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【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート毎度のことだから、にこりと笑って誤魔化す。ずるい大人の仕草だった。 「『アマラント』、ね」 「いいところだ。一人で飲むには」 あれがどういうところか、このあたりに住んでいて知らない人間はいない。 だから居心地が良いのだろう、大抵の場合、あそこに行けば顔見知りと出会う。一人寂しくグラスを傾けるなんてこととは無縁でいられる、けれど。 「今日は君と酔いたいんだ。いいだろ?」 つまり二人で飲むには野暮だと。 君の髪を撫でて、小さな木戸を押し開けた。 やはりそう広くない店の中は薄暗かった。それが深い青のライトで照らされていて、幻想的な雰囲気を醸し出している。飴色に光るカウンターの向こうで、初老のマスターがこちらに会釈をした。手で席を示すに従って、カウンターに座ろうか。 (-339) 2022/08/20(Sat) 3:31:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「おや。謙遜も上手くなったね、驚いたよ」 昔はもっと些細なことでも褒めさせてくれた、と。 もしかしたら口にしたかもしれないけれど、べつに惜しいと思っているわけではないのだ。多少遠慮を覚えようと、年齢に相応しい振る舞いを身につけようと、君が男にとって可愛い子どもなのは変わらない。謙遜したところでこちらは勝手に褒めるのだから関係ない、ということでもある。 喫煙室、というほど上等なものではないが、二人で話すには好都合だ。柵にもたれ掛かるようにして陣取り、君が嫌煙家でないなら男は愛用のシガレットケースを取り出すだろう。ひとつ咥えて、君にも差し出す。君が煙草嫌いなら遠慮しておこうか。家族の健康は何よりも大切だから。 「まだどちらだとも断定できないな」 答えは当たり障りない。しかしそれは慎重さの表れでもある。 「どちらの可能性も捨てきれない。確かなことは、仕組んだのがアルバの人間だとしても、家族の意向ではないってことだけだ」 (-341) 2022/08/20(Sat) 3:56:36 |
【秘】 ノーモアベット マキアート → 家族愛 サルヴァトーレ「そういうことなら。悪い気はしませんよ」 堅い口調とは裏腹に、よく懐いた犬みたいな仕草で、 その優しい手つきを追う。 扉を開けばはっとして、真面目な出立ちを取り繕った。 店内の装飾や照明に目を向けつつ席に着いて。 「……いいムードですね。 確かに二人で飲むにはこの上ない場所です」 僅かに音量を絞った声ではにかむ。 こういった場の雰囲気に慣れてない訳でもないが、 それでも信頼できる相手と二人で、となれば緊張するものだ。 (-344) 2022/08/20(Sat) 4:24:01 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ貴方がアベラルドの部屋の戸をノックして、数秒。 カチ、という音は鍵を開けた音だ。 そのまま扉は少しの隙間を開けて、それから開いた。 「よお。いらっしゃい」 「入れよ」 そのまますい、と貴方が部屋に入りやすいように避けた。 (-363) 2022/08/20(Sat) 12:04:29 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート少し殺したような君の声から緊張が見て取れるだろうか。安心を促すように軽く肩を叩いた。 「だろ?」 高い椅子の座面は柔らかく、座り心地もいい。 「こうしているのも久しぶりだね。君は何が好きだった?」 「僕はチェリーロワイヤルsake。お願いね」 カクテルメニューを受け取る。マスターの方を見もしない慣れた手つきだ。よく来るのだろう。 (-367) 2022/08/20(Sat) 13:12:32 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「うん。お邪魔します」 つい、と遠慮なしにお邪魔する。なんの警戒もない、気安い態度だ。 「冷蔵庫、借りるよ」 入るなり、そんな声をかけて。 止められなければ、そのままキッチンへと直行。 冷蔵庫をぱたん、開いて。ぱたん、閉じて。 どうせ君の好きな酒でも買ってきたのだろう。この男はいつもここに来る時、何かしらの土産を買ってくる。 (-370) 2022/08/20(Sat) 13:28:11 |
