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【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「君と同じ場所にいきたいと思うために、 俺は、君を殺さなくちゃいけなかった」 「……一緒にいきたいと言えなかったことが」 「ずっと、辛いんです」 「ごめん、なさい。未来を信じられなくて。 奇跡なんて起きないと、諦めて。 それでも、まだ、生きていてすみません」 (-260) 2022/03/07(Mon) 14:07:06 |
【秘】 ユス → の名残 カミクズ「無意味なものだから、言っても仕方のないものだから、此処で言うのですが」 だって、貴方は聞けないから。 だって、貴方は何も言えないから。 「本当に助かりました。ありがとうございます」 水族館を出る直前、青年は今此処にいない清掃員に向けてそう呟いた。 「貴方が人の死を片付ける仕事に就いていて本当によかった。だから学びたかったんですよ。その技術を。 俺にとっては必要なものだったから。 これから先 、ね」手向けにもならない言葉を置いて、青年は出入り口をくぐっていった。 (-264) 2022/03/07(Mon) 15:02:16 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「馬鹿な人」 なんて言いはするけれど、詰るような響きではなくて。 ああ、そうだ。 以前きみの事を困った人だと言った時。 あの時のニュアンスに、よく似ているんだろうな。 少し困ったようで、でも可愛くて仕方ないような、そんな感じ。 「それって謝るような事ですか」 「それって、誰かに許されなきゃならないような事ですか」 「一歩を踏み出せなかった事は、」 「信じられなかったのはきみの責任ですか?」 「違う、違う、違う」 「 僕達は許されるような事なんてしていない 」無い罪を許される必要はない。 (-265) 2022/03/07(Mon) 15:10:55 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「ここだけの話ですけどね、邦幸さん。 僕と絵乃さんは、最初からずっと同じ方を見てたんです」 ここには居ない誰か。 淡い望みを断ち切って、泣かせてしまった人。 理解者ではなく、友人として別れを告げた人。 「生きていて良かったと思えるような事は何もなかった。 ここで何かを得て、幸せなまま死ねるならそれがいい。 生きている内にその幸せを失わない保証は無いから。 僕達はそんな所ばかりが同じだった」 歩んできた人生はまったく違うけれど、 一人の寂しさと、生きる事の虚しさばかり似通っていた人。 思えば彼とは"選びたくない人"も同じだったな。 「覚えてますか?僕が投票先に立候補した時の事。 最後に楽しかったと思ってここで死ぬなら良いと思えたから、 確かそんな事を言った覚えがあります。」 「最初の日、きみと一緒に楽しい時間を過ごした後。 きみが楽しかったと言ってくれたあの時。 これが最期の思い出になるなら、いいかなって。 僕はもう、それ以上を望む事を諦めていたんですよ」 それも、皆が助けないでいてくれたから、こうして死ねただけ。 「なんて言ったら、きみは怒りますか。」 (-266) 2022/03/07(Mon) 15:12:12 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス清掃員は、手向けとも何ともつかない言葉を聞けない。 清掃員は、応える事ができない。 清掃員は、水槽の中に残されたものを見る事は無い。 それはそこに居らず、死んでいるからに他ならない。 もしも最後に残された言葉を聞いていたら、 きっと何とも言えない顔をして、曖昧に笑ったのだろうけど。 それも結局は想像の域を出ず、つまりは単なる感傷に過ぎない。 (-267) 2022/03/07(Mon) 15:37:08 |
カミクズは、残された言葉を聞く事は無い。 (c41) 2022/03/07(Mon) 15:38:13 |
【秘】 の名残 カミクズ → 美術 エノそれがずるい事だとわかっている。 誰だって死にゆく人には生きていて欲しいと言いたくて、 けれどそれ以上にその意思を尊重したいから口を噤むのだと。 でも、きみがもし、生きていたいと望むなら。 やっぱりそれも尊重したいなと、思うから。 きみは上葛を送り出して、上葛もきみを送り出した。 ただ、送り出す先が、抱く決意が違っているだけ。 なんてのは、屁理屈だろうか。 屁理屈でもいいから、願わくば。 なるだけきみが後からゆっくり来てくれたらいいな、と思う。 文句なら、向こうでいくらでも聞くから。 いつまでだって待てるから、そこは心配しないでほしいな。 (-271) 2022/03/07(Mon) 16:01:14 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「言葉が通じるから、言ってしまうんです。 許されたいわけじゃないのに、許しを請うのは。 一体どうしてなんでしょうね」 何も、罪を犯していない。 君がそう定めてしまったら、俺は。 「怒らない、ですよ。 諦めていたから叶えたつもりになったんです」 「……生きて欲しいって、言えなくて」 何だったのだろう、君にだけ感じていた殺したいという感情は。 