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人狼物語 三日月国


52 【ペアソロRP】<UN>SELFISH【R18G】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


 



      
  俺を……視てくれ



[真っ直ぐ正しく愛された試しのない男の欲求は、心の通わし方も、其れを伝える方法も知らず。
唯、物足りなさを覚えるのは────無意識の内に、彼女の胸中に在る人物が己では無いことを悟っている故なのだろう。


弾んでいく息に隠して零した台詞は、懇願にも似て。嫉妬でさえ“抱く必要がなかった”王には、苦しみの根源が掴めない。]
 

 
[オレの叫びは
 確かに真昼くんへ届いた、と思ったのに
 聞き入れてはもらえないようだった。

 また自分のせいで
 無駄に痛い思いをさせてしまうのは
 あまりに頭が悪いし、本末転倒すぎるから
 暴れるのは止めて
 首を小さく横に振るに留める。]



   まひるくん… ダメだ…… っ、あ、 …!!



[気の早い毛が
 疎らにぴょろぴょろ生え始めたのが
 妙に気恥ずかしくて、
 できるだけ人に見られないようにしていたソコが
 彼の手でさらけ出される。

 身代わりになれば
 真っ裸を見られることは覚悟していた、とはいえ
 羞恥がなくなる訳ではない。
 頬や耳が、カぁッと
 窓の外の夕焼けと同じ色に染まった。]
 

 
[少しでも視界を遮ろうと
 前屈みになろうとするオレの動きを遮るように
 真昼くんが近づいて、告げる。

 その顔に、悲壮感はなくて‥‥


   (きっと、オレを安心させるために
             本心を隠してるんだ、)


 そう思うのに、昨日の
 ドキドキ・ドクドクしてしまった時の表情が
 どうしてだかオーバーラップして
 また心臓が騒ぎ出す。

 こんな時に、こんなこと
 考えてる場合じゃないっていうのに。]
 

 
[熱い耳に手が触れて
 初めて…?って不思議に思っているうちに
 唇が触れ合った。



   
──────!!!!!!!




[こ、れ、は………
 
これは、これは、これは、これは、



 ‥‥キス?! 
キスだーーーーーーーっっ



 好きなひとと、する特別なヤツ。]
 

 
[え? …えっ? えええ?
 なんで? オレ、男だよ、男だけど、男なのに …いいの?!

 両親の仲がよくて
 異性愛が当たり前って刷り込まれてるオレは
 だいぶ混乱しながら
 理由を訊こうと合わせ目を開けば、
 柔らかい唇が更に深く重なった。



   っ、…… ま、 ぅ、んん…… ?



[どうして?って謎ではあったけど
 全然、イヤじゃなかった。

 むしろ……すごく、気持ちが良くて
 何度も繰り返される口づけを
 やわらかく受け止めながら

 くらり、と世界が白む。

 周りのことなんか、どっかに吹っ飛んで
 視界も脳も、真昼くんのことだけでいっぱいになった。]
 

 
[ふいに、くすぐったいような感覚が
 膝から這いのぼってきて、
 普段、風呂でさっと洗うくらいしかしない箇所に
 辿り着き、やさしく持ち上げられた瞬間、



   ん、ぁッ…



[ぞわぞわが
 背中のあたりを駆け上がって
 体をひくんと跳ねさせてしまった。

 こんなとこが、
 こんな風に感じるなんて、知らない。]
 

 
[ズボンをずり降ろされた時には
 しょぼんと項垂れていたのに
 今はどうしてだか、僅かに顔を上げていた。

 色が浅く、細長いソレは
 先を窄ませるように包皮に覆い隠されていて
 筆のようにも見えなくはない。

 その勃ち上がりかけの軸の部分を
 薄絹をまとわせるくらいの力で
 やんわりと包むようにして触れられるのは、
 もっと、もっと、
 比べ物にならないくらいに
 気持ちよすぎて、ヤバかった。]



   
あっ… ああっ、… っ、ぁあ!




[動きに合わせて勝手に声が漏れる。

 唇を塞がれれば、その間は
 くぐもった声をつながった口の中に飲み込ませながら
 あっという間に
 昨日の真昼くんの、みたいに
 彼の手の中でパンパンに腫れ上がらせていった。]*
 

 
[暴れるのはやめてくれたから
 衣服を乱す際に
 押さえつける必要はなかった。]


   (空澄くん、もう生えてるんだ……)


[暴いたのは最小限だけれど
 斑らに生えかけで
 大人になる過程にある肉体は木目が細かく
 透き通るように綺麗だ。

 肌を染める様は初々しく、愛らしい。]
 

 
[そんな空澄くんの様子に
 初心で可愛い……、と
 見惚れるのは僕だけじゃない。

 ――彼が身代わりになると言った時点で
 乗り気だった有象無象は二人ほどだった。
 彼は身長が低いわけでも
 顔が女の子っぽい訳でもないから。

 彼の可愛らしい反応を見て
 彼を貪りたいと欲張る輩が増えるのを
 背中で感じ取りながら
 奪った唇はとても甘かった。
 

 
[睫毛同士触れそうなほど近いからよく見える。
 戸惑いをはっきり浮かべられた目は段々と
 パンケーキの上のバターみたいに
 蕩けていった。]


   ───…っん、……ちゅ、……


[――ああ、駄目。駄目だよ空澄くん。
 そんなに可愛い顔を見せたら駄目。

 みんなが君を犯したくなっちゃうでしょ。

 避けるのは悪いとでも思われているのか
 抵抗のない唇を味わいながらそう考える癖に
 与えたくて堪らない自己矛盾を孕み
 抑える心算は欠片もない。]
 

 
[昨日の反応から察す
 るに、自分で弄った経験すら
 ないのかも知れない。

 殆ど肌と変わらぬ色の鞘に
 納められたままのものを
 伍本の指で優しく摩っていれば
 彼は素直に反応を示してくれる。

 声も全部僕のものにしたかったから
 手と唇を休ませるタイミングは一緒。
 体内から直接響く君の声を飲み込み堪能した。]
 

 
[彼のが僕の手でも育ってくれたのを
 硬さと熱さで理解すれば
 唇を解放した。]


   ────……は、ぁ……


[自分のを擦ってた訳でもないのに
 上気した頬はほんのり赤く染まり
 眼差しはとろりとしていた。

 彼の勃起で引っ張られた包皮の先からは
 僕の頬よりなお淡い色の果実が少しだけ
 顔を覗かせているのが確認できる。]
 

 
[きみと繋がったらどんな心地だろう?
 直ぐにでも腰を沈めてしまいたくなったけど――、
 我慢、を選択する。
 使う孔は異なれど
 中で剥けるのは大変に痛いことと知る故に。]
 

 

   っ!?


[先ずは口で。
 そう考え再び彼の足下に膝をつくと
 後ろから伸びてきた手に顎が捕えられ
 振り向かされた。

 ――吉田くん。
 呼ぶ前に言葉を発する出口が塞がれる。]


   ん……っ


[何だ? 一瞬思うけれど
 外野が手出しをしてはいけない
 ルールはなかった。確かにそうだ。]
 

 
[無知な空澄くんには色んなこと
 直接、教えてあげたい。
 邪魔されたくないんだけどな。

 吉田はたぶん、
 おちんちん咥える前にキスしときたかったとか
 そんなところだろう。
 ぬるりと侵入してきた舌に応じて
 くちゅ、ぬちゅ、と水音を立たせる。
 空澄くんとのキスにはあった甘さは、無い。]


   ん、……ふ、……っ


[左、後ろ、上方。
 それぞれの向き限界に曲げさせられた首が
 悲鳴をあげ、苦しさに顔を歪めつつも
 暫く相手すれば、解放された。]
 

 
[纏わりついて離れて行ってくれる気配は
 ないけれど、放置することにして
 荒れた息のまま空澄くんのかわいい
 先が薄ピンク色のおちんちんに顔を寄せた。

 少しツンとした臭いが鼻をつく。
 剥いて洗うなんてしたことがないんだろう。
 どうしてかそんなところも可愛らしいと思う。]


   痛かったら言ってね……?


