範疇だろうか。
優しい人、で括れるものなんだろうか。
義理や俺が嫌いじゃないってだけで
ここまで真剣に向き合えるものなんだろうか。

俺だったら無理だ。
どう考えたって度を超えている。
外向けの彼だったらあり得なくもなさそうだけど
生憎目の前にいるのは面倒くさがりで
はっきりやりたくない事は嫌だという素の彼で。

だったら考えられるのは
義理や優しさや憐憫とかじゃなく
俺への愛情みたいなもんなんじゃないかって。]

あー、うそうそ!忘れて下さい!

[言ってから余計な事だったって気付く。
うやむやにしようと彼をベッドに押し倒して
覆い被さるように首筋に唇を触れた。

誤魔化したい気持ちが強すぎて
スウェットの裾から差し入れた手は
愛撫というには性急で色気なく彼の胸に触れた。]*

[は?って一瞬聞き返し掛けて。
うわあり得そう、って思ったから黙った。
そうだよなこいつそこそこお綺麗な顔してるもんなぁと
一人勝手に納得する。

同性愛だろうと異性愛だろうと
綺麗な顔したのを抱きたいと思うのは道理だろう。
そしてこいつは望まれれば望まれたまま受け入れそうだ。

男らしい男を抱きたいと思う趣向は理解できないし
存在自体認識していないので
女性的な男、が抱かれる側なんだと思っている。

ならなんで今俺なんだという謎は
初恋フィルターで全て解決する。
目が曇ってりゃそう見えることもあるだろう。しらんけど。

なら順番はこれで良かったのかもしれない。
自分を抱いた男の模倣として
俺の真似をされちゃ溜まったもんじゃない。
自分の要らん癖に気付かされそうだ。そんなの知りたくない。]


 いやぁ、それは笑うだろう。
 腹を抱えて爆笑してやるから安心しろ。

 むしろ、笑われて、「笑うな」って
 怒鳴ってるくらいがちょうどいいと思うぞ。
 慰められると逆にしんどくないか?

 
[それらしいことを言いながらもにやにや笑いで
揶揄う気全開なので信憑性は薄い。

ほんと馬鹿だねおまえは。
手際の悪さくらいはめにつくかもしれないが
男を抱く手管的な意味合いならば、
もしもおまえが下手だろうとなんだろうと

俺はどうせおまえ以外しらないのに。]

[唇が性感帯なことくらいは理解している。
けれどこいつとキスするようになってから
唇がやたら敏感になった気がする。

多分気が抜けてるんだと思う。
感じさせるとか、その気にさせるとか、格好つけるとか。
全部如何でもよくて、肩の力を抜いたまま
重ねて、擦り合わせて、自分が気持ちいいのだけ追いかける。

こいつのからだつかって自慰でもしてる気分だ。
けどこいつは俺の何だから、それで何の問題もない。

もっと、って解けた唇を重ねようとしたら
喋り出すから仕方なく待ってやる。
何言ってんだ、今更。
やっぱばかだろ、おまえ。

なんだか可笑しくって喉の奥を震わせて笑いだせば
返事を聞くのが怖くなったか、騒ぐ犬に飛びつかれた。
違うな、押し倒されたのか。
天井が背景に変わった景色でじゃれついてくる犬の頭を撫でる。

ほんとうになんにもわかっていない。
伝えなくたってわかるだろうことが見えていない。]

[触診でもされてるみたいな触り方だとか
考えながらも好きにさせて
こっちも好き勝手に背中を撫で廻す。

そっち側が初めてでも
そっちじゃねぇのなら経験あるだろうに
ほらもっとえろい触り方しろと教師にでもなったつもりで
浮きあがった筋肉の先を、背骨の感触を
性器でも嬲るみたいな手付きで撫で摩ってやった]


 ………言わせたいのか?
 こんな状況じゃ何言わせても
 最中のリップサービスにしかならねぇだろうに。


[ばかだな、ほんとに。
気に入って無きゃこんなこと赦すかよ。

そんな簡単な答えがわからず怯えているのが可笑しくって
意地の悪い言い方ではぐらかす。

ちがうな、嘘でもいいから言ってくれと懇願されたいのか。
自分の腹の内の性根のねじ曲がった部分と目が合って
なんだか愉快で、機嫌よく笑い出した。]

[女を抱くときにほんの少し乱暴な気持ちになる。

どっちが強者でどっちが弱者だなんて
普段はそんなことはどうでもいいと思って生きている癖に
ベッドの上でだけはいつも違った。

くだらないと自分でも思いながらも
そう感じるまま振舞った方が喜ばれたので
特に気にせず思うままに振舞ってきた。

捻じ伏せて、辱めて、跪かせて。
支配と屈辱で征服する。

そこまで乱暴なことをする訳でもないし
拒まれることを無理強いしたことも無い。

性器を押し込むだけの行為を征服に例えるなど
時代錯誤の感覚だと、頭では理解しながらも
ただの性行為にそんな幻想を抱いては、浸るのが癖だった。]

[なんだ、かわらねぇじゃねぇか。

支配と屈辱に例えた性器を受け入れると
覚悟を決めて来たくせに。
何をされるかは嫌という程理解している。
差し出す為に支度をしたのだから。

なのに心の内はこれから女を抱くときと
然程大差はなかった。

自分の支配下である犬と見下して
欲しがってみろとせせら笑って

求められることを人一倍求めてるのは
自分だと気付いてしまう事に怯えて
真実に目を塞ぐために。

なるほど、本当にたいしたことではなかった。
下準備は死ぬほど面倒くさかったけれど。
それだけといってしまえば、ほんとうにそれだけだった。

だから普段通りに、少し歓ばせてやろうと
欲しがっていそうな言葉を紡ぐ。]



 ばかだな、ほんとうに…

 すきでもないやつに、こんなこと
 させるわけないだろう?


[……普段と、すこしだけ、ちがうのは
気分良くさせてただこの場を盛り上げるためだけの
口先だけで躍らせる薄っぺらな嘘ではなくて

本心からの、言葉だということだけれど。

そんな違いばかなこいついにはきっとわかりはしないだろう。

作りもしなくても、ひどく甘く切ない声が出た。
もし俺にも誰かを慈しむ事ができるのなら
きっとそんな音になるんじゃないかなんて、
自分の声に他人事みたいに考えながら、

もっと、と寄越せと蹂躙する心地で口付けを強請った。*]

[白けるような事を言った自覚があった。
だから慌てて誤魔化そうとしたのだけれど
返ってきたのは存外優しい声色で。
白けるどころか煽るみたいに背をなぞる指に顔を上げる。

…言ってほしい。
そう期待したから馬鹿みたいな想像も
心の中だけに留めないで声に出してしまった。
すぐに失敗したと後悔したけど、
願ってしまうのは今だって変わらない。

お預け食らったみたいな切ない顔で
彼の笑いが治まって言葉が続くのを待って、]

俺の妄想じゃなかった。

[希望通りに与えられた言葉に
心底嬉しそうに笑って促されるまま顔を近付けた。]

[リラックスさせるつもりの柔いキスで
自分の緊張の方が解れていくのを自覚する。
薄く開いた唇の隙間から突き出された舌が
探る動きから相手を求めて追うようになるまで
そんなに時間は掛からなかった。

徐々に戻ってくるセックスの感覚が
どっちが上だとか関係なく性感を求めていく。
耳から伝わる僅かな呼吸の違いを確かめながら
どこがいいのか探して指先が肌を這った。

裸なんて風呂上りに見慣れているはずなのに
急に特別なものみたいに思えてくるから不思議だ。
色気のない上衣に隠された場所が見たくて
腕を上げるように促してスウェットを引き抜いて
視界に映る景色を現実だって確かめるように
指でなぞって少しだけ膨らんだ粒を舐め上げた。]

[男女のあれそれは全く分からないが
男同士だと性器じゃない場所で感じるってのに
興奮を感じる人が割と多いような気がする。
だから行為中は言葉攻めというか、
受けがどんな風に感じてるか実況する人が多かったけど
この人はそういうのどうなんだろう。

少しだけ想像して、
あ、ないなってすぐに却下した。
なんか殴られそうな気がする。
お尻で感じるなんてーとか言った日には
本気で怒られる気しかしない。
そもそも感じられるのかどうかは置いておいて。

かと言って、沈黙の中っていうのも
なんかちょっと微妙な気がした。
道具でオナニーしてるんじゃあるまいし。]

…心配しなくても大丈夫みたいですよ。
ほら、ちゃんと固くなってきた。

[結果、馬鹿な頭で導き出したのは
俺の方の実況で沈黙を打破するって方法。

言葉の通り血が集まって質量が増した股間を
ぐいと彼の同じ場所に押し当てた。]*

── 修道院 ──

  私が、丁度良い……?


