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人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

革靴の底が鳴る。こつ、こつ。
牢獄を繋ぐ通路。…目当ての場所まで、真っ直ぐに。

「…ミネ」

とある牢獄の手前で立ち止まった女は、底に収容されたあなたへ声をかける。
今は、眼鏡を外していた。
不安げで悲しげな面持ちが、そうっと檻の中を覗く。
(-492) 2023/09/23(Sat) 0:56:11

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

カンターミネは、通路に背を向けて横たわっていた。
どこかぐったりとして見えたが、
足音が牢の前で止まり、そこに声がかかれば
のっそりと転がってあなたの方を向いた。

「……わお、エ……エーコじゃん。元気そう……でもないな。
 いやー捕まっちゃったぜ、酷くない?
 俺別にそんな悪い事してないってのになあぁ」

へらりとした声。いつもと変わらない声。

眼鏡を外しているなら、顔に浮かぶ憔悴の跡に気付くのは難しいだろうか。
その分、いつもと変わらないように聞こえる声の奥に
ほんのりと我慢の色が見えるかもしれない。
(-496) 2023/09/23(Sat) 1:12:23

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「自分のことか? 立場をよく分かっているじゃないか。」

わざとらしく嘲って笑う。
とんとんとんとん。紙面を叩く速度は段々上がる。
実のところ、この男は普段こんな風には話さない。
悪人と話すことなどないというように冷ややかな面差しを向けているのが男の常だ。
貴方の言葉のどこかがこの男の心情を逆立てている。貴方のペースに巻かれている。


「そうか。直ぐに辞表を出した方がいい。」
「『協力的』の意味も正しく知らないんじゃ役不足だろう。それに」
「お前は存在自体・・・・が教育に悪い。子どもたちが可哀想だ。」

とんとんとんとん。
とんとんとんとん。
渋面とにやけ面が向き合っている。
紙面を叩く速度は徐々に上がっている。

お前たちマフィアには適応されない。」
「法による権利も庇護もお前たちに与えられるべきではない。」
「それを享受していいのは法を守っている人間だけだ。」
「抜け道ばかり探しておいて利用しようなどと」
「都合が良すぎると思わないのか?」

とんとんとんとんとん。
とんとんとんとんとん。
問いには答えない。
答える義理はない。
(-504) 2023/09/23(Sat) 1:46:03

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

「ん?ああそうか、自分の事は省みれないタイプ?
 そりゃそうでもなければ厚顔無恥すぎて尋問なんか
 出来るわけないもんな、あっはっは」

普段のあなたを知らない女は、歌う。

「人のふり見て我がふり直せって言葉が極東にある。
 あんたの辞書には書いてなさそうだな?
 じゃなきゃやっぱ鏡は見たくないタイプか。」
「へえ。その可哀想な子供達が頼りにしてるのが
 『正義のおまわりさん』じゃない方が
 よっぽど可哀想だと思わないか?あ、悪い。
 自称・・正義にはわかんないよな」

歌う、歌う。叩く音はメトロノームの如く。
言葉の切れ味はスタッカートで。歌う、歌う。

「おや?また同じ言葉。録音機を相手にしてたか?」
「爆笑モノだな。大体の奴は2回言えば理解できるが、
 あんたには3回目が必要らしいや。」
「鏡を、見ろよ、犯罪者くん。
 法も守れず、人も守れず、苛々だけため込んで、
 次はなんだ?物にあたる?それとも人にあたるか?」
「なあ?抜け道を通ってそこに座ってる奴がさあぁ」
「"都合が良すぎると思わないのか?"」

これは、鏡のふりをしてみせる。
お前は俺だ。或いは、お前の方が醜いと、歌う、歌う、歌う。
(-508) 2023/09/23(Sat) 2:05:22
カンターミネは、歌う、歌う、歌う。
(c23) 2023/09/23(Sat) 2:38:49

