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【人】 二年生 小林 友─────俺には、そんな勇気、ないよ。 今傍目に死にたそうに見えてたとしても。 [それ以上、何も言えない。 気まずい沈黙が教室の中に、 澱のように溜まっていく。 「そうか」と短く切って、 青柳は足を組みかえた。 俺は何か言わなくては、と 頭の中を必死にフル回転させて……] 青柳はさ、もし好きな女の子がいて その子が、手も届かない遠くにいたら ─────どうする? [つい、そう、尋ねてしまった。]* (5) 2020/10/05(Mon) 14:34:58 |
【人】 二年生 小林 友[少しの沈黙の後、] 「遠距離、的な?」 [青柳はううん、と唸って腕を組んだ。 もし、俺が「いや、異世界の子」って言ったら 今度こそ可哀想な奴扱いにされるんだろうか。 それとも、青柳はそれでも俺を 見捨てずそばに居てくれるのか。] 「俺なら、ちゃんとメッセージ送って 「逢えなくても好きだよ」って 相手がちゃんと分かるように伝える。 それでも会いたかったら…… 俺も会いに行っちゃうかなぁ。」 [少し照れくさそうに笑って。] (6) 2020/10/05(Mon) 19:01:03 |
【人】 二年生 小林 友「てか、遠距離の話とかだったら 恋バナ、全然聞くからさ。 ……あっ俺すごい深刻な話しちゃった? だとしたらともちゃんめっちゃゴメン!」 [謝り出す青柳を宥めて 俺は内心、今の言葉を噛み締める。 例えば、今図書館に向かっても いるのは菜月の影で、俺は手を繋ぐどころか 声も、顔も知らないんだ。 他のカップルが当たり前みたいに到達してる、 その出発点にすらいない。 会いに行くにはどうしたらいいんだろう。 俺はもう、そればっかり考えていて。] (7) 2020/10/05(Mon) 19:01:32 |
【人】 二年生 小林 友青柳、聞いてくれてありがとう。 ごめん、俺なんかの恋、バナ……? なのかな つまんない話だったと思うけど、ホント。 [にっこり、出来る限りで微笑んでみせて 俺はカバンを手に図書館へ向かう。 今度は、青柳は咎めなかった。] (8) 2020/10/05(Mon) 19:02:00 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月 でも、ちゃんと会った時に ちゃんと、俺の声で伝えたい。 ……てか、俺イケメンじゃないし、 ザ・陰キャ!って感じだけど…… 嫌じゃ、ないの? [俺達の逢瀬は傍目にどう見えるんだろう。 椅子にひとりで腰掛けて、くすくす笑って 独り言言ってるヤバいやつなのか、 それとも、このやり取り自体、 誰の目にも映らないものなのか。] (-11) 2020/10/05(Mon) 19:03:09 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月[俺は影へと手を差し述べ その触れられない輪郭を手でなぞる。 耳の辺りから肩へと滑って、 胸から腰の辺りまで。 多分お互い、なんの感触も齎さない愛撫。 だけど、この影が一体どんな顔して こちらを見ているんだろう、って 想像するだけで、愛おしくて。] 逃げてもいいんだよ。 [聞こえないだろうけれど、 その耳元で囁いた。 影は逃げてしまうだろうか。 触れられないから許してくれてるんだろうか。] (-13) 2020/10/05(Mon) 19:04:26 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月[そうして、もし逃げないならば 触れられもしないほど軽く 口の辺りにキスを落とそう。 ボロボロの便箋越しじゃ足りないと、 「触れたい」と伝えたくて。 迫る宵闇は温かい。 とろりと蕩けて、二人でそのまま 訳もわからず飲み込まれてしまえば ひとつになれる気がするのに。] なつき。 [闇に飲まれる図書館の中 愛しげに呟く声が、 どうか、相手に届きますように。]* (-14) 2020/10/05(Mon) 19:05:09 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友──すっごい悲しいんだけどさ、 心配してくる親には言えなくって、 しんどい練習なくて楽だわ〜なんて笑ってさ、 お風呂でめっちゃ泣く。