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人狼物語 三日月国


62 【ペアRP】ラブリーナイト【R18】

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視点:


[犠牲者リスト]
加藤

二日目

本日の生存者:村岡 薊、ローレライ、サモエド、サクライ、紫川 朔月、シロウ、ミヤビ、不和 直継、要 薫、柊、寿 達也以上11名

【人】 Dom サクライ

  ー むかしむかしのはなし ー

[それから度々、榛原と二人出掛けては
 写真を撮るようになった。

 
には電車を乗り継いで海辺を走る電車を、
 
には一面紅葉に彩られた山を、
 
には二人で繁華街の片隅に作った小さな雪だるまを。
 
 最初に撮った写真より、踏んだ場数の分だけ
 ピントをどこに合わせるだとか、
 被写体の選び方や光の反射のさせ方とか、
 基本的なカメラの使い方を覚えていった。

 榛原の父親はカメラで有名な会社の部長さんで
 母親はピアノ教師、妹が一人。
 俺とは違う平々凡々で恙無い家族の話を
 外出や、眠りに落ちるまでの時間に話したっけ。

 俺の話も、もちろん。]
(0) 2021/03/22(Mon) 2:29:54

【人】 Dom サクライ




  どんな成績だろうと、多分煙草とか吸っていようと
  父さんは跡取りの話しかしないと思う。


[ある夜、俺は榛原に胸中を打ち明けた。
 消灯した後の寮の部屋の中、
 隣のベッドにいる榛原の相槌は
 なんだか、とても心強かった。]


  ……本当は、さ。
  家がどうこうじゃなくって
  ちゃんと俺を見てほしいって思う。
  「こんな成績じゃ跡取りに出来ない」じゃなくて
  「将来どうするんだ」とかさ。


[それが当たり前になってしまえば
 言われてただうざったいだけかもしれないけど、
 俺にはその当たり前が羨ましくて、眩しくて。]
(1) 2021/03/22(Mon) 2:30:29

【人】 Dom サクライ



  ……カメラを構えて、被写体と向き合ってる時は
  そういうこと考えずに
  静かに相手と向き合える気がする。
  写真を見た誰かは、
  「この写真を撮ったのがどこの家の人間か」
  ……なんて、考えないでしょ。普通。


[ひとりで笑った声が、明かりの無い室内に
 わぁん、と響く。
 心細くなった俺が「榛原」と呼ぶと
 暗闇の中から「えいちゃん」と返事が返ってきて
 それでようやく、安心できた。]


  「えいちゃん、来週も、再来週も
  えいちゃんの気持ちが晴れるまで
  一緒に写真撮ろうな」


[そんな静かな声が、どんな慰めよりもうれしかった。]
(2) 2021/03/22(Mon) 2:31:16

【人】 Dom サクライ

[その週、いつものように連れ立って
 俺達は寮の外の公園へと足を伸ばした。
 連日暖かな日が続き、凍えていた春の新芽が
 地面から顔を覗かせ始めた時期の事だった。

 被写体を探して、俺がファインダー越しに
 公園の中を見て回っていた。
 そして樹上に芽吹いたばかりの桜の芽から
 ふとレンズを背けると─────


 フレームの向こうに
 同じように此方に向かってカメラを構える
 榛原の姿が、見えた。


 「キレーだと思ったものしか撮らない」と
 言っていたはずの彼が。
 俺がカメラを下ろすと、
 榛原もカメラを下ろしてバツが悪そうに笑った。]
(3) 2021/03/22(Mon) 2:31:53

【人】 Dom サクライ



  「何もかも忘れて、
  自由に写真撮ってるえいちゃん
  俺はキレーだと思うよ、って言いたくて」


[そう言って榛原は、ポケットから
 数枚の写真を取りだした。

 全部、俺。
 今まで一緒に撮影に行った先で
 被写体と向き合う俺の顔だった。]
(4) 2021/03/22(Mon) 2:32:20

【人】 Dom サクライ

[そうして、まだ蕾も開かない桜の木の下で
 俺達はそっと唇を重ねた。

 初めてのキスは、生まれて初めて勝ち得た
 自由の味がしたと思う。

 それから二人で逃げるように寮に帰って
 正しい方法も知らないまま、見よう見まねで
 ただ猿みたいにセックスした。


 ─────そこまでだったら、
 ただの甘酸っぱい恋の話で終わってた、のに。


 結局、生まれてこの方
 何かの型にハマって生きていた俺は
 「自由」というものに相容れなかったのかもしれない。]
(5) 2021/03/22(Mon) 2:34:06

【人】 Dom サクライ

[榛原と結ばれてから、学校に行ってはセックスして
 寮に帰ってもセックスをする毎日だった。
 多分あの頃の俺達は猿にすら
 軽蔑されていたかもしれない。

 だけれど、それが当たり前になるにつれて
 何となく、物足りなくなって。

 「確かにマンネリなのかな?」と
 あっけらかんと笑った榛原と色々調べて
 行為を写真に収めるのを知った。
 野外で人目を盗んでヤるのを知った。
 男根ではなく異物を挿入するのを知った。

 知ったものは片っ端から試していって
 俺達はそれを学園生活の清涼剤にし続けた。

 いつしか、清涼剤無しじゃ
 幸福を感じられないほどに。]
(6) 2021/03/22(Mon) 2:35:21

【人】 Dom サクライ

[榛原は誰より自由な男だった。
 そいつが俺の下に組み敷かれて
 恥ずかしい場所を晒して、
 人格を疑われるような恥ずかしい行為をする。
 全部、俺のために。

 ……そんな光景が日常になる。

 月日が経ち、学生寮を出て
 二人で暮らすようになったら
 もっと歯止めが聞かなくなった。

 それでも、榛原は根を上げて
 俺の元から去ったりはしなかった。]
(7) 2021/03/22(Mon) 2:36:16

【人】 Dom サクライ



[「牛乳とゴム買ってくるわ」なんて、
 最期の一言に相応しくない台詞を残して
 事故で死んでしまわなかったら、
 ……多分俺は榛原と今日までずっと一緒にいたと思う。]*

 
(8) 2021/03/22(Mon) 2:39:21