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「どうせお前が唆したんだろう。」

決めつけだ。

「お前たちの十八番。口八丁で無知な子どもを誑かす。」

偏見だ。

「二回で理解出来ないのはお前の方だろう。」
「俺が法を守らないんじゃない。法はマフィアお前たちを守らない。」
「────、」



激しい音を立てて男が椅子から立ち上がったのと、
取調室の扉が叩かれたのは同時だった。

立ち上がった男はびたりと動きを止め舌打ちをする。そうして長い息を吐いてから返事をすれば、一人の警官が入ってくるだろう。
彼は何かを手に持っていた。そうして貴方の方を伺いつつ手短に男と言葉を交わし、それを渡して、また出て行った。

さて。
再び室内には静寂が訪れる。しかし状況には変化があった。
男が手の中で弄ぶそのケース、或いは瓶を、貴方は見たことがあるはずだ。
(-521) 2023/09/23(Sat) 3:00:33

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

「クハッ!ハハ、ハハハッ!
 質問には答えません、相手の事はきちんと見ません、
 自分と向き合う事も出来ません、
 権力を振りかざす事しか出来ませんか!
 いいねえ、『パパ』そっくりになってきたな?
 あー笑える。ひとつ予言してやるよ、その内お前、
 ママにも署長代理パパにも見放されるぜ!」

見てみろよ、あいつの動き。
今ノックが聞こえる前、なにをしようとした?
所詮、法を守るとか言ってる正義面でもこの程度だ。
警察なんて肩書も、紙屑以下の嘘っぱちだ。
裏で嘘を吐き、人を嘲り、笑い、貶める。
そうとも、誰も彼も信じるに値しない。


「――その程度なんだよ、お前の正義も、法も。」

へらついた笑みを張り付かせたまま、口を開く。
……正直言って、あまり見たくない物が見えているが。
それをわざわざ態度に出してやる程、
こいつに優しくする理由はない。
(-523) 2023/09/23(Sat) 3:15:53

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

新しい玩具を手に入れた赤子のようだ。
まるで不思議そうな顔で手の中のものを見る顔はそういうものによく似ている。
それ以外への興味が抜け落ちたような、奇妙に冴えて一途な表情。
警官から何かを受け取った男はそういう顔をしていた。そういう顔をしているだけの、やはり苛烈な男だった。

へらりと笑う貴方が言葉を切る。
それとまた、ほとんど同時に。

ガシャン!


先程より大きな音が部屋に響いて、貴方はそのまま後ろに吹っ飛ばされることになるだろう。
顔面に強い衝撃。
椅子ごとひっくり返り、頭を強かに打ち、手錠で戒められた腕では身体を庇えもせず転がったはず。目の前の男がテーブルをひっくり返したのだと気づいたのはどのタイミングだろうか。
どうあれきっと全身が痺れたように痛むはずだ。打ち付けた頭も方向感覚を失うだろう。それでも貴方は立ち上がろうとしたかもしれない。それくらいは出来たかもしれないが。

仕掛けた側の方が状況の理解は早いものだ。
貴方が起き上がる前に、この男は貴方の左肩を踏みつけている。
(-528) 2023/09/23(Sat) 3:41:34

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

……ああ、マズったな。処分が甘かったな。
そう考えた時には、ぐぶ、なんて湿った音が鼻奥から響く。
脳の天辺なのか、後ろか、ともかく痺れの波が
寄せては返し、きいんと耳鳴りが続く。

頭の奥では冷静に、やっぱりこうだよな、と笑う。
表情にもまた、笑みは張り付いたまま。
呂律が回らない事は口を開くまでもない、
いやそもそも口を無思慮に開けたら不味い・・・
せめてどれかひとつでも砕ければ、そんな考えの元
身体を起こ――せない。二度、三度と試して、
やっと左肩を踏まれている事に気付いた。

女の扱いも知らないのかよ。声もないまま、
赤く揺れる視界に映る、鬱陶しい顔に毒づいた。
(-529) 2023/09/23(Sat) 4:03:08
カンターミネは、歌うのをやめさせられた。
(c24) 2023/09/23(Sat) 4:05:35