[都合の良い言葉だと思う。
 選ばれたと勘違いしてしまう言葉。
 期待を──希望を抱いてしまうだ、と。

 向けられる言葉も熱も、退屈を埋めるためのもの。
 決して選ばれたわけではないのだ、と自分に言い聞かせようとしたけれど]


  私が、私だから……


[有るか無しかの虚勢はあっさりと破れた
 自分だから良い、そう言われてしまえばそれ以上逆らうことはできない。
 逆らえば、なによりも自分が自分を蔑ろにすることになる。

 先端をつままれ捏ねられる度、短い悲鳴のような声が自然と上がる。
 視線を動かせばシャツを押し上げる小さな突起が二つ、自分の目からも明らかで]
  

[彼女の指が腹部をなぞり、布地をめくり上げていく。
 布越しの感触なのに、指が通ったところがぽおっと熱い。

 快と楽、その先にあるのはきっと欲。
 愛されてもえられるのは愛ではないはず、と
 自分自身へ言い聞かせようとしても、鼓動は言うことを聞いてはくれず]


  ────ぁ、 


[捲られる瞬間、布地が胸の先を擦った。
 それだけでびくんと体が跳ねる。
 ごくりと唾を飲み込み、何もなかったように取り繕い]


  猫が出る夢、では……
  正確には、夢の中で私が猫でした

  洗われて、顔を埋められて 
  木の実──マタタビに酔いました
  お風呂は自分の匂いが消えてしまう
  だから嫌だと暴れましたが……


[夢の内容を伝えるうち、近づいてくる唇
 その位置も、仕草もまるで夢の再現のようなのに]

[ただ、与えられるものだけが違う。

 ちゅっと響く音を耳に聞きながら
 波が過ぎるまで手でシーツに皺を作り]


  ────んぅ、あっ
  
  ……同じ、夢……を?
  あぁ、でも……きっと、一緒ではないかと
  私は、満月の晩だけは違いました……から
  

[吸われた方とは反対側の蕾が、吸って欲しいと尖って主張する。
 とくりとくりと早まる鼓動は夢の中とは違う、と朧げに思いながら、彼女の頭を胸の方へと引き寄せて*]
  

―― 修道院 ――

[...は唇で主張を食みながら舌先で其れを擽っていた。
 音を立てて吸うは耳に覚えさせるため。
 堪えている波はどうやって起こされているのかを教え、
 覚えてしまえば――]


  こちらも、ね?


[...は誘われるままに反対側の蕾へも唇で吸い付いた。
 音の立て方も先と同じもの。
 けれど先よりも少し強めに吸っては歯で軽く食んでしまう。
 そちらの色づきがすっかりと唾液に濡れた頃に顔をあげて、
 舌なめずりをして見せた。

 カザリは借りてきた猫の様に大人しい。
 大人しいのに求めてくる]


  私がカザリを愛してあげるわ。
  それが貴女が私の嫁になる代わり。
  同時に貴女には権利もあげる。


[...は唇で微笑の弧を描く。
 足りなかろう。不足すれば疑いを持つだろう]

  愛とは想い、貴女には私を想い愛する権利をあげるわ。
  そうするかはカザリ次第だけれど――。


[...は自身の頬に手を触れ、小指を唇で食んだ]


  でもね、相思相愛は良いものよ。
  少なくとも一日の66%は私を想ってくれていいわ。


[人間の睡眠時間を8時間としよう。
 残りは16時間である、つまり全部だ。

 ...は濡れた尖りを指で摘まむ。
 質問が返らぬように頷いてくれるだろうと謎の自信を持っていた]


  それにしても不思議なものね。
  私は夢では猫の飼い主なの。
  強情な子だけれど食べ物でつったら浴室まで来るのよ?


[...はにんまり笑みを浮かべて尖りを扱くように摘まむ]

  ――それも同じ。
  満月の夜にだけ、私は魔砲を使えるの。
  その魔砲でね、大きな猫と戦うのよ。
  本当は猫娘なんだけれどね?

  彩りどりの光が煌く世界。
  あの世界はとても明るくて、眩くて、素敵だわ。
  ねぇ――その猫は飼い主のこと、愛しているのかしら?


[...は小首を傾げ問いかける。
 別段愛してなくとも構わないけれど、
 その時は私が一方的に愛しているだけというお話**]



 …───やれやれ。

   これはちと……、焦らし過ぎたか?


[そう、笑みを噛み殺す俺の顔も
今や欲の色に染め抜かれて。

夕餉の間中後孔を貫き
裏側から散々突き上げ済みの膣壁は
どうやら十全に準備万端だったらしく。

包み込む様にとろとろと潤い、
それでいて切なく締め付けてくる。


 ……そして、それ以上に]

[耳を融かす琴羽の喘ぎ声が、
何時になく乱れたその表情が、
熱い程に感じる彼女の全身の体温が。

愛おしさを、いや増していく。


そう。
普段の琴羽がどれだけ真面目で貞淑で、
古式ゆかし過ぎる程に清廉潔白で、
極度の恥ずかしがり屋であるかを知っているからこそ、
今のこの、熱に浮かされた彼女が
より一層愛らしいのだ。


 あんなにも色事を忌避する巫女であったのに。
 はじめての時は、あれ程までに嫌がっていたのに。



俺という異形を受け入れ、
男女の交わりを重ねた結果の
この────…、
感じやすく淫らな琴羽なればこそ。


俺は、愛おしくて堪らぬのだ]

[そんな訳で、俺もつい、
そのまま理性を手放しかけたのだが……


再び聞こえた入口からのノックの音に
なんとかギリギリ我に返り]


 …────ン、っ…


  あ、あぁ、良いぞ。 頼む……


[と、僅かに掠れた声で
外で待つ仲居を呼びやったのだった。

そのまま返しても良かったが、
ほら、なんだ……
布団は敷いてもらっておいた方が良かろうと思ってな?]

[息を呑む気配に軽く振り返る。

真っ最中であると察したのか、
躊躇い勝ちに部屋へと入って来たのは
先程の年重の仲居と
見習いらしいもうひとりだった。
年の頃は、丁度琴羽と同じくらいだろうか]


 ちと取り込み中で悪いが、

 ッ、は……、寝床の用意をしてもらいたくてな。


  此方の事は気にせずに、片付けて行ってくれ。


[半開きの扉からは、
露天風呂の縁に腰を下ろす俺の背と
しがみつく琴羽の両腕両脚、
そして肩から覗く目元が見えた事だろうか]

[男に琴羽の痴態を見せる趣味は無いが、
女ならば話は別だ。

琴羽が顔を隠そうとすれば、
くん、と真上に突き上げるが如きに腰を打ち付け]


 見られてしまっているなぁ、琴羽。

 そなたの恥ずかしい所が。


  …───この距離なら、
  声も聞かれてしまっているかも知れんな?


[そう、笑いながら何度も上下に揺さぶるのだった。

年重の仲居は場慣れているのか、
"あらあら"等と遠慮無しに。
若い仲居はちらちらと、けれども興味深そうに。

琴羽が制止するまでは、
四つの眼差しが注がれ続けた事だろうか]

[「心配しなくても」?「固くなってきた」?
漸く手探りで探し出した言葉は
何となく癪に障った。

なに、え?そんなに微妙な感じなの?
というかお前がしたがったのに?
それを俺が心配するのか?は?

確かに緊張で使い物にならなけりゃあ
笑って変わってやろうとは思っていたが
そうじゃねぇだろと反射的ににくだを巻きそうになって
けれど普段の短気をいまは飲み込む。

そんな些細な言い回しでもめたい訳ではない、今は特に。

こいつが、心配してたんだろうなぁと
溜息一つで気を落ち着かせて切り替えて
身体と体の間に手を滑り込ませる。

邪魔な下着を情緒もへったくれもなく雑に脱ぎ捨てれば
まだ半端な硬さのふたつを纏めて掴んで互いを擦り合わせてみる。
少しだけ懸念していた嫌悪感もなければ不思議と違和感もない。

純粋に、刺激に反応して重たい熱と質量を自覚し始める。
そうとも、こっちだって勃たない事はないんだ。
中折れしない自信はあまりないが
その辺はまぁ休み休み騙し騙し行けば
今交代するのもたいした問題でもないように思えた。]

[そこまで自己分析してから改めて
男、抱けるんだなぁって
感慨深く思ってから
それ以前に男に抱かれようとしているんだったと
漸く事実としてだけでなく、心が伴って理解した気がした。]


 なぁ、コレ、…くちでしてみてもいいか?


[肩を押して体の隙間を見下ろしながら
口付けで軽く乱れた吐息に湿った吐息を乗せて
わざとらしくいやらしい声で挑発するように問う。

例によって返事なんて求めていないので
待たずにそのまま体勢の上下を入れ替えた。
体積が多い分重くは在れど相手が本気で拒まないならば
乱暴にならぬよう入れ替わるのは女の扱いで慣れている。

良い子にしていろと言葉にする代わりに
唇をひとつ啄んで
勿体ぶる様に擽る口付けを幾つも体に降らせて下に降りて行く。
途中通り過ぎた乳頭の一方に
ねとりと舌を絡めてしゃぶって濡らして指でやんわりと摘まむ。

そこが気持ちいいかと言葉野代わりに視線で尋ね乍ら
臍の窪みを擽って、下生えの生え際に
微かな鬱血を残すやり方で吸い付いた。]

[まだ柔らかな肉に鼻筋を摺り寄せて、すぅ、と匂いを嗅ぐ。
自分と同じボディーソープの匂いと肌のにおいが混じって
自分とは違う匂いだと思う程度で然したる抵抗もない事を
再確認してから、その先は迷うことも無く
魅せ付けるよう大きく開いた口の中に丸い切っ先を迎え入れた。

滑る舌を擦り付けながらゆっくりと喉へ
吸い上げるように誘い込む。
えずきそうになるまえに無理せずに引き抜いて、もう一度、
試す様に繰り返す。
口に入れられない根元には、指を絡めて扱いてやった。

なんだ?なんか、既視感が……?
嫌そんな筈はないよなぁって
させた時の光景でも過ったんだろうと
微かな違和感に蓋をする]

[嫌がる気配がなければ乳首の周りを撫でまわしたまま
乳輪を擽って、慣れた手触りには肉が足りない胸を
まぁ扱いは同じだろうと小さな肉を挟み込んで
殆ど手癖で柔く捏ねまわしたまま
慣れない肉にしゃぶりつく。

大きな飴玉を転がす様に舌を泳がせてはみるも
息を継ぐタイミングがよくわからなくなって
否応なしに息が上がって行って
それらしい乱れた呼吸の音が静かに響く。

頬を内側からいびつな形に膨らませ、
下品な音を立てて吸い上げて窄めて
意図して何度も鈴口を抉って、吸い上げては
ねとりと滴る唾液を扱く指で刷り込んで
睾丸との境目を親指でぐりぐり擦った。]


