【人】 絵描き 要気付かれないように、気付かないように、と丁寧に開けた筈の、扉は無情にも大きな音を立てた。立てやがった。くそっ! それでも堂々と歩いていけば問題ない!僕は何も悪いことはしていないのだから……! と開き直ってみても、聞こえてきたのは女性の悲鳴。 そして何かが落ちる音。 落ちたのは画材だ。 やはり入らなければよかったか……と後悔するより先にすべきことがあるだろう? 僕が入らなければ無事平穏に暮らしていたはずの彼女。それに落ちるはずのなかった画材。両者にきちんと謝罪すべきだ。そうに違いないきっとそうだ。 予想外の反応でちょっとパニクりかけてる思考をどうにか働かせ、体を動かした。 とりあえず、身近にある絵の具をひとつ拾って、彼女に話しかける。 「えっと……?すいません。突然……」 彼女の方を恐る恐る見るとキラキラと美しい白い髪が無機質な蛍光灯の光を浴び、輝いていた。 (16) 2020/06/12(Fri) 10:40:57 |
【人】 絵描き 要「あっ、鍵を……」 ……閉められたら僕が出入りできなくなるじゃないか!彼女が鍵を閉め忘れていたことに感謝しよう……。 なんて、本人を前にしては言えないけど。 「ありがとうございます」>>30 彼女はそう言って机の上に絵の具を置いた。彼女が動く度に白く美しい髪が揺れる。 その煌めきに自然と目がいってしまう。 「わ、私は美術部で2年の雨蓮しずくと言います。 あの…ごめんなさい。私の画材を拾うのを手伝わせてしまって。何か用があって来られたのに、私のせいで無駄に時間を…」 彼女の名前はしずく、というらしい。人を覚えられない僕でも彼女のことなら、きっと覚えられるだろう。 手を忙しなく動かす様はなんだか小動物のようだ。 でもこういう時って、どうすればいいんだ……? とりあえず名前を? 「えっと、僕の名前は須藤要って言います。高校2年生で一応、美術部ってことに……?」 ここまで言って彼女と同級生だということに気がついた。 「あーでも、授業もろくにでてないし、部活もきちんと行ってないから、う、うん」 なんだか自分で言ってて悲しくなってきた。自分で決めたことなんだけども。けども。 「用、なんて、そんな、僕のはほら、期限とかないわけだし……こちらこそ、ほんとごめん」 彼女の前のキャンバスに目をやると殆ど何も進んでないのが伺える。美術部とかは、文化祭で追い込みとかあるんだろうに……。申し訳ないと言わせてるのに申し訳ない気持ちになり、肩を縮こませた。 現実逃避気味に、彼女の艶やかな髪を見る。 (31) 2020/06/12(Fri) 19:11:22 |
【人】 絵描き 要やっぱり彼女の髪の毛は綺麗だ。いや、こんな髪ばかり見て僕は変態か、と思わなくは無いのだけど、美しいものに目がいってしまうのは芸術家の性なんだよ、うん。うん……。バレないよね?髪は顔の一部だしきっとバレないよね……。 白い髪の人、初めて見たなあ……。老人の白髪とはまた違って生命力に溢れてるって言うか、輝きが違う。きちんと手入れされているのだろう。 「あぁ、、綺麗な髪だ……」 (32) 2020/06/12(Fri) 19:11:42 |
絵描き 要は、メモを貼った。 (a17) 2020/06/12(Fri) 19:32:59 |
【人】 絵描き 要「あ、あの…須藤くんって呼んでいいかな?」 「えっ?ぜひぜひ!なんならしたの名前でも……?あ、渾名とかも面白そうだと思っていたんだよね!ええと、僕はなんて呼べばいいかな?あーでも初めから馴れ馴れしいのは嫌だよね。雨蓮さんがいいかな……うん」 あまりの嬉しさに矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。 人の名前を呼ぶなんて何年ぶりだろう……いや、何十年ぶり? そんな関係性、必要ないと思っていたものだけれど、凄い、嬉しい……。 「だ、ダメだよね…私なんかが呼んじゃ。ごめんなさい…聞かなかったことに…」 彼女は急に、萎んだような声を出す。心做しか髪の輝きもくすんでいるように思えた。 「え……?なんで?僕、すごい嬉しい、けど……?」 何か、彼女の気に触るようなことを言っただろうか?と不安に思うも、彼女が嫌味でそんなことを言ってるようには見えない。 だからこそ、ただ単純に理由が知りたかった。 彼女のことをもっと知りたい。 そう誰かに思ったのはきっと初めてのこと。 (38) 2020/06/12(Fri) 22:04:49 |
【人】 絵描き 要「あ、ありがとうございます。す、須藤くんっ」>>43 名前を呼ばれて何となく くすぐったいような嬉しいような、不思議な感覚に襲われた。 それに、驚いている彼女はなんだか可愛くて、 自然と笑みがこぼれる。 「わ、私のことも雨蓮でも···しずくでもっ」 そう彼女に言われ、引かれてないことに安堵する。 えっと、しずく、呼び捨てはさすがに馴れ馴れしいよなあ。雨蓮さんだとちょっとよそよそしい気がする。そこらの他人と同列の扱いはしたくないし、しずくちゃん?はちょっとキモイのはさすがの僕でもわかる。 「じゃ、じゃあしずくさんで!」 ちょうどいい呼び方を見つけて僕は満足気に頷く。 「しずくさんは何を描いてたの?」 この会話が終わって欲しくなくて、 それだけでなく僕が気になっていたこともあって 僕はキャンバスに目を向けた。 どうも悩んでそうだったし、話すことでなにか、彼女の力になれるかもしれない……。 (44) 2020/06/13(Sat) 10:24:44 |
