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【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワ「……一卵性の双子でも、代わりに行く事はできないなんて なんだかおかしな話ですよね…」 どれだけ遺伝子的に近しくとも、 どれだけ健康体であったとしても。 選ばれた人間の代理を務める事は認められない。 あの時は、それが随分理不尽に感じたものだった。 「…上から…テレビで見た事だけ、あります。 実際に見た事は…無かったんですけど」 ふと掛けられた声に、顔を上げて。 大きな水槽を見上げれば、ほんの少し息を呑んだ。 どこまでも深く青く、思わず心奪われるような、雄大な光景。 兄が楽しげに手を引いて行く先は、いつも。 賑やかな、イルカやシャチのショーだったから。 思い出の中ではそれも楽しかったのだけれど、 こんなに静かに見て回るのは、初めてかもしれなくて。 それがなんだか、無性に嬉しかった。 (-74) 2022/03/05(Sat) 20:48:09 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「……代わりになっても、変わらないですよ」 「今ここに、お兄さんがいることになっただけです」 青が、二人の服を顔を染めていって。 なんだか、顔色が悪くなったように見えて心配になる。 あなたも、彼も悪くない。 この世界が、社会のあり方が悲しみを生んで。 そして、やるせない中ですがる相手を探してしまう。 「俺もみたことないんです。 でも、今は人がいませんから」 「見ましょう、彼の分まで。 思い出作って、伝えてあげませんと……。 君の笑顔を待ってる掃司さんも、暇で仕方ないと思いますからね」 貸しきりを楽しみましょう、と、立ち止まったり進んだり。 そして迷ったりをしながらスタッフオンリーの扉を潜った。 階段を一つ一つ上がっていけば、少し生臭い匂いと、静かな機械の音に世界は包まれた。 (-75) 2022/03/05(Sat) 21:15:10 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「あ、裏側はすごく神秘的じゃないですね。 順路とかあるのかな……」 弟や妹と歩いたのは何度もある。おんぶも、抱っこも。 懐かれていた理由は文句を言わない兄だったから。 厳しくする親たちと違って、我慢をして怒らないから。 だから、なにをしても気にされないし。 何もしなくても、気にされなかったな。 それが、今になって、何をするのにも意識をされて。 そして求められるようになっているのだから。人生、何が起こるかわからない。 (-76) 2022/03/05(Sat) 21:15:26 |
【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワ今、この場所に居るのが、兄であったら。 もう少し上手くやっただろうかと、そう思わないわけじゃない。 でも、多分、同じような事はしていただろうな、と思う。 思って、じゃあ、おあいこだな、とも思ったから。 「…教えてなんか、やりませんよ きみとの思い出は…僕だけのものにして、それで。 目一杯悔しがらせて、ざまあみろって言ってやるんです。 悔しがるくらいなら置いてくなってんだ、って」 喧嘩には、なるかもしれないけど。 そう言って、少し泣きそうで、でも屈託なく笑った。 いたずらを企てる子どものような笑みだった。 「ふふ…これ、辿り着けなかったらどうしましょう 僕、あんまり方向感覚とか、よくなくて。 こういう時、なかなか目的地まで辿り着けないんですよね…」 でも、二人でなら、もう暫く迷うのもいいかな。 そんな不真面目な事を思いながら、 行きあたりばったりに綺麗な世界の裏側を二人歩く。 静かで、それでも不思議と満たされた時間だった。 (-77) 2022/03/05(Sat) 22:04:20 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「お、教えて、あげないんですね……双子なのに。 ずっと兄弟喧嘩が続いてるみたいで、さみしいのに、なんだか楽しいですね」 「たまに運が良いんで、なんとか。 迷っても次官はたくさんありますから。ゆっくり歩きましょう……」 しばらく経ってたどり着いたのは巨大な水槽の上。 