 ン。……なかなか、むずかしいな、これ。


[包皮の名残を引っ張り下ろして
ピンと上向かせればそれなりの形にはみえる。
ゆっくりと一度確かめるように唾液でべたべたの手で扱けば
もうすこしかな、ともう一度先端に唇を寄せた。

真っ直ぐ上から咥え込めばさっきより奥まで行ける気がして
ゆっくり慎重に喉奥へと押し込んでみる。
咽喉の開き方も分からないまま狭い粘膜に押し込んでいくのは
まるでこの先の行為の予行練習みたいで変に興奮する。]

[反射的に吐き出そうとする動きに伴って
嚥下する動きが押し込んだ先端をぎゅうとしめつけるのを
構わず捻じ込もうとしてみるも
息苦しさに負けて、無意識に歯を立ててしまう前に
ずるりと一気に引き抜いた。]


  ……くっそ、後もうちょいがはいらねぇ。


[軽く噎せながらべたべたな唇を手の甲で雑に拭って
拗ねた子供みたいな声色でぼやく。
体を起こして甘えるみたいに口付けを強請って
どうせ気にしねぇだろうと今しがたまで咥えてた唇で唇を吸う]


 ある程度、いけそーな硬さだと思うんだが。
 俺の方は、準備してあるし。
 一旦試してみるか?はいるか、どうか。


[二度三度繰り返せばあっさり機嫌をよくして
すっかりふやけた唇の粘膜でじゃれつきながら問う。

このままこの体位で事に及ぶ気はないが
なにを、試すか。
言葉にする代わりに跨いだ腰の上にゆっくり腰を落とし
迎える割れ目もない下肢の下に
やんわり圧し潰した彼のものを腰をくねらせて擦った*]

[────そうして、仲居達がいなくなり、
色々な意味で落ち着いた頃合いに]


 よしよし。
 少しばかり戯れが過ぎたな。

 可愛い琴羽を、つい自慢したくなってしまってな? 


[言いながら、琴羽の身体に僅かに引っかかっていた
浴衣と帯を完全に脱がせていく。

続いて俺もまた浴衣を脱ぎ落とし、
共にとぷりと温泉に浸かる事にしたのだった。

(なお当然繋がったままである)]

[すでに身体は十分過ぎる程に暖まっていたけれど
やはり、湯の熱さは格別で]


 ……心地良いなぁ、琴羽。


[瞳を見合わせ、表情を崩すと。

その背をぎゅっと掻き抱き]


 ────なぁ、琴羽。


  俺の異形退治、手伝ってはくれないか?


[不意に、そんな頼みを口にするのだった*]



[硝子の内側から、いつも大きな姿を見つめていた。]



[いつからそうしていたのかは分からない。
何しろそれは、空気に触れることも出来ないような幼い頃の記憶だ。

沢山の大きい姿が周りを行き交って、覗き込んできていたと思う。
その中で何故か濃桃の瞳の持ち主の姿が一番印象に残っているのは、
彼が色々とその頃の自分に語り掛けていたらしいからなのだろうか。

内容を覚えてはいない、言葉も理解出来なかったのだから当然だろう。
ただただ、あの色が心に残った。

それが自分達の生きる大地には咲かない花の色なのも、
酷い経験から変色してしまったものという事実も、未だ知らなかった。]



[何も知らない子供は外に出されて成長し、色んな知識を得た。

果てしない戦争、嘘で隠された歴史。人類と魔族の成り立ち
世界を変える為に動いた者達、今この時代で望むべき未来
その為王になり民を導かねばならないこと。

それから、自分がどのようにして産まれたのかも。
種族の違いよりも大きな差が、そこにはあるらしい。
いまいち実感は出来なかった、あの日までは。

祝われる筈の日に、命を狙われた。存在を否定された。
辛くなかったわけではない。これからの日々への不安も生まれた。
何より何処か以前も向けられた気がする鋭い視線が、恐ろしかった。
だが数十年間愛されて育った記憶があった。
これからも守ってくれる、そう信頼出来る皆が側にいた。
恐ろしい勇者は殺しにやって来ない、それだけで恵まれていた。]



[それよりも、痛い程に抱き締める腕の主のほうが気になった。
主を守り傷一つ付けなかったのに、謝罪を繰り返し誇ることも無い。
その心には守ってくれる誰かがいないように感じたから
────当人すらも出来ていないように思えたから。

だからただ事実を指摘しただけで、あんな風に君は泣いたのだろう?
苦しみを理解されるだけで、赦されたように思えたのだろう?

父たる先代の死後に産まれた僕の存在が赦されるのならば、
造り上げた者も等しくそうあるべきではないか。
しかし彼は二つの繋がりを断ち切ってしまう。

それどころかきっと、自分自身のみに罪を見出している。
限られた広さの両手で救える限りを救おうとしながら、
絶対にその対象にならない者が一人だけいる。]




 ねえ、フォルクス
 君は世界が平和になったら何がしたいのかな?

     
俺……ですか?


 そう、君だよ。やりたいことくらいあるだろう?
 その時はなんだって叶えてあげよう。言ってご覧

     
なら、陛下にゆっくり休んでほしいです。


 それは質問の答えになってないな
 君自身が何をしたいのか、僕はそう聞いたんだよ?





     
……申し訳ございません、分からないです



[真に時代に置いて行かれたのは、君の心だったのではないか。]



[目的を掲げ歩むべき道を定める、そうしなければ生きられない。
意義で自己を保つ、力強く儚い生き物。
まるで人類が創り上げ思い描いた勇者そのものではないか。

フォルクスはいつから己の心に無頓着だったのだろう。
その濁流に呑まれた人生に、自分自身を想う時間はきっと無かった。
人の寿命を遥かに超えた年月の中にも、同じように。

背が伸びてゆく程、並び立てる男になる程
気づかれないままに横顔を眺める時間が増えた。
あの目には当人も知らない暗がりが潜んでいる。
ふと遠くなり過去を眺める時にだけ、それは表層に滲み出る。
きっと幼い竜は、硝子越しの瞳に何かを見つけていたのだろう。

今更人類の元へと返しても、彼に安らぎは戻らない。
出来るのは、望むように傍に置くことだけ。
目指すべき未来の為に、その命をすり減らしていくことだけ。]




貴方が許すことが出来る存在なら誰でもいい。
支えてくれる者を、妃を迎えてくれたらと。



[フォルクスは父ではなく、兄でもない。親友と呼ぶのもまた違う。
────ならば、何だというのか?

お互いよく理解した立場の差が、
選択肢を潰しながらも答えを与えてくれない。

何も要らないのかもしれない、名前が付くものでも無いのかもしれない。
結ばれたいと思っているわけでもなかったから。

ただ、彼以上に大切な存在を作り隣に立たせる自分が、
どうしても想像出来なかった。
支えが必要なのは此方ではないとしか思えなかった。]



[合わない視線の理由は分かっている。
君は終わりを見つめ、僕はその腕を離したくはなかったから。

それでも、触れた指は冷たく硬質に留まる。
積み重なった思い出の温度は、これからも蝕まれ消えてゆく。

だから僕は、君がそうしていたように自分自身を握り潰して
最期の願いすらも受け入れ叶えるのだろう。 ]

 
[ 気付けば部屋の中には仲居たちの姿。

  ぼーっと熱に浮かされる意識の中
  遅れて浮かんできたのは見られているという事実。]


   あ……やんっ…!


[ ふと、意識が一瞬冷静になる。

  次いで、急いで顔を隠そうとしたものの。
  それよりも早く、彼の腰が動いて。]
 

 

   やっ…だ、めぇ…ぁ、あぁん、…あんっ……


[ 上下に揺さぶられる度に、
  堪えきれずに嬌声が零れ落ちる。

  一度は冷静になった意識もすぐに熱に浮かされ。
  頭が真っ白になっていき。

  仲居達に見られている中、
  ただひたすら快楽に溺れる姿を晒すのであった。]
 

 

   
時見様の、ばか……。



[ 仲居達がいなくなり
  落ち着いた頃合いの事。

  目尻に涙を浮かべては
  唇を尖らせ俯いていた。

  結局、仲居達の目と耳がある中だったというのに
  熱に浮かされ、自ら腰を振っては口付けを重ねて。
  何度となくこの身に
  彼の欲を受け入れたのであった。

  思い出すだけでも恥ずかしくて堪らず。
  穴があったら入りたいとはこの事である。]
 

[想定外の手の動きに情けない声が出た。
腰が引けたのを誤魔化そうとして
ゆるりと互いのを擦りつけるみたいに腰を揺する。

少しずつ固さを帯びていく相手に
拒否反応はないって少しほっとする反面、
視線が外せなくなって無意識に唇を舐めた。
こればっかりは仕方ない。
今まで男を好きに食ってきた名残だ。]

え?!

あ、…無理じゃなかったら、はい。

[一瞬何を言っているのか分からなくて
頭の中で咀嚼した徐々に言葉が馴染んでくると
ぞわぞわと湧き上がる期待で息が詰まった。
けどわりとハードルの高い行為なのは理解していて
返したのは弱々しい消極的な言葉だった。

返事を返す前に彼が動き出したので
余計に応の言葉は及び腰みたいになってしまったが。]

[キスの雨を浴びていくうち、
久しく他人に触れられていなかった体が
理性の制御から徐々に逸脱していく。]

…っ、んん…

ふ ぅ、 あ…っ

[呼気に高く抜けるような音が混じり始めて
相手の後頭部の先から見え隠れする
自分自身から目が離せなくなってしまう。

わざとらしく飲み込まれて
吸い上げられた瞬間に男じゃないみたいな声が漏れて
思わず自分の口を両手で塞いだ。

男の象徴を口に含んでるんだから
本当に今さらなのだけど
男の喘ぎ声なんて聞いたら醒められるような気がして。
でも伺うように視線を向けても
彼は気付いていないのか気にもせずに
目の前の物を弄るのに集中してるみたいだった。]

そんなに、いい、っですから…!

