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【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ごきげんよう。 ちょっとね」 仕事用とおもわれる華美な服装の上に、一枚羽織っただけの姿。 返答のかたちを気にした様子もなく、自分もそれなりにざっくりとした態度で近づいてくる。 「どっちが嬉しい? デートと、飲みのお誘い」 あなたのお好みで、と。 口許を楽し気に、三日月のようにゆがめた。 (-224) 2022/08/16(Tue) 22:40:20 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 「……。 飲みの方で」 まさか本当に、とは思わず一瞬反応が遅れる。 片方は冗談と受け取り、もう片方を答える。 「そちらの仕事は終わったのですか?」 あなたの恰好を見ての疑問を ライターを取り出しながら尋ねた。 (-226) 2022/08/16(Tue) 22:53:17 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタふ、と笑い声。 何度か、途切れるように。 「ふふ。どっちでもよかったのに」 冗談だろう。 彼女は本当のことは、めったにいわない。 「今日は予約がないから。休憩中。 …ま、お客に声をかけてないから当たり前なんだけど」 祭り、という環境だけをみれば、忙しそうなものだけど。 ん、とくわえた細い煙草を突き出しながら、 「おすすめのお店はある?」 と。 ……そういえば今まで、聞いた事のない質問。 いつもは、お店で行き会うだけだったから。 (-230) 2022/08/16(Tue) 23:16:43 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「ふん、小娘の体なんぞに興味は無い。が、しかし、それならば俺が知る限りを話そうか。とは言っても、口惜しいことに此方も殆ど何も分からず終いでね。」 「命を払うには確かに勿体ない代物だよ。」 「ここ数日で死んだのは、アウグスト、マウロ…そして、フィオレロ。この3名と、確かバーの店主も姿が見えないとか。」 「分かっているものの死因に直結する得物は銃火器。アウグストはスナイパーライフルでやられたようだな。」 「犯人は誰とも分かっていない。アルバの手の者か、それともノッテの内部の人間か、はたまたそれ以外か、何とも言えん。」 「他、知りたい事があれば答えるが。」 (-231) 2022/08/16(Tue) 23:18:32 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 冗談には溜息だけ返して聞き流して 手馴れた様子で煙草に火をつける。 でも、次の言葉には瞳を瞬かせて。 「……本当に珍しいこともあるものですね。 雨でも降りますか?」 空を見上げ尋ねる。揶揄われたことへの意趣返しに。 「そう、ですね……」 アマラントは当然ながら閉まっている。 ちらと女を見て、少し考える。 ビアンカのお客が居るような店は避けた方が良いだろう。 お互いに気が休まらないことになりそうだし。 「通りの裏手のバーは如何ですか? カクテルが多めです、ワインの種類が少ないのと、 少し賑やかなのが難点ですが。 ……静かなのがよろしければ……」 躊躇うように言葉を切って、また溜息をひとつ。 「私の家、でしょうか。 出せるのはワインと家庭料理くらいですが」 (-232) 2022/08/16(Tue) 23:41:00 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ彼女の中にマフィアに対する隔たりがあるのを、直接的に聞いたことはないかもしれない。 仕事のこととなると忠実に過ぎる態度を見せる男は、相談相手としていつも適切なわけではない。 けれども意見を求められず、わずかな距離をにじませることがあったなら。 それが形にされないのなら、同じく言葉にされない気遣いはあったのだろうな。 「……命の価値は、同じじゃないからな。だからこうやって大騒ぎする羽目になる」 やたらに利いたふうな口を利くわけではない。形ばかりの慰みを口にするわけでも。 けれども時折バックミラーを確認しながら運転し続ける横顔には、使い捨ての駒の哀愁があった。 