今か今か、と
　　　　　　　　最奥に注がれるのを待っていた。**

　　　　「お世辞なら、もっと上手く言うよ。」


　　　　その言葉でなんとなく察することはできるが
　　　　浅見は口で言うだけじゃ
　　　　なかなか伝わらないタイプなのかもしれない。

　　　　窓の外から聞こえた部活と思しき掛け声が
　　　　本来あるべきだった浅見の学生生活と
　　　　今歩んでいる道との乖離を誇張していた。

　　　　舌を出したのならその舌先に
　　　　さっきから先走ってた体液を擦り付けて。

　　　　口を開けてくれたなら
　　　　嘔吐かないように優しく
　　　　浅見の口に蓋をしてしまっただろう。

、と。
　　　　そう言って、全てを俺の味で溶かして。**

　　　　打算的なのは認めるしかない。
　　　　だが俺がいつも打算だけで動くかと言われると
　　　　そういうことでもない。

　　　　大人になると
　　　　合理的な判断ばかりは出来なくなるのだ。
　　　　いつか浅見だって、直面するはずだ。

　　　　振りほどかず快感に身を委ねる浅見の嬌声が
　　　　資料室を甘く彩っていく。

　　　　その声に拒絶の色は微塵もなく。
　　　　だから浅見の悪態も可愛らしく見えるもの。

　　　　無言のまま貪り合う時間は続いて。
　　　　淫らな吐息と肉と体液が絡み合う音だけが
　　　　資料室の中で奏でられる。

　　　　たとえ浅見が苦しそうにしたとしても
　　　　腰の動きを弱めたりはしない。
と何度も名前だけ呼びながら
　　　　情事に耽けると自分でも気づいた。
　　　　感覚的に、今日は長く保ちそうだ、と。

　　　　きっと浅見に煽られてしまったせいで
　　　　浅見をぐちゃぐちゃに犯したいと
　　　　思ってしまったからかもしれない。*

　　それでも、私は反抗も抵抗もしなかった。
　　あなたを疑うことも。

　　日常からほど遠いこの淫らな空気に
　　すっかり飲み込まれてしまった私が考えることは
　　ただ、ひとつだけだった。

もっと、可愛がってほしい。

　　私に、反応してる…？どうして……？
　　そんな疑問は、顔に出てしまっていたかもしれない。

意図なんてわかってないから

少し首をかしげながら、何処までも、従順に。

　　舌先に擦り付けられて
　　初めて味わったあなたの味に戸惑って
　　開けた口に蓋をされたら何度か瞬きして。

　　噛んだらだめ、なんてあなたの言葉に
　　僅かに首を縦に振って
　　分かったと伝えたはいいものの。
　　何の技術もないどころか悦ばせる行為すら
　　知らない私にできることと言えば、
　　噛まないように、歯を立てないように気を遣うくらい。
　　どうすればいいのかわからない戸惑いは
　　舌の動きにも表れて。
　　落ち着かなさを表すように
　　時折、あなたのものを舌先で撫でていた。