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人狼物語 三日月国


150 【R18G】偽曲『主よ、人の望みの喜びよ』【身内】

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視点:


コゴマ! 今日がお前の命日だ!

【人】 跼蹐 カナイ


──会議室の扉が、そっと後ろ手に閉められた。

消耗こそすれ神経が昂ぶったような感覚が持続し続けているのは
いよいよおかしくなりつつあるのか最初からおかしかったのか。
一度深く息を吐いて、注意深く気配を探る。

自身に現れた力が特定の個人を探す事に長けたものではなくとも、
不安定に揺れる気配があれば、すぐに気付く事はできる。
それが多少遠くであっても、大まかな方向程度は。

『おねがいします』。

たったそれだけの文章でも、
何が起きたのかということを察するには十分だった。
だから闇雲に探す必要は無いのだと知っていた。

『ただ二つお願いがあるのです。
聞いてもらえるのです?』

『はい、構わないのです。
1つは、この能力が制御できなくなったら 
その時は僕を止めて欲しいのです。
叶様や他の人に害をなしたい訳ではないので』
(0) 2022/06/06(Mon) 22:47:34
カナイは、無事に、という言葉には、きっと何も言わないまま。
(a1) 2022/06/06(Mon) 22:48:59

カナイは、少し眉尻を下げるだけだった。
(a2) 2022/06/06(Mon) 22:49:10

カナイを待っています。きっと、約束をした場所の傍で。

 叶

叶は容易く、その気配を見つける事が出来るでしょう。
場合によっては、あなたを呼んでいるようにすら。
静かに、しかし体中を軋ませて、待っているのです。
そして、いくつかの角を曲がった先に、それは居ました。

みし、ぱき。骨で形作られた片翼と手足が軋みます。
その中心で俯いていた顔が微かに上がり、
そして安堵の顔を見せました。
タブレットは足元に落ちていて、
骨の足の長さのせいで半ば浮いている少女に
それを拾う事は出来ないのでしょう。

だから、視線をあちらこちらに送るだけ。
和装が溶けてしまったせいで露わになった上半身。
両肩から肘までは、檸檬色と葡萄色の結晶に覆われています。
そして胸元をぎちぎちに締めているサラシの上部から、
鎖骨の上辺りまでを血の色をした結晶が守っているようです。


だから、口をはくはくと動かすだけ。

「よかった」


だから、涙を流すだけ。

「きてくれた」



そして、そして――それだけです。
少女は静かに待っています。
ただ、骨と結晶が軋む音が徐々に大きくなっていくでしょう。

今は、抑えているだけで。
少女の大部分は、考えているのです。
『変わりたい』
と。
その為に……あなたのすべてをたべてしまいたい、と。
『あなたになりたい』
、と。

少女は、あなたを待っています。
約束を果たしてくれるのを、待っています。

【人】 跼蹐 カナイ

>>+0 >>+1 弓日向

「…内容、聞いてから考えてもいいですか」

「………わかりました、その時は…」
「…僕ならきっと、できますから」

────見付けた。

あなたと最後に会話をした場所。
会議室からやや遠い地点に位置する仮眠室、その方向。
他にも異様な気配は幾つかあったかもしれないけれど、
その位置から、どこか確信じみたものを感じて。

閉じた瞼をそっと上げて、歩き出す。
(1) 2022/06/06(Mon) 23:27:57

【人】 跼蹐 カナイ

>>+0 >>+1 弓日向

以前二人で歩いた道程を、今は一人で歩いている。

会議室を後にして、空気の良いとは言えない廊下を少し歩いて
一回、二回、角を曲がって、……

────三回目の角を曲がった所に、あなたは居た。

その凄絶な姿を見て、
あなたの代わりに悲鳴を上げるように軋む音を聞いて。
ああ、と。
息を吐くようにやるせなさを吐き出した。

──追想。
……気味が悪くとも、こうして確かに利益を齎しているのなら。
けれど、益にならないなら?……

……そしてあなたのそれは、あなたを何処まで、
どういったものにまで変化させ──変異させてしまうのか。……
(2) 2022/06/06(Mon) 23:28:44

【人】 跼蹐 カナイ

>>+0 >>+1 弓日向

「………弓日向さん…」

自分が協力しなければ、あなたはそうはならなかったのだろうか?
そんな事を今考えたところで、もはや何にもならないだろう。

「もう……戻れませんか?」

だからたった一つだけ、問いを投げ掛けた。
あなたがもう後戻りできないのだとしたら──
このままでは、恐ろしいものに成り果ててしまうのだとしたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
きっとあなたは、その答えを行動で示すしかないのだろうけど。
(3) 2022/06/06(Mon) 23:30:00