[唾液を溜め、潤ったクチの中へぱくりと導けば
 ぬるぬるの温かい舌が歓迎する。]
 

 
[包皮の中に小さな舌を忍び込ませて
 たっぷりの唾液を潤滑油に緩慢に這わし
 少しずつ、……少しずつ、
 先端に張り付いた皮を剥がしていく。]


   ん、…っ ちゅ、…ん…っく、…ちゅ…


[時折舌が見つける恥垢は舐め取り、
 しっかり味わってから飲み込んでしまう。
 嚥下しても唾液は次から次へと溢れて止まらない。
 懸命にしゃぶりつく顔は恍惚としていた。]
 

 
[その頃、空澄くんの死角で動く手は僕に伸びて。**]
 

 
[ 生きる為に両親を見殺しにした。

  生きる為に妹を売った。

  生きる為に裏切った兄を殺した。


  生きる為に。
  生きる為に。


  仕方がなかったんだ。]

 

 
[ ────本当に?]

 

 
[ 例えろくでなしの親でも、
  本当は死んで欲しくなかった。

  金の為なんかに、
  本当は妹を売りたくなんてなかった。

  裏切ったからって、
  本当は兄を殺すつもりじゃなかった。]

 

 
[ 自分が欲しかったものは……────。]

 

 
[ 男の顔を見た瞬間、
  無表情だった顔は歪み始めて。

  目玉が零れてしまうかというぐらい
  両目を剥き出しにし。

  大きく開いた口からは
  恐怖に塗れた呻きが零れだす]


   あ、ぁ、あぁぁ……あ。
   ………ああああああああああああ!


[ 溢れる叫び声は止まらない。
  次から次へと零れ落ちていく。
  何時までも、何時までも。]
 

 
[ そうして暫くしてから今度はえづき始め
  胃に微かに残っていた食べ物を口から吐き戻す。

  吐くものがなくなった後も
  胃液を口から垂れ流し、それは止まることはなく。

  吐きながらも、声にならない声を上げて
  その場に座り込んでは身体を震わせていた]
 

 
[ 今、そこにあるのは
  壊れた人形がただひとつ。

  ────それだけ。]*
 




  (そこに隠された感情の正体が、わからない。)



[堕ちきった脳みそが微かに受け止めた懇願のような言葉の意味に気づけない。

  放っておくことだってできた筈だ。
  何回も「殺す」と吠え続け、屠る機会だってあった筈だ。
  なのに、今まで一切も牙をつきたてなかったのは、
  彼の無事を心から喜んだのは、
  受け取った刃を復讐に染めずに残したのは

              …………一体
のため?


白黒、朦朧とした世界の中で、自分が受け入れている相手の輪郭が揺らいでいく。──過去と現在の曖昧な記憶の中で揺れていれば、“守りたい”と真っすぐに感情を向ける存在などいつまでも確定されやしない。]
[唯一無二が決められないから、大切なものが零れ落ちていく。手放してしまう。そのまま全てなくなって、狂い果てた孤独の咆哮を世界に轟かすだけの定め。]


  






                    
(……■しい、)


 



 やたらと素直に言う事を聞くと思ったら……


[いや、まぁ。
いきなり叫び声を上げ、
口にしたものを吐き戻したあの時から
その予感はあったのだ。


こりゃあ、壊しちまったんじゃねぇかって。



悪い予感ばかりがよく当たるってか、
正味、ビンゴだったらしい。


着替えさせる手にもなすがまま、
あの威勢の良い剣士は何処へやら。
ただひたすら震え続けるばかりでなぁ]

[なんとか飯屋に連れていき、
なんのかんのと話しかけたものの
それこそ綺麗な面したお人形さんというか。

はい、とか、いいえ、とかの
機械的な返事を聞くのが精々だっただろうか。


こうなりゃ剣士としては使えねぇ。
食事も終わり、いっそ路地裏にでも
捨ててっちまうかとも思ったが……]


 ────吐いたゲロの掃除くらい、
 自分でしてもらわんと困る。

 ほら、帰るぞ。


[そういうわけにゃあいかんよなぁ。

抱いちまった以上は情が移るし、
身体を造ったっつー意味では、餓鬼みたいなもんだし?]

[何より此処に置いてって、
こいつを他の奴らが好きにするっつーのは
どうにも気に食わないというかなんというか。

そんな訳で、再び館へととって返し]


 こうなった以上、右目奪還は当分お預けだ。

 片目が無いとなー、
 遠近感が判らんと言うか。

 飯と部屋は提供するから、
 館の掃除を頼めるか?


[と、メイド服を手渡してみれば、さて*]

 
[ その後、飯屋では
  何を聞かれたところでその口が
  音を紡ごうと動くことはなく。

  焦点の合わない目は
  ただひたすら虚空を見つめていた。


  館に連れ帰られた後も
  まともな意思疎通は叶わなかっただろう。

  それでも問い掛けには辛うじて首を縦に振って
  目の前でメイド服を受け取っては着替えていく]
 

 
[ そうして着替え終われば
  指示された通りに館の掃除を始めていった。

  床を掃き、雑巾がけをしたり
  特に何も無ければ館内の掃除をする事が
  彼女の日課となっていったか。


  それからは
  館のあちこちを幽鬼のごとく彷徨い
  掃除していく姿が見掛けられただろう。

  何も言わず、その瞳に光を宿す事もないままで]*
 



 廊下がホコリ塗れじゃないだと……


[ぴっとハメ殺しのマジックミラー号窓の桟に
人差し指の腹を走らせる。

今迄なら、何処ぞの田舎演劇よろしく
綿埃やら血痕やらが着いたもんだが。

此処しばらく、そんな馴染みの光景とも
おさらばする事ができたのだった。


──という訳で、普段であれば
短期間で変える隠れ家も
アシュレイちゃんが来てからはずっと同じ館に居続けで。


飯の用意は俺。
掃除全般はアシュレイちゃん。
ちょいちょいやって来る来客のお相手はオーク達という
妙な共同生活が続いていたのだった]

[まぁ、此処に居続けなのはもう一つ理由がある。

俺様の最新の実験体こと、
アシュレイちゃんの状態の観察の為だ。


ぶっ壊れちまったのが
精神的外傷のせいなのか
それとも俺様が行った精神移植魔導手術の
構造的な欠陥のせいなのか。

いやまぁ、いずれにしろ原因は俺様なんだが。

なるべく環境の変化を少なくして
色々試してみたいってなところだな]


 んー……
 ガントレットの宝石内の本体のバイタル値は
 変わら無いっつか、正常の範囲内だよなぁ……

 やっぱ、本体との接続部分な鎖と首輪で
 首絞めちまったのが不味かったか……?


[──だが、彼女が吐いたのはその後だ]



 やっぱその……
 おじさんにアレコレされたのが
 そんっなに嫌だったのかー?


[今日も今日とて全自動お掃除メイドな
アシュレイちゃんの進行方向に立ち塞がる。

っつても、怖がらせちゃいけないから
ちっちぇ子相手にするみたいに
少しばかり身を屈めて目の高さを合わせて]
 

 仲間を全滅させられたり、
 触手に襲われたり、オークに襲われたり、
 女の子にされちゃったり、まぁ、色々あったわけだが……

 アシュレイちゃん的に一番キツかったのが
 俺に手を出された事、なんかな?