全裸で。 (-27) 2020/10/05(Mon) 22:36:42 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友アキナは本当に空を飛ぶのがうまくてさ。 小柄だし、しなやかな筋肉がしっかりついてるから、 ふらつかずに投げられるんだよね。 あの子が空中でぱっと笑うと、 観客の心が一つになるの。 だけど、私、アキナのこと落としてやれって どっかで思ってたんじゃないかな。 チアの花形ではトップで、 ベースはどんなに頑張っても、 降ってくる人間を受け止めても、 ただ危ないばっかりで。 考え出したら怖くて、チアやめちゃった。 (-28) 2020/10/05(Mon) 22:38:12 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友友君こそ。 今話してる相手は生粋のゴリラだぞ! たくさん名前呼ぶと懐きます。 [なつきだけに。 影からは顔立ちなんか分からないけど、 そんなのはお互い様でしょう。 だけどそうだね、会った時には、 たくさん友君の声を聞きたい。 世界中の誰とでも繋がれる時代なのに、 一番話したい人と、話せないなんて。] (-41) 2020/10/06(Tue) 6:25:51 |
【人】 二年生 小林 友天使でありますから、たとえ破られても、 焼かれても、また轢かれても、 血の出るわけではなし、 また痛たいということもなかったのです。 ただ、この地上にいる間は、 おもしろいことと、 悲しいこととがあるばかりで、 しまいには、魂は、みんな青い空へと 飛んでいってしまうのでありました。 ─────『飴チョコの天使』 小川 未明 (19) 2020/10/06(Tue) 9:44:54 |
【人】 二年生 小林 友[その日の逢瀬で、菜月と一体何が話せたろう。 けれど、夕方の束の間の時間なんて 俺達にはちっとも足りなくて、 俺は家に本を持ち帰って、 話し足りない続きを書こうとした。 何でも菜月は打ち明けてくれて、 柔らかくて繊細な心をひた隠しに 仲間や家族に笑ってみせた、その裏まで。] (20) 2020/10/06(Tue) 9:45:53 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月 心配してくれるのはわかるけど……ってこと 俺もよくあるよ。 心配してくれててもどうにかなるわけでなし。 下手に声掛けられて、傷広げられても もっと傷付くだけかもしれないし。 どんなに頑張っても縁の下の力持ちって 縁の下、だもんね。 俺も、何も知らなかったら多分 上の子ばっかり見てたかもしれない (⤴ マジごめん!) もしかしたら自分の中に 汚い気持ちがあるかもしれない、って 菜月は言うけれどもさ 少なくとも「今」の菜月は そんなことしないだろ。 (-47) 2020/10/06(Tue) 9:46:52 |
【人】 二年生 小林 友[出来るだけ近くで彼女の気持ちを聞きたくて 影に寄り添い、声に出す。 ─────ああ、悔しい。悔しいなあ。 もっと触れたい、近くにいたいのに。 便箋を書いては消して、書いては消して。 今までのやり取りは頭の中。] (21) 2020/10/06(Tue) 9:47:24 |
【人】 二年生 小林 友[そんな扱われ方をした便箋が…… もう、裏なんかセロテープが無いとこの方が 珍しいくらいになっているそれが、 こうなる事なんて、分かっていたはずなのに。] ─────……あっ! [何となく書き添えた、赤いハート。 恥ずかしくなって消そうとしたら、 びり、と音を立てて便箋が裂けてしまった。 慌てて学習机の上に手を伸ばして セロテープを取ろうとしたら、 手も触れていない便箋が、びり、びり、 もう耐え切れないのだ、と言わんばかりに ひとりでに千々に切れていく。] (22) 2020/10/06(Tue) 9:49:07 |