【秘】 ノーモアベット マキアート → 家族愛 サルヴァトーレ「オレはアンダルシアsakeを頂こうかな。 ……最近はどうも忙しくて、こうしてゆっくりする機会もなかなか珍しくなってきましたからね。 とはいえ辛気臭いお話はやめにしておきましょう。 酒の席には必要ないものですから」 若干のぎこちなさは残るものの、 気遣いに心が緩んだのか、穏やかな笑みを見せた。 (-377) 2022/08/20(Sat) 14:33:00 |
【秘】 花で語るは ソニー → 家族愛 サルヴァトーレファミリーの下っ端となったのは4年前。それから駆け上がるようにして今。 入りたての頃は路地裏のドブネズミに等しかった灰色の獣は、 多少は見栄えするものにはなっただろうか。それでも未だに、青さは見え隠れするのだろう。 この国は喫煙率の低い国ではない。だからほとんど、席を外す口実のようなものだ。 軽く礼を言いつつ受け取った煙草に火を着け、煙を吸い込み舌の上を転がす。 普段呑んでいるものとの違いがあるのか、別の理由か。肺の内側までは入れない。 貴方であれば時折、指先や襟元から煙に混じった甘い着香を嗅いだことがあるかもしれない。 「それは、そう。ボス殺しとそれ以降が同一のものとも、わからないし。 使われているのは銃ばかりだ。手軽で成功率が高く、銃弾をしっかり回収できれば見つかりにくい。 模倣するのは、容易い」 貴方は本来自らが指示を仰ぐ立場の相手ではなく、組織の運営に対する補助的な立ち位置だ。 だから、他者の目のあるところで聞くのは避けたのだろう。余計な混乱を招かないため。 互いの煙の混じり合うような距離で、ジェイドの目が相手を見上げる。 「もしも先走った裏切り者を見つけたら、どうしますか?」 (-378) 2022/08/20(Sat) 14:33:29 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ部屋の中は物が少ないなりに生活の色が見える。 落ち着いた色の内装の中に、壁に貼った花の栞や古ぼけた蓄音機など趣味の物も見られる。 そんな風景も貴方には見慣れたものだろうか。 冷蔵庫の中には、いつも最低限度のもの。あとお酒。 ……今日は一つチョコラータの箱もあった。 「あ、おい。……なんだよ、毎度毎度いいのに」 そう言う声も、嫌そうな雰囲気はない。 こちらもこちらで慣れている。 「適当に座れよ。何飲む?」 (-380) 2022/08/20(Sat) 14:46:32 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ撫でられるとやはり、きゅっと目を瞑る。 何と答えればいいのかわからなくて、開いたり閉じたりする口は。 「……選り好みなんかしてられないだろ」 迷った末に、そんな生意気な言葉を吐く。 大人だなんて言われるのは、こども扱いされているからこそだろう。 その証拠に、すぐに取り上げられてしまうのだ。 翠の瞳が、じとりとあなたを見上げる。 「ああ、またそうやって――」 「これぐらい、べつにヘーキなのに」 なんて、文句を言ったって、もう遅い。 じきに焼き上がるそれを、店主から手渡されることだろう。 「……なんかしてもらうとさ、何も返せるものないのになって思う」 「それこそ仕事するぐらいしか」 (-381) 2022/08/20(Sat) 14:48:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「ゆさぶって出てくるようなものは、女の子が欲しいものじゃないの」 くす、くすと零れる笑みは、喉の奥のふるえ、筋肉の動き、そしてこみ上げる喜びすらもてずから作り上げたつくりもの。 手を引かれることを、本当は望んでいたの かもしれない。 けれど、手よりも先を預けるつもりはなかった のかもしれない。 本心は、自分だけ。 どれだけ血とごみと、裏路地の泥にまみれても、籠の中の薄汚れた小鳥一匹だけを抱えて離さない。 ――そのことを彼女は誇り、そして蔑む。 そのままに付き合ってくれるあなたを、彼女はわりと、好きだった。 「理想はね、何も言わずともくれるものだし」 塗り固めたような笑みが、透き通るような微笑へ変わる。 瞼が僅かに伏せられて、あなたの笑みを受け止めた。 「――ええ。 信じてる。 もちろん、次はたっぷりサービスしてあげるから」 次、なんて言葉に。 いつだって、甘えていた。 (-390) 2022/08/20(Sat) 15:54:34 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーきらりと光を捕まえるジェイドの瞳。それを男は可愛く思う。 男は君を子どものように扱うが、その実君が最早ただの子どもではないことをきちんとわかっている。 それでも、だからこそ、少しでも変わらぬところを残していてほしいと思いながら。 陽光を跳ね返すその翠に目を細めた。 「裏切り者がいたら?」 対照的に深く息を吸う。馴染んだ味を染み渡らせる。 「どうだろうね。