[と、試しに無表情な彼女の頬に手を伸ばしてみれば*]

 

[ 泥濘を彷徨っていた。
  掴み所のない空間はいつしか温度を上げ、
  物体が独りでに燃え出すような灼熱に近付く。 ]


  ( だが、夢だと自覚出来ていた。
    もう悪夢に囚われることもない故に、
    此処でしか逢えない人物を思い浮かべる。 )



 [ その影は不思議な事に硝煙の向こう側からやって来て、
   座り込んでいた己の傍に佇むようにして立った。 ]

 

 


           先生。
   役目は終わった。言えなかった何もかもが。

  だが……もう一つだけやるべき事が残っている。


[その影に語りかければ、景色は川のほとりへと変わる。
例え、自分が心の中に生み出した幻影だとしても構わない。
もう直ぐ自分は終わるのだと、それだけ伝えたかった。

彼は黙って頷くだけだ。
唯耳を傾ける彼に、抱き締め合う歓びを教えてくれた彼に、
確り向き直って、言葉を選ぶのはそう難しくはない。]


 




     [ それなのに、目が覚めてしまった。 ]

[ 彼女の事だけは言う積もりになれなかったからなのか。 ]


 

 
[時折、彼がくれる小休止の合間が
 息継ぎの時間。



   はぁ…  はぁ… っ、んん…



[喘ぐように酸素を取り込んで
 また官能の海に沈められていく。

 少しの息苦しさと
 揺蕩うような心地と
 痺れるような気持ちよさが
 押し寄せてきて

 飲み込まれては、また引いていく。]
 

 
[繰り返される度に
 快感の波のうねりは強くなって


   
(‥‥もっと、)



 離れようとする
 唇を追いたくなった頃だ。

 彼の色っぽい表情でいっぱいだった視界が
 ふっと開けて、
 油断ならないヤツの姿が目に入る。

 気づかぬうちに吉田のヤロウが
 真昼くんの真後ろにまで来ていた。]
 

 
[あ、っと
 我に返った時には
 もうソイツの手は伸びていて

 今まで触れ合っていた
 もっと、と望んだ柔らかい唇が
 掠め取られていた。

 自分のモノって訳でもないのに
 盗られた!って思って、一瞬で頭が沸いた。]



   吉田、止めろッ、
   今すぐ 真昼くんから離れろッ!!!!




[猛烈な腹立ちを
 ビリ、と窓ガラスが震えるほどの声で叩きつける。

 それでも、その行為は終わらなかった。
 むしろ見せつけるように
 もっと激しくなって、
 涎が混じり合うみたいな音までし始める。
 

 
[昨日みたいに、
 体当たりして突き飛ばしてやりたいのに
 出来ない悔しさも全部

 
嫌だ!
とか
 
止めろ!
とか

 あらん限りの声に乗せて喚きまくった。

 水音が聞こえなくなった代わりに
 盗っ人の口が離れた時には
 オレの声は少し掠れていた。]
 

 
[真昼くんがこっちに向き直った後も
 早くどっか行けよ、と
 そのデカイ図体を見上げて睨み付け続ける。

 何も出来ない状態のオレに
 凄まれたって、屁でもないのは分かっていても
 そうせずには居られなくて。]
 

 
[そうしたら、ふいに真昼くんの声がして
 視線を下に向けるのと同時、
 憤りを体現したみたいに立ち上がったオレのものが
 ぬるりと飲み込まれていった。]



   ぅあぁぁぁっ……!



[びっくりしたのと
 あまりにも気持ち善すぎるのとで
 普段とは異なる、上擦った声が飛び出す。]
 

 
[柔らかくて、あったかくて、ぬるぬるで。
 腰から溶け出して
 オレの全部が真昼くんに吸い込まれてしまいそうな
 体験したことのない心地よさに
 また、頭が真っ白になってく。]



   あっ、…すご い  っ、

      ああっ、… まひるく、っ、 んんん…



[微かな痛みもあるけれど
 それを遥かに上回る快感で塗り潰されて
 驚くくらいに、声も甘く蕩けた。]
 

 
[やばい、すごい、きもちいい…以外
 何も考えられない。

 そんな汚いの、舐めたらダメだよ、とか
 吉田のヤロウのこと、とか
 何より、この持て成しが成功したら
 また昨日みたいに彼が酷い目に合うってこと、とか

 絶対に忘れちゃいけないことまで
 すっぽり抜けてしまうくらいに
 彼の手ほどきは、繊細で、優しくて、巧みで。
 

 
[糊で固められた穂先が
 ぬるま湯で解けていくみたいに、
 今までずっと隠れたままだった淡い桃色が
 恥ずかしそうに顔を露わしていくと

 そこを撫でる舌が、
 内側に溜まっていた汚れまで
 飲み込んでくれてるなんて知らなかったけど
 その時に押し付けられる上顎が
 どうしようもなく気持ちが良くて。


 そのうちに

 付け根の、さらに奥んとこが
 なんか…
 なんていうか……

 上手く言えないけど、なんか堪らなくて
 苦しいのとは違うのに
 ギュぅッと眉根が寄っていく。]
 

 
[そうこうしていると、さらに
 怖いくらいの、すごいのが込み上げて来て。]



   あっ、あっ、…まひる、くんっ、 

          あっ、なんか、やばっ…、ぃ


   で、っ…  出そ、ッ……



[切羽詰まった困惑声を響かせる。

 両脚の間の彼の頭を
 抱え込むように、体をくの字に折り曲げて
 必死にその恐ろしいほどの快感の波をやり過ごそうと
 全身にぎゅっと力を込めた。]*
 



   ────現実の温もりは、夢想迄もを変えてくれない。


   お伽噺の中の怪物はいつも独りぼっち。
   眼前に現れた人影に喜び近寄ろうとすれば、
   すぐさま頭に銃口を突きつけられる。

   血に塗れた誰かが自分を指さし罵倒する。
   臓物を吐く誰かが自分を睨みつけ続ける。
   大切だった誰かが自分を拒絶し遠ざける。


   「お前のやっていることは所詮自己満足だ」
   「仇討ちなんて言い訳のひとつにしかならない」
   「同胞さえも手に掛けたお前はもう─────」

      
「   唯の
殺しだ。   」


   一心に向けられる刃に心が悲鳴を上げても
   居場所のない化け物に安息が与えられるわけがない。
   息をすることさえも苦痛で仕方なくても
   止める事さえ許されない……死が許されぬ生き地獄。


 




    何時かの時。
    苦痛の夢から救ってくれた人物の影が脳裏を過ぎる。
    彼の名前を呼ぼうとして───錆び付いた喉が灼けた。



(名前が………言えない。思い出せない。
 焼けた手紙と共に朽ち果てた少女の初恋は、
 人間性と共に勢いよく崩れ落ちていく。

     何れまともじゃいられなくなる予兆のように、
     美しい思い出でさえも腕の中から消えていく。)


 







      醒めろと何度も念じ続ける。
      いつか醒めぬ現実になると分かっていても。

 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[…………最悪な目覚めであった。]

[砦の中だということを忘れかけていたのかもしれない。
扉の向こうの他人の声に乙女には程遠い野太い悲鳴ですっぽり布団を被って震えていた。
昨夜の乱れ具合が嘘のように生まれたままの姿を隠し、朝の寒さに震え続ける。
随分昔の頃のように寝ぼけ、平然とした相手を恨めしそうに睨め付けた儘、差し出された服を震えた手つきで引っ掴む。もぞもぞとシーツの芋虫の如く蠢いた後、いつもよりも長い袖に不満を零しながら這い出てきた頃合い。
自分が窓を叩くまで彼が何をしていたのか。
知る機会がなければ、白紙の紙の内容さえも察せる筈もなく、


    ……掛けられた言の葉に頬を染め、き、と睨みつけた。]

 
(2) 2020/12/10(Thu) 21:42:11

【人】 終焉の獣 リヴァイ




(これほどまでに昨夜の不貞を呪ったことはない。
 もう間違いは重ねないでおこうと誓ったのは
 彼の言葉を本気で捉えたせいであろうか。)



    
お前、本当に殺してやるからな……!