立場や程度問題の差異はあれど、結局何処も、誰も、大きく変わるものじゃない。 「じゃあもう少し街の周りを流すよ。少し走らせたって目立つこともない。 街の中にしろ外にしろ、どこも息抜きできる状態じゃないだろ」 空の見える車内は遠くの風景まで見えてしまうぶん全く安心できるわけではないけれど、 それでも誰に聴かれるかもわからない場所よりも、ずっと。 盗聴の可能性を防ぐために、大手チェーンの経営するレンタリースを経由している。 それから。少し、沈黙を経て。 「……一度に10人、 運ぶくらいなら。けれどもずっと誤魔化せるわけじゃない。 探られればアシがつく、目立てば目立つほど早く。連れ戻されて、それで終わり」 血の掟に誓いを立て、人並み以上の権利を手に入れたとて、所詮は下位の構成員。 出来ることなんてあるわけもない。絶望的な話だ。簡単に逃れる方法はありはしないのだろう。 まばらよりも少し詰まるくらいに車の行き交う道路を見据えて、前を向いたままで淡々と答える。 「それを踏まえてまったく行方をくらますんだったら、どっちの街を通るにしたって、 目の届かない遠くまで券を用意して隠れ潜むんだったら、せいぜい、 二人 だけだ」 (-233) 2022/08/16(Tue) 23:43:38 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「こう見えても、これでご飯食べてるんだけど」 ふん、と小生意気な声。 それでも、あなたが話したことを聞くたびに頷いて。 「……ふうん。 思ったよりも面倒なことになってるみたい。 ──……スナイパーライフル……」 肩をすくめて。 「そんな趣味の悪いもの、持っている人いたかな。 男の人の銃の好みはよくわかんないな」 「……」 「気を付けなきゃいけない人とかいる? 私も、ノッテの人に近づくつもりとかはないですけど」 ふうん、と前髪をかるくいじる。 (-235) 2022/08/16(Tue) 23:53:07 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ありがと」 煙草に灯る炎が、ぽうと輝いた。 細くゆるく噴き出した紫煙が、古い石壁にふわりとまとわりついていく。 「あらやだ。日傘しかないのに」 何が楽しいのか。 横顔で笑いながら、煙をもう一度。あなたに向かないよう、ふうと真横に吹いて。 「ふぅん」 カクテル。ワイン。 きっと頭の中でくるくる考えていたけれど、 溜息の先の言葉を聞いて──ぱち、とまばたきをひとつ、ふたつ。 「……」 驚いたように、長く美しい睫毛の先の双眸が揺れて。 「今日は、静かなのがいいな」 客が離れて、ほ、と息をつくときのような。 夜明けの太陽のようにか細く柔い笑みを、あなたに向けた。 (-236) 2022/08/16(Tue) 23:58:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニーかたちにならないものが、いかに確かであるか。それは誰にも分らない。 けれど確かに思う気持ちが、そこにあるというのなら。 ――きっと、そこに。同じく言葉にならない、思いやりと気遣いはあったのだ。 それを互いに、自覚していたかどうかは分からないけれど。 「私にとっては、私の命が一番だけど」 窓に映るあなたの横顔に、一度視線が引っかかる。 ん、と軽い息が漏れて、太腿を持ち上げるように座り直した。 「うん。お願い。 ドライブは、……そんなに好きじゃないのだけど」 文句を言うわけじゃない。ただ、窓の外に送る視線はどことなく硬いものだった。 「……」 そうして、沈黙の先。ビアンカは、あなたが語る答えを聞く。 行き交う車が通りすぎるたび、びりびりと微かに窓が揺れた。 求めていた答えを得たというのに、彼女はまだ沈黙の向こう側に暫し、佇んで。 「ふたり」 溜息。細く。細く。 「…じゃあ、もし。ふたり。お願いするなら、あなたは頷いてくれる?」 「うちで一番若い子と、うちで預かってる子──ヴェルデ。ふたり」 窓に映る彼女の顔は、微笑っていた。いつもの、仕事の時に見せる顔で。 (-239) 2022/08/17(Wed) 0:10:03 |
