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【神】 冷たい炸薬 ストレガ【ノッテアジト】 「なん、だって?」 もう、随分静かなアジトで。 二枚の資料を見る。 両方共に、関わった顔。 特に、その片方は。 「冗談にしちゃ笑えないよ」 ストレガは、椅子を蹴倒したりしない。 静かに立ち上がり、俯いて、机に手をついた。 「なあ」 広くなった会議室で、僅かに震えた声が ぽつりと虚空に吸い込まれていった。 (G0) 2022/08/23(Tue) 21:55:35 |
ストレガは、海色の瞳が波のように揺らめく。 (a1) 2022/08/23(Tue) 22:00:09 |
ストレガは、瞳から海が零れている。寄せては返す、波のように。 (a2) 2022/08/23(Tue) 22:09:26 |
【神】 冷たい炸薬 ストレガ――少しの間。微かな嗚咽が残っていた。 それをかき消すように、ごつ、と頭がテーブルに落ちる。 1度、2度。……間をあけて、強く、3度。 そして、ゆらりと立ち上がる。端末を指先でなぞり、 ソルジャー以下数名の手勢に向けて。 「ストレガだ」 「暗殺屋の所に転がっていたゴミとその仲間の身元を調べろ。 徹底的に。全て調べあげて、まとめて報告しろ」 「気取られず、そして決して殺すな。 あたいがやる。 ……安心しな、自爆みたいな古臭い方法は使わないよ」 ビッ、と親指の腹で目元を払う。 家族の死を嘆く、年相応の女は消えた。 (G5) 2022/08/24(Wed) 2:18:43 |
【神】 冷たい炸薬 ストレガ海は涸れ、煮え滾る溶岩が流れ込む。 ともすれば血涙を流しかねないほどに鬼気迫る――微笑み。 「恐怖の味ってモンを、教え込んでやるのさ…… 連中の、根の部分まで。骨の髄でもまだ足りない、奥底に」 女は、今や本物の魔女となった。 「ちょっと、行ってくる。 ああ、安心しなよ。テンゴさんの手は煩わせないさ。 あたいが欲しい首は、そんな上等なモンじゃない」 「もっと下等な、屑の首だ。手柄も、何も要りゃあしない。 その代わり――横取りしたら、誰であっても、 喰いついてやるから。覚えておきな」 ごつ、ごつ。床をブーツが叩く音。 魔女は、会議室を後にするだろう。 (G6) 2022/08/24(Wed) 2:29:59 |
ストレガは、路地の店には向かわない。 (a8) 2022/08/24(Wed) 2:44:25 |
ストレガは、あの店に向かうのは、清算をしてからと決めている。 (a9) 2022/08/24(Wed) 2:46:47 |
ストレガは、だから、もう少しだけ待っててよ、Piccolinato (a10) 2022/08/24(Wed) 2:48:09 |
ストレガは、呟く傍ら、掌に隠れるような、小型拳銃を手にして街へ消えた。 (a11) 2022/08/24(Wed) 2:49:00 |
【置】 ノッテの魔女 ストレガ――下手人は、至極あっさりと見つかった。 それは一仕事終えた安堵からか、或いは 底冷えする魔女の号令に部下が奮起したからか。 ともあれ。彼らは、見つかった。 見つかってしまった。その報告を聞けば 魔女はきゅうっと口の端を吊り上げて、笑う。 「ああ」 「いまいく」 左手には暗殺用の小型拳銃を一丁。 それはいつだか、整備したあの銃と同じ型。 同じ改造を施したもの。 右手には最も扱い慣れた物が詰まった工具箱。 仕事の時に使う物の内、幾らか錆が浮いた古いもの。 ごつ、ごつ、と。あの子の軽い足音に比べれば、 ずっとずっとうるさくて、重い音。 やがてそれは辿り着き、訝しむ者を前にして、 微笑みながら呟いた。 「Chi semina vento raccoglie tempesta.」 嵐が、吹き荒れた。 (L0) 2022/08/24(Wed) 14:26:59 公開: 2022/08/24(Wed) 14:25:00 |
ストレガは、生け捕りの代償に、右の頬と耳が少し欠けた。 (a13) 2022/08/24(Wed) 14:31:33 |