【人】 二年生 小林 友ちょっ、えっ、待ってよ! [慌てて便箋を手で押えても、手の下で 容赦なく紙は裂けていく。 たとえ破られても、 焼かれても、また轢かれても、 血の出るわけではなし、 また痛たいということもなかったのです。 この紙が無くなったら、菜月に逢えない。 いやだ、いやだ、嫌だ! 焦る俺を他所に、 シャーペンと消えるインクの跡を刻んだ便箋は もう飛ばす寸前の紙吹雪みたいになっていて。 ただ、この地上にいる間は、 ]おもしろいことと、 悲しいこととがあるばかりで、 しまいには、魂は、みんな───── (23) 2020/10/06(Tue) 9:55:46 |
【人】 二年生 小林 友[ともかく、セロテープで繋いでしまえば…… そう思って、紙から手を離した矢先。 細かく千切れた便箋たちは、 たちまち真っ青な 蝶 へと姿を変えて窓の外へと飛んでいくと、 まんまるなお月様の方へと 飛び立っていくのでした。] (24) 2020/10/06(Tue) 9:59:36 |
【人】 二年生 小林 友[行く手に美しい星の光る空を仰ぎ 窓から身を乗り出すようにして 俺は一人、大きな声を上げて泣いた。 「さびくて、しかたがない!」 真っ青な蝶の昇った空には ただ青ざめた顔をした月が 黙って地上を見下ろしていた。]* (25) 2020/10/06(Tue) 10:05:32 |
【墓】 二年生 小林 友[どんなに見つめても、影は影。 うすぼんやりとした黒い輪郭が 目の前で揺らいでいるだけ。 触れたはずの唇が空を切って 微かな空気の揺らぎだけが すう、と湿った唇を撫でた。 唇を離すと、影の手が俺の手を取り 心臓の辺りへと導いてくれた。 どく、どく、と脈打つ肉の感触もなく 俺の手はきっと、菜月の心に触れている。 脆くて危うい其処はきっと、 乱暴に暴けば傷が付いてしまう。 けれど、それを躊躇う程度には 柔らかくて、綺麗な形をしているのだろう。] (+10) 2020/10/07(Wed) 19:20:26 |
【墓】 二年生 小林 友[俺は、ぐっと空を掻いて 菜月の柔らかい部分に触れようとした。 けれど、それはやっぱり虚空のまま。 触れていたら伝えられたんだろうか。 ありったけの「好き」の気持ちを 菜月の中に撒き散らして…… そこから奇跡でも芽吹いてくれていたろうか。] (+11) 2020/10/07(Wed) 19:20:45 |
【人】 二年生 小林 友「どうしたの?!もう夜も遅いのよ?!」 [驚いた様子の母さんを押し退けるように 俺は家の外へと飛び出した。 青い蝶は一匹残らず、 大きな月へと旅立ってしまった。 泣いても、叫んでも、 ただ慣れた顔のご近所さんが 窓からひょっこり顔を出すだけ。 頬を伝う涙が口へと流れ込んで まるで、海に溺れたみたいに塩辛い。] なつきィィィィーっ!!! [どれだけ叫べば届くのだろう。 世界を隔てて、君のところまで。] (31) 2020/10/07(Wed) 19:21:09 |
【人】 二年生 小林 友[この俺の有り様を見た人は聞くんだ。 「ともちゃん、大丈夫?」 「死のうとしてない?」 「ダメだったらいつでもいいなさい」 結局、誰も何も問題解決になってない。 みんな、話して解決すると思ってる。 話せば100%受け入れてくれる? 気持ちを分かちあって「ひとりじゃないよ」? それはただの慰めで、解決じゃない。 「陰キャだから、ひとりでいるから なんだか死にそうに見える」? 問題はもっと奥深いぞ。 俺は、ただ俺自身が嫌いなだけ。] (32) 2020/10/07(Wed) 19:21:31 |
【人】 二年生 小林 友[俺は月を見上げて叫んだ。] 途中で奪うくらいなら、 なんで菜月にあわせたんだよ!! もううんざりだ、何もかも!! さびしくて、しかたがない! [青白い月が、まっすぐ俺を見ている気がして。 その時、母さんや近所の人たちが 何を言っていたかも、覚えていない。 ただ、俺は声を限りに、願った。] (34) 2020/10/07(Wed) 19:22:22 |
【人】 二年生 小林 友どうか、この俺を消してください。 菜月がいないのなら、 こんなところにいたくない! [それを聞いた月は、何を思ったのだろう。 ふわり、と掬うように俺の意識は途切れて 闇の中へと堕ちていった。]* (35) 2020/10/07(Wed) 19:23:42 |
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