ビアンカは、裏切った。 (a23) 2022/08/17(Wed) 0:10:22 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 礼の言葉に小さな頷きと微笑を返す。 煙草は好きでも嫌いでもないが、灯った光は少し好き。 以前そんな話をしたような、していないような。 笑うあなたに肩を竦め ふっ、と吐息のような短い笑い声を零す。 揶揄ったかと思えば、さりげない気遣いを見せてくる。 だからこそ、これまで付き合いが続いたのだろうけれど。 驚きの表情を見て、内心でまた溜息。 やむを得ないとはいえ、 揶揄われるような隙を見せてしまった、と。 けれど、返ってきたのは―― 「……分かりました。 ついてきてください」 今日は、の続きに淡々と答える。 一瞬。本当に一瞬だけれど。 見惚れた。 そんな貌もできるのですね、と茶化す気もなくなるほどに。 だから淡々と返事をして、先導する。 数歩先を、後ろに続くであろう足音に合わせた速さで。 (-245) 2022/08/17(Wed) 0:30:26 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「うん」 あなたのうしろで、かつかつと石畳を踏む足音が響く。 ――素直な時は、疲れているとき。 彼女がかつて、自分でそう言っていた。 はたして街灯に照らされた化粧の奥には、隠し切れない疲労の色が滲んでいる。 けれどそれを見せないように、いつもよりさらに濃く、しっかりとメイクがされていた。 ただ灯った橙の灯りだけが、あなたのあとをついてくる。 バッグもポシェットも、鞄の類は何も持っていない。 ただ、いつも持ち歩いている日傘だけが、彼女の手の内で揺れていた。 「最近どう?」 特に意味のないような質問。 ゆらゆらと揺れて、尾をひいて、掠れて消えていく紫煙のように。 (-250) 2022/08/17(Wed) 0:50:53 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 拍子抜けな返事を聞いて、かつての話を思い出した。 それでも揶揄う様子があまりにいつも通りだったから、 そんなことはないと、そう思って。……思い込んで、いた。 違和感はいくつかあったのにも関わらず。 冷蔵庫の中身を思い出して何を作ろうか、 なんて考えていると後ろからの声。 肩越しにちらと伺って、すぐ前を向く。 口元の灯りが照らす顔は、いつも通りに見えた。 「有難い事に盛況ですよ。 お祭りのおかげでお客様はたくさん。 今のところは大きなトラブルもありません」 だからいつも通り、業務報告みたいな返答をして。 一歩、二歩、三歩。 「……お酒の量が、増えました。 って言ったら、笑いますか?」 四歩目の足音の前に、苦笑が零れた。 (-252) 2022/08/17(Wed) 1:36:09 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「そう。よかったじゃない。 商売繁盛、なにより」 どこか遠くから、ひとびとの喧騒が聞こえてくる。 祭り。 皆が浮かれ、楽しみ、ひとときの夢を追い混ぜている。 ─その夢を提供する側は、こんなところで女二人、近所迷惑にならないくらいの声量で話しながら歩いているのに。 そして、あなたの4歩目を聞いて。 「それを笑うと、次は自分で自分をわらう羽目になるんだよね」 …苦笑を返した。 どうやらこちらも、部屋に酒瓶が増えているようだ。 「あなた、料理できたの」 かつ、かつ。 足音が僅かに間隔を狭める。 ほんの少し歩く速度をあげてあなたの横に並んだビアンカは、ちょっと失礼なことを聞きながら首を傾げた。 (-258) 2022/08/17(Wed) 2:33:28 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ ……意外。 というほどでもなかったけれど、苦笑いの答えに はっとして。 ほっとして。 だから足音が近づくのに気づくのが、少し遅れた。 「それなりには、ですよ。 高級料理店の味を求められると困りますけれど、 ちょっとメニューの狭い大衆料理店くらいなら」 首を傾ける所作すら美しい女の、 遠慮のない問いかけには慣れたもの。 見得もなく謙遜もない回答を口にする。 そういえば、人に料理を出すのなんていつ以来でしたっけ そんなことを考えながらアパルトメントの階段を上がり、 小さな部屋の扉の鍵を開ける。 「いらっしゃいませ、お客様」 扉を押さえて、仕事の声色で中を勧める。 