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

乱視の視界に鮮やかに灯るライムグリーン。
女には
受け止める
意気地がなかった。
…そんなあなたの様子や顔色をだ。

「…」

いつも通り、――ううん、ちょっと違う。
ただそれだけなのに胸が痛い。
そうっと手を持ち上げる格子に触れて。
指先には、ぞくりとするほどの冷たさだけが残った。

「…あはー。そおだよねえ。」
「ミネはちょおっと、盗聴とかそゆことしてただけでえ。」

…頬を緩めて、へにゃりと笑う。
この特技はきっと、こんな時にこそ役立てるべきものだった。
それにしても発言は身内贔屓が過ぎるが。

「……あたしは。」
「だいじょおぶ、元気だよお。」

えへへと笑って、左手を翳す。
少し傷が入ってしまっても剥がさずにいるこの小指のネイルは、あの日あなたに塗ってもらったものだ。
…だから、大丈夫。ダニエラ・エーコは、まだ頑張れる。
(-531) 2023/09/23(Sat) 4:45:17

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

わかってる。だって『エリー』は優しいから。『エーコ』は聞き分けがいいように見せているから。
鼻血の跡、きちんと拭けてるよな。よだれ、垂れてないよな。


「そうそう、ちょっとだけってオーイ。しーてーまーせーん。
 俺のテディに変な仕掛けがされてただけですぅー。」

ふざけるように笑いながらも、近づかない。
普段なら絶対に駆け寄って、その手を握るのに。
悪い。今はふらついて真っ直ぐ立てないからさ。


「そりゃあ、……元気ならよかった。おまわりさんも
 日々激務だろうけどさ、ここからのんびり応援してるよ」

そう言って寝転がったまま、片手を上げる。
この仕事のない場所をそれなりに満喫しているらしい。
お前だけは同じ場所に入らないでくれよ。


そして、少しの沈黙があって。ふと、思い出したかのように。

「あそうだ。今度あいつ、あのーあれ。ほらあいつ、
 花屋で『マリーゴールド』をよく買ってた奴。
 あいつにもし会う事があったらさ」

あなたの指を見る。フレームの歪んだ眼鏡だと、
少し見え辛いけど、きっと約束の花はそこにあるから。

「……無理すんなって、伝えといてくれない?
 あいつ、すーぐなんでも我慢しちゃうだろ〜?」

へにゃりと、ブレてても見えるように大きく笑った。
(-532) 2023/09/23(Sat) 5:08:19

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

守りたいものが、あった。ひとつ、ふたつ。…ふたつとも、こぼれ落ちて行く。
守ることができなかった、その想いだけで枷なのに。
そのふたつの現在いまを知ると今度こそ先に進めなくなってしまう。


「…ふふっ。」

何がおかしいのか、あなたの様子を見た女は笑う。

「…大丈夫だよお、ミネ」
「カメラとか、全部、弄ってきたからあ」

びっくりしたあ?なんて女は悪戯に笑った。
元から女は警察に忍び込む内通者。これくらいなら、易くあり。
…更に言えば、上層部が検挙されたこの署内を好きにするのは、日頃より少し、更に易かった。

「…あんまり長くは保たないけど、でも」
「話したいことが、あったのお。」

とはいえリスクは多分にある。
毎度面会でこんなことはしていられない。
…リスクをとる必要があったのだ。だから、今こうなっている。

「その、お兄さんのこと、なんだけどお。」
「…ううん、あんまし長く話す時間もないしい、要件だけ、言うねえ。」

指先が上がる。5本。時計を見ながら、1本減った。
時間の猶予は、それだけだ。

「ミネのモーテルに、まだ仕事道具が残ってるなら」
「場所と使い方、教えて欲しいんだあ」
(-542) 2023/09/23(Sat) 6:58:20

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……。あーもうほんとびっくりした。
 俺のお姫様はおてんばな事で……
 いっそ王子様って呼んだ方がいいかもしれん……」

いや、その座は譲る気ないけど、とも思うが。
ともかく、軽口を叩くほどの時間はなさそうだから。
『お兄さん』の事も気になりはするけれど。

「……おいおい、あそこに踏み込まれたんだぜ?危ない……」

そこまで言って、かぶりを振る。この子は、子供じゃない。
隣に立つ相手。唯一、信を置くその人だから。息を吸い込む。
(-593) 2023/09/23(Sat) 11:38:38