みし、ぱき、ばき。
骨の身体は、両の前足がゆっくりと、地面に向かっていきます。
四足歩行の構えをとろうとしているのでしょう。
震えながら、至極緩やかな動きで。

肉の身体は、たったひとつ。
ためらいと、かなしみと、あなたへの期待と喜びを込めて。
静かに、微笑んで。頷いてみせました。

「ころして」


確かにそう口が動いて――骨の前足が、地面に着きました。
ばき、べき。少女は、弓を引きました。
その向こうが神か、運命か、あなたかはわかりませんが。

次は、あなたの番です。

その大きな骨の手足と翼の根元を、結晶で補強しているようでした。


第二に。
仲間とされる二人を守る為にも、
ここはスケープゴートが必要だ。

奈尾さんはその点において大変都合がいい。
そういう打算も混ぜ込んでいなければ、
とても果敢に立ち向かうことなんて出来そうにない。

【人】 跼蹐 カナイ

>>+2 弓日向

人体には存在し得ないパーツが床へ近付いていく。
悲鳴じみた音を立てて、ゆっくりと。
その様相を見て胸の内に湧いたものは、恐怖ではなくて。

「…ああ……また僕は」

「死で何かを得た分、死で何かを失うんだ…」

ヒトとは異なる形状の骨。
四足歩行の──凡そイヌ科の特徴を呈するそれは。
唯一の慰めであり、拠り所だった、飼い犬あの子を想起するものだった。
あの子も自身が恐怖から解放されたすぐ後に旅立ってしまった。

「……でも、これは」

「きっと、おれにしかできない事だから」

どうせもう引き返せない自分がやるべき事だ。
それに、あなたの状態は、自身の内にある力で対処する事が。
恐らくあまりにも──適切なものだったから。

そして何より、同じ理不尽を受けた被害者のあなただから。
こんな形でも、その願いの一つくらい、
えたくて。

やりたい事・・・・・だ。だから引き返せない、引き返さない。
(4) 2022/06/07(Tue) 1:12:10

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+2 弓日向

だから逃れる為ではなく、向き合う為に。

その四文字を確かに認識したその直後、
また一つばき二つべき、まるであなたの心の軋む音のようなむごい音。
それを聞きながら、叶はやはり逃げなかった。

──恐怖を呼び起こし、研ぎ澄ます。

殆どあなたの理性による制御を外れた意思が、
どのような行動を取ろうとも、それを回避しようともせず。

恐れるものは、あなたではなくて。
これまで、そしてこれからの自身の行いと、その発覚だ。

この力はある程度対象を目視できなければならないようだった。
だから回避などに感けている余裕など無くて、
何れにしてもあなたに正面から向き合うほかなかった。
(5) 2022/06/07(Tue) 1:13:54

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+2 弓日向

──そして、それを向ける先は──叶うのであれば。

檸檬色の結晶でもなく、葡萄色の結晶でもなくて。

────パンッ!!!!

あなたの胸元を覆う、血色をした結晶が、一瞬にして爆ぜ散った。

皮膚を切り裂き、肉を突き刺し、骨と骨の間に潜り込む。

その部位を狙ったのは、元を断つ為に。
その次に、長く苦しませる事の無いように。
とはいえ今のあなたにとって、
それが確かに致命の一撃足り得るかはわからない。

そして、たとえそれが束の間の夢だったとしても、
まだ平穏だった頃の思い出を苦痛に変えたくはなかったから。
(6) 2022/06/07(Tue) 1:14:42
カナイは、この力を使う時の感覚が恐ろしくて。
(a4) 2022/06/07(Tue) 1:17:01

カナイは、それと同時に、どうしようもなく安心する。
(a5) 2022/06/07(Tue) 1:17:16

カナイは、多分、前に力を使った時からあまり時間が経っていない。
(a6) 2022/06/07(Tue) 1:18:24



あなたの独白。あなたの想起。
あなたの決意。あなたの――あなたとの、約束。
それらを聞き、想い、抱いて……

放たれた矢のように、その四ツ足は床を蹴りました。
あなたの全てを磨り潰して、啜る為。
愛しい人の胸に飛び込むように、跳びました。
その瞬間、あなたの目にはしっかりと。

血色の結晶が映っていました。


そしてそれは、激しく爆ぜるのでしょう。
空気を震わせて。身体を砕いて。その少女を壊します。

ぱき、ばき、と音がして。
それが肉体からか、結晶からか、骨の手足からか。
判別は難しいのでしょう。ただひとつわかる事は、
あなたの前には、結晶も、骨の手足も。
剥がれ落ちた血塗れの少女が転がっているという事です。