【人】 絵描き 要名前を呼んだあとの彼女はどことなく嬉しそうに見える。 僕の気の所為かもしれないけど、そうじゃないとしたら、勇気を持って名前を呼ぶ選択肢を選んで良かった、と安堵した>>53 「未完成の絵でお恥ずかしいのですが…美術部で一対の作品を出すことになっていて。私は油絵と水彩画の異なるタッチで絵を描こうと決めたは良いのですが… もう、文化祭は目前なのに…この前、休んでしまって水彩画を仕上げる時間がもう無いんです」 そう言って彼女はキャンバスに指を滑らした>>54 彼女とは対称的な黒い色がキャンバスに広がる。 へえ、美術部って、そんなことをしてたのか……。そんな他人事のような考えにすこし、寂しく……いや、この思考は良くない。やめよう。 うーん。やはり大変そうだ。大変そうだけど、きっとやりがいがあって、楽しいんだろうな。青春って感じで。 未完成の作品が恥ずかしい気持ちも分かる。やはり人の目に見せるものは完成した作品でありたい。絵描きとしては当然の心境と言えるだろう。 「漠然と背景だけは思い浮かんだので油絵は背景だけ描けたのですが…」 輝きの反射の角度が変化した。 ん?なんだかこちらを見られている……? 「 本当は、この中心に人を描きたいんです。けど、喜怒哀楽をうまく筆に載せられなくて。何回も描いては、削って描き直してるんです…私、今まで人物を描いたことがないんです…」 ……ああ、彼女と僕は似てるのかもしれない。 こんなにも綺麗な彼女と 僕が、似てる、だなんて 烏滸がましいかもしれないけれど。 「けど、今回は挑戦してみようって思ったんですけど、モデルの人物も思い浮かばなくて。文化祭の終わる時間までにモデルの人物を見つけてせめて油絵だけは完成させようって」 (55) 2020/06/13(Sat) 17:07:58 |
【人】 絵描き 要それでも、やっぱり、僕と彼女には、 違うところがあって。 僕とは違って、 真っ直ぐで、 やっぱりとても綺麗だった。 ああ、眩しいな。 思わず目を細める。 眩しいのはきっとここが、美術室で、蛍光灯の光が強いから、だけじゃない。 そんな彼女の手助けをしたい、という思いが湧き上がってくるのは自然なことだろう。 モデル……モデルかあ……。人物と言うくらいだから、やっぱり人じゃなきゃダメなんだろうなあ。 でも僕には恋人はおろか、友達すらいないし……。 他に人……人………………。 ……。 あ、え?僕? えっ?僕?いや、でも……。 周りをキョロキョロ見回してみても他に人なんていない。 いるはずもない。 ……えっ?あ、いや、でも、えっ??? あー、でも、僕にできることなんて、こんなことぐらいしかないし。それに断れるかもしれないし。も、モデルなんてやった事ないけど……。いや、断れるかもしれないし……。 ええい!当たって砕けろ!!!!! (56) 2020/06/13(Sat) 17:08:16 |
【人】 絵描き 要「も、もし良ければ、僕をモデル……に、なんて……」 上目遣いで彼女を見てみる。 だんだん自分の小さくなる声に、彼女の輝きに元からないようなものだった自信なんて吹き飛んで、ふと目を逸らした。* (57) 2020/06/13(Sat) 17:08:44 |
絵描き 要は、メモを貼った。 (a34) 2020/06/13(Sat) 20:02:45 |
【人】 絵描き 要「えっ!い、いのでしょうかっ!」>>67 弾んだような声に、逸れていた目はぐっと彼女の方を向き直った。サラサラと彼女の絹のような髪は揺れる。 邪な気持ち、があったといえば嘘になるけど、そこまで喜んでもらえる、なんて確信はなかったから。 喜んでもらえるとやっぱり嬉しい。 ところが急に彼女は暗澹たる雰囲気を醸し出した。 「す、すみません…。せっかく言ってもったのにっ。けど、ダメなんです。やっぱり描こうって思うとかけなくて…」 あー、すごいわかる。 確かに、僕だってそう。 描こうと思ってかけるものでもないし、描こうと思えても描けないことなんてザラだ。 その点、僕は自分の欲望に気を取られすぎて、芸術家としての彼女を軽んじてしまっていたのかもしれない。 「こちらこそ、ごめん。同じ絵描きとして、しずくさんの気持ちは分かるはずだったのに……差し出がましいことを……」 そう言いかけて、彼女の言葉に驚く。 「あ、あの…もし、私が文化祭の中で須藤くんを描きたいって思ったら…お願いしてもいいですか?」 え?これは、えっと……? 動揺している僕を察したのか、彼女は言葉を続けた。 「だ、ダメですよね。こんなの図々しいです、よね…」 「いや、だ、ダメなんてことは無いよ!むしろいいって言うか!うん!」 ダメ、という言葉に反射的に反応してしまう。 で、でもこれはいいことなのでは?いい事なのか? (68) 2020/06/13(Sat) 21:07:22 |
【人】 絵描き 要彼女が僕を描きたいと思えば、僕のやった事は間違いではないだろうし、他の人を描きたいと思うのならば、僕のやった事は負担でしかないだろう。 つまり、これから次第、ってこと……? 僕はぐっと握りこぶしを作った。 きっと彼女のモデルにふさわしい男になるぐらいならば 神様だって許してくれるだろう。……多分。 「あ、でも、その絵、文化祭までに完成させないといけないんじゃ……?」 ふと浮かんだ疑問を口にする。 そういうのは無理な時はパスとか一回休みとかできるんだろうか?詳しくないからよく分からない* (69) 2020/06/13(Sat) 21:07:59 |
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