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……連中も色々探ったろうが無茶は出来ないと思う手間のかかる大型の備品は運び出してないはずだベッドまだ買い替えてなくてよかったよ『あのベッド』のマットレスを外してスプリングの中から緑色の部品を全部抜いてくれそしたら頭側にある収納に幾らか道具が落ちるからそれを組み立てて使ってくれ番号のシールが貼ってある」

一息に伝える。それが、あなたに渡せる唯一の仕事道具。
誰も信用していないカンターミネが、
万が一、億が一に備えて用意した最後の"武器"だ。

「フェイクの部品も入ってるから、番号を間違えるなよ。
 正しい組み合わせはフィボナッチ数列の順だからな。
 起動すれば後は5番の部品を捻って、
 チャンネルを合わせればいい。
 34番と、55番がそれぞれ送信機と受信機。
 13番が録音機だ。全部本体のスイッチ一つで起動する」

なるべく簡素に、必要な情報は確実に渡す。
後は、あなたに全てを任せて、女は息を吐く。

「……もし、万一……本当に万一、エリーが捕まったら。
 全部俺が指示したって言ってくれ。俺に脅されてたって。
 昔馴染なのを利用して、無理矢理やらされたって」

実際、それに近しい事をするんだから。
自分の道具を渡して危険な橋を渡らせるんだから。
これくらいのリスクは、せめて背負わせてほしかった。
(-596) 2023/09/23(Sat) 11:39:55

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「やあだ、王子様はあ、ミネだもん


そう口を尖らせたのも一瞬のこと。
すぐに和やかににこりと笑った。

ありがとう。信じてくれて。
その言葉だって本当は嬉しいんだ。
でもただ守られるだけのお姫様では、やっぱりいたくなんてなかった。


立てた指が曲がる。1本、2本。
その間あなたの言葉を1字1句忘れることなく聞いた女は、密やかな吐息をまたひとつ落とした。

「…うん。ありがとお、ミネ。」
「でもお、あたしは優秀だからあ。そんなことにはならないよお。」
「…ふふ。見ててよねえ。」

そう嘯いたのだって、もしかしたら強がりかもしれない。
それだってあなたにはわかるはず。だって女は、笑っていたわけだし。

「『マリーゴールド』の子にも、伝えときまあす。」

けれどからかうように、あなたのお転婆姫はいう。
茶化して笑って、ゆるりと変わらないあのモーテルでのことみたいに。

指が、あと1本。
反対の指先を冷たい格子に滑らせて、その向こうに薄い微笑みを向ける。
…本当に、あっという間なのだ。最後の指も、次第に折られるだろう。
(-600) 2023/09/23(Sat) 12:12:36

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

長身が室内の光源を遮った。
逆光のせいで男の表情はよく見えないかもしれない。
概ね無表情のようなそれと、やはりにやけ面の女が向かい合っている。

貴方は解っているだろう。男がこれから何をしたいか。
男もまた解っている。貴方が解っているということを。
ここからは根比べだ。けれどそれも、貴方に分が悪い。
人は痛みに耐えられる。
痛みになら耐えられる。
大抵は、絶叫を対価に。

薄暗い顔の中で金色の瞳だけが光っていた。

裸足ならまだしも、靴を履いた状態で人体を​────しかも腹や胸ならともかく肩を踏みつけるというのは難しい。肉の薄い部位では骨と関節で作られた凹凸が目立つし、靴底の形はそれに添うものではないからだ。

ぐ。
ぐい。ぐり。

だから自然、強く力を込める必要が生じる。
硬いラバーが肌に食込むだろう。骨と皮膚の間で押しつぶされる神経が悲鳴をあげるだろうか。
(-603) 2023/09/23(Sat) 12:36:07

