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【赤】 六鹿 稀ぁ、…………っ、…… お嫌いで、なければ…… いれて、くださいませ…… [ ちらりと、その人の方に視線をやれば、 蜜を舐めとられていた。 羞恥心が募っていき、小さく声が漏れた。 そしてその人が選択を迫り、 彼女はいれてほしいと懇願する。 本物があるのなら、それでもいい。 言葉の通りに、その人が持つ 偽物を、というのであればそれでも。 彼女はまだ足りないのだ。 夫と一緒に寝ることができないから。 ]* (*39) 2020/09/03(Thu) 22:45:59 |
【人】 六鹿 稀 −過去の話− [ 六鹿 稀。 旧姓は唐草。 実家は都内23区内にある老舗呉服店。 彼女の父親で10代目くらいだっただろうか。 周りには、同じく老舗の和菓子店などの 跡継ぎが多くいた。 しかし彼女は、その跡継ぎの1人ではなかった。 ふたつ下の弟が、家業を継ぐことになっていたから。 彼女は嫁ぐ側の人間として、 両親の選ぶ人に添い遂げなければいけない。 そう思って弟が生まれたあとの 1日1日を過ごしていた。 彼女の人生に自由などないようなもの。 だから、大学だけはせめて 1人で暮らしてみたいとお願いをして、 彼女は熱海へと越してきた。 ] (19) 2020/09/03(Thu) 23:13:55 |
【人】 六鹿 稀[ そこでの彼との出会いは、 諦めと共に生きていた彼女を奮いおこした。 初めて、稀を求めた男性。 六鹿 賢斗。 彼との時間は、甘く、とても儚かった。 彼が、大学2年の終わりのあの日、 彼の家の話をした時、 『あぁ、この人の家柄ならば、 両親も心変わりをするかも知れない』 そう思っていたことは、 結婚した後に、話をした。 彼も、それを聞いたときは驚いたけれど、 その時だけは出生に感謝していた。 ] (20) 2020/09/03(Thu) 23:14:44 |
【人】 六鹿 稀 [ 彼と2人で、春休みを使って 都内の実家に挨拶に行った時のこと。 両親は洋装をしていた彼を品定めした。 彼女は、血の繋がった両親ながら、 古すぎると心の中で思っていた。 しかし、彼の家柄を聞けば、 その態度は徐々に変わっていったのを 彼女はいまだに覚えている。 ] 「それで、君のご両親は何のお仕事を?」 『熱海で旅館経営をしています』 「あら……どれくらいの歴史が?」 『300年ほどですね。 なので、行く行くは稀さんにうちの旅館で女将に なっていただきたいんです。』 け、賢斗さん……! (21) 2020/09/03(Thu) 23:24:54 |
【人】 六鹿 稀 [ 改めてそう言われると、彼女は恥ずかしくなった。 嬉しいけれど、まだ彼の両親が認めたわけではない。 しかし、彼の清潔感だったり、 家柄だったり、人柄だったりで、 彼女の両親は、 彼女の嫁ぎ先 新たな繋がり として彼を認めた。 また、彼のご両親と対面して、 結婚の許しが出たら、 顔合わせの機会を作ることまでを 彼女は両親と話して、 居心地の悪さから実家を後にした。 その日、彼女はいつも以上に彼を求めた。 実家の近くの五つ星ホテルの1室で、 彼に赤い花を求めてしまっていた。 ] (22) 2020/09/03(Thu) 23:28:55 |
【人】 六鹿 稀 [ 彼女は、唯一の心残りとして 弟に会えなかったことがあった。 弟は、彼女にいつも 『お願いだから、幸せになって』 と、物心ついた時から言ってくれていたから。 挨拶に行った時には、会うことができなかった。 連絡をとっていたけれど、 どこで会うのかまでは、話がつかなかった。 数日後、個人的に彼を連れて弟と会うことが 出来て、とっても良かった。 彼と弟は同じ跡取り息子として、 共有できるものがあったらしく、 すぐに仲良くなってくれたから。 ]* (23) 2020/09/03(Thu) 23:33:52 |
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