ストレガは、それを引きずって、塒へと帰っていく。 (a14) 2022/08/24(Wed) 14:33:48 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ【寂れた時計塔】 垂れた血の跡が、時計塔に伸びている。 何かを引きずった跡も。 それらは錆びついた扉へは近づかずに、 脇に積まれた箱の方へ。その陰に隠された入口へ続く。 『中は廃墟の割には小奇麗で、幾つかの机と椅子がある。 動く事もないはずの歯車たちは錆びも埃もない。 床も入口付近は草が侵蝕していたが、 そこ以外はワックスのきいた床板が張られている。 発電機でも持ち込んでいるのか、壁にはコンセントの口が 幾つもあって、電動ドリルやはんだごてなど 電機工具のコードがいつでも挿せるようにぶら下がっていた。』 「本当はね」 今は、そこに工具はない。すっかり取り去られている。 家具の配置は変わらないまま、仕事の痕跡が消えていた。 部屋の壁際には、中身が空っぽの金庫がひとつ。 それと、金庫に片腕を下敷きにされた男がひとり。 「ここには、誰も入れるつもりはなかったのさ。 あたいの物を勝手に触られたくないし、 仕事の邪魔もされたくなかったしね」 何の話をしている、と睨む男の、固定された腕を 強く踏みつける。骨の軋む音がした。 (-52) 2022/08/24(Wed) 18:35:29 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「ところがだ。ある時どこで見つけたのか、 猫が入り込んできてね。毛並みはいいのに、 なんとも態度が可愛くない奴でね。 その癖、賢い奴で場所を荒らしたりしないのさ」 もう一度、強く踏む。折れる前には、足を離す。 男は、既に片手と両足をガムテープで巻かれ、 身動きが取れない状態になっていた。 狂ってんのかよ、と僅かに汗をにじませた男に、 ハ、ハ、と。それこそ狂ったように、笑う。 「はーぁ。ま、そんな猫が何度かここに来てね。 その度ちょろっと様子を見ては、帰っていくのを見てた。 いや、別に深い話がある訳じゃない。 ただそいつの事が気になってたのさ。 今頃どこで何してんだか、ってね」 傍らに、大きなリュックを下ろす。中から工具を引き出して。 壁際のコンセントは、きっと増設したものだ。 「そんな猫がな」 魔女は、そこにはんだごての電源を接続した。 「あたいが、気まぐれにちょっと見送ったらさ」 魔女は、凄絶に微笑んだ。 「死んじまったんだ」 (-55) 2022/08/24(Wed) 18:44:24 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「なあ。なんでその猫は死んだんだろうな?」 知るかよ、と返す口をガムテープで塞ぐ。 口元から、後頭部。また口元。4周ほどして、止める。 「そう考えてた時、小耳にはさんだんだよ。 『猫を殺した奴がいる』って」 ちり、ちり、赤熱しつつあるはんだごてを見下ろしながら、 黒ずんだ指先に軍手を嵌めていく。 「あんたからさあ」 「するんだよ」 「 ねこのちのにおいが 」熱し切っていないはんだごての先端を、 金庫に挟まれた腕に押し当てた。 (-57) 2022/08/24(Wed) 18:49:35 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「なあ」 封じられた身体をうねらせる男の、腕を焼き続ける。 「あの子は、暗殺者だったよ。 正直言って、最近までどんな子か知らなかった。 工房に来るでもなし、会話が得意でもない。お互いね」 はんだごてを離して、灼けた痕を眺める。 「いざ会話してみれば、かっわいくない子でさあ」 ガムテープ越しに、ゆっくり押し付けて脛を灼く。 くぐもった呻きが、暴れる向こうから聞こえてくる。 「でもね」 「あの子は、……いい子だったと、あたいは思ってる。 はは、聞かれたら『馬鹿ね。』って言われそ」 似てない声マネを、男は聞けていただろうか。 金属を溶かす熱に、腿の裏を服の繊維ごと灼かれながら。 「あーあ」 (-59) 2022/08/24(Wed) 18:57:58 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「なあ」 ガムテープに押し付けた熱が、少しずつ男の頬を灼く。 