綺麗に整えられた部屋は、 几帳面なこの女のものだと一目でわかるだろう。 (-264) 2022/08/17(Wed) 9:02:18 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ふふ。 お部屋であんまり、かっこういい料理を出されてもびっくりしちゃう。 ……トラットリアくらいが、楽でいいの」 いつも酒の席でかわされるような気安いやりとりに、随分と楽し気だ。 ころころと軽い笑い声が響き、街灯に照らされた影が伸びて、また縮んで揺れていく。 階段を上がる時も、なんだか興味深いあちこちを眺めながら後に続いて。 「ん。…いいお店ね」 扉をくぐって、ぐるりと顔を巡らせて。 なんだか楽しそうな声で、芝居のような言葉を返した。 声量はそれほど大きくはないけれど、どこかはしゃいだ様子を隠そうともしない。 「ひとり?」 上着を脱いでくるくるとまとめて、傘と束ねて手の中で弄ぶ。 さすがに、主人よりも早く我が物顔で部屋の中を歩んでいくほど傍若無人ではないようだ。 (-274) 2022/08/17(Wed) 12:21:54 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「…危ないから、ここを離れたいかなと思って」 あなたをここにしばりつけているのは、私でしょう。 ↓[2/3] (-276) 2022/08/17(Wed) 12:29:52 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ「それが普通だと思うな。本質的にはみんな自分以外のために死にたいわけじゃない。 自分と関係ないもののために危険に晒されるのは嫌だ。 ……そうじゃない人もいるんだろうけれど」 今この状況のために義憤にかられている人だとか、復讐を誓う人々だとか。 自分以外の何かのために命を投げ出す人たちがいるために、こうやって争い合うことになるのだろう。 ハンドルを握っている男がどちら側にあるのか、なんてのは常通りの顔からはわからないかもしれない。 ゆっくりとカーブを曲がり、建物の間から遠くに海が見える。夕暮れの色に照らされた美しい海。 いつもだったらそれを楽しむ余裕があったかもしれないし、 その向こうにあるのだろう本土の岸辺を想像することもあるのかもしれない。 迂回するように街の周りを走る車は、もうじき折り返す頃に入る。 ふたり。その中に相手が、己を入れなかったのを聞いて、ちらと視線がかすかに動いた。 「……一人で外に出していいの? 自活出来ない年じゃあないだろうけど。 きっと、ビアンカがいなかったら、戻ってきちゃうよ。キミのことが心配で、さ。 笑って送り出してそれっきり、なんて。オレはずるいと思っちゃう」 貴方の表情が引き締まるのと反対に、男の唇が中央に集まるみたいに結ばれた。 引き受けかけた先の時とは違って、適切だろう判断が下されることを、渋るように。 より良くあるようにと送り出されることの寂しさを想像して、何度か瞼がまたたいた。 それがどんな気持ちになるものかを、しっているかのように。 (-291) 2022/08/17(Wed) 18:07:58 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー「勝手にすればいい。死にたがりなんて。 面子も仇討ちも、…血の掟もなにもかも、 くそくらえだ。 私は、そうじゃない」 呪詛のように吐露をする。 さんざんに噛んで味のしなくなったガムのように、 そんな拘りはもう彼女の人生には必要ないのだ。 ただでさえ、苦々しい鉄と泥の味ばかりが口の中に残って、今でも忘れられないのに。 ごう、と窓が風を裂く音。 青、金、緑、紫、オレンジ。 揺れる海は、うねる髪のようにさまざまに姿を変える。 すぐに太陽が沈み、その色のいくつかは失われてしまうけれど。 ――太陽は、また明日も登る。 けれど、同じ波が見られるとは限らない。 「知らない。 エリカの方は若いつっても十八。どうとでもするでしょう。 ヴェルデは──……」 それは、優しさなんかじゃなかった。 相手のことを考えない、押しつけがましい、一方的なものが、 優しさや思いやりなんかであるはずはなかった。 