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

説明が終わって、お願いも終わって。
指折り、時間の流れを見ながら、
ため息とともに笑みがこぼれる。

「見てるさ。一番近くでな。
 しっかり伝えといてくれよ」

きっと、そう遠くない内に朝が来る。
真っ暗な内はライムグリーンの方が目立つけど、
明るさを交えた頃にはミントブルーが輝き出す。

「……なあ、残りの時間の間、目ぇ瞑ってくれる?」

言って、立ち上がる。ふらつきながら。
一度、二度とたたらを踏み、二度目には壁にぶつかりながら、
あなたの方へ。最後の1本が折られてしまう前に。

「後は頼んだ、エリー。いってらっしゃい」

あの夜と同じように、送り出す。
今はネイルを塗り直す事は出来ないから。
ふらつく姿は見せたくないから、
片膝をついて、少し背伸びして。

格子にかかる指先に、ほんの一瞬のくちづけを。
あとは、指が折れるだろうから、また床に転がった。
(-604) 2023/09/23(Sat) 12:36:34

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

笑んで頷き。
続いた言葉に、一瞬だけきょとん。
あなた相手に身構える必要はないけれど、多分このときの女は他の人に同じことを言われると警戒の色を見せていた。


「…いいよお。なあにい?」

そうして目を瞑ってのしばしの時間。
ゆっくりとあなたが近付く気配がして、…少しして、指先に湿ったやわらかな感触。
それだけでぎゅうと胸が潰されるくらい痛くって、手が届く距離にいるはずのあなたに今すぐ触れたいってそんな我儘が過ぎっていく。

だけど、女はそうはせずしっかりと目を閉じたまま。

指を折るまでの時間は心の中で正確に数えた。
最後の指まで折り曲げた後、目を開いた女は恥じらうようにはにかみ笑っていた。

「…ミネ」
「早くこんなとこ、出られるといいねえ。」
「ミネはなあんにも、悪いことしてないんだからあ」

カメラに載せられるぎりぎりの本音に虚言を添えて。
…ただでさえ小細工もした今日はあんまり長居ができないから、それを別れの挨拶みたいにこつこつ靴音を立てて立ち去っていくんだろう。
(-613) 2023/09/23(Sat) 13:34:53

【秘】 いつもあなたの傍に居るから カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「ふふん」
「なーに、きっとすぐ出られるさ」
「なんせ今日の俺は運が良いからな、
 わざわざ面会に来てくれる奴がいるくらいだから」

いつものように、笑い、歌う。そして手を振る。
くた、と脱力しながら、心中で笑う。
何言ってんだか。俺はもうとっくに出てるよ、お姫様。
だって――。

そうして、また、眠りに落ちる。
床の冷たさが、心地良かった。
(-616) 2023/09/23(Sat) 13:40:57

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

「ぎ」

真っ先に出た音は、それだった。
或いは、揺さぶられた脳と、やられるままでたまるかという、
微かな意地が見せた歯を食いしばる抵抗の音だった。
ことここに至って、女の口元は未だ形だけは笑んでいた。

それでも、例えこの女がマフィアであったとしても、
手足のように扱う機械ではないから。
鼻の奥から流れ込む血が喉に落ちていき、
踏み躙られる肩からの悲鳴はそのまま口から出ようとする。

女は拷問も担当していたから、今何をされたら不味いか、
手に取るようにわかっていた。だから、靴底から
"緩急"が与えられた瞬間があったなら、
「あ、終わった」と。そう思う事だろう。
それでも、ほんの僅か。

「ぐ、あ、ぎぃ、ああ……」

その程度で済ませたのは、きっと意地と張り合いのおかげで。
しかし同時に"その程度"こそが、分の悪い根競べの敗北を、

即ち、天秤の傾きを意味していた。
(-621) 2023/09/23(Sat) 13:58:38

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

引き絞れるような声が耳に届けば、男は口の端を軽く歪めた。
やはり不快そうだった。不愉快そうだった。
つまらなそうだった。


とはいえ、これは仕事・・だ。
快不快で判断して辞めていいものではない。

貴方の口が僅かも開いたなら。
男はその隙を見逃さなかった。

錠剤をひとつ。
手のひらで覆うようにして放り込む。こうすれば貴方はもう逃げられない。
口の中に入りさえすればこっちのものなのだ。飲み込まずとも溶け切るまでこのまま待つだけのこと。傾いた天秤は一層男に利する。
どうあれ長い根比べが始まるのは明白だった。

