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【徒】 一年 黒沢誉「兄貴と妹のが似てる気ぃしますけど。 こう……俺はなんか、平行じゃないすか」 瞼。 目と眉の間、と言った方が正しい。そのあたりを指す。 「兄貴はもうちょっと垂れてて、妹が吊ってんすよね。 ……どっちも俺よかだいぶうるせえんすけど。 並べりゃ兄妹には見えるくらい……すかね……」 のぼせたような頭で考えたにしてはまともに言葉が出る。 手元にスマホでもあれば写真を見せたところだが あいにく防水仕様でもなんでもない。 「勢喜先輩……も。お姉さんいるんすよね? 雰囲気似てんのかなー……」 多少話題に出た、程度でも覚えてはいる。 想像がつかないから気にもなる。 「体質が合わねえとかはあるかもしんねえけど、 毒はさすがにねえっしょ……たぶん」 (.70) 2021/08/15(Sun) 3:23:20 |
【徒】 一年 黒沢誉あー、と納得した。 サウナで人が倒れるようなことがあれば 活性化はおろか営業どころではないのだし。 汲んでもらったのだか、自分で汲んだのだか。 どちらにせよ一杯では足りずに何度か呷る。 冷えているせいか最初に飲んだ温泉と同じとは思わない。 やや風味も変わっていたのかもしれない。 ただ。 飲めば飲むだけ汗が出る。 取り込んだ水分がそのまま出て行ってしまうのか、 中身が置き換えられているのかはよくわからない。 (.71) 2021/08/15(Sun) 3:23:35 |
【徒】 一年 黒沢誉「……なんか。 すげ〜〜逆効果な気ィしてきた……」 冷やす役に立たない水風呂の中で唸る。 「もう例のソフトでも食った方が早いかもすね。 物理的に冷やすぐらいしか思いつかねんすけど」 上がる一方に思える体温への対処法も、 そもそもどうしてそうなっているのかも、 正解が思い当たらないくらい子供だ。 (.72) 2021/08/15(Sun) 3:24:02 |
【徒】 一年 黒沢誉「先輩かっこいいすもんねー……」 「見た目はともかく中身とかそうそう似ねえすよ。 家族ったって別の人間だし……」 すぐに手が出るままだ。 先輩の前で見せずに済んでいてよかった。 (.75) 2021/08/15(Sun) 9:31:42 |
【徒】 一年 黒沢誉「普通に水道水かと思っ マジかー……」 じゃあそのせいかもなあ。 適当に結論づけてしまいかけて、続く言葉にやや固まった。 「…………俺がかわいいはねえすわ。 他ん一年組ならわかんねえでもねえすけど……」 「こういうのも湯あたりって言うんかなあ…… 大丈夫すか、それ」 やっぱ休んだ方がいいんすかね、 などと言いつつ手を差し伸べる。 一旦休憩所でも脱衣所でも戻って休憩する心づもり。 (.76) 2021/08/15(Sun) 9:32:01 |
【徒】 一年 黒沢誉気に入ってるならいいんじゃないすか。 味でわかるもんすかね。 相槌を返す前に別の台詞が聞こえて、 口を開きかけてそのまま固まった。 意味を噛み砕く前に次々言葉が降ってくる。 からかい混じりならいくら先輩でもはたいて止めるが、 質の悪いことにそういう雰囲気でもない。 どうにも遮れないまま、気付けば止んでいた。 (.81) 2021/08/15(Sun) 15:01:37 |
【徒】 一年 黒沢誉「や。く」 「口説かれてんのかと思った……」 ほとんど唸るような声色。 顔まで熱くなってくる。頭を振ってみても振り払えない。 「や……っぱ、休んだ方がいいって。うん。 しばらくしたら落ち着くんじゃないすか……?」 そう言う後輩は落ち着いたようにも見えないが、 先輩の手を握ってさっさと出てしまおうとする。 自分の体温もそうすれば下がるんじゃないか、と 楽観的に考えて不安を誤魔化す。 (.82) 2021/08/15(Sun) 15:02:02 |
【神】 一年 黒沢誉ジャージを一番上までしっかり閉めて、 首にタオルをかけたままかき氷を黙々と食べていた。 ミルク宇治金時。 「売る気がなさすぎんだよな。マズかねえけど」 売りにされているソフトクリームより扱いが地味。 食べ終わったゴミを捨ててその場を離れる。 (G88) 2021/08/15(Sun) 17:02:31 |