[初めてらしい容赦のなさで責められて
予測も出来ない動きで見事に翻弄されてしまう。
泣き言みたいに言って彼の髪に手を伸ばすけど
強引に引き剥がすほどの気概もなくて
結局やりたいようにさせたまま
褒めるみたいに頭を撫でただけで終わっただろう。

そのうち、下を弄られるだけじゃなくなって
胸を撫で回されるようになって違和感に気付く。

これ、俺がやりたかったやつ…!


彼を優しく愛撫して、気持ち良くさせて
宝物を扱うみたいに大切に抱くつもりだったのに
これじゃどっちが抱かれるのか分からない。

けど好きな人に触れられてるって状況が
今までよりずっと感覚を刺激して
我慢も出来なくなった声が情けなく漏れるだけだ。]

だめ、です…!

俺が聡さんを抱きたいので!
これじゃ、俺が襲われてるみたいじゃないですか。

[唾液でどろどろに濡れて先走りを零す雄が
ようやく解放されたタイミングで
なけなしの矜持を振り絞って身体を起こす。

キスなんかでは誤魔化されないぞ。
またふやかされそうな頭を叩き起こして
俺に跨っている相手の肩を掴んでシーツに沈めた。

ベッド下に転がっている鞄から
律儀にコンドームを取り出して装着し
ベッドに転がっていた程よい温度になったローションを垂らす。]

[想像と全然違う。


予定じゃ彼が声を上げてるはずだったのに。
俺の下で恥ずかしそうにしてるはずだったのに。
お尻だってゆっくりほぐして、
指で色々弄り倒して可愛がるつもりだったのに。

情けなくて泣きたくなってくる。
あー…でもこれが現実だ。
割とこの可能性も想像出来た筈だ。

あの彼がしおらしく抱かれるなんて、まあ、
ひどい幻想だってちょっと考えたら分かったのに。
俺が浮かれ過ぎた。]

今日は、俺が、抱きます。
これは譲れません。

[気を取り直して相手に向き直る。
相手がベッドに転がったままだったら
両足の間を割り拓いて指先を後孔に押し当ててみて。

思っていたよりずっと柔らかいそこに
ちょっとムッとしつつ指先を押し込んで
中から漏れ出るジェルを縁に塗りこんでみる。]

あー、どうでしょうね。
ほぐれてはいますけど…

痛かったら言って下さい?

[相手の覚悟はとっくに出来ているだろうと
経験則上少しきつそうな後孔へ自身を押し当てて
ぐっと割り拓くように腰を進めた。]*

 
[ しかしながら、悪態を吐きつつも
  彼の身体に抱きついたまま離れられず。]


   ……今度したら、許しませんからね?


[ むすっとしつつも
  頭を彼の首元にぐりぐり押し付けては
  不満を解消させるのであった。


  そうして、
  彼の手によって浴衣を全て取り払われば
  互いに一糸纏わぬ状態。

  温泉へと身体を浸からせれば
  じんわりと熱い湯の感触。
  これまでの疲れが癒されていく気がした。]
 

 

   えぇ……温かくて、気持ちいいです……。


[ 思わず目を閉じてはふにゃーと。
  湯の熱さを、心地よさを堪能する。

  家のお風呂も悪くはないけれど
  それをさらに上回る快適さ。

  また来れるなら、
  何度も来たいなーなんて思ってしまう。


  ふと、彼の方へと目を向ければ視線があった。

  その顔に浮かんだ表情に、
  思わず此方も表情が和らいでしまう。]
 

── 修道院 ──

[愛してあげるその言葉に操られるように頷く。

 左を吸われれば、右が欲しい。
 右を吸われれば、左が欲しい。

 どれだけ与えられても物足りない。
 一つ満たされれば次は二つ、三つ、温もりを貪っていき]


  ……想い、愛するけん……り


[滔々と語る唇に瞳が吸い寄せられる。
 道理の通らない言葉、けれどそれで良いとさえ思えるから]


  愛するのに権利がいるならば
  貴女を愛せるのは私だけ……?
  それならば────


[それが良い、とこくりと頷く。
 愛するのも愛されるのも互いだけ、自分だけのものが手に入るのなら。
 だれにも縛られない自由を手放しても構わない、と]

[恐る恐る、伸ばした指先で彼女の唇に触れる。
 夢の世界を引き継いだような鮮やかな赤を見つめ]


  ……夢の世界がつながっていた
  そういうことでしょうか

  私は、満月の夜は人の姿に……
  鮮やかな色彩の服を着て
  ヒトと戦って……というか、
  あれは戦い?だったのでしょうか
  遊んでもらっている感覚でしたが


[今思えば戦いなのだろうけど、あの時の自分からすればあれは遊びの一環だった。
 どうなのだろうかとうーんと小さく唸り]


  飼い主──とは思っていませんが
  嫌いではない。そう思っていましたよ

  信頼できる、居心地が良い相手
  それを愛と呼ぶならば


[愛していたのかもしれない。
 夢の中の自分のことはわからない、と苦笑い。
 伸ばした指先で彼女の唇をなぞっていく**]

 
[ 暫しその顔に見惚れていれば
  不意に彼からの頼み事。

  異形退治。

  確か、彼が普段仕事としている事だったか。

  ぱちぱち瞬き、首をゆるりと傾げては]


   私に、手伝える事なのでしょうか…。


[ そう疑問を投げ掛けて。]


   正直自信ないです……。

   もしあなたの足を引っ張って
   危険にさらす事になったらと思うと……。


[ 下を向いては自信無さそうに呟く。]
 


[ けれども。]


   でも……もし、本当に
   私の力があなたの役に立つのであれば。


[ 一呼吸。それから面を上げて。]


   喜んでお手伝いします…!


[ 真っ直ぐな視線を彼に向けながら
  はっきりとした声音で言葉を紡いだ。]*
 



「本当に魔族なんていたのかな?」



「いたと思う。だって、色んな本に書いてあった。」



「うーん、でも。本が嘘かもしれないよ?」



「そんな風に考えたら、何も信じられないだろう?」



「だから昔の人達は、本当のことを語り継ぐ為に頑張ったんだぞ。」

[甘えて媚びる女みたいな音色が知った声で響く。
鼓膜を揺らすその声色に、ぞくりと背筋が震えた。
盛り上がるかはさておき、悪い気は、しない。
必死で堪えてるのがいじらしくて、可愛く見えてくる。

なんだ割とへいきなもんだなぁって
既に何度目かの感想を抱きながら
堪えようと口を塞いでも零れる呼吸の音の生々しさと
口の中でひくついては張り詰めて行く肉に
粘膜を擦られる心地よさに誘われ興奮していく自分の
身体と、感覚の反応に少しだけ、安心した。

機械的に手順を追って済ませることになっても
それはそれで仕方がないと思っていたが
今、それなりに、わりと、ちゃんと、
セックスしている感じになっているのではなかろうか。

同じ受け止め方をこいつがしているかはわからないけれど
少なくとも俺はこれをトレーニングでも組体操でもなく
セックスと認識できていることに安堵した。

男同士でも物理的にできることは理解していたけれど
精神的な意味合いで繋がれるか、の不安は
すこしだけ、なくはなかったから。

直腸に性器が入るかどうかはどうにかできても
感性的な部分は慣れでどうにかできるものでもないだろう。

けど、感じさせて、感じてる相手に興奮して。
よかった。男同士でもふつうにできている。]

[人が折角ほっと一息ついてるってのに
「だめ」とか抜かすので、はぁ?と反射的に凄みそうになる。

あ、そういうだめね、はいはい。
いや、抱くかどうかは入れるか入れられるかで
主導権をどっちが持つかはまた別な話ではなかろうか?
こいつセックス自体は初めてじゃないんだよなぁ?って
純粋な疑問が過ったけれど
こいつにとってはそういうセックスが当たり前だったんだなと
なんとなく理解を示した形で勝手に納得しておいた。

あれだな、マグロタイプ。
大袈裟に喘いで寝転んでるだけでいい
若くて顔が良い女にだけ許されるあれ。
顔いいもんな、わかる。

転がされながら納得して。
ふと、如何でもいいことに気付く。
「顔が良い」なんて何度も繰り返し
当たり前に思ってたけど。

そうかこいつ顔が良いのか。
「顔が良い」なんて主観だろうに
そうかおれはこいつの顔が良いと思っているのか。]


 なぁ、すげぇどうでもいい発見なんだけど。
 俺お前の顔がわりと好きらしい。今気付いた。


[新たな気付きに感動して取り合えず馬鹿正直に報告してから
いやこれ今じゃねぇなと気付いたけどもう言ったし手遅れだ。

せっせと支度してんのをマグロ女みたいに
ただ寝転がって待ちながら
急に何言ってんだと思うだろう。俺も思うよ。わかる。]



 そりゃあ……
 こっちだってそのつもりで尻穴洗って解してきてんだ。
 代われなんて言わねぇから安心しろよ。

 うっわ、すげぇシュールだなこの光景。


[M字に脚を開かれて、半端に勃ってるのがぶらぶら揺れてる。
介護でもされてる気分だ。おむつ交換的な。
あ、萎えそう。物理的にじゃなく心理的に。

自分の意思でない、異物が触れてる感触に
訳の分からない精神ダメージを受ける。
そんなとこ他人に触れられたことはない。
いや、あるか?幼少期の座薬とか。おぼえてない。

精神的肉体的に未知の感覚に処理落ちした頭がバグって
思い切り無になる。これだよ、恐れてたのは。

さっきまではちょっとセックスっぽかったのに
これだもん。いや、こうなるのはちょっとわかってた。

内側に入り込んでくる指を
自分の指同様単純な異物としか認識できない。
反射的にひくついてるのを理解したくなくてまた無になる。]

[たぶんあれだ。主導権握ってこそのセックスって固定概念が
この違和感の原因だろうなぁって自己分析してたら
触診してたそっちのプロからゴーサインが出た様だ]