男は、貴方の口に入った薬の効果を知らない。
途中で一緒くたにされてしまった錠剤の見分けを知らない。
ただ、先程の警官の言葉によれば。
この場にあるのは
興奮剤
自白剤
の二種類で、
貴方が感じた効果によると​────それは興奮剤の方だ。
(-626) 2023/09/23(Sat) 14:29:10

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

その表情に「煽り所」を見つけはしたものの。
口元を覆う手のひらが相手では、声もほとんど出せず。
どうせ一度開いたならもう変わらないから
喚きでもしてやろうかと思ったのに。

現状を考えれば。男が肩を踏み砕くような姿勢でなければ、
女に覆いかぶさって口を塞ぐ男という図式は、
強姦魔に等しいもので。或いはそこを突けば、多少なれど
男の動揺か、怒りか、その辺りを引き出せるかもしれないが。
今は煽りより、「何」を入れられたかだ。

普通は、薬は目で確認するのだから、色と形で薬を判断する。
だが手のひらに覆われた状態ではそれを判別は出来ず。
しかしケースに入っていたのだから、数種類までは絞れる。
処分しそこなったものなら、数世代前の物か。
味は知らん、飲んだことなど一度もないから。
どれにしろ、致死の薬はなかった。ならば――。


カンターミネは、考えをシフトした。
即ち、いずれ朽ちる『正義』と遊んでやる、と。だから、

ぴちゃり。


嫌がらせの念を多分に込めて、手のひらをぬるりと舐めた。
目元にまた、張り付かせる。痛みを越えて、にやついた顔。
目尻を下げて、掌の向こうで口角をあげる。
もごご、と口の中で僅かに溶けた錠剤と共になすりつける。
『雑魚が』。たった3文字、ただの笑み。
即効性のある薬なのか。痛みは少しずつ、和らぐ。
分泌されたアドレナリンが、恐れを削いで笑みを返した。
(-635) 2023/09/23(Sat) 15:14:51

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

手のひらに濡れた感触。
それを感じた男は、反射的に貴方の頬をその手で・・・・打った。
まったく拷問官にあるまじき態度。口に物を入れさせておいて、あまつさえ吐き出させかねない真似をする。
男がこういった行為に慣れていないのは明白だ。そもそも感情的すぎる、筋道だってそう整えられていない。


そうしたとて貴方は笑っているのだろう。
優位を取ったと思っていた男は、再び鋭い舌打ちを。不機嫌そうに視線を一度逸らせば、唾液と共に吐き出された薬が目に入るだろうか。
(-640) 2023/09/23(Sat) 15:49:44

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

プッ、とそれは男の平手と同じく反射だったに違いない。
吹き、転がった錠剤に首が向き、きっと眼鏡も飛んでいる。
しかして目だけは男に戻る。途端、破裂したように笑った。

「アッハッハッハッハッハ!!!クク、フ、フフッ、は、話にならない!平手!?抑えてた手でか!?そ、それで、薬を吐き出させた!?自分で!!?ばーーーーーーっかじゃねえの!?」

舌打ちに、視線の逸らしに。また笑い、歌う。
肩の痛みなんてもう気にならない。
だってこいつは「失敗」したから。

「尋問だのをする時に必須の事を教えてやるよ。相手の前でイラつかない事。ミスしない事。それでムキになって暴力を振るわない事。お前はひとつも出来てないな?ん?しかも使った薬は相手がご用意したって?そ、それを吐き出させ……ふっ、フフッ、一生笑えるぜ、『へたくそ』。その様子じゃおまわりさんとしても碌な仕事は出来てなさそうだな?錆びきった前時代の正義モドキを抱いて、まともに相手からの情報も引き出せない、パパの庇護がなけりゃ尋問のおぜん立ても出来ない、出来るのは乱暴な真似とイライラしぐさか?一生一人でシコシコやってろ、自分の牢屋ン中でな」

捲し立てる。もう怖くない。痛いだけ。
尋問相手に失敗した人間は、どうやったってもう、
道化か下っ端のチンピラ以外になれはしない。
朦朧としていたはずの瞳に強い光と、
歪んでいたはずの顔ににやけた笑みが帰ってきた以上、
きっとまとも・・・な方法ではもう何も出ないだろう。

