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人狼物語 三日月国


94 【身内】青き果実の毒房【R18G】

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視点:


南波 靖史は、『記憶にある限り』はじめて、縋るように泣いた。
(a21) 2021/10/03(Sun) 4:41:30

南波 靖史は、でも、掴んで、縋って、幾ら離さないと決めた腕が
(a22) 2021/10/03(Sun) 4:42:28

南波 靖史は、解かれる事があるのを知っている。知っていた。
(a23) 2021/10/03(Sun) 4:42:54

南波 靖史は、黒塚が行った動作と、漏らした声を、聞き逃さなかった。
(a38) 2021/10/04(Mon) 0:17:50

南波 靖史は、聞き逃せ なかった。
(a39) 2021/10/04(Mon) 0:18:10

【赤】 3839 南波 靖史

 
「ライト、もう点かなくなったね」

この部屋には何もいない。誰もない。
貴方に最後に祝福を授けた者も、もう姿は見せない。

ここに居るのは『異能』である存在と、貴方の一人とひとつ。
或いは──二つ?それとも、貴方はふたりと表すだろうか?

「ここならもう誰にも聞かれないよ。
 文字通りの“舞台裏”だ。お話ししてくれますか。
 
 俺に近くて、遠い。
 『靖史』を助けてくれた、不思議な“あなた”。
 ──君に、俺からも感謝を伝えたかった」
(*1) 2021/10/04(Mon) 1:32:01

【赤】 3839 南波 靖史

 
「彰人くんは意図していなかったんだろうけど、
 “靖史”やすしは両親以外に触れられた経験が無い。
 
 ……俺が、その前に対話するようになって。
 俺が──俺を、“僕”を、止める為に姿を消した。
 靖史は小学校すら通い終えていない。学歴もない。

 その上で俺が身体を持ち続けていたから、
 例え誰かに『触れられた』としても、異能である俺だ。

 だから、多分。あの子は宗教が、聖句が嫌いだったのに。
 君の幸せを『祈る』と言うくらいには、
   ──幸せに感じる行為だったんだよ」
 
 ▼
(*3) 2021/10/04(Mon) 2:22:23

【赤】 3839 南波 靖史

 
「俺はその時、見ていた訳じゃないよ」

  
「 “思い出した” 」


「大好きな大好きな、誰を殺しても何をしても愛されたかった“靖史”やすしに。
 去られた事が、置いて行かれた事が。その理由が。当時の俺は全く理解できなくて、悲しすぎて、耐えきれなくて、……自分の記憶から、抹消していた」

「まさか、靖史が残っていたなんて知りもしないまま」

「でも、消し切れるわけなかったんだ。当然だよね」

「 それだけ、“靖史”を愛していた」


「──思い出した切っ掛けトリガーは、他との会話でもあるし、君とのここでの接触行為でもあるし、きっと、靖史にとっても賭けだった。最も、時間の問題でもあったと思う」

そう、淡々と語れるくらいには、記憶を受け止められる程には。
賭けには勝ったのだろう。下手をすると狂乱の末自殺でもしていてもおかしくない。己を愛しすぎるとどうなるかなんて、……語らずともいい話か。
(*4) 2021/10/04(Mon) 2:30:30

【赤】 3839 南波 靖史


「ん……」

 嬉しそうに目細めて、その感触を受け取る。
 本当はこれを受け取るのは俺じゃない筈だ。
 でも、あの子が好きなモノを俺が好きじゃない訳がない。

「──そう。難しい。
 “コッチ側”と言ったよね、この舞台で。
 俺はその辺りの感性を含めて、近いんじゃないかなと思った。
 勿論勘が殆どだったけど、君の異能を考えると強ち間違いじゃなかったんじゃないかな。

 俺達は、
 『他者の事を正しく愛せないし、
  社会の倫理にも適応できなかった』……違う?」
(*6) 2021/10/04(Mon) 3:44:50

【赤】 3839 南波 靖史

 
「──何で皆すぐ消えたり死んじゃうのかな」


ぽつり。もう暴れはしないけれど。
遥か彼方の自分から、つい最近の潤くんまで。
出会って好きになった相手は、みんな何処かで消えてしまう。

「でも、引き継げるんだ。コピーのコピー(35)でも。
 感情じゃなくて、記憶だけを引き継ぐのかい。

……これさ、今元気に記憶もってる俺の目の前が君が、新しい子を作ったとして。そっちが先に死んだ場合、真っ白上書きコピーとかになったりしないの?」▼
(*9) 2021/10/04(Mon) 14:18:45

【赤】 3839 南波 靖史

 
「死を望んだのは“ただしい人”達でしょ。

 同じじゃない事を酷く怖がる人達。或いは異端に害される前に排除したい人達。……単に“多数派”って言うだけの存在なのにね?