少女は、実にあっさりと、死んでいました。
きっと殆ど痛まなかった事でしょう。
きっと苦しまなかった事でしょう。

幾分か軽くなった少女が、
軽くなった分だけ血を床に広げて動かなくなっています。
その顔は、苦しみも、恨みも、つらみも、持っていません。

ただ、微笑んでいました。
最後に微かに動いた唇は、筋肉になんらか、
電気信号が通っただけかもしれません。
それでも、それを信じるなら――
『ありがとう』

たしかに、そう言っていたのです。


唯一、後に残ったのはつけっぱなしのタブレット。
きっと、少女がそうなる直前まで手にしていたのでしょう。
幾つもの変わりたい願望や、呪詛めいた言葉が沢山。
テキストファイルにいくつもいくつも、連なっています。

ずっと蓄積したそれらの末尾、一番最後の空白。
沢山の改行はきっと、その感情から遠ざけたかった言葉です。
そこに――

カナイに向けて。『いきて』と、遺しました。

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

いつか見た決意を宿した瞳のように、真っ直ぐに、一直線に。
迫り来る勢いに、ほんの少し気圧されて。
それでも確かに視界に入ったものを見逃さなかった。

「…………ッ、…」

一瞬の集中の後、短く鋭く、残響を耳に残す破裂音。
結晶とも血飛沫とも、或いは肉の破片ともつかないような
ただただ赤いものが瞬時に飛散して、
もしかすると、硬い破片が幾らか自分も傷付けたかもしれない。
それはなるべくしてそうなる事だから。


西へ、太陽の沈む方角へ。
陽が傾いて、日向が翳る。
いつかまた陽が昇るその時まで。
(7) 2022/06/07(Tue) 5:03:52

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

そうして刹那に嵐は過ぎ去って。

再びの静寂と、それから徐々に血臭に満たされ始めた廊下。
ゆっくりと広がっていく血溜まりと、横たわる少女を見た。

能力の起源に紐付いた奇妙な安堵は長続きしない。
だから今この胸の内を満たすものは。
その思いを理解できたばかりの少女を失った事によって齎された
喪失感と、悲しみと、それから人を手に掛けた罪悪感だった。

「………弓日向さん」

ほんの少し軽く、けれど脱力しきって重く。
まだ温かい身体をすぐ近くの仮眠室へ運び込んだ。
野晒しは忍びなく、けれど会議室へ連れて行くには憚られた。

「あなたはあの時自分の事を薄汚い人間と言ったけど、
 おれはそうは思いませんでした」

寝台へと寝かせて、瞼や唇が開いたままなら閉じさせて。
その横で殆ど唯一の遺品となるであろう端末に指を滑らせた。
連なる望みと、呪詛と、それから。
そして、あなたの最後の言葉を思い返して目を伏せた。

「おれの方がずっとどうしようもない」

そんな人殺しに感謝するだけでなく、生きろと言うなんて。
いったいこれから何処へ生きて行けと言うのだろう。
(8) 2022/06/07(Tue) 5:05:59

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

「何にしたって。
 あなたが死んで泣く人間の一人くらいは、……
 ……事実として、居るみたいです」

どうせ誰も聞いていないのだから、
随分湿気を帯びた声を取り繕う必要もないだろう。
自分で殺しておいて悲しむなんて、
人殺しには身勝手すぎる気もするな、なんて思いはしたけど。
(9) 2022/06/07(Tue) 5:06:52

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

だからそんな身勝手はすぐにしまい込んで。
きっとまた少し血に汚れた白衣の裾で目元を乱暴に拭った。

「神様なんて居ないかもしれないけど」

深く息をして、仮眠室を後にするべく立ち上がった。

「居ない方がいいのかもしれない」

だって、もし仮に、そんなものが居たら。

おれはそれを殺さなきゃ気が済まないから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たとえばこれが、誰かの描いた筋書きであるのだとしたら。
自分はその誰かを怨まずにはいられないだろう。
そしてきっと、それを殺さない限り。
自分に本当の意味での平穏が訪れる事は無いんだろう。

でなければ、真に恐ろしいものを取り除けはしないのだから。
(10) 2022/06/07(Tue) 5:07:37
カナイは、静かに電気を消して、仮眠室を後にした。
(a10) 2022/06/07(Tue) 5:08:01

