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【秘】 翠眼 ヴェルデ → 暗殺屋 レヴィア月明かりもない暗闇を、そろりそろりと進んでゆく。 恐れはない。 暗がりには慣れているし、路地裏の静けさだって、騒がしいよりはずっと。 けれど。 何かを蹴った。 次いで、水溜まりを踏んだような音。 曇り空と言えど、雨までは降らなかったはずだ。 少年は首を傾ぎ、足元を確認しようとして。 ——その前に。 「……あんたも年頃は変わらないように見えるけど」 ふと息をつく。 現れた声の主が同業者でないことは一目でわかった。 であれば、こんな時間に出会うものの候補は多くない。 漂う血の香に思うのは、早く帰るように言われていたのにな、なんて諦念だった。 ツイてなかった。 或いは、言い付けを守らなかった罰だろう。 (-265) 2022/08/17(Wed) 9:14:57 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → 翠眼 ヴェルデ「私は良いのよ。」 「子供じゃないから。」 地面に落ちた何かを跨いで、近くに立てば。 こちらの方が少し低い視線。夕闇の瞳が見上げるように。 手に持っているのは、消音器付きの小型拳銃。 そうして地面に落ちたそれは……… アルバ・ファミリーの構成員だったもの。 「もっと奥でやればよかったわ。」 「ごめんなさいね。」 小さな弾を、銃に込める。 淡々と事態が進んでいく。 夜を出歩く者にとって死は、ごく当たり前にあるものだ。 それを齎す事だって、同じように。 とくに、暗殺の場においては。 目撃者は、"0"でなければいけないから。 「何か恨み言はあるかしら。」 銃を眺めて、きちんと使えるか確認しながら。 温度のない声で問いかけた。 (-271) 2022/08/17(Wed) 11:58:21 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 銀の弾丸 リカルドはたりと翠の瞳が瞬く。 長い金糸の睫毛が、ほんのひととき、白い頬に影を落とした。 「それを望むヒトがいるから」 「いや、えっと……もういない、けど。 あの女が望んだことの中で、おれにできるのってそれしかなくて」 燻る紫煙を、見るともなく見る。 あの女もよく煙草を吸っていた。 熱かったな、と。ぼんやり思う。 「孤児院から出るだけじゃだめで、三人でいるのが大事ってこと?」 小首を傾ぐ。 金があれば何もかもが解決するわけではないらしいこの世界は、むずかしい。 教科書だなんて学校みたいだと考えながら、すこし古びた絵本の表紙を撫でた。 (-272) 2022/08/17(Wed) 12:04:39 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「…危ないから、ここを離れたいかなと思って」 あなたをここにしばりつけているのは、私でしょう。 ↓[2/3] (-276) 2022/08/17(Wed) 12:29:52 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 暗殺屋 レヴィア「……そ」 返す音は、ごく短い。 驚いていないわけではないのだけれど、どうにも、こんなときさえ上手く感情を表現できない。 一応、少年自身もアルバ・ファミリーの息のかかった者ということになるのだろう。 とは言え末端も末端、しがない街娼に構成員の知り合いもそういない。 だから、落ちているのは知らない死体。 少年も、これからそうなる。 それでも未だ、恐怖はない。 「いいよ」 「……よくはないか」 「でもあんたも、そういう仕事なんだろうし。 仕方ないよな、おれも言い付け破って早く帰らなかったし」 逃げる素振りもなく、命乞いをするでもなく。 「恨み言はべつにないけど」 「頼み事ならひとつある」 少年はあちこちのポケットへ手を伸ばす。 それは怪しい動きをしたとして、即座に撃たれても文句を言えない行動だ。 けれど、何のことはなく。 掏られても被害が少なく済むよう、あちこちに分けて隠し持った金銭を取り出すだけ。 あなたがそれを許すかは、やはり別の話だが。 (-277) 2022/08/17(Wed) 12:32:39 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → 翠眼 ヴェルデ女の顔にも感情は全く浮かばない。 