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人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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視点:


【人】 二年生 早乙女 菜月

「エレベーターで、ベースはそんな足の持ち方しちゃだめ! 手でトップの体重のかかりかたを感じて、トップから目を離さない!」
「エレベーターに乗り込むとき、トップはもっと膝の屈伸を使って! スポットはただいるだけじゃないのよ、ちゃんとトップの腰を支えなさい!」
「ダブルテイクの時は、トップの足の高さを合わせて! そのためにはベースが高さを合わせないとダメ! トップ、内股!」
「そんなやり方でエクステンションを続けたら、ベースは肘を壊す!スポットはもっとトップの足首を握って全体を観察しなさい! 何のためのスポットなのよ!」

[大学で入ったチア部は、高校以上にスパルタだった。
 私はチアをやめることなく、ずるずると続けている。アキナと同じ大学で。

 大学の中で会っても、外で会ってもどこで会っても、アキナは何も言わない。ただ、割れた鏡のような目で私を見るだけだ。
 いっそ何か言ってくれれば、と思うけれど、私だって自分からは話しかけることができない。
 結局私たちは微妙な関係のままだ。]
(14) 2020/10/09(Fri) 6:39:52

【人】 二年生 早乙女 菜月

[つまんないな、と心から思う。
 チアをやっていても、どこか冷めた自分が邪魔をする。

 苦しい思いをして、考えないで済む時間ができるのはありがたい。
 だけど、チアそのものの魅力には、コロナ前の方が取りつかれていた。

「今」の菜月が好きだよ。>>3:-48


「今」の私はどうだろう。]
(15) 2020/10/09(Fri) 6:41:19

【人】 二年生 早乙女 菜月

[鞄の中には一冊のお守り。
 一枚も増えていない、正しい重さの童話集。
 ラミネートコーティングされ、
 「私立桐皇学院高等学校」と書かれている。
 結局高校の図書室に残していくことはできず、
 通常よりも高い値段で買い上げた。

 ともすると、友君と過ごした日々が
 ただの妄想じゃないかと思ってしまう。
 
そんなのは悲しすぎるから。

 今となっては、この本だけが
 あの不思議な現象の証拠になってしまった。

 やりとりが何一つ残らなくなって、
 確かに友君と過ごしたんだ。
 私ひとりじゃ本なんか読まない。
 私だけじゃ、こんなに四季には気づけない。
 友君からもらった言葉で、私は世界を表していく。

 だけど、だけどね、やっぱり、
さびしくて、しかたがない。]
(16) 2020/10/09(Fri) 6:41:35

【人】 二年生 早乙女 菜月

「お、早乙女。いい加減続き読んだか?」
[構内をふらふらしていると、小埜先生に話しかけられた。
 小川未明を研究しているとかで、彼の授業を取って以来、なんとなく気にかけられている。他学部の私がわざわざ受けに来たのが珍しいらしい。
「続きは読まないですよ」「そのこだわり何なんだよ」「貞節です」
 授業は意味が分からなかった。だけど、毎回単位を落としながらも、同じ授業を受けている。
「下手の横好き、ここに極まり、だな」
 いいんだ、必修じゃないし。]

「そういや、今年もう一人入ったぞ。小川未明好きが。早乙女と違ってできるけど」
 悪かったですね、と唇を尖らせるのも、小埜先生は聞いていない。ちょうど外から入ってきた男子学生に手を上げて、「あ、いたいた。おーい小林……消毒!」アルコールをせずに入ろうとした青年に叱責を飛ばす。]


 ……小林?


[はいはいと聞き流そうとして、それができずに青年を見た。
 よくある名前だし、ただの偶然、だとは思う。
「小林、こいつが前ちらっと話した面白いやつだ。文学部じゃないのに俺の授業撮って、歴史に残る酷いレポートを書きながら毎回授業取ってくる。今年も落ちる予定だ、なあ早乙女」
 ぺらぺら話しかけてくる小埜先生を無視しながら、
 それでも、ほんの少しだけ期待してしまった。]*
(17) 2020/10/09(Fri) 6:44:06

【人】 二年生 早乙女 菜月

[小林君の視線が、私の手元に注がれる。>>22
 いつのまにかボロボロになってしまった本。
 驚いたような顔をする小林君に、私の感情が呼び起こされる。
 いくつもの「もしかして」と「まさか」が、
 水泡のように浮かんでは消える。]


 ゆう、くん……?


[嘘だ、って、とっさに思う。
 だけどそれ以上は声が出てこなくて、
 会えてうれしい、とか、
 ちょっとひねりを加えるなら、私はアキナだよ、とか
 うそっこ教えるのお揃いだね、とか、
 色々。もっといい言葉があったはずなのに、]


 ……なんでぇ?
 なんで、ともくんがここにいるの……?