僕は────」 男は、少し笑って。 「家族を殺したくはないな」 甘い言葉を吐く。 「そうならないために、僕がいるのだから」 顧問。 ファミリーの一員でありながら、それらの立場から少し浮いたところにいる存在。 直接的に何かを行うことは本来少ないはずのその立場にありながら、男はまるで中間管理職でもあるかのようにせっせと現場に足を運ぶ。 「なにか苦しいことはないか」 「なにかつらいことはないか」 「なにかいやなことはないか」 「家族が裏切り合う前に、どうにかできないか」 「それが僕の役目だからね。……参ったな、どうしよう」 ▼ (-407) 2022/08/20(Sat) 17:56:56 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーファミリーの仕業なら、僕がみんなを見られていなかったってことだ。 そんなことを暗に滲ませる様は、なんとなく楽観的に見えるだろうか。 組織を家族に例えるのではなく、もっと親密さを持って。そのまま家族だとするような口調は、似つかわしくない温度を持つ。 「君は、どうしたい?」 (-408) 2022/08/20(Sat) 17:57:08 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート「なら、それを」 マスターにオーダーを告げる。マスターの手つきは流麗で、カクテルを作る音もほとんど立たない。 「確かに忙しいけれど、僕は楽しくさせてもらっているよ。可愛い家族に会えるわけだし」 「君のところも、上々のようだね。よく話を聞く」 やがてやはり静かにグラスが差し出されれば、軽く持って乾杯を。 (-410) 2022/08/20(Sat) 18:04:09 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「いつ来ても片付いているね、ここは」 「そういえばどうだったの? 行くって言ってただろ、新作のオペラ」 君の人となりがわかる調度品。こじんまりとして、しかし確かな存在感を持った趣味の品。 そう代わり映えしないそれらを、来る度男は面白そうに見遣った。何かが増える度にこれは、と聞いたものだ。時には勝手に持ってくることも。 「いいもの飲んでるね、ドニ」 冷蔵庫におさまったワインのラベルを指でなぞる。 「うん?」 それからチョコラータの箱に目を留めた。 見慣れないパッケージだったのかもしれないし、それがこの冷蔵庫に似つかわしくなかったからかもしれない。 「試作品?」 軽やかな口調で問いかけながら振り向いて。 二人でいる時、この男は普段より少し早口だ。 (-412) 2022/08/20(Sat) 18:19:12 |
【秘】 花で語るは ソニー → 家族愛 サルヴァトーレ「その目的がファミリー同士の混乱を招くことでなくとも、 こうして向こうを焚きつける理由になりえるのだったら、放置はできない。 それが上からの指示ではないとわかったなら尚更、その責務は背負わされるべきだ。 味方の首に手を掛けておらずとも、誰の命に背信しているかを識らしめないといけない」 冷たい判断、ではない。そうあるのが必然だ。 それがわかっているからにこそ、蛮勇の主は名乗りを上げてこないのだから。 未だ自分たちの中から被害は出ず、明日の結果を知らぬうち。 水面下の動きをいくらも想像してはそれが空論であることを、己に叩き込んでいる。 酷く、酷く優しい言葉を受けて、しばし耳を傾け口を閉ざした。 眼下遠くに見える街の彩りと霞ませる煙のゆらぎに目をやって。 まだ火の着いた煙草の先には、薄暗い灰色が伸び始めている。 「オレは、オレなら……見せしめのために、殺すでしょうね。 互いの停戦の理由としてこの上なく相応しい。 首一つの扱い如何でコレ以上の被害を増やさずに済むのなら、それでいいと思います」 どうしますか、と男は言った。どうすればいいですか、ではなく。 自身に対する指示を仰ぐのではなく、貴方ならどう対処するか、と聞いたのだ。 おそらくは無意識の言葉選びだ。何か狙いのあったものではない。 であれば何が、深層心理の水底から表層へ上がってきたものなのだろうか。 (-413) 2022/08/20(Sat) 18:37:31 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「散らかるものがねぇんだよ。物が多いと面倒臭え」 「ああ、あれな。良かったよ。評判通りだ。 もう一度見に行ってやってもいい。お前の分のチケットも取ってやろうか」 面倒臭いだの怠いだの言う割に、片付けを放り投げる真似はしない。 プライベートでも仕事でも本当に面倒な事になる前には動く方だ。 部屋に並ぶものは人に貰ったものも多い。 