【徒】 一年 黒沢誉「先輩」 きちんと頭を冷やしきれるくらいの時間が経ってから、 バスの時と同じように隣へ腰掛けた。 「……俺ァ喧嘩売られてんすか?」 機嫌が悪い。 「口の滑りがよくなってんのはわかりましたけど。 聞かなかった事んして忘れとくには喋りすぎじゃねえの。 『それでもよかったら』じゃねえんすよ。 良くねえにしたって半端に放置する方が気持ち悪ィわ」 半端に残った元から雑な敬語が もうほとんど剥がれかけている。 「壊れて困るって程ちゃんと関わってもねえし。 何。なんなんだよ」 (.88) 2021/08/15(Sun) 17:23:26 |
【徒】 一年 黒沢誉「はァ?」 機嫌どころかガラも悪い。 見た目から想像される通り――といえばそうだが。 「まだって何」 「言いたきゃ言やいいだろ別に」 「タイミング計る必要でもある訳」 水も氷も冷まさなかった。 後からぐらぐらと頭が煮えて、自制がない。 普段飲み込めるものが外に出る。 「初対面の元幽霊部員とこの短期間でどう関われって? まだ喋った方だろ、これでも」 (.90) 2021/08/15(Sun) 18:29:18 |
【徒】 一年 黒沢誉戸惑う、照れる、困る、気まずげにする、あたりが 普段の振る舞いからすれば自然なものだった、はずだが。 「へーえ」 どれでもなかった。 背を曲げて膝のあたりに肘をつく。姿勢も態度も悪い。 (.96) 2021/08/15(Sun) 19:54:40 |
【徒】 一年 黒沢誉「あんだけ触ってまだ足んねえの」 「温泉の勢いって何。酒じゃねえんだから」 「後輩困らせんのが好きって悪い先輩だなァ! でもあれか。ちゃんと困って罪悪感湧かねえなんて 俺くらいしかいねえもんな〜〜……」 「……ハハ。面白」 一度飲むだけの冷静さがなければ、他の何より愉快が勝つ。 他人からの直接的な好意なんて受け取った覚えがなかった。 あまり、どころか明確に性格の悪そうな笑顔。 (.97) 2021/08/15(Sun) 19:55:02 |
【徒】 一年 黒沢誉「なお悪ィだろ、それ。どっちも」 罪悪感があっても意図的に困らせたい。 わざと意地の悪い触り方をした。 少なくとも褒められたものではない。 はーあ、とやる気のないためいき。 (.101) 2021/08/15(Sun) 20:46:52 |
【徒】 一年 黒沢誉「俺、『お兄ちゃん』だからさあ? 年下とかあんま小さいと妹に見えて無理なんだよな」 「一番背ぇ高えの誰だったかな。鴨嶋先輩? そんでもあれはあれで危なっかしいから無理だわ。 好き嫌いじゃねくて頭が保護者んなる……」 「……『背が高くて』『年上』だなァ? 勢喜先輩?」 (.102) 2021/08/15(Sun) 20:47:19 |
【徒】 一年 黒沢誉何も言わずにそのまま覗き込んでいた。 今困っているのは相手の方だ。 「女の子じゃねえから駄目」 「なんて。言った覚えねえけど」 (.104) 2021/08/15(Sun) 21:08:41 |
【徒】 一年 黒沢誉「べっつに。人と付き合ったことねえし。 好みだって絞り出してそんなもんだし」 「…………。 『女の子が好きな黒沢くんが好き』 ならさすがに知らねえ。めんどくせえ趣味だと思う」 ふっと視線を外して、伸びをした。 言わなくて良かった話、は聞き終えてしまった。 「で? そんだけ?」 (.106) 2021/08/15(Sun) 21:44:47 |
【徒】 一年 黒沢誉「どっちが好きっつか、どっちでもいい」 「あー。でも、あれだな。 勢喜先輩、俺にはわかんねえけど好きなもん多いだろ」 「そん中に俺が入ってんのは気分いいかな」 地が短気なのは間違っていない。 より正確に言うなら、喜怒哀楽の振れ幅が激しくて ついでに切り替わりやすい。要は子供だ。 「嫌ならどうするか知ってんじゃねえんですかあ?」 (.108) 2021/08/15(Sun) 22:06:29 |
【徒】 一年 黒沢誉「んー……? ん」 体温まで子供じみて高い。 もう少し冷静だった時、手を握った時よりもまだ高い。 「触られんのなあ。 嫌いじゃねえけど反応に困んだよな。 なんも考えてねえと肘あたり出るし」 抵抗はない。 距離の近さにたじろぎもしない。 (.111) 2021/08/15(Sun) 22:30:56 |
【徒】 一年 黒沢誉「あつい。 氷食ってもずーっとあつくて、なんか腹立ってきて」 だから顔を出した時不機嫌だった、と。 そういうことだったらしい。 「じゃあ好き?」 「……わかんねえな。撫でられんのは好き」 「…………」 間。 「人……わざわざ来ねえか、こんなとこ。 客少ねえもんなあ……」 気にするなら剥がしてどこかへ押し込んでいたところだ。 止めない。 (.113) 2021/08/15(Sun) 22:59:15 |