ビニールの溶ける匂いが、肉を焦がす臭いに変わる。 「あたいは、あんたを苦しめたい。 けど、そんな事してもあの子は帰ってきやしない」 ぱっ、と、はんだごてを離してやる。 電源を抜いて、コードを纏めて。 「だから、代わりにあの子を弔いたいんだ。 なあ、あんた。手伝ってくれるよな?」 痛みに涙を流しながらも、男はガムテープの向こうで イタリア語のスラングを幾つも幾つも垂れ流していた。 「ああ。ありがとう。じゃあ、頼むよ」 ぽんぽん、と男の頭を軍手越しに軽く撫でる。 そして、魔女は二階へ姿を消した。 (-62) 2022/08/24(Wed) 19:04:38 |
ストレガは、時計塔の歯車を撫でた。それは、別れの挨拶のよう。 (a15) 2022/08/24(Wed) 19:06:16 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「待たせたね」 魔女は、少しして降りてきた。 両手には旅行鞄を1つずつ。 きっと、その中には止まった時計と、動いている時計。 そして、この魔女の得意とする爆弾が満載で。 けれどそのいずれも、ここで使う気はないようで。 旅行鞄を抱えて、工具の入ったリュックも背負って。 最後に、欠けた頬と耳から血を流しながら、 男に近づいて微笑んで。 「なあ。あんたみたいな野郎でも、息子はいるだろ」 痛みに血走った目を向ける男は、狂った女め、 という視線しか返さない。実際男に家族がいるか? そんな事は、この魔女にとってはどうでもよかった。 魔女は、釘打ち機を取り出して。 (-65) 2022/08/24(Wed) 19:15:56 |
【独】 ノッテの魔女 ストレガ「Voi e i vostri figli soffrirete per il resto della vostra vita.」 男の股間へ押し当てて、制止の声が出る前に、 きっちり3発。男を、床材と縫い付けた。 (-67) 2022/08/24(Wed) 19:20:33 |
ストレガは、釘打ち機をしまうと、「Addio.」と呟いて時計塔を出た。 (a16) 2022/08/24(Wed) 19:20:53 |
【人】 ノッテの魔女 ストレガ「あーあ」 「……。あいつ、怒るかな。 ……いや、絶対こうだな」 「『興味ないわ。』」 「はは。」 ごつ、ごつ。 時計塔から足音が離れていく。 旅行鞄を二つに、リュックサックをひとつ。 女だてらに銃器を散々振り回したから、 これくらいは持ててしまうのが恐ろしい。 それからふっと、思い出したように。 寂れた時計塔を見上げる。 天辺には、鳴る事のない大鐘が釣られていて、 時計塔の中の歯車が動いていれば、 きっと時を報せる鐘の音を、島中に響かせたのだろう。 「――なあ。中を修繕しといて、なんだけどさ。 悪い、あたいの友達の為に……」 「空のずっと向こうまで届く、盛大な花火をあげてくれ。 それから、あんたのデッカい音をさ、響かせてくれ。 あたい、グラスハープとか当分弾けないから、 それまでの代わりとしてさ」 キン、と、銀色から欠けたリングが落ちる。 頬と耳が欠けた魔女は、時計塔に瞑目して、背を向けて。 銀のスイッチを、押し込んだ。 (13) 2022/08/24(Wed) 19:29:30 |
【人】 高らかに、あなたの元へ届け ストレガ「Buona notte.Sogni belli.」 「レヴィア」 寂れた時計塔が、基部から爆発した。 いくつも、幾重にも仕掛けられた爆弾が、 連鎖的に爆発を起こす。 背中に熱と風を感じながら、魔女は去っていく。 最後に、天辺の大鐘の真下が、特大の爆発を起こして。 カラァーーーーン、カラァーーーーン…… 大きな鐘が、何十年かぶりに、その音を天へと響かせた。 (14) 2022/08/24(Wed) 19:34:22 |
ストレガは、ため息をひとつ。猫を迎えに、あの店へ向かった。 (a17) 2022/08/24(Wed) 19:35:42 |
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