彼女は、 ▼ (-293) 2022/08/17(Wed) 18:25:18 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー▼ 「私が拾ったガキに、私を不快にさせる権利なんてないの。 笑って送りだすつもりもない。 ケツを蹴り上げて追い出すから、安心して。 二度とこんなところくるんじゃないって。 この2年、ずっとずっと、面倒くさくてたまらなかった。 万が一死なれでもしたら本当に、最後まで面倒じゃない。 そこまで私の人生を左右する権利なんて、あのガキにはない。 絶対に、ない」 女でもなく、娼婦でもなく。 母親のような――それも、子育てなんて全くうまくない、最低で最悪な――顔で、悪態をついた。 本当のことなんて何一つ言わない女は、 自分自身にその顔を見せつけるかのように、 窓をじい、と見つめていた。 (-294) 2022/08/17(Wed) 18:27:45 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ「旅行はべつに、したっていいけど」 少年の手が、あなたの細腕を遠慮がちに掴む。 振りほどくのは簡単だ。 少年があなたにこんなことをするのは、今まで一度だってなかっただろう。 「——二人でならな」 「危ないってんなら、あんたも同じじゃないのか」 「様子がヘンなのってさ、最近何かしてるのと関係ある?」 それから、こんな風にあなたの行動の真意を尋ねることも。 翠の瞳はじっと、あなたを見ている。 (-295) 2022/08/17(Wed) 18:36:19 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「悪いが、特定の人間に絞り込めていない状況だからな。俺からはその質問には答えられんよ。強いて言うなら…お前さんに理由無く近づく輩は全て警戒しておいて良い。」 「例え身内であってもな。」 誰が犯人なのかは分からない。 だから、身内だからと気を許すなと伝える。 「…お前さんは失うなよ。大切なものをな。」 (-296) 2022/08/17(Wed) 18:41:27 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「…………」 「私は」 捕んでみれば、その腕はなんとも細く、頼りない。 あなたは男だ。 数年もたてば──いや、今でさえ、彼女を組み伏せることすらできるかもしれない。 彼女は非力だ。 弱く、愚かで、そしてなんの能もなく、 この街を離れる勇気すらもなかった。 「私はいい。 体を売る以外、もう何もできない。 十年もすれば売れなくなって、あなたのかわりにゴミ捨て場に転がる。 けど、あんたは違う。 ……違うよ。 本なんて、私は読みやしなかったもの」 こちらを見つめる目を、見下ろす女の瞳は潤んでいた。 そこに浮かぶ感情を、なんと表現するべきだろう。 ――悲しそうで。 ――嬉しそうで。 笑うように、おんなは泣いていた。 涙なんて、決してみせはしないけど。 ↓[1/2] (-300) 2022/08/17(Wed) 20:06:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ↓ 「 私 、旅行は 嫌いなの」「私は大丈夫。守ってくれる男なら、いるし」 「――仕事してるだけ」 あなたの問いに、答えることはできない。 答えにもならない答えを押し付けて、歩き出そうとする。 「いいから黙って、街を離れなさい。 一回爆発しないと、こういうのは収まらない。 へたくそなセックスと同じ。男ばかり、馬鹿みたいに騒いで、あちこち犯して、そうして終わったら素敵な思い出みたいに語るの。ああ、くたばれって感じ」 溜息。血を吐くような。 「死にたくはないでしょう?」 死にたくなんてないのだ。 [2/2] (-301) 2022/08/17(Wed) 20:07:30 |
ビアンカは、ここは大嫌いだった。 (a38) 2022/08/17(Wed) 20:08:51 |
ビアンカは、けれど、ここに居続ける。 (a39) 2022/08/17(Wed) 20:09:10 |