【徒】 一年 黒沢誉「あー? あー。そう。 冷やしてんのに思った通りになんねえからムカつく」 風邪や不調で思い通りに動けない、 というのに縁のなさそうな後輩だ。 苛立ちに転化されてしまっているのかもしれない。 撫でられて、それが続いて、 わかりやすい棘はじわじわと減っていく。 「…………」 「……あんだけ言ってもヒかねえんすか。 や……ほとんど八つ当たりだったと思うんすけど」 照れはないかわりに、少し困ったような調子だった。 (.115) 2021/08/15(Sun) 23:56:41 |
【徒】 一年 黒沢誉「どっかしら変じゃねえ先輩います?」 雑な暴言。素直な一意見。 「家族が抜けてて。強めじゃねえと伝わんねえから…… でも人に言うことじゃねえなあって。 自覚はあるんすけどね。なんか今日は、良くねえ……」 ごくごく単純に、触れられたから落ち着いてきてはいる。 まだ吐く息も体温も熱いままだが。 「…………ならないやつなんすか、これ」 一人でどうにもできないことには遭わずに済んできた。 まず自分で対処するのが染みついている。 (.117) 2021/08/16(Mon) 0:12:32 |
【徒】 一年 黒沢誉「あー? ……あー。そういう……」 「混ざってなくてよかったすね。 さすがにこう。マズかったんじゃないすか」 男女混合で何か起きるとも限らないけれども。 可能性が排除されていれば安全ではある。 「……。どうすっかなあ…… 俺はこんだけで十分なんすけど。 勢喜先輩に撫でられんの好きだし」 むにむにと先輩の頬をつついた。 なんの他意も感じられないじゃれ合いの範疇。 (.119) 2021/08/16(Mon) 0:48:04 |
【徒】 一年 黒沢誉「つーか泊まるとかいう話だった気ィするし。 人数多けりゃ大部屋もあったっしょ…… ウワ絶対嫌だな。首ィ括るしかねえそんなん」 どうしようもない惨事は想像できたし、 そうしないように苦心するのもわかった。 「はァん」 「……んじゃあやめときます。 勢いじゃ嫌とか言ってたすもんね」 触れていた手を引っ込めて、 置き場に迷った腕がそのまま垂れ下がる。 「付き合うんなら別に。急がなくてもいいんじゃないすか?」 (.121) 2021/08/16(Mon) 1:24:35 |
【徒】 一年 黒沢誉構えそうになった肘も膝も結局入らなかった。 自分の顎に手を当てる。 「……。……?」 「俺、体育は実技で成績確保してて。 保健はたいして点数よくねえんすよね」 「あー……そうすね。 さすがに外だとまずいんじゃねえかなあ、 くらいしかわかんねえすわ。 あんまりできねえってんなら多少はしてもらえます」 逆の手のひらを先輩の前にかざす。 ベンチから立ち上がろうとした。 (.123) 2021/08/16(Mon) 1:59:54 |
【徒】 一年 黒沢誉「 喧嘩か? 」沸点が上がった訳ではないので、まだキレる余地はある。 必要はそんなにない。 「…………。いちいち聞かなくていいやつだなこれ」 ないのでじき鎮火した。 「部屋。部屋……なあ。 一番マシなんじゃないすか。人の家よりゃ上等で…… 普通に申し訳ねえわ別荘使わしてもらってんのに」 ぐるりと一度首を回した。 「先輩はわかってんすか?」 (.125) 2021/08/16(Mon) 2:23:23 |
【徒】 一年 黒沢誉「違えわこれ。鳴き声だ」 ド無礼。 食って掛かってもこうなる、とわかれば 放っておくくらいの落ち着きは取り戻した。 内心はともかく。 「そりゃあそうでしょ。……。 ……実際そういう目的で来てる連中いたりして」 こうなるのが自分たちだけではなさそうだし。 一度味をしめればリピーターは発生するかもしれない。 あるいはそれらを勘違いして、 観光スポットとして宣伝し始めた可能性もある。 (.127) 2021/08/16(Mon) 2:48:56 |
【徒】 一年 黒沢誉「じゃあそれで」 「知らねえよかだいぶマシそうだし。 …………。マズいと思ったらなんとかしますけど、 この時期に突然病院送りにしたかねえんで」 まずくない範囲がどこまでかは後輩次第だが、 本気の拒絶の前に止めにかかるはずだ。 病院送りは待てが一切できなかった場合くらいだろう。 「……。別にもう集合もねえか。 泊まる部屋決まってましたっけ」 (.130) 2021/08/16(Mon) 3:09:12 |
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