カナイは、また声を聞く。きっと仮眠室を出て少し後の事。
(a11) 2022/06/07(Tue) 5:20:35



『叶さん── 今からすぐ、会議室の方に来られますか』
『奈尾さんが害意を纏って近付いてきているのです』

努めて冷静さを保ちつつ、何とか言葉にしていく。

『大体の位置は……もう、すぐ近く。
 あと数刻もすれば到着してしまうくらい。

 出来るだけ時間を稼ぎます、
 獣などに気を付けつつ、急いで──お願いします』


『篝屋さんからもそう聞きました』
『今すぐ向かいます』

『あの人は銃を持っていて、水で溶かされる?そうです』
『おれが聞いたのはそれだけ』

返るのは簡潔な応答。今は時間が惜しい。

【人】 ハリの豺狼 カナイ


仮眠室を出て、誰かの声を聞いた後。

弾かれたように廊下を駆け出して、
その傍らに気配を探る。読み取ろうとする。不安定な気配を。
今明確に排除すべき恐ろしいもの──奈尾の気配を。
進行方向がわかるのであれば、その背後に回り込むように。

殺さなければきっと殺される。
真に恐ろしいものから逃れるには、殺すしかない。
自分ならきっとできる。自分がやるしかない。


何れにしても脇目も振らず会議室への道を突っ切っていく。
元はドッグトレーナーを目指していたのだ。
犬と共に駆ける為の日々の名残は、まだ身体に残っている。
(11) 2022/06/07(Tue) 7:35:45
カナイは、猟犬じみて廊下を駆けて行く。狩るか狩られるかは、まだわからない。
(a15) 2022/06/07(Tue) 7:36:58



あなたの背か、胸か、腕か。
運び込む際に触れた場所に、少女の血が付着します。
それが血色の結晶になったりはしません。
ただぽたぽたと、水音だけを残して寝台に横たわります。

微かに開いていた唇は閉じられてなお微笑みの形で。
薄い透明な液が通った跡が残る目元は穏やかなまま。
死んだ人間はきっと、何も語らないから。

だから電気を消してしまえば、そこにはもう闇だけ。
日向のような明るさはすっかり、消えてしまいました。
それでも……もし、暗く塗り潰される想いの下に、
この少女の生命が残っていたのなら。
神というクソッタレ

  運命  に向かって弓を引く、その誇らしげな顔が、
きっとあなたの隣に立っていたのでしょう。

だから、いつか陽がまた日が昇るのなら。
その時は、あなたと同じ日向に居させてくださいね。

それじゃあ、おやすみなさい、なのです。

メモを貼った。

『間に合って……ないかも?
ごめんな、ずっと寝ちゃってて』

『簡単に言うと、呼び出されて腹刺されて頭半分溶かされた。
水が入った普通のペットボトルで殴られたと思ったら、気が付いたらペットボトルも溶けて頭も溶けちゃってた』

先ほどの情報から追加で得られることといえば、何の変哲もない水だったものがある瞬間から変化をして襲いかかってきた、ということだろうか。
まあ色々あって今は……元気だけど。元気ではないかもしれない。

『抵抗する時に、俺が……あの人の頭の中ぐちゃぐちゃにした。
その影響も、あるのかも』



『あ゛ーーーー────……………』

助かるけど聞きたくはなかった、
とでも言いたげな間伸びした心の声。

よく今生きてるな。それで。偉いよ。
オレが生きてられるかはまた別の話だ。生きなければ。

>>篝屋

ずる、ずると棒切れのような足を引きずって。
歩く。歩く。歩く。

拾えた気配のある場所は、もう少し遠く。
生き損ないの、死に損ないは、ただ一つの意思だけを杖にして歩く。

「…………ぁ?」

ぽつり呟いて。
その人が地に伏せているのを目にした。

「……篝屋、さん?」


「……。
 あの時、会話したのは、俺と同じだったからですか?俺と同じで死んでいたからですか?」

肉の焼けるような臭いを気にも留めず歩を進め。
近くに寄って確認するよりも早く反射的にその力を呼び起こす。
ただ一つの意思だけで骸を動かしているその何かの力はあまりに不安定な物だったけど。

彼の呼吸を聞いた。
彼の生きる音を聞いた。
それでも彼は動いていない。何をも溶かす海の中に身を沈めているだけ。

「……」


「ねぇ」

「なんでくたばっているんですか?」

地に伏せるその人をその場で見下ろしている。

カナイは、逃げない。
(a25) 2022/06/07(Tue) 13:50:17

カナイは、逃さない。
(a26) 2022/06/07(Tue) 13:50:21

三十三

名前を呼ばれた。
かくん、と首が傾いて。体の向きを半分変えて、視線をぐるり。
貴方を見ているようで、でもどこか遠くを見ているような。そんな眼差しを注ぎながら青年の形をした何かはわらう。

「……あぁ!三十三さん!よかったぁ、生きてたんですね!貴方は貴方だ!にんげんだ!えへ、うふふ。嬉しいなぁ。どうして此方に?」

時折何が面白いのかも分からないような笑い声をあげているが、確かに青年は二本の足で立ち、貴方と向き合って会話を行なっている。
身体中に無数の傷を纏い、無邪気な子供のわらいごえを響かせるたびに口から、腹から、ぽたぽたと血を落としながら。

貴方が確認した遺体の様子を、そのまま抱えながら。

/*
めっちゃ"いいやつ"のロールの途中ですごいアレなんですけど
喫煙所(概念)で話してて凶狼気付いちゃったにゃんけど
今日人間二人屠っても明日の朝に焔狼お嬢様がおくたばりあそばせられるので
つまり3:3にならずこれまだ決着しませんわね???