まるで工場にあるような機械が陳列し、手すりのついた鉄の橋がかけられている。 「……裏側をみれて楽しいですが、少し緊張しますね。 手は離しても良いですか、滑って一緒に転ぶといたいですし」 先に、と、橋を歩いてその水槽の中を覗き込んだ。 思ったよりも狭い、それなのに自由に泳ぐ彼らがそこにいて、彼らは幸せなのかと考えても仕方がないことを思い付く。 「……すごい、なんだか正面でみるよりも現実的で。 本物がいるんですね」 (-78) 2022/03/05(Sat) 23:06:37 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ当たり前のことを当たり前のようにいって、水面に手を伸ばしてみた。 「俺、きっと今まで。 水槽で泳いで餌をあげられるだけだったんです。 今は、外に出たいのかは、わかりません。 それでも、こうして隣に一緒にいて、思い出を作るためには、此れからも出ないとですよね」 (-79) 2022/03/05(Sat) 23:06:51 |
【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワ「…双子でも、です。 独り占めしたいものは、独り占めしたいんですよ」 重く小さな機械音と、二人分の足音だけが響く中。 あなたの方を見て、小さく笑って、そんな我儘を言う。 意地悪は建前で、我儘が本音なのかもしれないな。 そうして暫し漫ろ歩いた後。 声を掛けられれば名残惜しげに一度手を離して、 ほんの少し先を行く背を追った。 怖くはない。 手を離す事も、すぐ真下に水槽が広がっている事も、今は。 「……近いのに、遠いような。不思議な感じですね…」 足元に広がる世界を覗き込んで、ぽつり、そう零して。 水面に伸ばされる手をただ見ていた。 ──見学者。 触れたくとも触れられない所から、自分達を見ている彼らも。 或いは、こんな気持ちなのだろうか。 そんな詮無い考えが過ぎったのは、束の間の事。 (-81) 2022/03/06(Sun) 1:13:41 |
【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワ「…外に出たいかは、わからなくとも。 もし仮に、"出たくない"ときみが感じたなら。 きっと僕は、同じ場所で、ずっと傍に居ます。 きみが寂しくないように、いつまでも」 漠然と。 多分、その方が楽なんだろうな、と思う。 期待さえしなければ、裏切られずに、傷付かずに済むから。 でも、だからと言って遠ざけるのは多分、そうじゃなくて。 「でも。 それではできない事を、きみがしたいと思ったなら。 きみの支えになって、手を握って、 一緒に隣を歩くくらいなら、きっと。」 不確かな未来を約束するのは、やっぱり少し怖いけど。 きみの為なら、少しだけ意地が張れそうだ。 「今の僕にもできるんだって…諦めたくは、ないな。」 うん、ほんとに、少しだけ。 (-82) 2022/03/06(Sun) 1:14:34 |
【秘】 不運 フカワ → 演劇 アクタ「年上ですし……一応。 言い方は癖、なんです」 学生が多くて、若いな、と。 大量の台本のなり損ないを見て、 こんな熱量があることもやっぱり若さだと思う。 「やっぱり、なんだか。」 死ねと言われたのに、こんなこというのは、今更。 「嬉しいですね」 おかしいと笑われても、男はいつだってそうであるだけだった。 (-85) 2022/03/06(Sun) 2:05:19 |
【秘】 不運 フカワ → 演劇 アクタ「まず、お酒も……犯罪だから未成年も、関係ないですよ」 昔の嗜好品だったみたいで、と告げながら。 ワインもどきにケーキを添えて。再び席に着けばささやかなお茶会がはじまる。 「アクタ、さん、……あ、りがとうございます。 せいいっぱいもてなしますね」 罪の味が広がる、ケーキとワイン。 命を分け与える約束の裏に、生死を共にする夢は酒に溶けて飲み込まれる。 ただそれを願った想いだけは、甘い思い出に強く刻まれたことだろう。 (-86) 2022/03/06(Sun) 2:05:36 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「じゃあこれからも独り占めしてもらわないと、です、ね? なんだか、子供っぽくなってくれて嬉しいです」 「少しは甘えてもらえてるのかなって」 漠然と。 一緒に居た方が、出ない方が楽だと。 死なないで、死を待って、これからを意味なく話すのも。 きっと楽しいのだろう、それほどの仲になった。 やっと、自信を持っていえるように、なった。 「そう、ですか。 出来ていますよ、十分。いまだってこうして。 一緒にデート、できたんですから」 本当に、少しだけ。心の底から笑って、 ―――― ―― ― #水族館 (-87) 2022/03/06(Sun) 2:16:54 |