それこそ、貴方がそうやって持ってきたものも並んでいる事だろう。 「それなぁ、バーのマスターに譲ってもらったんだよ。いつも来るからって。飲みたいなら出すぞ」 「……何? あー、それ」 冷蔵庫の中を後ろから覗く。何の話かと思ったが、すぐに合点がいって。 「今度売り出す新作。ルチアが気に入ったらしいんでな」 またやるんだ、と。 ……アベラルドも、貴方と話す時は口調も態度もいつもよりは軽い。 (-415) 2022/08/20(Sat) 18:40:05 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ君の言葉を、男はじっと聞いていた。 赤に近い紫の瞳は慈愛を宿している。 ────高い位置から降り注ぐそれは、やや翳って見えるかもしれない。きっと気のせいだ。 「返してほしいものなんて何一つないさ」 男が身を折る。君の上に影が落ちる。空気を含んだ柔らかい声が、君だけに聞こえるよう囁いた。 「愛してるよ、ヴェルデ。どうか、ただ受け取っていて。 ────君が僕に、何かをしたいと思うなら」 そのまま、君の頬にキスを落とすだろう。もちろん嫌がられなければ、の話だ。僅かにでも拒むのなら、にこりと笑って引いてくれる。それから何もなかったように焼きあがったものを受け取り、店主に礼を告げた。 どこかに座るにしろ歩くにしろ、ひとまず店からは離れなければいけない。店頭は先程より賑わいを増している。 「行こうか」 「選り好み、すればいいじゃないか。どうにも君たちはわがままってものが苦手みたいだけど」 (-416) 2022/08/20(Sat) 18:44:47 |
【秘】 ノーモアベット マキアート → 家族愛 サルヴァトーレ「仕事に託けて会いに来てるんだ?……ふふ、 悪いことばかりでもないのは救いですね、本当に」 軽快な音を立てグラスを打ち合わせて、 琥珀色を唇から舌に乗せ、飲み込む。 「……はい。おかげさまで。 やはり家族も客も皆あの賭博場を愛してますから。 間違っても噂話のお陰じゃないと信じたいですが」 (-421) 2022/08/20(Sat) 19:08:03 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「違いない」 「へえ、じゃあお言葉に甘えようかな。連れて行ってよ」 笑みを含んだ同意。それから素直に誘いに乗る。 先導して何かを与えることが好きな男は、しかし君からの厚意はいつも素直に受け取った。こうして音楽鑑賞に出かけたことはこれまでもあっただろうし、食事を共にしたこともあるだろう。 男は食事も娯楽もなんでも、君に提案されたものをそのまま喜ぶ。だからこそ、本当に好きなものが見えにくくもあった。 「飲みたいなぁ。やっぱり赤より白だよね」 こんな、簡単な二択が時々零れることはあれど。 「へえ、ルチアか」 思い出そうとするような素振りは見せず、すぐに名前を反芻した。多くいる構成員の全てを、男はほとんど完璧に把握している。よくアジトに顔を出す者であればなおのこと。 名前と顔を一致させる手間なんて必要ないのだ。 「可愛がっているね、随分」 「わかるとも。家族は大切だからね」 冷蔵庫の前を君に譲る。準備してくれると言うなら任せよう。 手頃なソファにでも座って、もてなしを待つだろう。 (-427) 2022/08/20(Sat) 19:15:45 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「進んで物買う性分でもないしな」 「それじゃあ今度連れてってやるよ。席の広さも悪くなかったし、 聞いてる途中で疲れるこたぁないだろ」 親しい人には、アベラルドも施したがる方だった。 貴方から貰う事も、貴方に渡す事も、きっと前から好きだった。 以前、『嫌なら断ってもいい』と声を掛けたことはあるかもしれないが。 「だよなぁ。俺も同意見。なら用意するか」 そう言って冷蔵庫からボトルを取り出し、 栓抜きを取り出してコルクを抜く。 ポン、と小気味いい音が響いた。 「そりゃあ……まあ、な。放っては置けないし」 「色々あんだよ。懐かれてるし……」 モゴモゴとそう言いながら、ワイングラスを二人分。 透き通ったリースリングが品の良い香りを立てて注がれていく。 それから、隣に座って片方を貴方に差し出すだろう。 (-435) 2022/08/20(Sat) 19:30:14 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「……」 男が君の言葉を遮ることはない。 君が話す時、男はいつも黙って君の瞳を見つめる。慈愛、親愛、友愛、諸々のあたたかなものを湛えて、じっと見るのだ。 指先だけが軽く動いて灰を落とした。 「そうだね、ソニー」 「君は正しいよ。