つまり人が何人か……ガチ死なさりますのね?おそらくは?

/*
なんということ?
おれが焔を宿しているばっかりに……
生きたいと思ってしまったばっかりに……?

【人】 ハリの豺狼 カナイ


──ひゅ、と風を切る微かな音がして。

────パンッ!!!!


苦痛による、血を吐くような凄絶な絶叫が響いた後。
銃口より発せられる乾いたものとは異なる破裂音。

脇目も振らず廊下を駆け抜けた先でまず視界に入ったのは、
ナイフを振り被る長身痩躯のその背中。
ひどく焼け爛れ崩れた肉とそれが変質したらしき何か、
その間から時折顔を覗かせる白いもの。

惨憺たる有様となった奈尾の背中、その上部。
ともすれば頸にほど近い箇所で、
ともすれば剥き出しの骨に罅が入り、或いは砕けるような。
無防備な背に飛来した何かを避けられなければ、
奈尾はそんな凄まじい衝撃を感じる事になる。
痛みは無くとも。


音と衝撃の出どころは、
叶が咄嗟に奈尾の背に投げた、掌大のガラス片・・・・・・・
それが忽ち膨張するように体積を増し、炸裂したためだった。
(23) 2022/06/07(Tue) 18:07:17
カナイは、その鋭く透明な意思の形は、断ち切る為に。
(a30) 2022/06/07(Tue) 18:07:27

カナイは、きっとどうしようもない人間だけど。
(a31) 2022/06/07(Tue) 18:07:32

カナイは、誰も幸せにならないこの筋書きを断つ事はできる。
(a32) 2022/06/07(Tue) 18:07:39

カナイは、向き合って、終わらせる。自分ではなく、あなたの罪を。
(a33) 2022/06/07(Tue) 18:07:45

【人】 ハリの豺狼 カナイ


直撃すれば、ともすれば脊髄を傷付けたかもしれない。
たとえ仮にあなたが痛みによって怯む事は無くとも、
幾らかその部位を損傷してしまえば、恐らくは。
脳が身体に信号を──意思を伝える事が妨げられる。

それは意図した結果ではなく、
完全に奈尾の自由を奪うには狙いは甘かったかもしれないが。
ただひたすらに、咄嗟に投げ、咄嗟に恐怖を掻き集めた。
そんな無茶な行使と短時間での連続使用、
そして不安定な精神では、反動はこれまでよりも強く。


それぞれの意思が交錯する、そんな一瞬の後。

殆ど蹌踉めくように踏み出し、けれど注意深く様子を窺った。
反動によってぐわんと殴打されたように意識が揺れて、
視界がちかちかと明滅しても、動きがあれば見逃さない。
あと二回。
(24) 2022/06/07(Tue) 18:08:24
/*
強く生きてほしいにゃん。死ぬけどにゃん。
必要なら介錯はするにゃん……こっちができる状態だったら……

三十三

「…………ぅ゛え」

死んでいたはずで。
その言葉を耳にして再び頭の中で色んな音が響き続ける。腹の奥が酷く痛むような感覚がした。
吐き気が込み上げてくる喉を無理やり手で押さえ、落ち着くのを待ってから。

「俺は死にましたよ」

「おなか、こんなぐちゃぐちゃになって。生きていられる筈がありません。
 触ってみますか?何も反応がないんです。ハンバーグを作っている途中のこねた挽肉に手を入れた感じみたい」

異常は、まるで正常であるかのような挙動のまま貴方にわらう。
吐き気と血を口からこぼしながら返事をして、貴方から視線と体の向きを外した。

白衣を脱いで、貴方がいる方へと投げつける。
そのまま、酸の海に沈む青年の元へ。


三十三

「貴方の言う通りです」

「生きているなら治療しないと。
 篝屋さんは生きている。生きている音を拾いました」

「生者の分際で、動かないなんてゆるせない。ぁは、そうですよ。停滞なんて、許せない。進まなきゃ、前に。まえに、すすまないと、ねぇ?」

強い酸が足裏を焼く。じゅ、と靴の底を蝕んでいく。

「……ぇへ、うふふ。で、なんだっけ。

 あー……詳しい話をするのは後ほど。運ぶの、手伝って貰えませんか?
 ひとまずこの……これ、強酸でしょうか。此処から引き上げますから。その後、二人で運びましょう。
 その白衣は何か長めの棒が2本もあれば担架に出来ましたけど、無さそうかな。手や体を酸で焼きたくないとか、何か適当に使ってください」