諦めて捨てるか、或いは――ケースの中にあった、
他の薬を試すか?申し訳程度に、あなたの脳に
そんな選択肢が示されるだろうか。
(-643) 2023/09/23(Sat) 16:08:19

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

踏みつけた肩。前のめりになる身体。それだけ近づく顔。
逆光だろうと薄暗かろうとよく見えるはずだ。男の表情が歪む。歪む。歪む。
それは怒りであって、それは憎しみであって、それは嫌悪であって、それは恨みであって、それは蔑みであって、それは侮りだった。

貴方が囀る。
歌う。歌う。歌う。

それが。
やっぱり男には、酷く不快だった。
聞くに堪えない。だから、

(-649) 2023/09/23(Sat) 16:45:17

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

ぐぶ。


靴先が沈んだのはその腹だ。
不安定な肩から足を退け立ち上がった男は、見下ろす形で貴方の腹を蹴りつけた。
女の腹、肉の薄さは別にしてはらわたの柔らかさのある腹。特有の臓器を内包する身体の部位。
男の足は大きい。時々はみぞおちに衝撃が入ったかもしれない。一度。
二度。もう一度。



尋問でもなければ拷問ですらないただの暴力を貴方に加えている。
いくらアドレナリンが効いていたって衝撃をすべて緩和できるわけではない。貴方はうめき声をあげただろう。時々は小さく悲鳴をあげたかもしれない。胃の中のものが出たかもしれないし、呼吸が乱れたかもしれない。それとも、その全てをやりすごす術を知っているというなら話は別だけれど。

どうあれ貴方は、少しは大人しくなるはずで。
そうなれば再び、男はその身体に馬乗りになるのだ。

床に散った唾液に浮かぶ錠剤を拾い上げ、
貴方の舌に塗り込もうとする────無意味な嫌がらせ。
(-650) 2023/09/23(Sat) 16:46:01

【秘】 笑う カンターミネ → 幕の中で イレネオ

肩が軋む。笑う。歌う。男の顔が歪む。笑う。歌う。
男が靴を持ち上げる。笑う。歌う。靴先が叩きこまれる。流石に、笑いと歌は止まった。

「ご……はッあ、」

一度、喉に落ちて来ていた血が吐き出され床を汚す。
押し出される呼気と共に鼻に蟠っていた鼻血が噴き出た。

「ひゅ、がぶふッ」

二度、逃げた空気を取り戻す為に身体が反射的に息を吸う。
そこにもう一度突きこまれれば自然、内から外へと、
外から内への空気同士の衝突で胸が苦しくなった。
それでもまだ歌おうと、口を開きかけた所で、

「おま゛ェっ、げぽ、ぉぇ」

もう一度。女は身体を鍛えている訳でもない。むしろどちらかと言えば華奢な方だった。
故に、その単純な暴力は酷く突き刺さる。もっとも、精神を屈服させるには遅いのだが。

何度も咳き込む。その度、汗と涙と鼻水、それから唾液に、
胃液。覗き込まない限りはわからないが、少しの愛液も。
いくつもの体液が女から吐き出された。
馬乗りになった頃には、顔の付近に混ざり物の汚水池。
かひゅ、と薄い息を繰り返す女の舌に錠剤を押し付ければ、
それを見逃す訳もなく。すぼめた口から
べッ、とあなたに向けて唾を吐く。顔に届くか?わからない。
意味があるか?ない。無意味な行動にはお似合いだろ?

女はまた、鏡のようにあなたの無様を映す。また、笑う。
(-653) 2023/09/23(Sat) 17:08:40
カンターミネは、『お前じゃ無理だ』と笑う。吐いて、汚れて、まだ笑う。
(c28) 2023/09/23(Sat) 17:18:04

【秘】 幕の中で イレネオ → 笑う カンターミネ

大抵の場合、力を手に入れた者は傲慢になる。
それが公に認められた物なら尚更。是非を問うものもいるが、どうあれ新法は認められこの国で力を持った。
警察とマフィアの力関係を完全に傾かせる悪法だ。それでもそれは大々的に公布され施行された。
警察は力を手に入れた。賛成派はマフィアに裁定を下すガベルを手に入れた────お前は悪である。