 あ、はい。


[医者で処置されているような心地の侭
なんか馬鹿みたいな返事を返したことに
流石にちょっと羞恥を覚えて口を掌で塞いだ。
多分セックスに於いて恥じらうポイントはそこではない。
わかるけど。恥ずかしかったんだから仕方あるまい。

意識してそこを緩めようとしてみるけど
ギリギリ無茶な質量がぐっと押し入ってきて
咄嗟に縋るものを求めた手が俺のじゃない腕をきつくつかんだ。

まて、と、咄嗟に出そうになった制止の言葉は
噛み締めた唇の内に消える。

ぶちゅり、中に注ぎ込んで体温に温まったジェルが
押し出されて隙間から汚い水音を立てる。
けど、生憎それどころじゃなかった。

角度、ちがくねぇか、たぶん。
きっとあってても内側から内臓を押し広げられる事には
一切変わりはないなんて事実を理解する頭は死んでいたので
脚を腰に絡めて角度を変えようともがけば
まるで欲しがって誘ってるみたいな迎える体勢になった]



 ……──、…っ、…ん゛、う…ぅ


[喉の奥を引き絞って声を堪えることに慣れた
男臭い喘ぎ声が小さく零れる。
なんか。いわかんおぼえるとこ、あったな、いま。
痛いとは違う、苦しい程辛くもなく
キモチイイには程遠いけど、なんか、多分、
それにちかい、ような。

息苦しさからすこしでも逃れようとふーふー荒い息を吐きながら
向き合いきれる気がしない現実と目を合わせるか悩む。

なるほど、排泄ですっきりするのは排泄自体が快感なんじゃない。
この異物感が一気に引き抜かれたら
そりゃあきもちいいだろうと、おもう。わかる。
いやわかりたくない。]


 りょー、じ。……きす。


[よこせ、っていまいち音になってない声で強請って、
けれど与えられるまで待ちきれなくて乱暴に引き寄せる。

深く口付ければただでさえ足りない酸素が尽きて
酸欠で頭がぐらぐらゆれた。]

[正気で向き合うことを早めに投げ出そう。
多分それがいい。精神的に、一番。
肉体的にはあんまり正解でないなんて事実よりも
兎に角逃げ出したい気持ちが勝った。]


 わ、りと。おもってた、より、へいき、……
 だから……


[だから?自分でも続きの言葉が良く解らなくて
視線が泳ぐ、記憶からこういう場面の台詞を探して。

激しくして?そんなん速攻却下するだろう
きもちよくして?いや、きもちいいとかその発想から
今まさに逃げ出したい訳でそれはない、うそでもむり
おくまでほしい?このペースでじわじわ押し込まれるわ
間違いない。

働かせることを今にも放棄したい気持ちが強すぎて
上手く働かない頭で考える。だめだわからん。]



 なぁ、直腸検査してんじゃねぇんだから。
 もっとえろく腰振ってみろよ。

 せっくす、って……そういうもんだろ?


[内緒の話でもするみたいに耳元に囁いたのは
虚無になりそうな顔を隠すためだ。

殆どやけくそに思い浮かんだまま言葉にする。
うん、なんかちがう。そもそも正解なんてあるんだろうか。

実際は苦痛とも快感ともつかない息苦しさに
歪んだ顔はそれらしい表情をしていたが無自覚なので。
そのまま顔を見られないようそのままぎゅっと
縋りつくみたいにだきしめた。

何が正解か見当たらないのででもう諦めて
本音を、そのまま、声にする。]

 
[覆って閉じ込めたせいで
 くぐもった声が直に響くのが堪らなかった。

 あなたからも求めてくれているみたいに
 繋いだ手と手が深まって
 柔らかい唇が食み返してくれるのも
 どうにも気持ちがよくて‥‥

 離れてしまった後も
 狂おしい何かが体内を吹き荒れたまま。]
 

 
[息を乱し
 肩を喘がせているあなたは
 酷く艶めいていて、ぞくりとする。

 俺の…唾液のせい?で濡れ光る形の良い一対。

 指先で肌の表面を辿るより
 もっと深く触れ合えていた気がするのは
 内蔵につながる入り口だからなのだろうか…?


   (‥‥‥‥もう一度、)

 
 眼鏡の奥の瞳に
 欲を滲ませて見つめていると
 異国の言葉が流れるように吐き出された。
 

 


   ぐーてんま…… ???


[たしか挨拶だったような気がするけれど
 不思議なタイミングに、脳内にハテナが飛んだ。
 異国の習慣も
 キスの作法も知らないから
 恥を忍んで教えてもらっておいた方が
 良いだろうかと口を開きかけて、]


   っ、 !!


[押し付けられる体に息を飲む。]
 

 
[生殖の役目を果たさせるつもりの無い
 俺の無用の長物が
 あなたを思い出しながら致した時以上に
 熱り立ってしまっていることも、
 それを知られてしまうくらいに
 密着してしまっていることも衝撃だったが、

 それ以上に、
 擦れ合うもうひとつの昂りに
 後頭部をガツンと殴られたみたいに
 脳がくらくらした。


 と、同時に膨らむのは────
 逢えなかった間、ずっと
 我慢し続けていた触れたいという
。]
 

 
[今すぐにでも、手を差し入れて
 その温度と形を
 確かめたくて仕方なくなるけれど、

 あなたには最高の幸せを捧げたいと
 誓ったばかりだから
 無理強いになってはいけないと、ぐっと堪えて

 腕を腰に回して受け止めるに留めて
 欲に掠れた声だけを送り出す。]
 

 

   …あのさ、

   アクスルが好きすぎて、俺
   おかしくなってるのかもしれないけど

   どこもかしこも
   全部 見たくて
   全部 触れたくて堪らない…、

   この前の「全部、見せて」の続き
   今、此処で望んでも構わないだろうか?

 

 


   けど…、 あなたが理想とする”仕上げ”は
   出来ない男だから、もう嫌…かな?



[あの日とは条件が違ってしまっていることに
 言いながら思い至って、
 最後は少し揺らぐような音になった。

 嫌ならどうにかして抑え切るしかない…と
 あなたの幸せを優先させるのだ…と
 決意を新たにしつつ、
 意識して柔らかい表情を作り、青い瞳を覗き込む。

 どんな答えでも受け止めるよと伝えるように。]*
 

[この人は自分の気紛れな言動が
どれだけ俺の心を搔き乱すのか分かっていない。
顔がわりと好きだとか、普段の俺の方が落ち着くとか
褒め言葉でも何でもないただの感想が
俺をどれだけ浮かれさせるか全然分かってない。

もう一年も隣で同じ時間を過ごしているのに
俺の心は彼に慣れる事なんてなくて
ずっと変わらずにこの人に恋をし続けている。

飽きもせず、どきどきしっぱなしだ。]


色気のないこと、言わないで下さいよ。


[急に素の戻る彼に笑ってしまう。
けどこんな予定調和じゃないやりとりも
白けるどころか面白くなってしまうのだから
この人は本当に俺を誑かすのが上手い。]

[押し入った衝撃で絞り出される声に
心配と同時にぞわぞわと背筋を這うような
不思議な感覚が広がっていく。

明らかに気持ちいいのとは違うくぐもった音に
大丈夫かって気遣うのが正しいのに
俺を受け入れる事に必死になってるのが
愛おしくて可愛くて――

ああ、違うな。
今この時は俺だけのものなんだって
そう言う征服欲みたいな凶暴な感じのやつだ。

求められて応じるふりで顔を寄せて
でも口付ける時は噛みつくみたいに容赦なく
呼吸を忘れたみたいに唇を貪ってやった。
息苦しさでもがく唇の動きが
俺に縋って助けを乞うみたいで気分が良い。]

[でも童貞の俺が余裕でいられたのは
所詮そのあたりまでだった。

自分だって初めてのくせに、苦しそうなくせに
わざとなのか無意識なのか
煽るような物言いをする彼に少しむっとして
半分ほどしか入ってなかった楔を押し込んでいく。

指では届かない、ぴたりと閉じた奥を
割り拓いていく感覚に腰が抜けそうになった。
小さな入り口に先端を入れるよりずっときつい。

自慰で指を使って擦り上げるのとも
柔らかく包み込んで吸い上げる口淫とも
まるで違う絞り取られるような快感に腰が止まる。

えろく腰振る?無理じゃない?
これ、動いたらどうなんの。
情けないけどすぐイく気しかしない。]

…慌てないでください。
ちゃんと慣れさせないと終わった後が、ね?

[しがみついてやらしいお願いをする彼に
頭を撫でてよしよしとなだめてやる。

無茶したら大変な事になるのは本当だ。
嘘は吐いてない。
けどそれを隠れ蓑にしているのは否めない。

少ししたら締め付けられる狭さに慣れて
今度はゆっくりと腰を引いて擦れる粘膜を味わう。
彼の要望とは真逆の動きだったけど
童貞に最初から激しさを求めるのが間違いだと
自分を正当化して正気を保った。

自分と内壁の温度が溶け合った頃合いで
今度は少しずつ早く腰をピストンしていく。
リズムもめちゃくちゃな拙い腰使いで
前立腺を探す余裕もない
ただ擦りつけるだけの動きでも
こっちの快感は加速度的に増していった。]

[最初は息遣いを耳に受けながら
相手を気遣う気持ちだけはあったのに
徐々にそんな余裕もなくなっていってしまう。]

聡さん、すみませ…っ
優しくするの、無理――ッ

[ジェルが溢れる濡れた音だったものが
次第に渇いて肌同士がぶつかる音に変わる。

要領を得たんじゃなくてただがむしゃらに
貪るだけの突き上げに自分も翻弄されて
助けを求める心算で相手の手を掴んで指を絡めた。

自分が抱きたいって言ったくせに
制御出来なくなって縋るなんて笑える。

凡そ抱いてる側だとは思えない
蕩けた甘い声を吐き出しながら腰を揺すり
速く浅いストロークで体を彼に押し付ける。]

は、っ、は、…っ
あきらさ、おれ、も、だしたい…!