まるで生きていた時のように、饒舌に喋っている。
けれどその青年は足を焼かれたり、篝屋青年を目にするたびに「ゆるせないなあ」「なんで?どうして?」とけらけら子供のように笑い声をあげている。

この青年は確かに、壊れてしまった後だった。

【人】 ハリの豺狼 カナイ


「────あ、」

だめだ・・・


揺れる意識の中、眩む視界の中。
蠢くそれを見て、思考はただそれだけが鮮明だった。
牽制程度にしかならないかもしれないとは思っていたけれど、
その変容は、その執念は、想定をゆうに超えていた。

これは、自分でなければできない事だ。

あなたが真に恐ろしいものに成り果ててしまう前に。

あなたがこれ以上の罪を重ねる前に。

自分がこれ以上失わない為に。

信じた人を、助けてくれた人を、傍に居るものを。

僅かでも平穏な時を過ごした、安心できる場所を守る為に。


──ここで終わりにしなければ。
(28) 2022/06/07(Tue) 22:40:38

【人】 西へ行く カナイ


それからはあっという間だった。

「この──ッ、 その人から離れろ!!!」


殆ど思考を挟む間も無く、猛犬が喰らい付くように。

深和に覆い被さる異形を尋常ではない力で引き剥がし、
そのままの勢いで殆ど床に叩き付けるように引き倒した。
もはや肉薄する事も反撃を受ける事も厭わず、
ただその動きを止める為に押し倒すように抑え込む。

──果たして。
この場所は以前に刃の雨がぶち撒けられた地点の近くだろうか。
そうであるならその破片が。
そうでないなら、また一つ、すぐ近くの窓が爆ぜ散って。
あと一回。

床に散乱した破片が、ぴしり、めきめきと耳障りな音を立てた。

その直後、その全てが瞬時に成長し────

「────う"、あ っ" 」

無機質に冷たく、鋭く、透明な無数の杭となって、
異形と化しつつある奈尾を自分諸共にずたずたに刺し貫いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから一拍遅れて熱く鉄臭い塊が喉の奥から込み上げ、
鉄臭さが口の中いっぱいに広がって溢れ出す。
想像を絶する痛みが身体の中を、神経を、脳髄を灼いた。
お仕舞い。
(29) 2022/06/07(Tue) 22:43:28

【人】 西へ行く カナイ


たとえるなら、そう、針の筵。

──無間地獄の刀山剣樹・・・・・・・・・


ねえ、奈尾さん。

自分勝手に、身勝手に、自らの欲求で。

どんな理由があったとしても、確かに人に害を為した。

どこまでも罪深いおれ達に似合いの地獄だと思いませんか。

あなたが悪人かどうかだとか、
どうしてそのような事をするのだとか。
そんな事は論じるにはもう今更な事だ。

どのような理由があれ、あなたは罪を犯した。
どのような理由があれ、自分は罪を犯した。
その罪深さを突きつけられる時が今だった。
おそらくこれはたったそれだけの事だから。
(30) 2022/06/07(Tue) 22:43:53
カナイは、それでもまだ生きていて、奈尾を抑え付けようとする。
(a38) 2022/06/07(Tue) 22:45:01

カナイは、当たり前に、死にたくなんかなかったけれど。
(a39) 2022/06/07(Tue) 22:45:09

カナイは、逃げ場は無くとも、足を止めたくはなかったけれど。
(a40) 2022/06/07(Tue) 22:45:15

カナイは、生きてと、そう望んだ少女を裏切ってしまうのは、嫌で仕方なかったけれど。
(a41) 2022/06/07(Tue) 22:45:22

カナイは、死ぬ覚悟は、もうできた。
(a42) 2022/06/07(Tue) 22:45:28

カナイは、それでも、伝えなければならない事があるから。
(a43) 2022/06/07(Tue) 22:45:34

カナイは、この地獄の中で、もう少しだけ生きている。
(a44) 2022/06/07(Tue) 22:45:40

三十三

「そう。ぁは、ふふ。三十三さんは、篝屋さんが大切なんですねー……」

笑った形のまま、そう返した。笑ってはいるけれど、その実貴方達二人の仲にまるで興味など無いと言うように。そんな、ちょうど己の体のような温度の声色で。

危害は加えない。貴方にも、貴方の先輩にも。
ただ前に進む手助けをするだけだ。
それは善意からなどではない。そんなもの、とうに昔の何処かに置き忘れてしまった。

今青年を動かすのは、ただ一つだけの強い意思のみ。

…………
……

廊下は厄介なものと鉢合わせする可能性がある。
恐らくはすぐ近くの部屋に運んだことだろう。

「治療、どこから手をつけたらいいのやら。ひとまずは止血?少なくとも、血管が傷ついた場所や剥き出しの部分は布を巻くくらいしておかないと。
布……あぁ、伊縫さん……。

