201 【身内】甲斐なき星の夜明け前
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[私がそのくまさんを見たのは戦いの後だったかな。
処分するくらいなら私が貰うっ!
と保護したんだったよね。
ぬいぐるみコレクターとしても放置出来なかったし。
それがお母さんの手作りだって、教えて貰えたかな。
アルカ君みたいな性格の人が持つには違和感あったし
アルカ君のなの? って聞くくらいはしたよ。]**
| [格好の良し悪しはさておいて、 寝坊しようものなら容赦なく置いて行くぞ。 どことなく、もぞもぞしているように感じたが、 髪に手が届けば頭の丸みをなぞり、柔らかく梳る。 互いの身体はゼロ距離。鼓動が早く聞こえた。 >>31] よし、オレももう休むことにするよ。 [そう言って、部屋のドアを開けた。 当然だ。 未だ嘗てオレから この部屋に泊まることを提案したことは1度もない。*] (32) 2023/02/20(Mon) 19:02:43 |
| [翌日、別段用意するものはないけれど、 兎に角身支度などを済ませた。 クマはオレの部屋にあっただろうか。 >>23 それなら適当な紙袋に入れて、 恥ずかしくなく持ち運べるようにする。 時間は厳守。 本当に寝坊したら置いていくつもりで、部屋で待った。**] (33) 2023/02/20(Mon) 19:03:40 |
―
回想
―
[一度零れ落ちた水は、二度と盆に返ることはない。
動揺を出さないようにはしたものの、
そんなもの無意味に決まっている。
初戦で不慣れな上に、敵に対する困惑、
更に輪をかけてシオンが無理を通すものだから、
あの時共闘した人たちには、迷惑をかけてしまった。
オレの所為だと思ったが、
自責以上に戸惑いの気持ちが強かった。]
[もう少し落ち着いて戦えていたら、
オレは自分の身の上を話さなかっただろう。
でも、その所為で色々な人に迷惑をかけたのも、
シオンに無茶をさせてしまったのも事実。
オレの母親は父親の自死を受け入れられずに、
幼いオレを置いて何処かへ行ってしまったこと。
父親も嘗て同じように敵の支配を受けて、
それを苦に死を選んだこと。
心への負荷が重くなりすぎないよう、ざっくりと説明した。
だから、ゴミ袋の中のクマが
誰の手によって生み出されたのかも、
君が見つけたその時に話していた。**]
- 回想 -
[私は迷惑とは思っていないけど
周りに心配かけちゃったのは事実だったよね。
そこは反省したよ。
そして、聞いたのはアルカ君の身の上。
それは……家族に恵まれて、愛されてきた
そんな優しい世界にいた私には想像もつかないもの
話を聞いただけで涙をぼたぼた零した。]
……そうだったん だ……
[それはどれだけの絶望なんだろう
どれだけの悲しさや、孤独なんだろう
理解出来る気が全くしなかった。
ただただ、そんな重く、哀しい世界が悲しかった。
流石の私でもうまく言葉を出せなかったよ。
ただ泣いて、ごめんって繰り返した。]
[分かってあげられなくてごめんね
悲しい思いをさせてごめんね
負けなかったから最悪だけは回避した。
でも、それだけだ。]
[─────
お節介をしよう
そう決めたのはすぐだった。
理解から遠くて、違う世界に生きてきた私でも
アルカ君の隣にいることは出来るんだから。]
あ〜るかくんっ!
今日一緒に寝よう!
[そうやって、私の突撃は始まった。
却下は聞かなかった。
]
私はアルカ君のパートナーなんだから
一緒にいるのが当然なんだよっ!
