167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
「………どうしていつも、こうなるんだか」
「今更な事だ。ああ、わかってたさ……」
「Sentite condoglianze」
──カシャン、軽くも重い金属音がまたひとつ。
「器用そうな顔してるのに」
なんて。雑踏に溶けるようにして、くすくすとちいさく喉が鳴る。
人混みの中にあっても長躯のあなたはよく目立つから、こちらからは見失う心配もないのだけれど。
小柄な少年は人波に流されそうにもなるものだから、つい、手が出たのだった。
屋台のそばへ寄れば、一層、香ばしさが鼻腔をくすぐる。
耳を楽しませるのは、肉の焼けるよい音。
「ん――」
迷うように、うろ、うろ。
看板に視線を這わせて。
「じゃあ……これにする」
ぴ、と指し示すのは、ウインナーの串。
【灯台】
夜の帷がいざ上がろうという頃、
灯台の最上階に人影が二つ。
そこで交わされたものを知るのは、
当人たちのみだろう。
【バー:アマラント】
表通りからは離れた路地の一角、
隠れ家のような入り口。
石の階段を下った先の木の扉。
下げられたプレートには『CLOSED』の文字だけ。
明かりのない店内、カウンターの片隅には、
少し萎びかけた数本の花。
――情報屋が、死んだ。
幾らかの情報を渡したのは、事実。
けれど、いずれも彼の命を縮めるものではなかった筈だ。
何故という疑問。
そして、それ以外の死者も。
それもノッテばかりに。
狙われている……?誰に?
何故という疑問。
ボスが倒れたのを契機にアルバが攻勢を強めている?
アルバにノッテの怒りが向かうよう仕向けている?
疑問、疑問、疑問。
分からないことだらけだ。
手を、引くべきだろうか。
いや、もっと早く引くべきだったのかもしれない。
Rrr...Rrr...
電話が鳴る。電話が鳴る。
電話に、手を――
本名:ジェロラモ・ロトロ(Gerolamo Rotolo)
死因:頭部を銃弾で撃ち抜かれたことによる失血死
発見場所:灯台の最上階
遺体の様子:未発見。
銃による出血の痕跡、
及びロッシと書かれたネームプレートのみ。
本名:シルヴィオ・モレッティ(Silvio Moretti)
死因:頭部の銃創による脳挫傷、出血死
発見場所・遺体の様子:
人気の少ない路地裏で額から出血している状態で発見される。
アウグスト・グエッラの殺害に使われた手法と酷似しているが、現在は同一犯よりは手口の模倣の可能性が高いと見られている。
| 【灯台】
人気の無い時間、灯台の最上階。 彼者誰時、そこに誰かが居た痕跡なんてもう残っていやしない。 喪服姿は手摺に背を預けてただ遠くを見遣るばかり。
「あんたも、死ぬもんですね」
何処か捕らえ所が無くて、どうにも生者らしさが薄く感じて。 ともすれば、バーの構成要素の一部のようにも思える。
「俺はてっきり、殺しても死なないもんだと思ってました」
そんな実に曖昧模糊たる存在のマスターも、 どうやら一応は人であり、人として死んだらしい。 遺体も見付かっていないのにそんなふうに思うのは、 単になんとなく、という事にしておこう。
「Sogni belli」
無宗教者は死後を信じない。 けれど、同じ呼び名の誰かが夢見の最中に現れる人であるのなら。 良い夢を。くれてやる言葉は、少し他人行儀なそれでいい。 (7) 2022/08/14(Sun) 23:39:02 |
本名:ロタール(Lothaire)/孤児のため姓は不明
死因:心臓部を銃弾で撃ち抜かれたことによる失血死
死亡したときの状況:
大通りより一本入った裏路地にて、倒れた状態で発見された。
拳銃で心臓を貫いた弾丸が一つ。この一撃が致命傷となった模様。
うろうろと視線をさまよわせる様子をやはり笑みを浮かべて見ている。
たくさんのものから一つを選ぶというのは、簡単なようで難しい。どれがいいのか、何が決め手か、どうしてそう思ったのか。選択は経験の積み重ねだ。与えられるものを受け入れるだけでいては、些細なことも選び取れなくなる。
「ん、いいね。おいしそうだ」
「それだけでいいの? 君、放っておいたらすぐ食事を忘れるだろう」
彼女に聞いたのか、それとも個人的に知っているのか、そんなことを付け加えた。
上から見る項は細く、成長期の少年にしては肉が足りない。
少年は、選ぶことがあまり得意ではない。
これまであまり、選択肢を与えられてこなかったから。
けれど今は、そうではなくて。