 生きているのなら、生きてもらわないと困ります。そうじゃなきゃおれはゆるせませんから」

三十三

生への執着を知る。
生かすための決意を聞く。
生きるための覚悟を見る。

「…………」

ずっと、考えていた。
人を人たらしめるものは何なのかと。
進化を続ける理由は何だろうと。


目を細め、貴方の姿を焼き付けるように視線を注いだ。

「制服。そんなのもあったなぁ。そこまで時間が経っていないのに、ああ、ああ、なんだか遠く。ふふ、ふふー。
あの人は、あの時から、あの時に?ふふ。

 ええと……はい、ええ、人前に出る際に酷い怪我を隠したい時とか、きっと役に立つかと。
よかった、無駄ではなかったんだなぁ。


生前なら内に留めておけただろう余計な思考も垂れ流しながら、貴方にお願いを託す。

「……誰もが。血で手が汚れている人でも?」

貴方が一度部屋を出る直前辺りだろうか。
こてんと首を傾けながら、無邪気にそう言葉を投げかけただろう。

【人】 西へ行く カナイ


斯くして人と異形の間と化した者はその動きを止めた。

臆病者はそれを見て取って暫くの後、
漸く殆ど硬直したように掴み掛かったままの手を脱力させ、

────ぱきり、


罅の入るような微かな音がして、
その後に透明な凶器が一斉に砕け、
両者は束の間この現に創られた地獄から解放された。

「い"、ぁ う"ぇ ぇっ、」

砕けた拍子に破片が再び肉や臓腑や神経を傷付けて、
倒れ込んだ事によってそれがまた深くへ潜り込んで、
言葉にならない悲鳴を上げ、血反吐を吐いて嘔吐いた。
これも、あの人にした事が自分に返って来ただけの事。

怖い。
怖い。
怖い。
死ぬのは怖い。
逃げたい。
けれど死からなんて、逃れられるわけがない。
(34) 2022/06/08(Wed) 0:20:03

【人】 西へ行く カナイ


「──、……深和さん…」

焦点が定まらなくて、前がよく見えない。
血がどんどん流れ出ていって、寒気がする。
全身から力が抜けていって、指先一本動かすのも億劫だ。
ああ、怖くて仕方がない。


「ぶじ、ですか そこにいますか……?」

それでも余計な思考を追い出して、
理性を掻き集めて、唯一正常な思考に意識を集中する。
まだ、伝えなければならない事がある。
(35) 2022/06/08(Wed) 0:20:50

【人】 西へ行く カナイ


「…仮眠室、に、……弓日向さんが、います」

迎えに行く・・・・・と行って会議室を後にしたけれど、
その後にこうして駆け付けた叶は少女を伴っていなかった。
そのわけを、自らの罪を、話しておかなければならなかった。
あなた達に無用な不安を与えてしまわないように。

「奈尾さんと、…おなじ、ようになってて」

「どうすることも でき、なくて おれが、やりました」

「……あの子が使ってた端末、
 あの部屋に おきっぱなしに、しちゃって」

抱えていた願望、そして呪詛。
叶わなかった望み。

それを与り知らない所で他者に知られるのは嫌だろうから、
大半のテキストファイルにはロックを掛けたけれど。

それでも、唯一の遺品と呼べるものだから。
生きて行く人に託したかった。
(36) 2022/06/08(Wed) 0:22:00

【人】 西へ行く カナイ


「…あはは……」

「頼まれたこと 全然、できなかっ た」

無事で、と言われたのにこのざまだ。
頼んだと言われたのに、迎えに行った少女の事も救えなかった。
生きてという最後の望みさえ叶えられなかった。

当たり前に頼まれた事を、
当たり前にやってのける事すらできなかった。
ああやっぱり、自分はどうしようもなく不甲斐ない人間だ。

「おこられ、るか なあ……」

それなら、怒られても、仕方ないかな。
(37) 2022/06/08(Wed) 0:23:14
カナイは、罪の重さは自身が計るものではなくて。
(a52) 2022/06/08(Wed) 0:28:47