フカワは、カミクズを手放した。 (a6) 2022/03/06(Sun) 2:21:54 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ (-89) 2022/03/06(Sun) 2:26:05 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズまだ。手を伸ばせたじゃないか。 まだ。生きようとできたじゃないか。 俺が殺さないと。 俺が終わらせてあげたいんだ。 (-96) 2022/03/06(Sun) 6:02:34 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ男はずっと黙っていた。 最期の言葉を、君が産まれたことを望んだ言葉にしないといけなかったから。 死 な 、運がな いで良 け れ ば 、ま だ 。ど う して抗 ってく れな い のか、嫌 だ、ま だ。嫌 だ、嫌 君の こと が、本 当に。葉見ず花見ず。 最期の赤を、君の赤が広がる前に手に握らせた。 見ていた、ずっと見ていた。 (-98) 2022/03/06(Sun) 6:21:25 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ/* 生殺与奪含め全ての解釈や描写、返答や行動の猶予等、こちらメロンパン入れとなっておりますさんの自由にしてください。 どんな結果も受け止めお返しいたします。 (-100) 2022/03/06(Sun) 7:47:05 |
【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワ──運が良ければ、なんて事は無い。 これはきっと、多分、きみの 不運 なのだろう。投身自殺の成功率は低い、という話を知っているだろうか。 人体というものは脆いくせに柔軟で、 ちょっとやそっとの高さから落ちた程度では死にきれない。 大抵の場合、即死はできない。 もっとも、当たりどころが悪くなければ、の話。 ゆっくりと赤が広がっていく。 でも、まだ生きている。 不運かそれとも躊躇いか、慈悲の重みは狙いを外したようだった。 当たりどころは、良くも悪くもない。 放っておけば確実に死に至るだろうけれど、 この合議が終わるまでの間、命を繋ぐくらいなら。 まだ間に合うのではないかと思えるだけの。 もう一つだけの岐路、選択の余地が、そこにある。 静かに死を見守るも、生を拾い上げるも、今はきみの自由だ。 だって、上葛掃守という人間は。 いつだってきみの意思を、選択を責めはしなかったでしょう。 (-102) 2022/03/06(Sun) 9:25:54 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「……」 あなたの体のそばまで時間をかけて降りてくる。 想像通りうまくいかなかっただとか。 それでも、綺麗に見えただとか。 都合よく消えた魚たち、水槽の中の二人。 ねぇ、ロマンチックだと思いませんか。 最後の止めが必要になるこの状況が。 ――――俺、あの人と仲良かったんですよ。 ――――――楽しかったんですよ、なのに。 ――死んでどっかにいくっていったんです。 ―――――――嫌でした、すごく嫌でした。 (-112) 2022/03/06(Sun) 13:35:24 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「掃守さん」 頭を潰してしまえば死んでしまう。 涙がこぼれて前が見えなくても、成功することがわかる。 誰にもこの命を奪わせたりなんてしない。 俺だけのものだ。 ―――――――俺のこれって怒りなんですよ。 ―――仲が良いと思っていたのは自分だけで、 ――あとから追い付いた感情は執着になって、 彼から得る感情がもっと知りたくなりました。 (-113) 2022/03/06(Sun) 13:41:11 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ『人なんて殺したことないし』 『気合いをいれないと』 『こっちが殺されるんですよ』 顔面を硬い石で叩き。 頭を完全に潰して、二度と戻らないように。 赤 が、黒のエプロンと白の服を染めて、これで。よく眠れそうだと思った。 (-114) 2022/03/06(Sun) 13:44:28 |