昔から賢明だとは思っていたけど」 最低限の犠牲を払って大きな利益を手にする。 残酷でも無情でもなく、当然に普通のことだ。大きな組織では平然と行われることだし、ことこの社会では特に珍しくもない。末端を切って中枢を守れるなら誰だってそうするし、避けられる争いは避けるが道理だ。 「きっとそうなるんだろう。本当に下手人が僕らの中にいるのなら」 「ファミリーが抱えているものはあまりに大きい。全員が全員、自分の身を自分で守れるわけでもないし」 首一つ。たかが首一つ。 それで収まるなら、確かに安い話だ。 ▼ (-437) 2022/08/20(Sat) 19:37:27 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーされど首一つだ。 「逃がしてあげたいな」 「……だけどね、僕は今回ばかりは、そうじゃないと思ってる」 「だって、ね。真っ先にいなくなったのは、アマラントのマスターだって話じゃないか」 彼の遺体は見つかっていない。しかし誰もがわかっている。 「あそこはある種不可侵の領域だった。ここいらのマフィアにとってはね。もちろん、ノッテにとっても」 「そこをわざわざ潰すっていうのは、もっと大きな意図を感じる。この島自体に対する宣戦布告、みたいなもの────」 (-438) 2022/08/20(Sat) 19:47:23 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c6) 2022/08/20(Sat) 19:49:48 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ「おや。これは手厳しい」 くっくと喉の奥で笑みを転がす。君の靴音と相まって愉快な調べを奏でた。 「君たちはよく似ているよ、本当に」 『君たち』と。 男がひとまとめにするのは、金の髪のあの子のことだ。素直で従順な彼もまた、男に対しわがままを言わない。 もう少し甘えてくれるといいのだけど、そんなふうに小さくごちる。 「────そう言ってくれるなら」 舌の上で転がす言葉。 ただの音は君の唇を滑って、甘やかな魔法になる。 「裏切るわけにはいかないな」 魅せられずとも、男はそう答えたろう。 (-441) 2022/08/20(Sat) 20:01:16 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート「その通り!」 クイズ番組の司会者のようなおどけた言い方で肯定して、朗らかに笑う。 「全くだよ。知ってるかい? ブルーノなんかは子どもが産まれたんだってさ」 「何が欲しいかって聞いたらベビー用品だって言うんだ。おかしいだろ? あんなにお酒が好きだったのに」 愉快そうに喉を鳴らして笑う。しかしその笑顔は馬鹿にしたものではなく、愛おしむそれだった。グラスをカウンターに置いてから、靴下がこんなに小さいんだ、と片手で円を作って見せる。 「あは、あの噂か。誰が流したんだか」 「妙な輩に絡まれたりはしていない? まあ、そんな無謀をする奴はいないと思うけれど────」 男の視線が君のかんばせに注がれる。そのままなぞるように下へと視線を滑らせた。 着込んだ布の下のその肌を、男は知っている。 「君は美しいから」 (-446) 2022/08/20(Sat) 20:12:46 |
【秘】 花で語るは ソニー → 家族愛 サルヴァトーレ見詰め返すジェイドの輝きは、太陽の下にあって尚その深さを増した。 いつだってその中には輝きがあった、若く無謀な、足元の危ういものだ。 ここ数日、その色は強く冴えている。まるでその有様を表すかのように。 「そう、ですか。的はずれなことでなければいいいんだけれど。 いつでもオレは、場の全てを見ていられるわけじゃないから。 違えがあるのなら正してほしいとそう思ってますよ」 だからこそ、ああして発言をするのだろう。皆の前、推理をするように。 導くものの口先と手先に引かれていれば、どんなにか楽だろう。 嗚呼、貴方の言葉は優しい。きっとすみれの色は円満な解決を願うのだろう。 手を伸ばせば届きそうな距離で、まばたきがひとつ、ふたつ。 カメラのシャッターを切るように、はっきりとしたものだった。 何かを心に秘め、決意するように最後にもう一つだけ目を閉じ、開いた。 「……貴方が、そう言うのなら」 秘跡が成立しないのならば、やはり自らの罪は己の内に仕舞われるべきものなのだろう。 声音は安堵するように柔らかく、諦めるように堅苦しかった。 魂の呪縛から解放されたように、滑らかな動きで灰皿の中へと灰を落とす。 (-454) 2022/08/20(Sat) 20:55:52 |
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