[私が言えたのはそれだけで。
 友君の目の縁に溜まる雫に>>23
 私の涙も導かれた。]
(27) 2020/10/10(Sat) 7:14:50

【人】 二年生 早乙女 菜月

[そうして、友君の言葉を受けても>>-76>>26
 うん、うん、とうなずくことしかできなくて。

 私たちを見てちょっと焦った先生が、
「……死ぬにはまだ早いぞ?」
 自殺の誘いを目の当たりにしたと勘違いする。]
(28) 2020/10/10(Sat) 7:15:17

【人】 二年生 早乙女 菜月

[ぎゅっと抱きかかえた小川未明の童話集。
 友君の世界の名残と共鳴して、本が強く、脈打った。]
(29) 2020/10/10(Sat) 7:16:13

【人】 二年生 早乙女 菜月

「不意に、本が膨れ上がる。
 本は幾千幾万もの真っ青な
へと姿を変えて、
 私たちの視界を奪う。

 青い翼をはためかせて、銀の鱗粉が尾を引いて、
 私たちの周りを舞いながら、
 様々なものに姿を変えた。

 例えば、野ばらから尻を突き出したミツバチ。
 例えば、目を細めて針の穴をみつめるおばあさん。
 線香持ったおじさんや、太鼓を叩くラッコまで。

 それらは幾度も形を変えながら、
 窓の外へ、浮かぶ雲島へと飛んで行き、
 しまいには、魂は、みんな青い空へと
 飛んでいってしまったのだ。]
(30) 2020/10/10(Sat) 7:17:22

【人】 二年生 早乙女 菜月



 
雲を泳ぐラッコ、

を、

誰が見た、と言うのさ?


 
(31) 2020/10/10(Sat) 7:18:28

【人】 二年生 早乙女 菜月

「空にラッコ?」「ラッコが雲を泳いでる……?」
[空を見上げた人たちが、さわさわと騒ぎ出す。]
(32) 2020/10/10(Sat) 7:20:05

【人】 二年生 早乙女 菜月

[白昼夢だと思ったんだろう。
 「……俺、寝る。今日休講な]
 小埜先生はふらふらと去っていった。

 その後ろ姿を見送って、私は泣きながら、

 笑ってしまった。]**
(33) 2020/10/10(Sat) 7:21:05

【人】 新婦 早乙女 菜月



[2度目のキスは、
 ちゃんと、
 触れ合った。]

 
(100) 2020/10/13(Tue) 6:48:41

【人】 新婦 早乙女 菜月

[図書室だけだったデートの範囲が、
 広がっていく。
 初めてのデートは本屋。
 だけど私は熱心な読書家にはなれなくて、
 友君の持つ本を横から覗き込んだり、
 友君の睫毛を眺めたり。

 喫茶店で頼むのは、
 ピーチゼリーソーダと
 バナナのミルククレープ添え。
 クレープは二つ、ストローもふたつ。
 友くんがもにょもにょ言ったって、
 ドリンクだけはひとつきり。
 だって、美味しいドリンクを分け合うなんて、
 影だけが相手じゃできないもん。

 友くんと触れ合えるのが嬉しくて、
 甘やかな声も、意外と豊かな表情も、
 どんどん好きになっていく。

 だけど──]
(101) 2020/10/13(Tue) 6:49:40

【人】 新婦 早乙女 菜月

 笑ってくれない。>>75

 キス魔なのは、その、困る。
 ちょっと、困る!

 人前は一応避けてくれるものの、
 二人きり、の瞬間を狙って
 友くんはキスをしてくる。

 そりゃ、嬉しいけど。うれしいけど!
 見られやしないかヒヤヒヤするし、
 私にも心の準備ってものがある。
 それこそ、チアの子達に何を言われるか!]
(102) 2020/10/13(Tue) 6:50:17

【人】 新婦 早乙女 菜月

「ナツキ全然彼氏のこと喋らないね?」
「前はぺらぺら話してたくせにー」
[と、チアの子にはからかわれる。

 笑いを取るのは好き。
 自分がピエロになることで
 みんなに笑ってもらえるなら、
 積極的に話に行くけど。

 だけど、友くんと何を話して、
 私が何を感じたかは、
 誰にも言わない。
 自慢したいけど自慢したくない。
 そんな気持ち、初めて知って。

 だから、初デートのおしゃれのため
 部員達に泣きついて初めて
 友君の存在が知れ渡ったのだ。

「ナツキつまんなーい」「吐けー」
 良いんだ。笑顔にならチアでするから。]
(103) 2020/10/13(Tue) 6:51:16

【人】 新婦 早乙女 菜月

「GO! FIGHT! WIN!」

[自分の中にある熱が、
 汗となり、声となり
 発散されていく。

 会場内は熱い。気温だけではない。
 ここに集まっている人たちの
 若さや、情熱や、希望や、愛情で、
 とにかくあついのだ。

 声がどこまでも広がって、
 やがて自分の耳に戻ってくる。反響。
 たっぷり体に染み渡るような、残響。

 モーション。体の中の筋肉、
 インナーマッスルで体を止める。
 体を動かす時間をできるだけ短く、
 モーションを決めている時間を
 できるだけ長く。
 腹筋に力を込めて、
 明確に体をストップさせる。

 反響して戻ってきた声で、
 シンバルのように鼓膜が揺れる。]
(106) 2020/10/13(Tue) 6:53:18

【人】 新婦 早乙女 菜月

[これは、と気づく。
 高々とアキナを投げる。
 重力が消える最高地点でトゥ・タッチ。
 これは、反響しているんじゃない。
 私たちの声の残響じゃない。
 客席からの掛け声だ。
 掛け声が返ってきている。

 二分三十秒の演技が、終わる。
 席に並ぶ一つ一つの顔、
 その中によく知った顔立ちを見つけた。

 二分三十秒の演技が、終わる。
 鳴り止まない歓声の中、
 客席に並ぶ笑顔の中の、
 一番良く知る顔に向かって、
 繋いだ手を高々と真上に突きあげる。

 チアリーディングはスポーツだ。
 グラウンドの外の花じゃない。
 技を競う真剣勝負。
 勝利の証は、会場に溢れる笑顔。
 私たちは誰かを応援するために、
 競い、高め合う。

 だけど、私自身が折れてしまった時に
 応援してくれたのは、
 友君、あなたの言葉でした。]**
(107) 2020/10/13(Tue) 6:54:37