ビアンカは、旅行になんていかない。 (a40) 2022/08/17(Wed) 20:09:23 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「そ。 まあ、女ですからね。 いつだって身の危険は感じてる」 冗談めかして笑いながら、自らを抱くように腕を組む。 寒くもないはずなのに、強く圧された指先が白んでいた。 「大切なもの?」 あなたの忠告を、レコーダーのように繰り返す。 ――そのレコーダーはノイズ混じりでがりがりと歪んでいて、きっとずいぶん昔に壊れてからそのまま、置かれているのだろう。 別に、珍しいことじゃない。 「処女なら、随分昔に無くしたわ」 他にはなんにも持ってない、と嘯いて。 握り締めた掌を、今度はひらひら、無責任に振ることはなかった。 「………あんまり営業妨害するのは気が引けるな。 ねえ、おすすめはある? これ、どこのお菓子? チャイナ?」 (-304) 2022/08/17(Wed) 20:16:19 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカけれど、その頼りない腕が少年を拾った。 守りたいとか、どうにかしたいとか、そういうことじゃない。 そういうことができる者はきっと、他にいくらでもいるのだろう。 それでも。 あなたがしてくれたことを返したいと思うぐらいにはなったのだ。 「じゃあ、その十年で」 「おれがもっと他のことをできるようになって、あんたを拾えばいい」 少年は、ばかだ。 学はないし、碌にものも知らない。 ばかなこどもだ。 それがどれほど大変なことか知らない。 あなたの手を引く。 話はまだ終わっていないから。 「死にたくないのはあんただろ」 (-307) 2022/08/17(Wed) 20:31:21 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「ばか」 ふ、と笑う。 「教えなかったっけ」 「男は、女を置いていくもんだよ」 手を引かれて、ゆっくりと振り返る。 肩越しの顔が、あざけるように歪んだ。 「その時私は三十四。 十年体を売れば、もう売るものなんて残ってない。 積み上げた借金は、きっともう返せない額に膨れ上がって、 私の女としての部分を全部ツケと利息でぐしゃぐしゃにする。 あんたも十年たてば、きっと大切なものがたくさん手に入る。 素敵なものがたくさん。 そんなとき、ごみを拾いに戻る必要なんてないんだよ」 はあ、と。 溜息に、どこか甘い香りが混じる。 ――酒の匂いだ。 「死にたくなんてないよ。 けど、生きていてもそんなに、よくはない」 (-309) 2022/08/17(Wed) 20:42:55 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカそうだろう、と繰り返すのは先と同じ言葉になるから、相槌だけで過ごされる。 やたらに相手の境遇や過去を聞きたがるわけではなかったから、相手も話したりはしなかっただろう。 そしてきっと相手も、金を払っている間のリップサービス以上には興味を寄せなかっただろうから、 男が何処で生まれてどう育ったかなんてのは、聞かされていないはずだ。 それでも真っ向から、裏稼業の浪漫なんてものに浸りきっている人間は、 よほど血筋に硝煙の匂いの染み付いた人間だけでしかないのを、知っている。 互いはそうではないということも、わかっている。 相手の、強い表情を横目に見遣りはしただろう。 ぎょっとしたりもしなければ、二度見して確認したりもしない。 ただ、少しだけ黒目は下の方を見つめがちになって、改めて道路の先の方に視線を移して。 運転に支障のあることはしないし、動揺してみせたような様子もない。 「……今度から」 余計なお世話なのだろうし、きっと言ったところで相手の覚悟が揺らぐわけじゃない。 彼彼女らの間でどんなやりとりが交わされていたのかだって、わかりゃしない。 納得済みの話なのだったら、それこそ無駄な忠告でしか無いだけのものだ。 「ウソつく時は、話切り出す時から貫いておいたほうがいいよ」 どこが、何が、なんてのは敢えて口にせずとも伝わるのだろう。心当たりはあるだろう? ゆっくりと、海岸線を窓の中に切り出しながら車はゆるやかなカーブを曲がっていく。 街を見下ろすほどの勾配もなくじきに市街に差し込んでいけば、 そのうちに車に乗り込んだ場所にほど近い風景が見えてくる頃だろう。 話し合いは、もうそろそろおしまい。 (-312) 2022/08/17(Wed) 20:52:30 |
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