だから、少しずつものを選ぶことを覚えている途上だ。
「……だって、ジェラートも食べるんだろ」
頼りなく薄い身体は、食の細さも影響している。
が、食べないとビアンカが怒るし、あなただってこうして気にする。
これもまた、意識を変えている途上のことだった。
「あんたはどうするの。
不器用だって言うなら、食べやすいのがいいよな」
と言って、どれがいいかわかるわけでもないけれど……。
| コルヴォは、工房の主に背を向けた。まったくもって、本当に。 (a10) 2022/08/15(Mon) 21:12:28 |
| コルヴォは、悪態一つ吐いて、離別という緞帳を下ろした。 いつかの時の事。 (a11) 2022/08/15(Mon) 23:12:45 |
会ったばかりの頃の君のことを覚えている。
今よりもっと人形のようで、痩せて色の悪い肌をしていた君のこと。それこそ捨てられた子猫のようでいたのだ。その頃から考えれば、随分よく育ったものだ、とは思うが。
「食べるけど……足りるかい。成長期だろ?」
「ああ、それともほかのものがいい? 向こうにパン屋が出張してるのを見たし、あっちにはスープが……」
何くれとお節介を言う男はまるで子煩悩な父親のようですらある。
「僕もソーセージにしようかな」
「もうひとつの……こっち。辛いんだって」
| 【バー:アマラント】 表通りからは離れた路地の一角、 隠れ家のような入り口。 石の階段を下った先の木の扉。 下げられた『CLOSED』のプレートなど知った事ではないように、 無人の薄暗い店内、バーカウンターのやや隅の方の席。 何処ぞから不法侵入でもしたのか。 喪服姿は、なんとも我が物顔でそこに居るものだ。 「こんくらいが静かでいいですね」 カウンターの片隅、萎びかけた数本の花を一瞥して 明日には平然と他の店員が代役を務めているのだろうかな。 今はそんな事を思うばかり。 もし誰かが来たら、なんてのは気にもしない。 同じ不法侵入者であれば、人の事を言えた義理でもないだろうし。 店員なら上手く言い包めるだけだ。 (35) 2022/08/16(Tue) 0:06:57 |
| コルヴォは、鍵も閉められていない扉から堂々と上がり込んだに違いない。 (a12) 2022/08/16(Tue) 0:35:07 |
| コルヴォは、とはいえ、店主不在であろうと マナーは守るつもりだ。 (a13) 2022/08/16(Tue) 0:35:40 |
| 【バー:アマラント】 ハッとなって瞼を持ち上げた。 気付かぬ間に微睡んでいたらしい。 人様の事を言えた義理ではないな、と内心自嘲して あいも変わらず薄暗く無人の店内を緩慢に見渡した。 誰かの声がしたような気がしたが、それは錯覚のようで。 原因は扉の外から聞こえた微かな足音だったらしい。 恐らく一般人であれば気にも留めないようなそれは、 つまるところはおおよそ一般人のそれのようだった。 (39) 2022/08/16(Tue) 13:20:00 |
| 【バー:アマラント】 >>@2 フラン 店内から数歩、重たい靴音がして。 『CLOSED』のプレートが下げられていたはずの扉が開く。 その向こうからから姿を現した黒支度は、 脅かすつもりも無いが、その外見はさぞ威圧的だったに違いない。 「どうも。店主なら不在ですよ」 ならばどうして店内に居たのか、という疑問を挟む隙も無く 不法侵入者はいけしゃあしゃあと言葉を続けた。 「許可は取ってます。今日はセルフサービスでやってくれと。 いつも通りお行儀よくしてさえいれば、 後で怒られはしないでしょうよ」 当然嘘だ。 とはいえ、あの店主であればどこかそんな気もしてしまう。 あなたがどうする事を選んだとしても、 この不届き者はそれらを言い終えれば店内へと踵を返して もう少しこの店に居座るつもりのようだった。 (40) 2022/08/16(Tue) 13:20:53 |
| 【バー:アマラント】 >>@4 フラン 困惑を隠しもせず、けれど言葉を額面通りに受け取って。 おずおずと店内へ足を踏み入れる青年と反対に、 やはり不届き者の男は当然の権利のように店内に居座っている。 やや離れた席と席の間。 今は二人ばかりの店内に会話は無く、 配達員の青年にとってどうだかは定かでないけれど 喪服姿の男はその静寂を大して気にも留めていないようだった。 そうして各々好き好きにアルコールを調達し、 それぞれのペースでグラスを空けていくだけの時間が過ぎる。 (46) 2022/08/16(Tue) 18:42:15 |