[わなわなと振動する拳を振るうよりも先、昨夜散らばった衣服の残骸から見つけ出した短剣を引っ掴み、懐に放り込む。眼帯を探して拾い上げればしゅる、と傷跡が目立つ右目に括り付けた。

思い出したように、転がっていた真鍮製の注射器を取り上げる。
ぶかぶかとした服の袖をたくし上げれば、狂ったように注射痕の乱れ咲いた腕が曝け出された。
いつか見た事があったであろう真紅に染まった液体を、唇を噛みしめ血管の中に注ぎ込む。

…………決心の現れを、身に刻み込むように。


殆ど手ぶら同然の彼女の支度はこれにて閉幕。]


[その後浴びる視線と独り歩きする噂話は、かつての学び舎を彷彿とさせる。ポーカーフェイスの仮面を被りながら、化け物の噂は立っていないかと神経を張り巡らせていたのは内緒の話。

────そんな余計な心配も、彼が帰路の途中で寄る場所の正体を察してからは消えてなくなるのだろうが]*


 
(3) 2020/12/10(Thu) 21:42:14
 
[空澄くんとしたのより大人のキスを
 別の人としていると
 鼓膜が痛いほどの怒気が発せられる。

 嫌なことを強いられていると
 思っているのだろう。
 僕が感じることのない痛みを感じて
 僕の代わりに怒ってくれているのだろう。]


   (ああ、かわいいなぁ……)


[粘膜を擦り合わせるよりなおゾクゾクする。
 胸の奥から泉のように感情が湧き出ずる。
 それを
愛おしさ
と呼ぶことを僕は知らぬ、まま]
 

 
[咥え愛でれば掠れてしまった声も
 蜂蜜のように甘くなっていった。

 他のことは忘れてしまったように
 僕が与えるものだけに耽溺する君を
 口に含んだまま見上げ思う。]
 

 
[────とても残念だよ、空澄くん。

 でも、仕方ないよね。
 だってこんな気持ちいいの、きっと初めてだもんね。]
 

 
[胸の奥から溢れていた何かがぴたりと止む。

 誰かに盗られてしまう前に
 この場で跨り、奪ってしまいたかった。
 そんな欲望はいまはなりを潜めた。

 快楽を教える動きだけ休むことを知らず
 背中の白い羽根を一枚ずつ優しく毟り取るように
 恥垢を剥がし、飲み込みきれば、
 露出した如何にも粘膜といった先端を
 顎の内側、喉奥へと擦り付けて嬲った。]


   ん、っふ、 
ぢゅ……っ



[唇を窄めて深く咥え頭を揺するのを繰り返し
 限界を伝えられれば一層強く吸い付いた。
 温かく青臭いものが口の中に拡がっていく。]
 

 

   ……、……ぷ、はぁ……


[君を気持ち良くできて嬉しくて
 受け止めた体液はゆっくりと喉奥に流し込み
 どろりとした喉越しが過ぎれば息を吐いた。
 達成感は確かにある。
 けれどどこか冷めた心地が足下を攫っていく。]
 

 

   …………目、瞑っててね


[見せた微笑みはこれまでで一番淡い。
 強い力で腰を抱かれ、
 身を寄せていた膝から引き剥がされる。]
 

 
[十一月。日の落ちた教室は冷え込み
 触れていた箇所に移っていた温もりが
 消えるのは早かっただろう。

 今日もこの階だけ、見廻りが来ることはなかった。**]
 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[かの皇帝が信仰の熱い人物だと言う話は今まで聞いたことがなかった。
故に、教会などという場で足を止める理由が追悼以外に見つからない。無関係であるのは百も承知であるが、一歩退いた場所でその様を俯きがちに見つめていた。
刺さる視線が酷く痛い。王族に擦り寄る女にしては、随分と場違いな噂が尾鰭を付いて回っている。それが大きくなればなるほど自身の首の値など信じられぬ値段になる故──彼の判断は妥当、といったところか。


帝王学部に難癖を付けておちょくってきた学生時代、彼女のことを聞いたことも無ければ直接話したこともない。
が、時折彼の傍らにいた事実のみを思い出し───「そうか」と相槌を打った。]


(とっくのとうに捨て去った筈の陽だまりが、
 少しずつ確実に崩れ落ちていることを改めて理解する。
 その選択を、尊い犠牲を、
 自分が口を出す資格なんてあるはずがなく。)


 
(7) 2020/12/11(Fri) 9:56:45

【人】 終焉の獣 リヴァイ



(学友のみでなく、守りたかった本心とは裏腹に、
 踏み台にして国家焼却炉の燃え滓にしてしまった
 嘗ての同胞たちのことが頭によぎっていた。

 人権さえ奪われていた彼等が
 国の土の下に眠る権利を与えられるはずもない。
 殺した事実を国へ公表した手前、
 満足に墓も作ってやらなかったことを思い出す。

      ……彼等に罵られて当然の結果だろう。)



  ……お前がそう決めたのであればそうなのだろう。
  特に何も言いやしないさ。
  争いとは生と死によって成り立っているのだから。

                   
お前と私も。

                 ……そうだろう?


[声を潜めた密談に肯定とも否定とも取れぬ言葉を返したのは、
どちらの立場にも立つことができない内心があってこそ。
物憂げに睫毛を馳せて───再び上げた隻眼は、真っ直ぐな意思を持っていた。]

 
(8) 2020/12/11(Fri) 9:57:46

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  ……頽れる前に私が喰ってやるから安心しろ。
             苦しませはしないさ。

  (懐の中で握りしめた約束が、やけに熱かった。)


[悪魔の脚本通りのつまらぬ芝居などごめんであった。
チェス盤に並べるには些か駒数が少なすぎるかもしれないが、2騎もあれば勝負はできよう。
犠牲に必要か否かを問うには既に罪を重ねすぎた思考回路を無理やり望む向きに正そうとしていた。

     ……未だ彼の本心にも、託した毒が使われるのかも
             気付ける予兆も感じないまま。]*

 
(9) 2020/12/11(Fri) 9:57:51
 
[ 物言わぬ人形は今日も館の掃除を行う。
  館の主人の気持ちを知る事もなき儘で。


  そんなある時、進行方向に立ち塞がる影。
  館の主たる魔王その人である。

  彼の手が頬に触れても、何か反応を返す事はなく
  そのまま横を通り過ぎては掃除を再開するのであった。


  声は届いているのかもしれない。
  それでも表情は冷たく凍った儘。

  手を動かしてははたきで埃を落としていく。]
 

 
[ それからも、掃除を日課として
  物言わぬ儘館のあちこちへ足を運んで。

  日々を過ごす内、ほとんど何も変わらずに。


  けれども少し内側で変化があったのか。

  空を飛ぶ小鳥を指差しては
  「ちゅん、ちゅん」を小さく声を零しては
  両腕をぱたぱたとさせたり、
  オークを目にしては「ぶーぶ」と呟いたり。

  まるで小さな子供のような反応を示していた]*
 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[搾取ばかりを繰り返し、戦乱にあけくれ、絢爛豪華な閉鎖空間で悦を得るばかりの祖国を見てきた自分には、英雄の帰還を祝うような他国の雰囲気が少しばかり眩しく見えた。]


[場違いなのだとわかっていても、飛び交う真紅に圧倒される。
君主の振る舞いに刮目し、称賛を述べられ、それに応える姿は幼い頃に夢見た理想の国の姿と重なってしまう。

(権力の全てが憎らしいとさえ思っていたが、
 民主主義を声高々に掲げようとも思わないのだ。
 誰も搾取されず、貧困に喘がず、差別もされず、
     幸福に生きていられるのなら……それで。)


数日経てば馬の扱いにも慣れ、指定された立ち位置を保ちながら民に揉まれる元学友の姿を唖然と見つめている他無かったのだ。]


(ひとつの国が長年の屈辱から解放される瞬間。
 誰もが縛られることがない。誰もが自由を喜んでいる。
 誰もが不安を抱えることなく生きている。

 血と断末魔を乗り越えた先に存在するエデンの証明。
 こんな場所で、あの子と生きてみたかったとさえ。)


 
(16) 2020/12/11(Fri) 21:15:49

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  
(…………でも、 お前は?)