[手元にやってきたクマのぬいぐるみ
これもいつか、アルカ君に必要となる日が来る
私はそう信じて大事にしてきた。
家族ならきっと、また会える
根拠なんてないけどそう信じていた。
そして、誰も傷つかない世界を目指す理由
それがまた増えた。]
[
アルカ君が、傷つかない世界がほしい
それは今でも抱えたままの 願いなんだよ。
]**
| [くっついていた時間は、それほど長くはなかった。 どちらも明日は寝坊が許されない身だ。 更に言えば、こちらは気疲れすることになりそうな身だし、 きちんと休まないといけない。 先方にも都合があるんだ。悪く思わないでくれ。 財産も後ろ盾もない女性が、 地道に働いて一人で生活していたんだ。 今回の話し合いの時間さえ、限りがある。] (36) 2023/02/20(Mon) 23:59:45 |
| [無事寝坊せず、余裕を持って部屋に来た。 >>35 こちらの準備はもう整っている。] お早う。 君が緊張してどうする? [オレの方はいたって普通。 手紙を出した時点で、腹は括っていた。] (37) 2023/02/21(Tue) 0:00:23 |
| じゃあ、早速行くか。
[ここでじっとしていても仕方がない。 君に問題がなさそうなら、 まずは最寄り駅へと向かい電車に乗る。] (38) 2023/02/21(Tue) 0:01:15 |
| [乗車中に、オレの目的地とその手前の駅を教えた。]
話し合いが終わるのは…… まぁ話してみないと分からないことだけど、 あちらには仕事の予定があるので、 どんなに遅くても15時前には終わる筈だ。
その間は駅前で適当に時間を潰していてくれ。
[普通に利便性のいい場所なので、 それなりにお店は色々揃っている。 何なら映画でも見ていても良いのではないだろうか。] (39) 2023/02/21(Tue) 0:01:59 |
| [その後、雑多な話をしつつ、目的地手前の駅に付けば、 見送りの為にオレも一度電車を降りた。]
じゃあ、また後でな。 昨日も言ったが終わったら連絡する。
[手を小さく振って、オレはまた電車に戻る。 向こうは成長したオレの姿を知らないが、 オレは今の母の姿を知っている。少々複雑だ。**] (40) 2023/02/21(Tue) 0:02:35 |
―
回想
―
[どうしたって、こんな反応は避けられない。
説明する度にこうなるのは、
こちらも見ていてしんどいものがあり、
だからこそ身の上話をすることはもう殆どなかった。]
いや、泣くようなことじゃない。
幸い伯父さんが引き取ってくれて、
普通の生活は送ってきたから。
[父がしっかり遺産も残してくれたからな……は
別に不要な情報だと思うので、言わなかった。]
は???
[何がどうなってそうなった?
何一つ理解できる要素がなかった。
性別が逆だったら通報一つで終わる話なのに……。
オレは初めて男に生まれてきたことを呪った。
そして男性だけ圧倒的不利に立たされている法律を呪った。]
[勿論全力で却下した。
だが、どれだけ説教しても引かないので、
こちらが折れざるを得なかった。
誰か助けてください。
何度かそういうことになっても、
オレは根気強く止めてほしい旨は伝えた。
根負けしただけで、合意したことは一度もない。]
プライバシーという概念をご存じないのか?
親しき中にも礼儀あり。
パートナーだからこそ、弁えて適切な距離でいるべき。
もう率直に言おう。
迷惑だ!
[これでも引かなかったんだから、オレは悪くないよな?]
[オレのことに親身になってくれたし、
寄添おうとしてくれた。
温かい思い出はいっぱいある……。
だからこそ、あくまでただの人間として、
2人が傷つくことのない世界を作りたいと思えたんだ。
とは言え、オレの部屋に無暗に泊まりに来ることに関しては、
未だにどうかと思っている……
それは分かって欲しい。
**]
- 回想 -
[だって、だって、
アルカ君が泣かないから。
それが余計に私の涙を止めなかったんだよ。
そんな事があって、お母さんにこんな形で会って
何も感じない訳がないのに。]
泣くことだもんっ!
ばかっ!!
[貴方がそうやって傷を当たり前のように受け止める
それが悲しいんだよ。
だから私がその分泣いた。泣き続けたんだ。]
***
そこまでいやがる事ないじゃん、ぶーぶー
[そう言いつつ笑みで距離をつめていく。
話なんて聞かないよ?