力を手に入れた人間は、それを誇示するためにどんなことでもするものだ。
そして。
その優位性を脅かす背教者に対し、徹底的に冷酷に、残虐に接するものだ。


既に尋問を損じたことを、男も薄ら気づいている。
認められない頑固さが、新たな目的を作り出した。
この生き物
貴方
には罰が必要だ。それも、とびきりの。

(-662) 2023/09/23(Sat) 17:42:23

【秘】 幕の中で イレネオ → 笑う カンターミネ

吐きかけられた唾は男の顎から頬にかけて散っただろう。
それを男は甘んじて受け入れた。先程までの激昂から一転、酷く冴えた表情がそこにある。

貴方は笑っている。
覆い被さった男は、その笑みを更に広げさせるようにした。
笑っているということは、もちろん口は開いているんだろう。
口の両端に親指を差し込み閉じ切らないようにする。
貴方の舌が動かないように固定する。

そして、
それまでの間に何か手を打たなかったのであれば、
男の影が貴方に重なるようにして────ひとつ。
愛も情も好意もあるはずのない口づけを、貴方に。
(-663) 2023/09/23(Sat) 17:42:58

【秘】 笑う カンターミネ → 幕の中で イレネオ

そうして冷静さを取り戻した男の顔には、
この女はきっと狂気を読み取った。それは爆発。
何かしら、追い詰められたものが為す行動。
振り切ったゲージの針が止まった状態。
こうなってくると、目が覚めるまではおかしなことをし続ける。

そら、来た。指に噛みついて千切ってやろうか。
いや、きっとそれは難しい。歯の根を抑えるならまだしも、
口の端に指を差し込んだだけなら、精々皮が一枚程度。
舌を抑えられちゃ喋るのは困難極まる、
精々間抜けな音を上げるだけ。
そう考える間に、男の影がゆらりと重なってくる。
それはきっと、先に過った強姦魔のそれとよく似ていた。

途端、これは『先生』でも『マフィア』でも
『罰されるだけの生き物』でもなくなった。
ほんの僅かに頭を逸らすと、あなたの指で
口内が切れ傷つく事を厭わず、思い切り頭突きを振るった。
無論、大した威力ではないだろう。
だが人体で振るわれる、凡そ非常に硬い部位の直撃は、
互いの脳を揺らすはずだ。男の唇が重なったとしても、
この女はただでは済まさなかっただろう。
それはお前の物じゃねえよ、と内心に激昂を宿して。


(1/2)
(-669) 2023/09/23(Sat) 18:05:37

【秘】 笑わない カンターミネ → 幕の中で イレネオ

そして、それがあなたの鼻柱に叩きこまれたのだとすれば、
これは侮蔑を持って高らかに歌う。
「最初の一撃の意趣返しだ」と。
机の代わりに骨を叩きこむ。負傷する箇所まで、鏡のように。

あなたの選んだ手段はきっと、最も正しかった。
拷問において重要な事は、相手の大事な物をけがす、
その素振りを見せる事。だから、きっと最初からあなたが
『正義』ではなく、下卑た生物として提案していたのなら。
或いは、この拷問、いや尋問は、実に正しく、
そして素早く、機能していたかもしれない。

それくらい、カンターミネにとって"それ"は大事な物で、
簒奪者には決して屈しない、その為の柱であった。


反撃が齎したものがどの程度の抑止になったかはわからない。
ただ、この『野獣』になった女は、アドレナリンの力を借りて
より、一筋縄ではいかない生き物と化した。

再び唾を吐く。今度はあなたではなく、汚水の中へ。
暗に「お前の居場所はそこだ」と言うように。
手近、いや足近な机を蹴飛ばし、可能なら椅子も、壁も。
暴れて事が大きくなれば、署員が駆けつける可能性もある。

同じ手段を続けるか、否か。
拷問官でないあなたは、正義の下に見極める必要がある。
尋問をこのまま続行するか。この女の逆鱗を刺激し続けるか

(2/2)
(-672) 2023/09/23(Sat) 18:15:56
 




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