【秘】 不運 フカワ → 清掃員 カミクズ「一緒に寝ようか、 」 やっと理解できた。 君の死にたい気持ちが。 動かなくなった身体をずらして、一緒に横になる。 抱きしめながら、笑って、髪を撫でる。 大好きなシオンと鈴の花に包まれる。 ここでは不吉な花も海藻たちとなじみそうだなんて。 寒さを感じるが、大したことは無い。 君が暖かくないことも、かまわない。 君の目が俺を映ささないことだって。 君の口が俺への愛を囁かなくたって。 この気持ちは、君だけのもの。 俺の気持ちは、君からのもの。 だから少しだけ、この夜だけはずっと一緒に。 (-115) 2022/03/06(Sun) 13:52:19 |
フカワは、 不運 だった。 (a8) 2022/03/06(Sun) 13:59:54 |
(a9) 2022/03/06(Sun) 14:00:13 |
フカワは、上葛掃守を 殺 した。 (a10) 2022/03/06(Sun) 14:00:34 |
フカワは、その夜、 の横でよく眠っていた。ずっと、ずっと。 (a11) 2022/03/06(Sun) 14:07:38 |
【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワほんの一瞬だと思っていた浮遊感は、思っていたより長く続いて。 その後に訪れたものは、水の冷たさではなかった。 人体が地面に叩き付けられる、鈍い音。 自分が、今、どうなっているのかわからない。 視界がちかちかとして、上手に息ができなくて、手足が冷たくて。 全身を苛む激痛と、 じわりじわりと命が流れ出ていく感覚だけが鮮明だった。 ただそれだけが熱を持っていた。 それで。 今になって、迫る死を、これまでよりもずっと近くに感じて、 怖いな、と思って。 痛くて、 寒くて、 寂しくて、 怖くて、怖くて、怖くて、怖くて仕方なかった。 (-124) 2022/03/06(Sun) 15:17:52 |
【秘】 清掃員 カミクズ → 不運 フカワだから、そこに聞こえた足音と、それから。 この場所で、唯一自分を名前で呼ぶ人の声に。 ほんの少し、どころじゃなく安心した自分が居て。 ──曰く、死ぬ時に、最後まで残っているのは聴覚なのだと。 そんな話を、ふと思い出したりなんかして。 ああ、あれは案外本当なのかもしれないな、と思った。 けど、同時に。 泣いているの、ばれてしまったかな、とも思って。 何かが頬を濡らす感覚に、それもおあいこだといいな、と思った。 (-125) 2022/03/06(Sun) 15:18:21 |
【秘】 きみだけの カミクズ → 不運 フカワそれから。 霞む視界の中、影が差したのを、感じて。 また一つ、鈍い音が響いて。 目の前が 真赤に染まって、 それきり、意識はまっくらな眠りに落ちていった。 ──ねえ、邦幸さん。笑わないで聞いてくださいね。 僕、あんなに記憶転移があって欲しいと思っていたのに。 今では少し、あったらいやだなと思うんです。 きみへのこの思いが、他の誰かのものになってしまうのは。 それは…あはは、やっぱり、少しどころじゃなくいやだ、な。 …ね、本当に、おかしな話ですよね…… (-126) 2022/03/06(Sun) 15:20:03 |
【秘】 不運 フカワ → 演劇 アクタ合議の後、あなたの前に浮かぶメッセージウィンドウ。 『カミクズさんを殺してきました 死にたいと、寂しがって孤独に苦しんでいたあの人を 仲が良かった、それだけの理由で 死ねない恐怖から解放させてあげました』 『おかげで死にたいって気持ちが こんなにもわかるようになりました』 『あの』 『俺が無事に帰ってこなかったら 誰か救いたい人は居ますか』 『俺の唯一の心残りはエノさんです あんなこと言わせたの、俺のせいです 生きたいって言わせて、理解を拒んだ俺のせいなんです 彼をああした後悔はないのに どうしてこうも辛くなるんでしょうね』 (-144) 2022/03/06(Sun) 17:36:47 |
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