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【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「ん〜……子供と言っていいんじゃないかな? もちろん、その意味での子供ではないかもしれないが」 私たちは子供だと。 間違えることもいい、失敗することもいい、 それは挑戦し続けた証なのだから。 それが許される、子供なのだから。 「ほうほう……出来ないことがある、ね こんな世の中だ、適材適所…… 異能で職業が選ばれるようなこともあるだろう 異能でしか、辿り着けないものもなぁ ……持って生まれたもので何者かになれるのなら、 それはとても幸運なことだろうね」 生憎と、私にはそんな考えは分からないが。 「それで、出来ないを知っている世良はどうしたい? その不安をどう抱えている? ……君は、何者になりたい?」 眼鏡の奥で、細めた瞳が柔らかくあなたを見つめる。 (-261) 2021/11/02(Tue) 15:12:15 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「……だから、そうやって」 また、たっぷりと息を吸い込む。 震えた声をどうにか抑え込むように。 僅かに顔の角度を上げて、振り絞る。 「そうやって俺に寄り添わないでくださいよ。俺の頑張りはまだ成就してなくて。だからまだ肯定されてはいけないんです。 なのに、それなのに。そんな言葉をかけられてしまったら……そしたら」 抱いた感情にふさわしい相応しい言葉を知らなくて、思わず拒絶をしてしまうようなその態度は。 紛れもなく、あなたの良く知る後輩のもの。 「でも結局……優しい言葉を望んでいたのかも知れません。 だって、もっと問答無用な手段をとれた。話し合う必要だってなかった。 心の奥底では、独りで走り切る覚悟が足りなかった」 (-263) 2021/11/02(Tue) 15:48:29 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「……薬、受け取ってください。 俺が踏み出せなかった道は、あなたへ」 一粒の、袋に入った錠剤を、 手元に軽く放り投げる。 「俺は、俺の道を行きます。 その結果、どんな姿になろうとも……俺はきっとまた、ここに戻ってきます。 何があろうとも、ここは俺の居場所で、無理して走る必要のない場所ってことが分かったから。 その代わりに健人先輩は、 なんなりと好きにしてくれたらいい」 重ねて約束です、と告げた。 (-264) 2021/11/02(Tue) 15:49:46 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 朧げな陽光 守屋陽菜そう、今ここにあるのは皆モラトリアムの途中を歩く子供たちで、どんなに力を持とうとも誰かが守るべき存在で。 きっと大人の目の届かないところは、互いに手を取り合うしか救いの手立てはない。そんな自分達だからこそ、口にできることがある。 もうずいぶん大きくなった体、掌、伸び切った背は自動販売機よりも大きい。安っぽい机の下からローファーの黒がはみ出す。 「俺はこの……俺のじゃなくて、異能という力は、実はなんにも役立たないと思ってる。 一人一人違う力は理解を得るのも難しくて、個人ではなくもっと大きなものになった時、助けてくれるものじゃないと思ってる。 そんな曖昧なものに人生を賭けるのは、俺は怖いことだと思ってるよ」 鞄の中の参考書、赤い表紙に、新書の本。 それらでなければ助けられないものがある。 「俺のなりたいものは。俺はさ、頼れる兄になりたいんだ」 それはきっと、どんな異能をもってしても確かな成就をもたらさない願い。 (-265) 2021/11/02(Tue) 16:15:37 |
【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「────…………何にも役立たない力、か」 ぽつり。言葉を反芻する。 意識して出した声ではない。無意識に吐いた声。 思わず、羨望の視線が向いた。 鋭くなる目線を抑えようと、瞼を閉じた。 「────それも、正しいと思う ……いや、私は正しいと信じている 異能とは、読んで字のごとく“異なった能力”だ たとえある分野でそれが優れていたとして、 その分野しか道がないのかと問われれば違う ……選択肢は、自由だよね?」 言葉を紡いで、本心をいくらか混ぜて、間を持たせて。 ようやく、いつものように。 「……あの弟に頼れる兄、かぁ……きっと大変だねぇ」 軽口を。 からからと、渇いた笑いが出てきた。 (-267) 2021/11/02(Tue) 17:01:07 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠「かわいい後輩を突き放すのもやだよ。かといって、変に構ったりもしない。 今の話聞いて、お前はもう少しだけ自分の出来ることを試したいんだって判った。 だから、なんだろ。俺ももうちょっと待つよ。 全部終わるか、その前に何かがどうにかなっちまったなら、また話を聞くよ」 サッカー部の朝練は早い。そしてそれよりも、貴方が朝練に出かけるのは早い。 こうして話ができたのが今まで至ったのも、ちょっとの生活のズレがあったからだろう。 けれどいま起きていることが、手遅れになることなんていうのはない。 御旗が駆けて、トラックを周って戻ってきたなら。きっと、互いのゴールを見つけられるだろう。 「わかった。俺は俺なりに、やってみる。 ……きっとこれに頼っても、早道にはならないって俺はわかってる。 少なくとも俺にとっては。けれど、託された希望の先を、ちょっと覗くだけならいいよな」 手のひらは大きい。その真ん中に握られた薬は頼りないくらい小さかった。 いっそ外国のサプリメントくらい大きかったら、逆に笑えていたかも知れない。 小さな冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開ける。 