  [前よりもやや逞しくなった後ろ姿からでは
  彼の表情なんかわかりやしないのだろうが、
  彼が本当に心から笑っているのか自信が無くて、
  やや俯いた表情を曇らせてしまった。

        手元に残るは、引き裂くべき生命の運命。]

  (私が此処迄穢れる道を辿らなければ、
   お前は唯、誰にも知られず孤独に燃え尽きたのか?)


 
(17) 2020/12/11(Fri) 21:15:52

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[まるで帰りを悲しむ輝夜姫のようだ。
道行く月を見上げては意識を遠ざける日々が続いていた。
毎晩毎晩戒めるように刺し込む注射器の数は日々減っていき、その効力も定かなのかさえわからなくなってくる。
悪夢に苛まれる時間が増え、学生の頃よりも寝不足になっていたのかもしれない。
煌びやかな衣装は元々余り惹かれる性格でもなければ、刻限が迫る時の中で侍女と話して交友を深めようとも思えない。
削れていく自我を徐々に感じながら、残った意識を手繰り寄せるように食事だけは噛みしめていた。人間以外で湧き出る涎こそが自分を自分たらしめる証拠だとでもいうように。]


[声を掛けられたのは、夢遊病のように部屋を彷徨っていた時だった。
少し瞬いた後二つ返事で向かった先はどの部屋よりも広々としており、彼の権威を思い知らされる。
権力を何より嫌っていた癖に、大人しく王宮に収まる自分の今の状況に心の中で苦笑しながら席に着く。

────随分と昔、学び舎の一室で似たようなことをしたことを思い出していた。]

 
(18) 2020/12/11(Fri) 21:15:55

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[日頃の彼の暴食っぷりを見ていれば、
糖質控えめのものでも少々眉を顰める要因にはなろう。
……けれど、もう今は小言を言う気にもなれなかった。言えるような精神をしていない、と言うべきなのか。

つかの間に与えられた安らぎに浸るように言葉を紡ぎ、低体温症の身体に暖かな紅茶を流し込んでいく。
茶会の席で彼女が選んだドレスコードは、最初に与えられたものと同じ。黒を基調としたロング丈のワンピースの上に、男物の軍服。]



  お前と私じゃ価値観が違う。
  生まれも育ちも違えば何れ突き当たる常識だな。
  昔は全くもって理解出来やしなかったが、
  今ならなんとなくわかる気がする。

    私はお前では見ている景色が違いすぎるだけだ。
                   だけど……な。


  
(19) 2020/12/11(Fri) 21:15:58

【人】 終焉の獣 リヴァイ



(自分の決めた道を真っ向から突き放すような言葉を吐かれ、
 思わず頭に血が上り、我を忘れて相手を貶したことを思い出す。
 あの時は互いに守りたいものが異なっていただけだというのに
 馬鹿の一つ覚えのように傷つけあって、おかしなことだ。

 ……どちらも決めた道から逸れないのだと知っていたのに。)



   ────そう聞かれれば、そうなのかもしれないな。
   私もどうしてなのかは全くもってわからないのだが
   もう二度と自分の目の前で、自分以外の誰かが
   相手自身のためではないことに苦しむことが
   見ていられなかっただけなんだろうさ。


(自分は守られたいだなんて思っちゃいなかったのに、
 守護の代わりに命を捨てる誰かの姿を思い浮かべて目を細めた。
 ……相手の中に渦巻く感情を理解できてもいないから、
   平然とそんなことを言っていられた。)



[死刑宣告のような重みのある言葉に隻眼を軽く向け、返事は瞬きを数回。……承諾なんて声に出さなくてもいい筈だ。
その呼び出しの意味を、どうしようもなく理解できていたから。]


 
(20) 2020/12/11(Fri) 21:16:02


[─────最後の注射針を、腕に深く刺し込んでいく。
痛々しい針痕だらけの腕は悲鳴をあげていてもおかしくないのに、もう痛みさえもわからないくらいに感覚が麻痺していた。

有り余るほどにあった赤い薬品ケースが、今では一つも見当たらない。
材料が無ければ作りたくてもそれすら叶わないだろう。
この日が終われば不要になるとわかりきっていたから敢えて作らなかったのだ。

綿密に、秘密裏に編み込まれた計画の中。今宵は綺麗な満月が望める筈だ。明から暗へと変化するグラデーションを眺め、沈みゆく火の惑星を見守った。

  (この夜を超えれば、私は。
   ……本当にどこへも行けない怪物になってしまうのだ。)

引き留めるものも理由もありはしない。全て自分の意思で捨ててしまった。
後は嘗て死にかけだった獅子を頭から貪れば、きっとそれで終わってしまう。
少しも寛げなかった客間の扉を静かに閉めれば、向かっていくのは謁見の間。

  息苦しさに喘ぐ   彼
……王族に唾を吐く性格の彼女には到底似合わない場所こそ、最期を飾るに相応しく。]


 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[初めて触れる重い扉を押せば────案外呆気なく視界は開けた。
壁を飾るステンドグラス、眼前に聳え立つ階段の先に見える鉄の玉座はどこまでも冷たい温度を感じさせるようで。

未だに長い袖の下の手をぐ、と握りしめたのは、伝わる寒さに耐えようとしたのか。
凍土の色を抱く瞳で頂上の主を真っすぐ見つめる。その目は昔のように燃え盛るかの如く光っているのだろうか。

月は未だに雲間に隠れ、その正体を現していない。自分の病の発作が現れる予兆が無いのなら、少し位の言葉は交わせたのかもしれないが、]


        ………………どうやら、もう時間のようだな。


[最後の会話がどんなものであれ、満月の衣は何れは流れ去ってしまうから。
徐々に訪れる視界の揺らぎと、頭痛の初期症状を鈍いながらも感じれば、か細い声で非道な運命のカーテンコールを告げようか。*]


 
(21) 2020/12/11(Fri) 21:16:14
 

[ 広がる光景に酷い既視感を憶える。
  覚醒すれば忽ち薄れて消えてしまう様な記憶だが、
  夢の続きに導かれて再び小川の畔に立っていた。

  アルデンヌの森。
  小春日和と呼ぶべき柔らかな温もりを風が運ぶと共に、
  木の葉のさざめきと栗鼠の鳴き声を伝えている。 ]


 ( 言いそびれた台詞などたった一つだけ。
   其れを解っているから貴方は何も訊かないのか。 )



 [ 隣合う影法師は何も語らない。
   此方が口を開くその時を待っているかの様に。

   言わなければ。
   もう、夢を見る事だって二度と無くなるのだから。 ]

 



[ 睦言を交わし合う様な仲でこそなかったが、
  課外学習に似た認識をお互いに抱いていた筈だ。
  其れは最早利己的な利用関係には留まらず…… ]


( 然れど、あの学び舎に背を向けた日から
  二度と逢う事はないと思っていた。

    学友を、教師を、実の父でさえも殺す未来を
    打ち明ける決断は出来なかったのだから。 )


 



        
( ……だから。 )


    ・・
( お前だけは何も知らなくていい。
  望んだ時のみ遠い國の史書を手に取れば良かろう。

   血濡れた路を辿らず、陽向の如く唯、
   何も出来ずに────老いて、然して逝け。 )



 [ 其れがたった一つの、彼なりの優しさだったから。 ]


 

 


           
さようなら。次は無い

       …… Auf Wiedersehen.