この空間で、表立つ感情はほとんどなく。 こんな状況だというのに、まるで病院の待合室のような 無機質な雰囲気さえ感じさせる。 最も、今待っているのは治療ではないが。 「そうね、仕方ないわ。」 「暗殺屋だもの。」 殺しを楽しんでいる、という風でもない。 本当に、ただの仕事なのだろう。 命乞いの一つすらしない貴方に、 「生への執着がないのね」なんて、呟いて。 「そう、興味ないわ。」 なんて貴方の言葉には返しながらも、 安全装置を外した銃口を貴方に向けることは、まだ、ない。 女はプロだ。その動きに、此方への害意が含まれてない事 くらいは容易に感じ取れる。 だから言葉とは裏腹に、貴方の動作が全て終わるまで 貴方の事を見守り続ける。 「お金ね。」 それをどうしたいのか、と。 夕闇は貴方を見つめる。 (-279) 2022/08/17(Wed) 12:56:00 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 翠眼 ヴェルデ「……それは、」 揺れ動く紫煙越しに貴方を見た。 金の睫毛が影を作るほど俯いた表情は、笑ってはいないだろう。 「死んだ親にでも言われたか。 マフィアの世界に居るような子だ、いい環境にはなかったことくらいはわかる」 子供の苦しみを望む親など、それは親ですらないのではないかと思う。けれども自分のような孤児や、貴方のような子供はいつの世になっても居なくなることはない。 正義のミカタを気取るわけではないが、この腐った世の中を変えたい。 そう思って拾われたのだ、ノッテという集団に。 「俺には親がどれだけ特別なのかはわからん。 だが、お前が苦しめば……悲しむ者がいるのではないか。 ……お前たちは、家族なんだろう」 口下手な男だから、どれだけ貴方に伝わったかはわからない。 貴方とこんなに話し込んでいるのはきっと初めてのことだ。 やはり、子供のことを見捨てるのは自分には出来そうもない。 小首を傾げ揺れる金の髪を見えて、ふ……と紫煙を吐いて、口端は弧を描いた。 学の浅い少年にはまだまだ想像がつかないようだ。 「そうだな。俺が二人を外に連れていくと思っていたし、二度と会えないと思ったら苦しくもあった。 今でこそ外を自由に歩けるが、3人で同じ景色を見ることが俺にとっての夢だったんだ」 マウロを同じ立場まで登らせて、同じ高さからと。 その夢はもう、叶わないものとなったけれど。 それでも、貴方にも苦しむより前を向くこと、上を目指すことはあきらめないで欲しいと思った。 (-281) 2022/08/17(Wed) 13:33:08 |
ヴェルデは、一歩、石畳を蹴る。 (a31) 2022/08/17(Wed) 18:34:03 |
ヴェルデは、絵本を落とした。 (a32) 2022/08/17(Wed) 18:34:17 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ「旅行はべつに、したっていいけど」 少年の手が、あなたの細腕を遠慮がちに掴む。 振りほどくのは簡単だ。 少年があなたにこんなことをするのは、今まで一度だってなかっただろう。 「——二人でならな」 「危ないってんなら、あんたも同じじゃないのか」 「様子がヘンなのってさ、最近何かしてるのと関係ある?」 それから、こんな風にあなたの行動の真意を尋ねることも。 翠の瞳はじっと、あなたを見ている。 (-295) 2022/08/17(Wed) 18:36:19 |
ヴェルデは、縛り付けられているとは思っていない。 (a36) 2022/08/17(Wed) 18:37:23 |
ヴェルデは、自ら選んだのだから。 (a37) 2022/08/17(Wed) 18:37:38 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「…………」 「私は」 捕んでみれば、その腕はなんとも細く、頼りない。 あなたは男だ。 数年もたてば──いや、今でさえ、彼女を組み伏せることすらできるかもしれない。 彼女は非力だ。 弱く、愚かで、そしてなんの能もなく、 この街を離れる勇気すらもなかった。 「私はいい。 体を売る以外、もう何もできない。 十年もすれば売れなくなって、あなたのかわりにゴミ捨て場に転がる。 けど、あんたは違う。 ……違うよ。 本なんて、私は読みやしなかったもの」 こちらを見つめる目を、見下ろす女の瞳は潤んでいた。 