「俺、ずっと思ってたんだけどさ。
 “ただしい人”とや、一緒に生きる必要あるのかな。
 彰人くん、ただしい人を目指してたのって、ここから出る為じゃないの?ここを出た後もそれを目指して生き続けるの?」

「俺、君がここを出た後何をしたいか聞いたことが無いや」

「俺はね。結局のところ、“ただしい人”と相容れないから。
 別にわざわざ害する気はないけど、不干渉でいられる──彼らを邪魔しない場所を探して、ただしくなくても、自由に過ごせたらって思う。……彰人君は、ここを出てどんな生き方をしたい?」
(*10) 2021/10/04(Mon) 14:22:00

【赤】 3839 南波 靖史



「そう。羨ましいな。仲間だね、彰人くん。
 ──俺も、一番大切な自分には“二度と会えない”し、
 “誰も、その存在を証明も観測もできていない”から。

 彰人くんは最期に話せたみたいだけど。
 
俺は未だに自分の中に“靖史”がいるのを認識できない」


「……生きてるのか死んでるのかすら、不明で、」

「俺と言う“自我を持った異能”“やすふみ”が存在する事すら、証明ができない。
創くんの記事見た?異能が自我ってマズいらしいね色々と。
でも俺こうして普通に生活してるのって、普通に見逃されてるのか、
ただの多重人格者の狂人
の“戯言”と思われてるのか」

「──実は、最も存在があやふやなの、俺なんだよね。
 記憶だけが、『私』と『僕』の存在を証明してくれる。俺にだけ、ね」

君はコピーがあるから。肉体があるから。
同時に二つの個体が存在する限り、『外部の観測』によって証明がなされるだろうけど。俺の答えは誰一人観測ができない。『ただの多重人格者の妄言』を否定できない。

「……俺は死んだ事がないから、羨ましいとは言わないけど。
 ただ、『最も大事な自分を、他者から認められなかった』」

「その一点は、君と共感できると思っている」 ▼
(*13) 2021/10/04(Mon) 19:42:23

【赤】 3839 南波 靖史



「彰人くんの異能は、寿命と記憶の問題で、死体と苦痛が出るんだよね?」

「──俺の異能、使えないかな。」

「結局の所、俺の“1番”は俺から変わらない。
 普通に誰かの傍にいるならこれはハンデだけど、彰人君も同じでしょ。そして、俺は“君の為に君を無痛で殺すことができる”」

「昔の俺の『自分が1番』で『他の全てが2番』が、此処で変わった。今の俺には、2番も3番も付けられる。」

「だから、君に声をかけている。俺、“ただしい人”に紛れて生きていける気がしないよ。だから、……ここから出たら、」

「“ただしくない人”のままで生きられる世界を、
              一緒に、探しませんか」

 「例え1番が自分でも、“独り”は寂しいから」
(*14) 2021/10/04(Mon) 19:46:06

【赤】 3839 南波 靖史



「知ってるよ。その上で、そこも似てるから誘ったんだ。

 俺もまだ、2番も3番も生まれただけで──
 『自分以外を愛せてはいない』のは同じ。保証なんて俺もない」

指を絡められた手を見て、少し考えた後に。
もう片方に常に嵌めていた自分の右手の薬指の指輪を取る。

「凄くない?記憶ない状態で“それでも誰にも渡したくなくて”自分の両手の薬指に婚約指輪代わりに嵌めてたの相当だと思う」

「なのに一回、彰人くんこれ外して来たでしょ。君だけだぞ」

だから、責任取ってよ。冗談めかしてそう言って、
取った指輪を貴方の右手薬指に着けようとしてくる。▼
(*16) 2021/10/04(Mon) 20:39:32

【赤】 3839 南波 靖史


「……保証も証明もないない尽くしだね、俺達。
 だから考えてくれるって言ったから、それ、あげる。」

「気が向いたら別の指に着けてくれたらいい。
 或いは、誘いもそれも不要と思えたなら捨ててくれていい」

「俺も、今着けている“この指輪の意味”が、
 変わる事があるのか──1年、2年?もっとその先?わからないけど、」
 
「互いに、賭けてみよう。
 それでも苦しかったら、終わらせよう。全部」

俺は幾らでも、『居てくれるなら』答えを待てるから。
本当に『ただしく人を愛せなかった』俺達なのか、
それを確かめる未来への誘いへの返事を、俺はずっと待ってる。
(*17) 2021/10/04(Mon) 20:40:03
南波 靖史は、『南波靖史(やすし)』は、今度こそ終幕を見届けた。
(a62) 2021/10/04(Mon) 20:59:50