 



[ 多くの人間に失望した。
  其れを元々立っている場所が違うのだと割り切って来た。

  其の中で彼は、内情に踏み入ろうとはしなかった。
  その上で手を貸し続けてくれた。
  他の誰とも違う。

  其れでも、置き去りにするのだ。何一つ告げぬ儘。
  戦士でなければ、野心家でもないのだから。 ]




      [ 懐剣を抱き締めて、其の場を去ろう。
        既に最期の夜は明けようとしている。 ]*

 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[────静寂だけが二人の繋がりを証明する手段のようだ。
投げかけられた微笑みとは対照的に、見上げる夜色の女は唇を噛みしめ顔を歪ませる。

(同じ場所へ至れるとまでは思っていない。
 微かな願いは届くわけがないとさえ思っている。
 今まで通り送り出すのみの略奪者の仮面を被り、
 血に塗れた腕を伸ばすだけの未来を見ていた。)


     ────力尽きたようなさまを見開いて認めると同時、
     この世の終わりのような痛みが脳を襲って頽れた。]


 
(31) 2020/12/12(Sat) 1:07:05

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  (お願いだから持ってくれ、私の自我よ。)

  (どうか、楽に逝ってくれ、私の…………)



           
[意識がノイズに乱される。]

 
(32) 2020/12/12(Sat) 1:07:09

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[噫!
頂点に聳え立つのは月をも喰らいつくさんとする百獣の王を模した幻影の如き虚な姿と
(影と混ざり合う、まるでキメラのようなそれは、月光病さえも彷彿とさせるような…)

そこに至る迄の試練の如く降り注ぐのは
灼熱地獄にも似て非なる───冷酷非道な怪物の命をかき消さんとする

        随分と”洒落た”カーテンコール!!]


 
(33) 2020/12/12(Sat) 1:10:36

【人】 終焉の獣 リヴァイ




     ────────……… 
ッ !!



[温度が上がる。
     
         裁きの炎が堕ちてくる。

ばらばらと崩れ落ちる硝子片たちを避けながら、
ステップを踏めば、遥か頂上の仇を睨み上げるのだ。
そうして口の中に仕舞い込んだ短剣を砕かぬように感触を確かめ──────、]

 
 
(34) 2020/12/12(Sat) 1:10:42

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[────苦痛と共に硬い表皮に覆われた巨大な身体を大きく振るわせる。
燃え盛る火炎に呼応するように、ひとたび大きな咆哮を上げた。
鱗を舐める高音をものともせず、嘗て諸国を超えて彼の元へ辿り着いた四足歩行が空間ごと揺らす勢いで何段かもしれぬ階段を登り始める。
目指すは頂上一点のみ。その先に臨む宿敵を───神を欺く憎き悪魔から大切なものを奪い取るために。

  数多の武器を跳ね返す鋼の如き身体でも、
  あの日の銃弾が脇腹を抉ったように、弱点はある。
  女が完璧な怪物になりきれぬ証のように。
  ちりちりと焦げる熱が臓器まで浸そうとも、
  この自我だけは……生命だけは、燃やさせない。


大昔の聖人が海を割った逸話を繰り返すわけではないが───目には目を。歯には歯を。炎には炎を。
ご お ぉ───……
と、鋭い牙の生え揃った顎を大きく開け、蒼く燃え盛る
を吐いた。

      
(35) 2020/12/12(Sat) 1:11:52

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[怪物の吐息にも似たそれは、見た目に似合わず凍えそうな死の温度を纏っている。
試練に立ちふさがる灼熱の壁を溶かし、一本道の活路を切り開けたのかどうか。]



[否、作れなくとも構わない。その壁を突破し、彼奴に届けばそれでいいのだ。

どこまでも彼に温もりを与え続けた怪物が最後に届けるのは終焉を知らせる冬の到来。
左手には闇を、左手には約束を。誰よりも憎み■したかった者たちを壊すために目覚めたのだから。


凍てつく波動じみた炎を、遥か上の相手へと叩きつけるように吐いた後、
切り開いた活路を───開かれないのであれば、腹を焦がしながら。重い身体を引きずらせ、只管に玉座を目指し続ける。
口内にしまい込んだ短剣を振りかぶる時を待ちわびながら、燃え盛る瞳は真っすぐに相手を打ち付けながら。]*


 
(36) 2020/12/12(Sat) 1:14:16




  其の頭上で、月が消える。
  再び衣に包み隠された氷の星の表情は失せる。


   同時に、黒き至高の獣の行方を僅かに眩ませるだろう。



 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[修羅を貫く真っ赤な旅路の道中で、数多のものを投げ捨ててきた。

最後まで使うことの無かった、約束だけをこの手に残して。

必死につなぎ留めた意識を代償に、この身に降りかかる災厄を全て受け止める。罅割れかけた精神がこれ以上は限界であると叫ぼうと───この夜だけ保ってくれたらそれでよかった。


(その後は、どこへなりとでも燃え尽きればいいのだ。
 理性を失い、数多の人を喰らい、正真正銘の野生へ変われ。
 だが───今は。今だけは。
 略奪者ではなく、救済者としてあってくれ。

        この場で朽ち果てるわけにはいかないから。)


掻き消えた絶対零度が示す道を辿るように一直線に百段を駆け上がろうとすれば、大気圏に触れて温度を上げる小惑星じみた火炎が眼前に迫る。
咄嗟に吐き出した吹雪は勢いを弱めていたものの、石段を砕け落とす前に威力を弱めることはできた筈。

何層にも分かれた炎が頭蓋骨にぶつかれば、元来の頭痛が更に速度を上げて、鱗の隙間から血が垂れ流された。

苦痛を振り切るように轟く咆哮が空気を震わせれば、焦げ付く身体をくねらせて、数多の命を喰らった巨大な口を大きく開き───絶え間なく涎を垂れ流す。]

 
(40) 2020/12/12(Sat) 2:52:31

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[断頭台の如き刃の一撃を、身を捩って躱しきる。
四肢の骨が焦げる音がしたが、知ったことではない。

床に勢いよくついた前足にスナップを効かせれば、尾が大きく上へと踊る。そのまま勢いよく振り下ろせば────空間を大きく揺らし、砂埃のような瓦礫の屑が一帯を覆うだろう。

  目くらましのようなそれに目を奪われていれば、
  きっと獣の行方も、変わった姿も、認める早さは遅くなる。
  衝撃を利用して一瞬のうちに宙へと躍り出た────
  大口を開けた獣と言うよりは、鱗に覆われた女の姿。

たったひとつの約束を抱えて、悪魔に襲い掛かろうとする、運命でさえも抗うちっぽけな存在。
赤から戻ったアイスブルーと、錆びることなく澄み切った刃の輝きだけが、これから起こる未来のことを物語るように。]


 
(41) 2020/12/12(Sat) 2:52:34


  [────月が、味方しているのだろうか。]

  [幾ら空に、
  映る水面に手を伸ばしても届くことの無かった幻想。

  つがいの獣を喰らい、自らの運命を呪った夜も、
  寄り添い合って安らぎを得た夜も、
  熱を与え、痛みを分け合い混じりあった夜も、

  ……すべてを見守っていた、
  どこまでも大嫌いで憎たらしかった呪いの元凶が。]


 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[刹那────月が翳る。]



     ッ 、
う゛
あぁぁあぁぁ!!!!!!!!



[咆哮と叫びが混じりあっていく。
飛び掛かった獣の姿が剥がれていく。

雲間に隠れた月明かりがわずかに照らすのは、高く跳躍した人外の一部を残した女が空気に躍らせる、漆黒に輝く黒髪の艶やかさ。
未だに痛む身体中の火傷の残響が示しているのは、“元の姿に戻るのはこれが最後である”という証。

鋭利な牙が生えそろった顎が、何にも穢れぬ短剣を振りかぶった両腕に代わり────獲物に喰い掛かる代わりに、その左胸を貫き通そうとした。*]

 
(42) 2020/12/12(Sat) 2:52:41

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[──────────びゅいッ と黒翼広げた暗殺者独り
冬空を切って星まで堕とさんとばかりの勢いで振りかぶる。
心の臓を着地点とした短剣がどうなったのか、悪魔学に疎い己はすぐに判断などできず貫けてしまったとして...これから起こることなど、分からない。

 それでも、ふと我に帰れば狂気の離れた身体を
 抱き止めてやりたくて、思わず腕を伸ばした。
(誰だって意識のある確実な死は寒いものだから、
 大切なのだと認めた者の最後くらいは寄り添いたい。
 ……自分自身が征服者として奪ったものを、
   まだこの胸の中に残ったわずかな人間性で。)

 息さえぴったりと合わされば、抱き合う形をとって、

───それから。]


   
(55) 2020/12/12(Sat) 8:08:00

【人】 終焉の獣 リヴァイ




     ………ッ
!?