「これさ、どれくらいで効果出る感じ?」 (-300) 2021/11/02(Tue) 19:57:29 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「俺が見た範囲だと……放課後だかに飲んで、翌日に効果が出て休んだり騒ぎになったりといった感じなので。 即効性はないと思いますよ。個人差もあると思いますが」 緊張の糸が切れたように、肩の力を抜いて、 自分のベッドに勢いよく突っ伏しに行く。 「……もっと夢のあるモンだと思ってたけど、 聞く限りじゃ、やっぱり強くなりすぎて不便になってる、てのばっかり。 俺の意地とは別に、ここで起きたことがもう少しまともな薬の開発に繋がればいいなあ」 唇に布団が触れているのか、もぞもぞと微妙にまとまらない発音でそんなことを言って。 「明日はちょっと遅めに学校に行こうと思います。雪溶けてなきゃ練習も雪かきもできないし。 ので、まあ。できるだけ深く寝入れるようにしときますよ」 (-305) 2021/11/02(Tue) 20:14:54 |
【人】 遅れて来た 世良健人>>+42 談話室 竹村 なんだか手持ち無沙汰になって、自分も新しい飴を手に取る。 ショッキングピンクのまばゆい煌めき。わざとらしい桃の香りを口に放り込んだ。 「うん。そうやってラインを見極められてるのは、選手として偉いと思う。 去年、いたんだよな。練習で怪我して、本番に……出られなかったやつ。 だから今年はあちこちで注意するようにしてる」 選手としての自分を高めるために引き際を弁えられているのは、感心すべきことだ。 なんとなく遠くの方を見ていたような目は、瞬きの間に緩んだ。 外から聴こえる歓声に、なんだかしゃんとした空気も砕けてしまって、少し吹き出した。 「雪遊び、混ざってきたら?」 (186) 2021/11/02(Tue) 20:24:17 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 朧げな陽光 守屋陽菜怪我を直したのは事実。部員の擦りむいた怪我を塞いでやったこともあるだろう。 騒動の合間に転んだ生徒を助けたりだってした。昨日も、今までも。 それなのに、この力に意味なんて無いと言う。それは過小評価でさえ、ないようだった。 「頼れる力が手の中にあるのは、どんなにか怖いことだと感じる。 とりかえの利かない力を頼って、自分が辿り着けなかったら、俺はどうするつもりなんだろう。 でもさ、医者だったらたくさんの人を助けられるし、 報道カメラマンだったら必要な情報を必要な人に届けられるし、 生身で奇跡のようなプレイをするスポーツ選手がいるのが、現実なんだよ。 俺は、誰かであっても出来ることのほうが、いいなって思う」 柄にもないことを言ってしまったように、わざとおどけた表情を作った。 ひらひらと気を散らすように手が揺れる。放課後の鐘がなる。 「本当、そう。一生追い続ける夢になるんだろうな。 でもこれ以上の未来とか望みなんてないよ」 (-307) 2021/11/02(Tue) 20:35:19 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠「そっか。じゃあ、今のうちに飲んでおいたほうがいいんだな。 ……自分の持ってる力が変質したら、やっぱりビビると思う。 今戸惑ってるやつらも、そのうち小さい頃みたいに何かつかめるんじゃないかな」 "それ"に気づいたときからすぐに使いこなせたわけでは、誰だってないだろう。 今だって持て余しているのだから、いつかは自分自身のように馴染むはずだ。 口の中に錠剤が放り込まれて、追って水を二口三口飲み下した。 キンキンに冷えた水が冷えた体にちょっと染みて、足をバタバタさせてみる。 「おやすみ、俺はもうちょっと勉強してから寝るから。 この期間、公式全部吹っ飛びそうであやういんだよな」 なるべく音をたてないように、光が漏れないように机に向かう。 スマホの明かりを使えばほとんど部屋に響かないくらいの光を得ることができた。 「……門限申請はもう出せないよな。 じゃあ、朝早い内に……そしたら……」 独り言はノートの白に吸い込まれていった。 微睡みの中へは通り抜けていかないだろう。 (-311) 2021/11/02(Tue) 20:43:05 |
【置】 遅れて来た 世良健人早朝。 生徒が寮の門を飛び出してもいい時間、そのいの一番に自転車が敷地を飛び出していった。 慣れた道。休みの日に必ず通る道。週に一度、頻度は段々と空いて、遠のいて。 冷えた朝の空気を切って回る車輪は、音の無い通学路を上がっていく。 吐いた息が白かった。車だってほとんど通ってはいない。 家につくのはとんでもなく早い時間で、誰も起きてやしないだろう。 息を切らして、希望の道を進もうとしていた。 リノリウムの廊下から伸びた輝線は、まばゆい未来に続いているのだろうか。 今も。 (L3) 2021/11/02(Tue) 20:56:38 公開: 2021/11/02(Tue) 20:55:00 |
【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「…………あぁ、なんだ ────カッコいいじゃん?」 それなら心配はいらなさそうだと。 この先にある未来に思いを馳せながら、 目の前のあなたを見る。 過負荷な自分がたどり着いた結論に、君もいるのかと。 ……ちょっと、嫉妬しちゃうね。 「私も、君ら二人が仲良くいてくれると嬉しいなぁ ……あぁ、喧嘩した時は君を助けてあげるよ なんていったって、君と私の仲だからね」 鐘が鳴り終われば、体育祭の準備の時間だ。 各々にやるべきことがある、さらっと別れてしまうのがいい。 じゃあねと手を振って、女はどこかへと歩き去った。 (-319) 2021/11/02(Tue) 20:57:31 |
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