知ってるよ。夜中聞いちゃった。うなされていたの。
だから私はやめなかった。
そうやって怒ってる内は、私の事だけ考えるでしょ?]
私達は一心同体運命共同体!
だから問題ないないっ!
ははは、やだなー、アルカ君ってば照れちゃってー
[嫌われるかな? とは思ったけど
その時はその時考えよう
精神だった。]
[そこまで嫌がるから手出しうんぬんは
危険性全然感じなかったよ。
何もないなら問題なしっ!
でも、でもね。仮に何かされたとしても……
それでも良かったんだよ。
アルカ君が感情を吐き出してくれるなら
それを私にぶつけてくれるのなら
私は全部を受けとめるつもりだったんだ。
結果はちゃんと、負う覚悟はあるんだよ。これでも。]**
| [何故かクマを持ちたいようだったので、 紙袋ごと渡した。 >>41 何もない状態から、スタートした母の新生活。 ずっと同じ仕事をしていると言っていたから、 今ではそれなりに頼られる ポジションにいるのではないだろうか。 和やかなムードでご歓談とはいかなくても、 そんなに心配するような事態にはならないさ。] (45) 2023/02/21(Tue) 19:53:35 |
| (46) 2023/02/21(Tue) 19:53:49 |
| [隣駅でまた電車を降りて、指定された喫茶店へと向かった。 中々良さそうな店で、 それぞれの席を隔てるカーテンが設えてある。 成程、話し合いには適している。]
お待たせしました。こんにちは。
[ウェイターに案内された席に既に母は座っていた。 立ち上がり少し目が泳ぐ。 「ご無沙汰していました」そう言って頭を下げた。] (47) 2023/02/21(Tue) 19:54:18 |
| [注文したコーヒーが届いて、漸く話し始める。 訊くまでもないことだけれど、 きちんと本人の口から言ってもらう必要があるから、 まず最初に何故家を出て行ったのかを聞いた。 「傍にあるのが当たり前だった筈の幸いが、 失われることに耐えられなかった」 何故、新たな幸せを模索しなかったのか聞いた。 「幸福が簡単に消えてしまう事を知っているから、 また失うくらいなら何も欲しくない」 父のことをどう思っているかを聞いた。 「どうしてあんなことになったか分からないけれど、 それでも、生きて側にいて欲しかった……」 一緒に生きていた時間は短くても、 血は争えないものらしい。] (48) 2023/02/21(Tue) 19:55:12 |
| [互いの近況なども話して、オレも例のクマを見せた。 嘗て自分が作ったものであることを一目で思い出した様だ。 「大事にしてくれていたのですね」と言うので、 自分は大事にしてなかったと正直に話した。 このクマを、大事にしてくれた人を、 自分は大事にしたいと思っていると伝えた。 最初から最後まで、お互い敬語で話した。 オレは母を"貴女"と呼び、母もオレを"貴方"と呼んだ。 それでもぎくしゃくしていた訳ではなく、 そこに佇む空気は、それなりに穏やかであったと思う。 また連絡をしますと言って別れた。] (49) 2023/02/21(Tue) 19:55:58 |
| [話が終わったのは、14時ごろだったろうか。 携帯でシオンにメッセージを送った。
「話が終わった。 これからそちらの駅に行く」
と言っても隣駅なので、オレの方が早く着いたかもしれない。 待ち合わせの駅の入り口へ向かう。**] (50) 2023/02/21(Tue) 19:57:00 |
―
回想
―
[何も感じていない訳じゃないから動揺したのだが。
というのは兎も角、中々泣き止まないものだから困った。
寝つきが悪いことはあったけど、
だからと言って余計な人間が部屋にいたら気疲れする。]
そこまで嫌がる程の
迷惑行為であることを理解して欲しい。
性別が逆だったら、立派な犯罪だ。
[いや、性別で犯罪か否かが変わるのはおかしいか。
まぁ結局、
本当に嫌だったら力づくでどうにかできるだろって
話なのかもしれないが、
それはそれで別の法律に抵触する。]
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