            ふ……ッん────ぅ、


[御伽噺の口づけなんかとは程遠い、貪り尽くすかのように覆い被さられたそれに大きく肩が跳ねた。
甘さの中に錆びた香りが混じりこんだそれは酸素の代わりに強制的に流し込まれて、脳みそを強過ぎる刺激が塗り替えていく。


その味の正体が、嘗て自分が渡した小瓶の中身だということにすんでのところで気づけない。
逃げることを許されない確実な死を運ぶ餌付けを享受しながら、ファーストキスにしては酷過ぎるそれまでもを受け入れようとする。


互いが最後に共有するのは終焉へと至る迄の過程だったのか。理解しようとしても時既に遅し。
小さな身体が唐突に受け止めるにはその激情は果てしなく重く、きつく蓋をされ続けてきただけのしかかるものの多さに圧倒される。

幾ら閉鎖的で鈍感な精神と思考を持っていても、
過去に抱いたことのある感情への名前の付け方を知っていれば……己に向けられるそれがなんなのかくらいわかる筈。

……自惚れているのかと思われても仕方ないかもしれないが。]


 
(56) 2020/12/12(Sat) 8:08:05

【人】 終焉の獣 リヴァイ




[鼓膜を揺らすのは、遅すぎるくらいの愛の懇願。大きく見開かれた片目の澄み渡った凍土が激しく揺れ、隠し切れぬ動揺を明らかにしていた。
……些か物騒な赤い糸を繋げた激しさに朦朧とした意識をなんとか奮い立たせようとしても、微笑まれた相手の視界には蕩けた表情を隠すことができない己の情けなさが映し込まれるのみ。]



           …………どうして、私なんか、
           
(怪物なんかいたところで、)



[思わず零れ落ちるのは、純粋な疑問。
その答えを聞く前に、終わりに近づく身体は冷たい床の上に頽れていこうとするから───反射的に相手を抱きとめ、包み込んで。
ゆっくりと正座するように腰を下ろしたその膝へ、頭を降ろさせようとする。]

 
(57) 2020/12/12(Sat) 8:08:09

【人】 終焉の獣 リヴァイ



(……ぽた ぽた と。
 その頬に流れゆくのは、枯れたと思っていた涙。
 冷ややかな頬を伝えば、温度を徐々に失う相手の顔に
 水滴を立ててしまうから、絶えず指先で拭っていた。)



[………今からずっと昔。
幼馴染を喰らった日からだった。
どんなに慕われようと、ひとの関わりは自然と薄れていった。
自身の友好関係など、信頼関係など、誰かの蜘蛛の巣から零れた糸を伝っていたものに過ぎなかったのだ。


 ( ”弱い”自分の代わりに、”智慧”を身につけた。
   身につけても、私は─── 弱虫で、臆病者だ。
   全てを守れるだけの力も 救える力もなかった。
   だから、 「選んで」 「棄てた」。

    修羅を歩む孤独な道が正しいのだと信じて。 )


────……大事なものなんて、選べるものじゃないのに。
    その先は、何よりも恐れる孤独があるだけなのに。]


 
(58) 2020/12/12(Sat) 8:08:29

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[力尽きたあの子を抱き上げてから気づいた。
私は呪いなんて要らなかった。
ただ、大切な誰かが苦しんでいるなら、
その悲惨な苦痛に苦しんでいるのなら。

    ────…… 傍で寄り添い、支えたかっただけ。
      互いにひとりぼっちになりたくなかっただけ。]



    ………傍に、いてくれるのか?
    これからも、ずっと……私の隣に。


[今も舌先に残り続ける甘ったるさの味の源を辿ろうとすれば、漸く彼の意図がわかった気がして───叶わなかったはずの自身の悲願が届いたような、不思議な暖かさが広がって。浮かべたのは泣き笑い。

指し示されるはずのなかった“自分を持ったままの終焉”を約束された安息感だけが、この心を静かに満たしていた。]

(返事なんて必要なかった。
 返される内容さえも察しがついてしまう問いだから。
 もう孤独に震えることも、泣き叫ぶこともない。
 死の向こう側に至ってもずっと、寂しくないという事実が
 揺らぐことなく目の前に差し出されているだけ。)


 
(59) 2020/12/12(Sat) 8:08:50

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[プロポーズにも似た短い言葉に、乙女のように応えることは自分らしくもないだろうから。
ほんの少しだけ……死の間際に、痛みを我慢してほしい。
全てを奪われたあの夜の仕返し。火傷だらけの身体には、彼の所有印が未だ色濃く全身に残っていたはずだから。]


[相手に覆い被さって、その喉元を引き裂かぬ程度に食らい付く。
口づけのお返しとしては少々野蛮な噛み跡をひとつ、そこにくっきりと浮かばせて───それが懇願への返事の代わり。
此奴は永遠に自分の獲物だと言わんばかりのマーキング。]


[遅効性の毒薬がその身を激しい苦痛の末路へと誘うまで────あと少し。
死に向かうには寒すぎる季節の訪れを告げるのは、割れてしまった窓から降り注ぐ雨から変化した───……*]


 
(60) 2020/12/12(Sat) 8:15:17
 
[焦るような声を上げてから、あっという間だった。
 強く吸い付かれるのと同時

 
ドクン!


 死んじゃうんじゃないかってくらい
 ものすごく大きな
 心臓の鼓動みたいなのが来て]



   
あっ、 んああっ……!!




[おしっことは違う
 なんかドロっとした熱い塊みたいなのが
 溢れ出る感覚があって、

 それが、
 今まで感じた事のない
 めちゃめちゃに強烈な快感で。]
 

 
[だけど、その余韻に
 浸れるような状況じゃなかった。

 また、
 胸がギュッて痛くなるような
 真昼くんの、あの
 消えちゃいそうな儚い微笑みが見えて、

 それから、その後は────…]
 

 

[後悔の嵐だった。]

 

 
[夜端のヤロウが言った”持て成し”の意味。

 こうなることが分かってて
 真昼くんは、オレを身代わりにさせまいと
 懸命にしてくれたんだってこと。

 何も分かってなくて
 ただただ気持ちよくなってしまった
 自分の浅はかさ。

 全部、全部、理解できた。
けど遅かった。遅すぎた。

 

 
[ぐちぐち、と
 汚いモノが真昼くんの体を引き裂くのを
 至近距離で見せつけられて

 悔しさが、憤りが
 目から零れ落ちてくる。]



   
………ぅ、 …………っく、…




[殺しきれない嗚咽が
 キツく噛んで血の滲んだ唇の奥で、鳴る。]
 



   (オレも、あいつらと
    何にも変わらないじゃないかッ!

    助けるなんて言ってたくせに
    自分勝手に気持ちよくなって
    真昼くんをあっさり生贄に差し出して、…

    最低だ、最悪だ、ッ

    オレも、アイツらも皆、死ねばいい!!)


                         ]

 
[蟀谷が痛くなるくらい泣き腫らして
 視界が狭くなっても
 睨み付けることを止めなかった。

 視線で殺せるなら
 全員、焼き殺してやったのに。
無力だった。

 

 
[ふたり、残された教室。

 青臭い匂いも
 残された水風船も
 意味を伴ってしまえば、吐き気を催す代物だ。

 そして、自分もまた同じものを
 彼に飲ませたんだと思えば、殴り倒してやりたくなる。
 なのに、痺れた腕では
 拳を固く握ることすらままならない。]



   真昼くん… ごめん、 ごめんね…

   オレ、あいつらと同じだった。
   ほんと最低だ、
   死ねばいいと思うよ、

   ……けど、
 
   このまま死んだら、ただの犬死になる。
   あいつら全員 殺してからだ。



[憎悪の滲む低い声が
 冷たい教室の空気を震わせた。]*
 

 
[枯れた声が地を這い鼓膜を震わせる。
 深い後悔の一部が伝わってくるようだった。

 最中も、そちらを見ずとも
 伝わってきていた。

 僕が持つ前に諦めた憤り、殺意が。

 君も彼らと同じだと思った。
 ――だけど、違うと思っていい?