もう、むり、イきたいの、がまん、むりです…っ

[初めてのセックスなのに。
想像してたより全然余裕なくて
情けなくも泣きそうな声を上げて懇願する。

僅かばかり残ったプライドが何とか保っていたけど
せり上がってくる吐精感に
それもあんまり長くはもたなくなってくる。

体を起こして相手の腰を押さえ込むと
最期と分かりやすい勢いで容赦なく突き上げて
ん、と喉を鳴らして最奥へ捩じ込むように
薄いゴムの中へ滾る白濁を吐き出した。

胸を上下させて乱れる息を整えながら
賢者タイムと言うやつでぼーっと余韻を味わって。
意識がはっきりしてくるにつれて
寒気のような嫌な感覚が背中を這い上がってきた。]

えーと、その…すみません…

[一人で盛り上がって勝手にイってしまった。

消え入るような声でバツが悪そうに言って
すり寄るように鼻先を近付ける。

身体は未だ、繋がったまま。]*

[未だ身体の奥には熱が燻っていたけれど。

見上げれば、青き月にかかる紅葉の樹影が
揺らめく湯煙の中に烟り。


 あぁ、此処に。
 妻と来れて良かったと────…

 いや、彼女という存在と出逢えて良かったと
 俺は改めて思うのだった。


そんな、互いの鼓動を間近で感じながらも
穏やかな一時に。

請うた言葉に琴羽が応える]

[慎重な彼女なればこそ、
その返事は一つ一つ噛みしめる様で。

そしてこんな時でもまた、
自分ではなく俺の負担になるのでは無いかと
そう心配するのである。
まったく、琴羽という娘は……

あぁ、無理にとは言わないぞと
ゆっくりと考えてくれれば良いと言いかけて。


琴羽がきりりと面を上げる。

その面差しは実に頼もしく]



 有り難い。

 異形退治、先日の触……蛸の様な
 妖怪であれば俺の得意領域なのだがな。

 今日のような人の霊は、
 正直不得手なのだ。

 ただでさえ、異形が巣食う場所には
 迷える魂が溜まりやすい。

 反魂の巫女である琴羽が時に場を清め、
 時に今日の様に魂を還してくれれば、
 俺にとっても御霊にとっても大助かりだ。


[そう。
己の力を風に乗せてぶつけるという
ある意味で力任せの天狗にとって、
罪の無い魂というのはどうにもやりにくい相手だったのだ。

今日もまた、消耗戦を強いられたというワケであり]



 ────故に、副次的に。

 手伝ってくれれば消耗も抑えられる。
 琴羽を求め過ぎる事も恐らく……

 恐らく、だが。
 減るのでは無かろうかと、な……


[微妙に語尾が小さくなりつつ。

けれど、そっと琴羽の髪に手を添えて]


 まぁ、だが……
 少なくとも。

  そなたは、俺が護る。
   危険になど、晒すまいよ。


[その濡れた水蜜桃の如き唇に
甘く柔らかな口付けを落としたのだった*]

―― 修道院 ――

[一つ愛を与えよう。

 頷き受け入れた貴女は一つを二つにも三つにも求めてくる。
 未知は人の心を魅了し引き寄せる。
 愛を知らぬ者にとって、愛は猛毒となるのだ。

 頷くカザリ。
 ...は薄く笑みを浮かべる]


  愛させてくれてありがとう。


[...は唇に触れる感触に目を瞑る]


  貴女は私だけの特別で、
  私は貴女だけの特別よ。


[色のない世界、つまらない世界。
 出られぬであろう人生の監獄に於いて未だに夢を抱いている]

  同じ夢を見ていたのかもね。
  もしそうだとしたらそれは素敵なことね。


[...は唇をなぞるカザリの指先を食んだ。
 柔らかな唇で味わい、舌先で舐めていく。
 唇を開き解放すると寂しそうにしていた尖りにまた吸い付いて、
 たっぷりと時間をかけて愛を植え付けていく]


  私は聞き分けの悪い猫に教えてあげていたのよ。
  遊んであげればあの子は他の人間にちょっかいをかけないもの。


[...は頭を擡げると今度はカザリの瞳を覗き込んだ]


  私たちの心はずっと求めていた。

  色のないこの世界に色を求め。
  信頼できる相手を求め。
  居心地が良い相手を求めていた。


[...は目元を細めて笑みを浮かべた]


  そうして見つけていたのよ。
  夢を見始めた頃からずっとね。

  だからね、此方でも私が貴女を愛してあげる。
  私たち二人だけが見える彩りある世界を魅せてあげる。


[...は微笑みを湛えたままに唇を重ね合わせた。
 其れは誓いの口づけだ。
 約束をたがえることがないように。
 
 此処に神に誓いましょう。
 その証を貴女に刻みましょう]


  
沢山愛してあげるね、カザリ――。



[その言葉は既に色づいたものであった*]

 
[貴方と触れ合う場所はどこも気持ちが良いし
 内側の変化に追い付くのに精一杯で
 熱を蓄える身体の一部に気づかない。

 腰を抱いて貰えたらそれも心地が良くて
 甘えるように身体を擦り付けた。
 一時的に増した快感に、はぁ……、と熱い息を吐く。

 貴方の身体を使ってした初めての自慰だ。]
 

 
[掠れた声に鼓膜を震わせられた。

 全部 見て欲しい
 全部 触れて欲しい

 僕も貴方と同じことを望んでいる。

 物言わぬ虫たちと同じ様に
 好きにしてくれて構わないのに
 確認してくれるなんて
 何と気遣わしいのだろう──…。

 と、その前、何と言っていたか。
 ────好きすぎる? 僕のことが?]
 

 
[覗き込んでくる彼に見せたのは
 ぽかんと呆気に取られた顔。
 それから点と点が繋がっていき
 燃える様に熱くなった頬だ。]


   ……っ


[貴方の眼鏡の奥の黒き瞳を片方ずつ確認するように
 青色を左右に揺らして、
 自分の方はどうかと考えてみれば
 答えは瞬きひとつの間に見つけられる。]
 

 
[貴方の撫でてくれる掌が。
 見つめてくれる瞳が。
 生涯をかけて愛おしんでくれる心が。

 ……そんな、貴方から切り取った
 一部の話だけではないって
 どうして今まで気づかなかったのだろう。]


   
治人のことが好きすぎるから……

   
したいように……、して、欲しいよ……



[うるさい心臓の音に負けないよう絞り出した声は
 それでも小さかったけれど
 この近さならきっと、届いたかな。]
 

 
[それから付け足す。
 受け身が過ぎた気がして。]


   僕も、して欲しくて堪らないんだ……


[自分自身の望みでも在ることを伝え。
 その後のことは、──僕と貴方だけの秘密。**]
 

 
[ 大助かりだと言われれば
  嬉しさが溢れんばかりの笑顔を零して。

  けれど、続いて話される内容に
  肩を落としては下を向いてしまった。]


   それは……。


[ 何かを言い掛けては口を閉じる。

  以前であれば、
  多少減るのは身体の負担を考えれば
  そんなに悪い事ではなかった筈である。

 
しかしながら、今は……。
]
 

 
[ 下を向いたまま黙っていれば、
  髪に触れる彼の手。

  そっと己の手を上から被せよう。
  愛おしげに、包み込むように。]


   時見様……。


[ 告げられる言葉に
  胸に温かなものが溢れて。
  嬉しさのあまり瞳が潤む。

   
( もう……この人は…… )


  触れる唇は甘く。
  言葉にしなくとも想いが伝わってくる。]
 

 
[ 口付けの後、
  彼の瞳を真っ直ぐに見つめながら。]


   私だって……
   護られてばかりではいませんからね?


[ なんて、と照れ隠しに
  くすりと微笑んでみせて。

  また、俯いてはちらちらと
  彼の顔に視線を向けては。]
 

 

   それと…その、
減った分、

   
……私からお誘い、
…しますね。


[ 何が、とは言わずに。


  それから彼の唇に
  自分のものを重ね合わせ、何度も何度も
  その甘い感触を確かめ合っただろう。

  繰り返し繰り返し、飽きるまでずっと。]
 

 
[ その後。

  湯に浸かったり、身体を洗ったり。
  存分に温泉を堪能した頃合い。

  湯の中に二人並んで
  浸かっていた時だったか。


  彼の顔を覗き込み、
  暫し視線を彷徨わせた後。

  熱く、物欲しげな眼差しを注ぎながら]
 

 

   部屋に戻ったら、その、
    
……続き、しましょう?