| 【バー:アマラント】 >>@4 フラン その内に、そろそろ出るか、と。 ふと席を立てば、いつかのように青年が寝落ちている。 「……配達員をご自宅まで配送するのは 一体全体誰に頼めばいいんですかね?」 声色は呆れ混じり、なんてものではなく、呆れそのもの。 極論を言えば放っておいても構いやしないが、 誰かに見付かって共犯がバレでもしたら面倒だな、とも思う。 「…………」 暫し考えたのち、出した結論は。 まだ半分ほど酒の注がれた 冷たい グラスを持ち、…… (47) 2022/08/16(Tue) 18:42:52 |
| コルヴォは、配達員の頬にグラスを押し当てた。なんてやつだ。 (a17) 2022/08/16(Tue) 18:43:00 |
棒切れのような手足をしていた頃に比べれば、今は随分と血色もいい。
こうして陽の下で見れば、夜な夜な街路に立っているとは想像もつかないふつうのこども。
だからそう、少年にとっては、既に身に余るほどなのだけれど。
「……あ〜、わかった。
じゃあ、スープも飲む。それでいいだろ」
根負けしたように言う。
触れられたわけではないのに、撫でられるときに似た、すこしくすぐったいような感覚。
ふるりと金色の髪を揺らして、屋台の主へ向き直る。
「辛いのって、大丈夫か?
まあ、食べらんなかったらおれのと替えればいいか……」
独り言ちるようにこぼして、店主へ注文を。
そうして、財布から自分の分を支払う。
| 【バー:アマラント】 >>@5 フラン 「あんたの寝起きが悪くない方で助かりましたよ」 返る言葉は、挨拶でも気遣いでもなく。 グラスの冷たさに驚きそこかしこを強かにぶつけ、 随分痛い目を見たらしい青年を見下ろす視線は冷ややかだ。 とはいえそれは小馬鹿にしているわけでも侮蔑でも、 はたまた特別悪感情を抱いているわけでもないのだけど。 残った酒を乾して、さっさとグラスを片付けて。 何処から引っ張り出して来たのか、 店の帳簿らしきものに何やら書き付けて放る。 並ぶ名前とツケとされた代金の中、その最下部に まったく異なる筆跡が一つだけ混じっている。 「書いとく事をおすすめします。 それから、寝る場所は選ぶことですね」 それ、と言って指差したのはカウンターの上の帳簿。 言うだけ言って、さっさとドアの方へ足を向けてしまった。 まったくもって好き勝手に振る舞っているものだ。 店主の友人というわけでもないようなのに。 事実あの店主と友人だと宣う人間が居るかなんてのは、 今この場に居る誰にも定かではない事だろうが。 (51) 2022/08/16(Tue) 19:46:30 |
【自室】
主を失った部屋には、ほんのりと煙草の残り香。
家具は最低限のもののみが置かれており、殆ど物が置かれていない。
使用感のあるものと言えば、黒のテーブルに置かれた灰皿。
そろそろ捨てるべき量の吸い殻と灰が積まれている。
その脇には、写真立て。
写真には、3人の子どもが写っている。
笑顔の男の子に、少し困ったように笑う男の子、そして、口元をへの字に曲げている男の子。
並んで撮影をした時の、少し古くなった写真だ。
そして、ベッド脇のサイドテーブルに、書きかけの便箋。
何の色のもついていない、シンプルな白のそれに、汚い文字がいくつも並んで、塗りつぶされて。
床には書き損じの便箋がいくつか転がっている。
ちらりと見える内容は、仕事に対するメモ―――あるいは、アドバイス。
結局まとまりきっていなかったのだろう。
この数日で書き上げるつもりだったのかもしれない。
しかし、この部屋に主は戻らない。
この部屋にあるものが、主の手によって何かを為すことはもう二度とないのだ。
テンゴ
【三日月島:岬】
「……」
「……おっさんなら、男がそんな顔するもんじゃないって言うんだろうな」
そう、思い返すことすら。
酷く心の奥が苦しくなるのだけれど。
確かに、しみったれた自分は酷く格好悪いような気がして。
「そろそろやめようと思ってたところだ、アンタに言われて心が決まった」
「近いうち、何か進展があるといいけどな」
煙草を消して。踵を返しその場を離れようとはするのだけれど。
話したいことがあるのであれば、まだ引き留める事は出来そうだ。
| コルヴォは、誰かに言った。「あの時殺しておけばよかった。」 (a24) 2022/08/17(Wed) 12:28:40 |
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