カナイは、与えられる罰も自身が決めるものではないと思っている。
(a53) 2022/06/08(Wed) 0:28:58

カナイは、それは、罪悪感の有無に関わらず。
(a54) 2022/06/08(Wed) 0:29:19

カナイは、だからこれは、なるべくしてそうなっただけの事。
(a55) 2022/06/08(Wed) 0:30:29

三十三

「そうですか。……」
「報われるとか、報われないとか。気持ちは分からないけれど。
 みんないきてほしいなってことは、わかるなあ」


短く返事をして、青年を見送った。

それは博愛などではない。殆どの行いは自分のため。
きっと貴方はこれからもそうであり続けるのだろうと、そんな印象を抱いて。
貴方の写真はブレることがなさそうだな、とも。残った知性はそう判断した。

「早くおきてくださいね。篝屋さん。貴方の死は礎になりません。
 三十三さんが頑張って生きるには、貴方も生きていないと。今は多分、きっと。
 はやくはやく。ねーぇ。ふふふ。
 おれはまだ、みていませんから。みたいですから。ゆるしません、ゆるせません」


近くに寄って、怪我の具合を時折検分しながら篝屋の顔を覗き込む。

再度此処に三十三が来るまで、未だ意識を失い続ける青年に意味を持たない笑い声を撒いていたのだった。

【人】 西へ行く カナイ


「あは、は」

あったかい手だなあ、なんて思って。
自分の手が冷たいだけだと気付いて、おかしくて。
その後に続いた言葉が、なんだかもっとおかしかった。

「おれが、あなたにとって……恐ろしいものじゃ、ないって
 保証もないん、だから。喜んだっ て、いいのに…」

零れ落ちる涙が少しだけ手を濡らしたような、ないような。

自分が二人の秘密を暴露する可能性だってあっただろう。
自分があなたに危害を加える可能性だってあっただろう。
不確定要素が減るのは、喜ぶべき事だ。

「でも、」

「よかった」

あなたが無事でよかった。
でなければ今こうして正気は保っていられなかっただろう。

許さないでいてくれてよかった。
平気な顔をしていたら、恐ろしいと思っていたかもしれない。
(44) 2022/06/08(Wed) 3:27:52

【人】 西へ行く カナイ


そう言う深和さんだって、
さっきも今も急に呼び付けてばっかりだったくせに。


そんな子どもじみた反論は、
あなたとは逆に、心の内だけのものとなった。
いよいよ力が入らなくなってきて、
息を吸って、声を出す為に腹部に力を入れる事も難しい。

安堵するにつれ、意識が遠退いていく。
それはきっと、この臆病者を最も強く突き動かす意思が
不安や恐怖から成るものだからなのだろう。


曰く、死の間際、最後に残る感覚は聴覚なのだと言う。
そうは言っても限度はあるもので、
そもそも音として聞こえていたとしても
夥しい量の血を失った脳が意味を理解できたかは定かじゃない。
(45) 2022/06/08(Wed) 3:28:20

【人】 西へ行く カナイ


────けれど。

頭の中に直接響くような声に、
心の内にそっと、深く染み込むような安堵に。

能力の行使に必要な触媒は、恐怖の対象。
恐れるものが無ければ、この力は無いのと同じ。



「     」


きっと、ここに来て初めて、やっと。穏やかに笑って。
(46) 2022/06/08(Wed) 3:29:16
カナイは、そっと瞼を下ろした。
(a60) 2022/06/08(Wed) 3:29:24

カナイは、待っている。
(a61) 2022/06/08(Wed) 3:29:30

カナイは、いつか日が昇る事も、いつか日が沈む事も。
(a62) 2022/06/08(Wed) 3:29:36

カナイは、静かに眠ったまま、そのどちらをも、待っている。
(a63) 2022/06/08(Wed) 3:29:41

西へ行く カナイは、メモを貼った。
(a64) 2022/06/08(Wed) 3:30:04

/*
というわけでわたくし本日吊られ吊られ凶狼ちゃん
システム的には襲撃空振っちゃうんだワン!!
ってなわけで智狼ちゃんちょっと襲撃先ナオアキさんに設定しておいてくださる!?(余韻ぶち壊し)

/*
もうしています。落ち着いて。

/*
偉(エラ)〜。

西へ行く カナイは、メモを貼った。
(a67) 2022/06/08(Wed) 5:45:47

気配を探る。
何度も、何度も。

死にかけてひいひいと泣いている間も、
大怪我で地べたを這いずり回っている時も、
二つぽつんと星のようにあった気配の片割れが感じられない。

人に害なす獣であったものは遠く独り、守られた部屋で。
何にも出来ずに、星が堕ちるのを見ていた。

カナイは、それで満足だ。
(a68) 2022/06/08(Wed) 16:12:39