[ そう告げてから、口付けひとつ。

  それから首の後ろに腕を回し
  正面から柔らかな胸を、腰を触れ合わし。

  だめ? と首を傾げてみせた。]*
 

── 修道院 ──

[同じ夢を見ていたのかもしれない。
 どこか知らない世界で繋がっていたのかもしれない。

 色鮮やかな世界と、色のない世界。
 どちらが夢で、どちらが現か
 考える程にわからなくなっていく。

 あぁ、それでも
 どちらの世界でも彼女はここにいるから]


  ……私こそ
  愛してくれて、ありがとう


[瞳を瞑る彼女
 向こう側へ渡ってしまいそうで少し怖い。

 眠ってしまわないように
 向こう側へ行ってしまわないように
 赤く濡れた唇を指の腹で辿り]

  
  案外──

  あちらの私たちにとっては、こちらが夢
  そういうこともあるかもしれませんね……


[そうだったら良いのに、と瞳を細くする。
 くすり、悪戯を思いついたように指先で彼女の舌をくすぐり、あそび]


  ……まぁ、
  猫じゃらしもネズミのおもちゃも
  嫌いじゃありませんでしたけど

  遊んであげていたのは、私の方かと
  勧誘しようとすると、貴女が来る……ので
  遊んでって、言われているようで


[単純に遊びに来ていると思っていた、とぽつり。
 胸の先から彼女の唇が離れれば、次をねだるように視線を絡め]

 
  色にあふれた夢の中でも
  色のない現でも──

  貴女が愛してくれるなら
  私もまた、おなじだけ

  
[唇が重なり、互いの息が溶け合う。
 鼓動すらぴたりと重ね合わせ、同じ時を分け合いながら]


  叶うなら、これからは眠る時も共に
  あちら側の私に盗られてしまわないように

  ────ね


["シオン"と彼女の名を呼ぶ。

 猫の自分には呼べない名前。
 これだけは自分の特権だと得意気に笑い。
 口付けの続きをせがむのだった*]

[まるで誓いの儀式の様な
長く静かな口付けの後に。

心優しき妻は綻ぶが如き笑顔を見せる]


 ───あぁ、頼りにしている。


[湯気で額に張り付いた前髪を
指先で横へと掻き分けて。

こつり、互いの額を合わせよう。


今日からは、
初恋の君であり、妻であり、
唯一無二の主食であり、戦友、なのだから]

[その、己の口に、柔らかなものが押し当てられる]


 ……そなたは。


 まったく、そんな事を言われては。
 
 減らすどころかより一層、
 欲しくなって────…
 我慢ができなくなってしまうではないか。


[彼女もまた、自分を求めてくれている事が嬉しくて。

そして同時に、いつの間にか淫らに開花していた
琴羽のうちなる妖艶さに。

ゾクゾクと、抗いがたい欲が背筋を駆け巡る。

仔猫の様に口を食む琴羽を強く抱き締めて。
思う存分、互いの口の味を確かめあう]


 
 …────ちゅ、 ハ、ァ…

 先程も、こうやって口を塞げば良かったか。
 そなたの嬌声、たっぷりと聞かれてしまったからな。


[繰り返す口付けは、
舌と舌を絡め合う激しいものへと移り変わり。

堪らず二度、三度と。
琴羽の膣奥に精を放つ。

湯の中で筋肉質な腰を打ち付ければ、
みなもがさざめき、掛け流しの中に白が混じり。

付き挿れた隘路の中も、
引き出した先の外も熱いのは
ふむ、なかなか悪くないと。

はくはくと震える琴羽の口唇と
花弁の両方を掻き乱しながら思うのだった]

[やがて流石に、これ以上は辛かろうと。

熱に蕩けた琴羽の顔を見る度に
いきり立ちそうになる己を抑え]


 …───ふ、ぅ……、礼を言う。

  少なくとも、餓死しそうな空腹は収まった。


[彼女の中から肉茎を引き抜くと、
膝の上に姫抱きにし。

少しは休めと抱え上げる]


 俺が、三助をするのなど
 そなたくらいだからな?


[冗談めかして微笑んで。
そうして湯から上がると、ほっそりと白いその身を
抱き締めながら洗っていった。

髪を。顔を。胸元を。
琴羽のすべてを愛おしむ様に清めていく]

[大分疲れていると思ったのだが。

角灯を使い霊力の扱いにこなれたせいか、
はたまた霊場にも似たこの地のせいか。

やがて身を起こした琴羽に、
お返しに背中やら羽根やらを洗ってもらって]


 ほら。
 お陰で怪我はほとんど癒えてるだろう?


[ぺとぺと、と、琴羽の手を取り、
確かめる様に己の身体に触らせる。

きっとこんな戯れも、
旅の醍醐味というやつなのだろう。


最後にもう一度、共に風呂に浸かり



 …────ふぅ。


[湯加減の良さに大きく吐息をつくも、
隣に並ぶ琴羽の肩が触れれば
やはり色々意識してしまってだな……

もう少し離れた方が良いかなどと
逡巡していれば、大きな二つの眼差しが
こちらを覗き込んでいて]


 な、なんだ……?


[不埒な想いが見透かされたかと、
生真面目な表情を作りながら尋ねてみれば]



 …────ッ……

  ……悪い、が… …


[濡れた眼差しの琴羽の口が
蠱惑的に言葉を紡ぐ。

随分と、恐ろしい程に誘い上手になった彼女へと
返事代わりの口付けを返し]


 部屋まで、待てはできそうに無いな……?


[部屋に戻っても、どうせ汚れてしまうだろう、と。

のぼせてしまわぬよう、
岩風呂の岩に抱きつく様に琴羽を立たせ。

背後より、その身に覆い被さり囁やこう]

[果たして、俺の理性は何処まで持った事だろうか。
少なくとも布団にまで、たどり着けると良いのだが……


こうして破牢院とやらのせいだろうか。
小悪魔度を増した琴羽との秋の夜長は
むしろ短い程に、甘く淫らに更けていくのだった**]

[いやいやいや。
おっさんに色気を求めるなよ。

そんなツッコミを入れようか一瞬迷ったけれど
今長引かせる話題でもないので黙っておく。

うん、やっぱ顔が良いんだよなぁ、って
何やら機嫌よく笑いだしたおかげで
普段より少し幼く見える顔を堪能する。

誰にでも安売りしない方が良い顔してる。
なんて「誰にでも」に自分を含まないで考えて。
つまり、独り占めしたい、ってことだとは
理解するのを放棄する。
自覚が無い訳じゃない、けれど
まだそこまで、認めてしまうのは難しい。]

[うわ、可愛くねぇ顔してる。
さっきまで可愛かったのに。

欲にぎらついた男臭い顔を
目も閉じずに交わす口付けの合間に眺めてぼんやり考える。

そうかこいつも男だもんなぁって
今更な事を考える思考を早く手放してしまいたくて
そのまま溺れてしまえと唆したいのに上手くいかない。

後先考えずヤれるように
そのために連休にあわせたってのに]


 最中に、終わった後の事考えるなんて
 随分よよゆうだな?ん?


[痛い、わけではない。
内側の粘膜の痛覚は鈍く
目一杯広げられてる息苦しさがあるだけだ。
だから、まぁ、べつに耐えられない訳でもない。

なるほど、余裕を残しているのは俺も同じか。
理性を吹き飛ばしてくれないので
冷静に自己分析して納得する。

してくれねぇなら自分で頑張るしか在るまい、と。]

[じんわり額に滲む脂汗に近い体液に
落ちてきた前髪が張り付いて鬱陶しくて
後ろに流して撫でつければ
長く深く息を吐いて、落ち付かせてから…

………意を決するように下腹に力を入れて
ぎゅうと咥え込んだ肉を締め付けてみる]


 ……──っ、……ン、ん。はっ……っ

 ん?こう……か?
 自分じゃどーなってんのか、わっかんねぇなコレ。

 
[ただでさえぴったりと隙間なく包み込む
つるりとした肉壁が小刻みに締め付けては
その反動で少しだけ緩んで
押し込もうとする肉茎を食むように呑み込んでゆく。
引き抜くタイミングで絞ってやろうとするけれど
ぞわぞわして力が抜けてしまって上手くいかず
呼気を震わせて喘ぎに満たない甘い音を零した。]

[転がってるだけじゃなくて動いてみようと思ったが
何が正解かよくわからなくて首を傾げる。

気持ちいいかと問えばきっと悪いとは答えない。
これが正解でも不正解でも。

やってる方は気持ちいいんだか悪いんだか
解らない絶妙なラインでじつに都合がいい。
気持ちいいと断言出来てしまうと
精神衛生上よろしくないので。

気持ちよくなるのはちょっと無理だが
気持ちよくしてやりたい気持ちはあるので

今度、逆やるとき教わろうと決意して……
……終わる前から次にまた抱かれることを考えている
自分に気付いたが今は気付かないことにしておいた。]

[次第に互いに無言になって荒い呼吸の音だけが重なる。
なんかいえよって、言おうとしたら変な声がそうになって
無理矢理押し殺せば低い呻きに変わった。

あ、今のそのまま出せばよかったんだろうか。
声出した方が盛り上がるのは解るけれど
反射的に押し殺してしまうので声の出し方が分からない。
習い性なんだろうなぁと揺さぶられて
物理的にもぐらぐらしてる頭でぼんやり考えて

その思考を口癖みたいな何時もの言葉で打ち消す。
何事も、慣れだ、と。]


 ……あ。


[ふつうの、あいうえおの「あ」だ。
感じて零れた訳でもないが故意に、
押し込まれるタイミングにあわせて出してみたら
割とそれらしい音になったのが、なんだか可笑しくって
笑いだしながら、繰り返す]



 あっ、あ、あ…あー……ン、…ふ、ふふっ
 あー…なる、ほど…?
 おく、おされる、と。…っ、でるのか、こえ……ふ、ぁ 

 ……あ、あ…っん、ぁ


[急に喧しく喘ぎ始めたら流石に驚かせただろうか?
なえる?って半分笑いながら尋ねてみたりして。
苦しいとか気持ちいいとかそうでもよくなって
ちょっとたのしくなってくる。

セックスらしさ、はもうすっかり何処かへ行ってしまったけれど
なんか割と悪くない気がしてきて
これが最後でなくてもいいと、今度は上手く受け入れられた。]

[次第に息が上がって、笑い交じりの喘ぎも
次第にそれらしい艶を孕んで響き始める。
なんだか自分の声じゃないみたいで羞恥はとおい。

声を出してみたら今度は
閉じるタイミングが分からなくなった唇から
呑み込み切れなかった唾液を拭う余裕もなくて
だらだら零れてるのを他人事みたいに感知しながら
べたべたな唇で時折緩慢にキスを強請る。

いつも以上に変に敏感になった唇がきもちよくて
擦り上げられる腹の中が熱くて
疲労感に頭がぼんやりしだす。

漸く願っただけ朦朧とし出した意識に安堵して
眠りに落ちる手前みたいな生温い心地よさに
くたりと体の力を抜こうとしたのに、
泣き言じみた声音でたたき起こされる。]