「他の人には簡単に言えたのに」 言うだけで、人を変えることが出来なかった。 だから、行動で見せることにした。 それなら俺の君にした行動は。 「……」 何も出来なくて良かった、何もないを続けさせたくないから終わらせた。 「俺は、……君に」 誰かがいう、ハッピーエンドを、渡せなかった。 ああ、これもまたきれい事だ、他人事のように思って。 (-297) 2022/03/07(Mon) 18:51:25 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「綺麗事でまとめた幸せを、あげたくありませんでした」 「なんて言ったら、きみは怒りますか」 つまり、ただ、 一緒に死にたかった 。自分がそんな事を考えていたなんて、あり得るのだろうか。 (-298) 2022/03/07(Mon) 18:51:52 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワそこに罪は無くとも、 許されたいという願望が無くとも。 「罪悪感がそうさせるんでしょうね」 その感情を抱く事は、また別の問題だろうから。 だから人は許しを請うてしまうのだろうな。 「わかってたんですよ、言えないって。 ああまで言えば、きみ達は生きろなんて言えないって。 誇張も嘘偽りもない本心でした。でも打算もありました。 だからずるいのは僕で、きみ達は悪くない」 「生きる事の喜びよりも、生きる事の虚しさが勝る人間に。 死を選ぶ自由を与える事の何が悪いでしょう」 幸せの、ハッピーエンドの定義は人それぞれで。 誰かの語るそれが、上葛にとってもそうとは限らなくて。 そして、きみにとってもそうとは限らないんだろう。 だから二人の間では、これでよかったのかもしれなくて。 (-320) 2022/03/07(Mon) 20:07:58 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「怒らないですよ」 「嫌いだから。」 「大嫌いです、無関係な人間の語る、薄っぺらな綺麗事。 『幸福な王子』の話が大嫌いです。 この制度に纏わる美談が大嫌いです。 でも多分、本当に嫌いなのは」 生きていく上では綺麗事も必要なのだと思っている。 王子とツバメは確かに不幸ではなかったのだと思う。 確かにこの制度に命を救われた人も居るのだと思う。 じゃあ、何がこんなに嫌なのかって。 「選ぶしかなかった僕達の最後が、見ず知らずの他人の手で 軽々しく『めでたしめでたし』で締め括られる事」 物語として、他人に消費されるのが嫌で仕方ないんだ。 「邦幸さん。」 「生きている事は苦痛ですか。罪悪感に耐えられませんか。 不確かな未来や奇跡に期待するのはもう疲れましたか。 もしそうなら──誰の手も届かない所で死にましょうよ。」 この合議場での事は、口伝を除き外には漏れないから。 「今度こそ、二人で。 そうしたらきっと、幸せでなくたって僕は満足です」 (-322) 2022/03/07(Mon) 20:08:46 |
カミクズは、今や名残ばかりの亡霊は、甘い誘いを投げ掛けて。 (c48) 2022/03/07(Mon) 20:12:08 |
カミクズは、触れられなくとも、手を伸ばそうとする。 (c49) 2022/03/07(Mon) 20:12:15 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「あはは、君もその話をするんですね。 俺にはツバメは居なかったんですよ」 そうだ、男には伝える人も共に朽ちる者もいなかった 「……熱烈ですね、わかりました」 「俺は、死ぬまでの暇つぶしに来たんです。 その間、俺が誰かにたぶらかされないか、 君が――どこまで良心に耐えられるか」 あの時同じ水槽に道連れにされなかった時点で この命の居所は君の手元にはない。 男は共にする事を確約しない、そんなひどい人間だ。 「どうか」 (-330) 2022/03/07(Mon) 20:42:11 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「さいごのそのときまで、楽しみにしていてください」 君に触れられないとわかっているから。 その額に口づけをしながら、甘やかすように微笑みかけた。 (-331) 2022/03/07(Mon) 20:43:00 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「………あのですね。 熱烈って、人の足切ってまで捕まえようとした きみが言えた話じゃないと思うんですよ…?」 やや呆れ混じりにそう零した。 思うところがあるのは、その発言だけじゃないけど。 これじゃツバメじゃなくて青い鳥になりそうだ。 「誑かされたら、その時は。 死人らしく怨み言言いに行く事にしますから」 額か、頬か、目蓋か或いは口元か。 触れられない以上は何処を狙ったか定かじゃないけれど。 お返しとばかり触れられない口付け一つ落として、 「あーあ。 きみが早まって殺さなければ、ちゃんとお返しができたのに…」 ついでにそんな恨みがましい発言一つして、 多分、死に損ないは暫く死体のふりに戻ったんだろうな。 理由はなんてことない、ただちょっと疲れたからってだけ。 (-337) 2022/03/07(Mon) 20:58:57 |
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