219 【身内村】魔法使いと失せ物探し
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− 回想 −
[私には夢があった。
誰かを助けるヒーローになりたいって思っていた。
でもどうしてかしら。
記憶を失ってからどうしても、それが怖くなったの。
───── 出来るわけがない
そんな思いが心の中に残っていたの。]
[そのご老人を見かけたのはとある道。
横断歩道の途中で信号が変わりそうになっていたのよ。
私の体は固まったわ。
交通事故に巻き込まれかけたというのは聞いていたけど
詳しい話は怖いことを思い出すかもって
教えて貰えていなかったの。
だから怖いんだろうっていうのは頭で理解していたわ。
それでも、ヒーローならそれを振り切っていくもの。
その足を私の中の何かが止めるの。]
[周りの車だってバカじゃないわ。
ご老人は見えているのだから避けるでしょうね。
だから何もしなくたってきっと問題はないの。
でも─────……
その人は歩道の途中でよろけて、大変そうだったの。
何かになりたいから、じゃなくて
ここで見捨てる人間になりたくない。
それが勝ったのよ。]
[あの時の私に足りなかったもの。
流石に学習はしているわ。
注意深く周りに気を付けつつ
手をあげて人がいると車に主張して
そうして手早く駆け寄って支えたわ。
そうして何とか渡り切って止まったの。]
……すみません、お節介を
[私の口から出てきたのは謝罪だったわ。
ごめんねって私は誰に言いたかったのかしら。
そう告げればご老人は優しく笑ったの。
温かみのある茶の瞳が私を見るの。
そうしてその人は謝ることはない
ありがとうと私に言ってくれたの。]
[単純なもので、私はそれが嬉しかったの。]
危ない事したらダメって…言われていたから
[思わずこぼした弱音。
両親にもお兄ちゃんにもそれはしつこく言われたわ。
ちゃんと危険には気を配った方がいいのは
そうだねってその人は笑う。
でもちゃんとしていたんじゃないですか? と。
それが出来ていれば
その時の私にこの慎重さがあれば。
そんな後悔をする為の記憶がない。]
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