 あ、ぶね。いま、いしき、とびかけた。

 んー?ふふっ、あ、っ…ぁ──…ばぁか。
 い んだよ、……、それで。


[誰も優しくしてくれなんて最初から頼んじゃいない。
めちゃくちゃにしてくれとしか頼んでいない。

漸く望んだとおりにこの身を貪ることを選んだ仔犬に
ぐっどぼーい、なんて舌足らずな声で耳元に囁いて
笑いながら頭を撫で廻してやった。

勢いに圧し上げられそうな気がしてそのまま縋る様に
裸の肩を掻き抱いて、汗で滑る手がしがみつこうと
肌の上に軽く爪を立てる。

それなりに興奮してすっかり固くなってるのが
入れる穴も見つけられずに揺さぶられるまま
ぶらぶらしてるのがなんだか可笑しくって
笑い出しそうになって開いた口からは
笑い声の代わりに耳を塞ぎたくなる生々しい喘ぎが零れた]



 いいよ、りょう…おいで。
 そのまま、なか に…、…


[泣き言じみた情けない声色で限界を訴える声が
何故だかやたら可愛らしく思えてしまって、
慣れない声を出し過ぎてかすれ始めた声で
甘やかすみたいな柔らかな声で応える。

までは、朦朧としていられたのに。

まて、まて、それ、こしがしぬ。
ちょっとやばい角度で叩きつけられて
声も出せずに悶絶すれば、
限界まで張り詰めた肉杭を、ぎゅうと搾り取る様に
きつく締め付けて絶頂へと誘う事になっただろう]

[落ち着いたらしい重たいのが退いて。
やばい角度に曲がってた腰が楽になる。
しぬかとおもった。

ちょっと涙目になりながらのろのろ上げた手で
べちべち叩いて離れろの合図。
上手く伝わらずに離れようとしないなら
今度は手でなく足で遠慮なしに蹴り飛ばして
強制的に離れて貰う事になるだろう。
上手く力が入らないので其処まで痛くはない筈だ。

ずるり、と塊が引き抜けてったはずなのに
まだなんか引っ掛かってる感じがして
違和感に手を伸ばせば
抜くときにも締め付けたらしく
取り残された使用済みのコンドームが引っ掛かってて
うわ、って顔をしてずるりと引き抜く。

緩んで内側の色を覗かせた穴から
白濁に膨らんだ薄膜を引きずり出して手癖で口を縛った]


 なんか、すこし、わかった。
 けど、なんか、よく、わからん。

[念入りに準備しただけあって
ひりついてはいるものの尻が切れた感じはしない。
その時点で既に及第点だろう。

多分柔軟が足りなかった。
後声の出し方はわかったし
愉しみも見いだせた、が。]


 ……どうやったらお前を気持ちよくさせてやれんのか
 よく、わからん。

 おしえろ。


[腰と背中の中間あたりを摩りつつもそも起き上がって
ぼさぼさの頭の侭くそ真面目な顔をして
殆ど脅しみたいに剣呑な目をして凄んで見せた。

言ってることはそこそこ健気なのに
態度が態度なのでただのカツアゲみたいだった。

ぴろーとーく?知らない子ですね。*]

あなたは共鳴者です。
あなたは自分以外で共有の力を持つ者が誰か知っています。ですが、あなたは黒鳴者や愚狼も共鳴者であると誤認してしまいます。
また、共鳴の力を持つ者同士にしか聞こえない会話が可能です。

天宮 琴羽から共鳴者の気配を感じた。

[途中、自分のじゃない淫靡な声が聞こえて
彼が感じているような、求められているような
そんな気がしたのは現実かいつもの妄想か
慣れない快感で馬鹿になった頭じゃ判断が出来なくて。

事後のどさくさで確かめようとしたけど
体を叩く手の真意に全く気付けなかった俺は
すぐに蹴り飛ばされる事になり。
彼の中から抜け出る刹那、また甘い声が漏れた。

相手を気遣う余裕なく無茶をした自覚はあって
力はなくとも伸びてきた足が答えだろうって
叱責を覚悟してしょんぼりと肩が落ちる。

せめて片付けだとか事後ケアくらい出来たらいいのに
それも相手任せになってしまった事に
さらに落ち込んで体が動かないままで。]

??

めちゃくちゃ、気持ち良かったですけど…?

[相手の凄む顔にもっと心が降下して
はい、すみませんと口にしそうになったけれど
降ってきたのはお怒りの言葉じゃなかったから
よく分からないと言った表情で答える。
真意を全く読み取れない返事は
今度こそ彼の怒りを買ってしまったかもしれない。]

[けど彼はいつだって俺の馬鹿を受け入れて
俺が答えを出せるように導いてくれたから、
例えすぐじゃなくても
俺はその言葉の意味を正しく理解する事が出来たろう。

教えろ、とか言われましても。
恥ずかしがって戸惑ってテンパって
まともに彼の顔すら見れなかった俺だけど、
経験がなかったのは入れる側だけの話で。

男にも、抱かれる事にも慣れた顔で
希望通りに俺の好きな場所ややり方を教えたら
彼は初めて見る俺の顔に驚いただろうか。

そうしろって言ったのは自分なんだから
引いたとしてもちゃんと責任は取って欲しい。
珍しく強気で迫ったけれど
結局いつもみたいに上手く転がされてしまったろう。]*

[新しい店を開拓しようと二人で出かけて
戻ったのはいつもの彼の家ではなく
一度も彼を上げた事のない自分の家だった。
特に理由があったわけじゃない。
単にこっちの方が近かっただけだ。]

適当に座っててください。

ああ、トイレは――

うわあああああ!!!

[トイレの場所を伝えて思い出す。
昨日使用した大人の玩具を洗面所で乾かしていた事を。
慌てて駆け込んだけど既に見つかった後で
彼はにやにやと悪い大人の顔をしている。
一気に酔いが醒める。]

…見たまんまですよ。
一人でする用に買ったやつ。

[そう言う時、普通はシコるだけなのは分かってる。
けど後ろでイきたい時もあるのだ。
分かってくれ。いや分からなくていいです。]

[悪戯心が出たのか、やってみろって言われて
恥ずかしいだのなんだの愚図っていたら
早くと急かされて服をむしられた。
かなり悪い方に酔っているらしい。

冷たいままのローションとディルドを持って
寝室に向かえば彼が特等席を陣取った。
観戦する気満々ですね。ちくしょう。
こうなったらどれだけごねても俺が負けるので
腹を括って残った衣服を投げ捨てる。

さっさと終わらせよう。
ローションの温度に肌を粟立たせながら
少しほぐしただけ容易に受け入れられる太さのそれを
ぐちゅりと容赦なく後孔に押し込んだ。]

あっ、んん…ふぁ…!
このよっぱらい、め…っうぁ…

[片手でディルド、もう片方で陰茎を擦り上げて
強引に快感を引き出していく。
口からは手の動きに合わせて嬌声と悪態が漏れる。]

[勝手知ったる自分の身体は簡単に快楽を拾って
想いを寄せる相手に見られるだけで
触れられない羞恥と焦燥感で感覚が加速する。

でも全然足りない。
的確に前立腺を押し潰しているのに
彼に焦らされるように突き上げられるより
全然気持ちいいが足りなくて腰を捩らせる。]

ほら、見てください…
俺のここ、全然足りないんです。

本物の方がいいって、
ひくひくしてるの、見えるでしょ?

[手を止めて片脚を抱えれば
正面に陣取る彼には人工物を咥えるそこがよく見えただろう。
最近男同士の行為に手を出した彼に
これが刺激になるかは分からないけれど
丸見えの状態で括約筋を締めたり緩めたりしたら
誘うみたいにディルドが上下に揺れた。

けど全然彼は誘われてくれなくて。
それどころかさらに難題をふっかけてきた。]

〜〜〜っ。

聡さんの…ち、『ちんちん』…!俺に入れて…!

[悪ふざけかこだわりか。
ご指定の単語を口にした事で
ようやく彼は満足してくれたようで

このあと、めちゃくちゃセックスした。]*

[身体柔いなぁっていつも感心する。あと体幹すごい。
片足自分で抱えたままケツの穴見せる体勢で制止するとか
俺には真似できない、絶対ぷるぷるするしぐらぐらする。

欠片も色気のない事を考えながら
温度差の凄い痴態をながめる。
辱められんの好きだよね。ってのは
最近理解し始めたこいつの性癖の話。

嫌がることを強要されて、いやいや従わされてる時が
一番生き生きしている気がする。
あんま自覚なさそうだけど。

或いは従わせてる俺がいきいきしてるから
乗り気な俺に合わせてるだけかもしれないが
その辺は詳しくは解らない。]


 涼司くんは、先生のおちんちんが欲しいんだ?
 わるいこだ、……ね。

 
[余所行きの顔をして悪趣味を。
意図は半分だけ伝わったらしく
ペニスを慣れない呼び方に変えたが
思い切りが良すぎてなんか違った。

もっと可愛く言えよ。わかってねぇなぁ。]

[こいつが昔の記憶にわずかばかり残ってた『井門』だったと
答え合わせをした後に散々弄り倒した。
『先生』にどうされる妄想でヌいたかとか。
妄想の中の『先生』を子細に語らせては
酒の肴にしてげらげら笑った記憶はまだ新しい。]


 ばぁか、せんせって呼べよ。
 ノリ悪いなぁ。

 ほしいなら、ほら…自分で勃たせろよ。
 洗ってないの、すきだろ、おまえ。

 咥えて。


[良い子の先生モードはご所望でないようなので投げ出して
悪い顔で笑って口元に差し出したものをしゃぶらせる。

乱暴に頭を抑えつけたまま腰を引いて
上顎を亀頭でごりごりと擦ってやったら
実にいい感じに悲痛な顔をするので
ひどく、嗜虐心が擽られる。

やさしくしてやりたいきもちが、ないわけでもない。
オーラルの延長みたいな生温いセックスをすることもある。
それはそれで満たされるものもあるが
今はお互いそれじゃ物足りないって顔をしていた。]