そこに浮かぶ感情を、なんと表現するべきだろう。 ――悲しそうで。 ――嬉しそうで。 笑うように、おんなは泣いていた。 涙なんて、決してみせはしないけど。 ↓[1/2] (-300) 2022/08/17(Wed) 20:06:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ↓ 「 私 、旅行は 嫌いなの」「私は大丈夫。守ってくれる男なら、いるし」 「――仕事してるだけ」 あなたの問いに、答えることはできない。 答えにもならない答えを押し付けて、歩き出そうとする。 「いいから黙って、街を離れなさい。 一回爆発しないと、こういうのは収まらない。 へたくそなセックスと同じ。男ばかり、馬鹿みたいに騒いで、あちこち犯して、そうして終わったら素敵な思い出みたいに語るの。ああ、くたばれって感じ」 溜息。血を吐くような。 「死にたくはないでしょう?」 死にたくなんてないのだ。 [2/2] (-301) 2022/08/17(Wed) 20:07:30 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 暗殺屋 レヴィア「だってもう、どうしようもないだろ」 「助けてくれって言って助かるわけじゃないんだしさ」 死にたくはない、と思うけれど。 ここまで来てしまったのは、少年自身の足なのだ。 だから、喚いても仕方がない。 興味がないと言うくせ、あなたはまだ少年を撃たない。 あまつさえ、先を促すような視線を向けてくる。 だから。 「気が向いたら、ナイトバー『Pollo Nero』のビアンカってヒトに届けて」 「金借りたままだから」 まとめれば300ユーロほど。 完済にはまだ足りないだろうが、ないよりはマシなはずだ。 死ねば必要もないものだから、使える相手に渡る方がいい。 翠の瞳が夕闇を見つめる。 あなたへ向けて、裸の紙幣を差し出す。 (-305) 2022/08/17(Wed) 20:19:42 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカけれど、その頼りない腕が少年を拾った。 守りたいとか、どうにかしたいとか、そういうことじゃない。 そういうことができる者はきっと、他にいくらでもいるのだろう。 それでも。 あなたがしてくれたことを返したいと思うぐらいにはなったのだ。 「じゃあ、その十年で」 「おれがもっと他のことをできるようになって、あんたを拾えばいい」 少年は、ばかだ。 学はないし、碌にものも知らない。 ばかなこどもだ。 それがどれほど大変なことか知らない。 あなたの手を引く。 話はまだ終わっていないから。 「死にたくないのはあんただろ」 (-307) 2022/08/17(Wed) 20:31:21 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「ばか」 ふ、と笑う。 「教えなかったっけ」 「男は、女を置いていくもんだよ」 手を引かれて、ゆっくりと振り返る。 肩越しの顔が、あざけるように歪んだ。 「その時私は三十四。 十年体を売れば、もう売るものなんて残ってない。 積み上げた借金は、きっともう返せない額に膨れ上がって、 私の女としての部分を全部ツケと利息でぐしゃぐしゃにする。 あんたも十年たてば、きっと大切なものがたくさん手に入る。 素敵なものがたくさん。 そんなとき、ごみを拾いに戻る必要なんてないんだよ」 はあ、と。 溜息に、どこか甘い香りが混じる。 ――酒の匂いだ。 「死にたくなんてないよ。 けど、生きていてもそんなに、よくはない」 (-309) 2022/08/17(Wed) 20:42:55 |
【置】 翠眼 ヴェルデ猫など気にしなければよかったのだろう。 言われた通りに早く帰るべきだったのだろう。 仮定をいくら重ねたところで、もはや意味などありはしない。 もうきっと、どこにも行けない。 それをすこしだけ、いやだな、と思う。 けれど、何もかもが遅かった。 “0”だった少年は、“1”を得ていることに気が付かず。 “0”へ還される瞬間になって、ようやくそれを知った。 (L1) 2022/08/17(Wed) 20:46:59 公開: 2022/08/17(Wed) 20:55:00 |
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