 手足の縄を解いてあげた指先を
 残る跡へとそっと伸ばし、優しくさする。]
 

 
[君は感じなくて良い筈の
 痛みに触れて苦しんでいる。

 心も、身体も。

 解放してあげるべきだろう。
 きっと、そうした。]
 

 
[ 僕に人の心があったのならば。 ]
 

 

   ────…ダメだよ、空澄くん

 

 
[僕は引き止める。
 君が見せてくれるかも知れない未来に期待して。
 ……そう、どこまでも身勝手に。]


   僕のそばに、いてくれないの
   そんなことをしたら

   僕はまたひとりになっちゃう……

   空澄くんは、僕といてくれなきゃダメ


[放っておかないという
 君の言質を利用する。

 ……今日の奴らだけじゃだめなんだ。
 この先僕を傷つけうる全てから
 守ってくれなきゃ。守り続けてくれなきゃ。]
 

      
共有者

[ 君は僕のものだから。** ]
 

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[私は自分勝手な復讐心で数多の敵と同胞を殺し、狂い果てるべき定めの“ひとでなし”だった。

  (こんな私を怖がらない。
   こんな私を拒まない。
   あまつさえ、こんな私の願いを叶えようとした。
   いつまでもばかで愚かだと思うが────……、)

でも、お前が私に向ける気持ちを、漸く理解できた。

(2人寄り添い眠った夜が穏やかだった訳も、
 餞別を渡す名残惜しそうなかんばせも、
 甘く抱かれた夜に触れる優しい手つきも、

     ……いまなら全部、納得がいく。)

────────……… だから、「噛んだ。」
                (応えた。)]


 
(61) 2020/12/12(Sat) 9:46:39

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  (『────……傍に居てくれ、リヴ。』)
  (「……何処にも行けぬと知っておろうに。」)



[大切なものを傷つけてはならないと知っていたのに。
死に向かう痛みを増やすだけだというのに。

百獣の王には、その生き様に相応しいくちづけを。
(いつまでも自分から祝福を送れないまま、)
その喉に自己主張の少々激しい其れを残してしまったのは、

   地獄までの一本道で出会うための目印代わりと
   ─────指切りの代わりだったのかもしれない。]

 
(62) 2020/12/12(Sat) 9:46:58



[雲隠れした月明かり。その隙間から光が差し込まれるのが見えた。
朦朧とする視界の中で、自身が最初に手を下した傷だらけの姿が歩いてくる。
「迎えにきたよ」と弱々しい手が差し伸べられた気がしたから、腕を伸ばして────……]


              ………………噫。


[ゆっくりと、その手を下ろす。
腕の中の赤い髪を、傷つけないように梳き下ろした。]


 



  ………君が許してくれても、
  私は君の元へ行く資格なんてないんだ。
  何より君の友人が許してくれないだろう。
  
(私はひとごろしなんだから。)


     ……それに、此奴を放っておけない。
       傍にいてやらないと安心できん。
       独りぼっちは、寂しいからな。
     
(寂しいのは一体どっちなのか。)



[輝くステンドグラスが見下ろしている。
嵐の前触れのように心地よい空気に包まれた世界の中で、死にゆく彼を包み込んでいた。
優しい手先で幼児にするように頭を撫でながら、自分の生命のカウントダウンを刻んでゆく。]

  

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[───手先の痙攣と共に、苦痛は不意にやってきた。]

[体制を崩し、胸を押さえて倒れ伏した時。彼はもう逝った後だったろうか。
どちらであれ、冷たい床に投げ出してしまった事実に焦り、びたんびたんと暴れる腕を動かして、その手を繋ごうとする。
その行動が叶ったと同時、呼吸が大きく乱れてきつく痕ができるほどに握りしめてしまった。

同胞に飲ませたのは睡眠薬が入ったもの。
生命を奪う毒薬にしては長時間の苦痛を味わわせる配合にしたのは、敢えて自分のものだけ情け程度の眠りを与えなかったのは、……全てを見え透いていた過去の自分から非道な手段しか辿れない未来の怪物へ送る罰。

うまい呼吸の方法を忘れ、瞳孔が閉じるのを忘れ、急激に三途の川を渡り始める体はすでに限界だった。]


(寒い。苦しい。……その筈なのに。
 息絶えて既に体温が失われている此奴の手が温かいから、
 何故だか笑みが溢れてくる。

 涙でぐしゃぐしゃで、ひどい顔をしながら、笑った。)


 
(63) 2020/12/12(Sat) 9:47:58

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[痺れに苦しむようなか細い吐息を溢して、呻きを流す。

「ヴィル。」


徐々に神経まですり減らされれば、滅びを迎える肉体が与える苦痛を感じることも無くなる。
通りが良くなった喉を震わせて、1人の名前を呼んだ。]


   夢で未来を、見たことがあるんだ。

      
黄泉

     …彼処は昏くて..寒くて…….
         …怖いばかりで、...何もない。
         まるで今の季節のようだ。


[紅鏡の気配に、少しばかり眉を寄せる。
もう片方の腕を床に這わせるように動かして───冷たい身体を抱きしめ直した。]



   
(64) 2020/12/12(Sat) 9:48:15

【人】 凍土 リヴァイ





     だから、

     ……お前の傍にずっといるさ、ヴィル。
     お前が私を求める限り、
     私を拒んだりしない限り ……永遠に。


(呪いが解けた御伽噺の人物のように、
 甘ったるい言葉を……らしくもなく吐き出す様は、
 怪物の性から解放された、普通の少女のままで。)





   
(65) 2020/12/12(Sat) 9:50:15

【人】 凍土 リヴァイ



[思い返せば彼の名前を呼んだことがなかった。
甘味の取りすぎを咎めるときも、口喧嘩をするときも。
……身体を重ねたあの夜の時だって。
卒業時に形式めいて叫んだフルネームは呪文のようなもので
相手のことを思って発したことなんて一度たりとも。

         お前は私を置いていくのだと思って
         その身に縋り付くような恥を晒して
         お前に何れ来る暗い未来をおもって
         どす黒く回る心を抑えられぬ時も。

孤独に震える末路は自分だけの秘密で
感じていた体温も何れは離れていくものだと……
毒薬を与えたくらいで何も変わりやしないのだと、勘違いしていたのかもしれない。]


   
(66) 2020/12/12(Sat) 9:50:36

【人】 凍土 リヴァイ





 (お前は、こんなにも私のことを想ってくれていたのに。)



 
(67) 2020/12/12(Sat) 9:50:55

【人】   リヴァイ





       
『死んでもこの手は離さないでくれ』

    ....... もうすぐ、この感触を頼りに逝くから
                待っていてくれ。



  
(68) 2020/12/12(Sat) 9:51:47

【人】   リヴァイ



[それきり、女の唇が開かれることはなかった。

魔性を失った朝焼けも間近な空の中、宵闇が手を招いている。
初雪が2人の上を白いシーツのように覆って仕舞えば、まるで互いに寄り添い眠っているように見えるのかもしれない。

苦痛に顔を歪ませ、喉をかきむしった痕跡こそあれど、
その表情は憑き物が取れたように穏やかで、少々上品な笑みを讃えてこそいた。]

 
(69) 2020/12/12(Sat) 9:52:04

【人】   リヴァイ



[……もう、辛いことは何も感じなくなった。
冬の到来を知らせる新雪も、美しさを感じるばかりで気にならなくなった。
だけれど今はやっぱりひどく寒いから、最後まで寄り添っていても許されるだろうか。]


    
“  もう2人、何もかも分け合えるから  ”

  (この冬の寒さでさえも、2人だけの秘密にしよう。)**

      


   
(70) 2020/12/12(Sat) 9:53:24