【赤】 灯守り 立秋―昔のこと― [先代立秋を覚えている灯守りはもう少ないことだろう。 彼が灯守りに就いていたのは、かなり昔の話だ。 のんびりで穏やかで子供好き。 領域内にすら子供らを入れて自由に遊ばせていたという。 子供たちは「なんか楽しく遊んでくれる兄ちゃん」と立秋のことを認識していた。 縁という名の子供もその一人。 もっとも、その子は男の子で、女の子に多かったその名前をお気に召さず、「僕の名前はカリーユだ!」と、本名をもじったあだ名で呼ばせていた。今なら気にすることでもないが、幼子は名をからかわれるのが嫌なもの。] (*72) 2022/01/22(Sat) 12:17:41 |
【赤】 灯守り 立秋『カリーユ、私と来てくれませんか』 [恐らく先代立秋は、雁湯とかそんな名前だとでも本気で思っていたのではないだろうか。懐かしいあだ名で呼ばれた十代半ばの少年はキョトンとしていた。] 『……えっと、畑の水撒きが終わったらね。』 [農作業中にスカウトされた灯守りは他にいないのではなかろうか。そして本当に農作業が終わるまで待っていた先代灯守りも他にいないのではないだろうか。 蛍でも何でもなく、少年は一般人だった。先代は自分の領域に遊びに来ていた子供たちの中から選んだようだった。その中で少年が選ばれた理由はよくわからない。髪は立秋域では特に珍しくない色だし、能力を持っていたわけでもない。『迫風』は灯守りになってから得た物だ。 『強いていうなら、相性ですかねー』等と先代は語っており、理由は彼の心の内だ。] (*73) 2022/01/22(Sat) 12:22:16 |
【赤】 灯守り 立秋[蛍たちを差し置いて自分が次の灯守りで良かったのか。 当時の蛍たちの話によると。] 『私はサポート業の方が向いておりますので』 『結構大変な仕事なので。灯守りなんてもっと大変なので嫌です。いい機会なんで引退します』 『ふふ、私は立秋様についていきたいのですよ』 [そう言って笑った初老の蛍に、少年はそんなもんなのかーと思った。こうして特に問題なく、引き継ぎは行われた。なお、先代立秋は他の灯守りに『新しい立秋のカリーユです』と本名と勘違いして紹介していたし、少年本人も仮名を名乗った方がいいのかな?と考えていたのでしばらく訂正されずに。 まあ、懐かしさもあり、「立秋の兄ちゃん」が優しい声で呼んでくれたあだ名を気に入っていたから問題はなかったけど。**] (*74) 2022/01/22(Sat) 12:23:53 |
【赤】 先代“小雪” 篠花ーー先代の記録ーー 「いやだなぁ、父上、母上。 僕が可愛い妹を害すると本気でお考えで?」 [旅に出る5年前。 普段は領域で暮らして 遊んで 仕事をしている己は、珍しく篠花本家へやってきていた。理由はそれほど難しくない。“両親”へ許可を取りに来たのだ。] (*75) 2022/01/22(Sat) 14:45:41 |
【赤】 先代“小雪” 篠花「確かに眞澄はとても可愛いし、いい子だし、 どこぞの馬の骨にやるものか、とは思いますが。 だからと言って手籠めにしようだなんて、流石に。」 [いつもの巫山戯た調子で答えるも、どうやら二人には冗談が伝わらないらしい。 心の余裕がないってのは嫌だね。] (*76) 2022/01/22(Sat) 14:46:09 |
【赤】 先代“小雪” 篠花「兎も角。眞澄は今後、僕の家に蛍として住まわせますから。 蛍に付かせた方が仕事を覚えやすい、 というのは納得していただけたのでしょう? なら、問題はありませんよね?」 [いつも通りの笑顔を浮かべ、尋ねる形を取って入るが、本来2人には拒否権はない。 わざわざ許可を取りにきたのは、とりあえず筋は通しておこうと思っただけで。 あと、取らなかったら眞澄が帰ると言いかねないから。] 「それじゃ、預かりますんで。 認識だけしておいてください。」 [僕はそう言って一方的に話を切ると、荷物を持って家を出た。 ーー結局、出された 毒 には手を付けないまま。] (*77) 2022/01/22(Sat) 14:47:02 |
【赤】 先代“小雪” 篠花「は〜い! 眞澄ちゃんに報告がありまーす! 今日から本格的に仕事を教えるため、 蛍になってもらいまーす! 号は末候の橘始黄ね♡」 [領域に着いた僕は扉を勢い良く開きながら、そんなことを言い出したからだろうか。 優秀な蛍と妹は「いきなり何いってんだこいつ」って顔をした。お兄ちゃん、ちょっとかなしい。] (*78) 2022/01/22(Sat) 14:47:54 |
【赤】 先代“小雪” 篠花「ほらー、今までもちょっとずつ仕事を教えてたけど、 眞澄も15になったしさぁ? そろそろ本格的に教えておこうかなぁって! それには弟子より蛍の方が色々権限あるし、見栄えもあるからさ! 肩書があれば小娘って侮られることもなくて楽かなって!」 [本家分家の老害共が何言ってくるかわからないし。 こうしておけば、ひとまず僕の名代として立場は成り立つ。] (*79) 2022/01/22(Sat) 14:48:33 |
【赤】 先代“小雪” 篠花「父上母上にはすでに了承を取ってありまーす☆ あ、風見家には何も行ってないけど、許可くれるよね? 君、当主だったもんね? 朔風払葉くん?」 [風見家の蛍に尋ねている形だが、やはりこちらも答えは聞いていない。否と言っても押し通す気だった。 まあ多分信頼するこの蛍は断らないとは思うけど。 妹には、事後報告じゃなくて事前に言って。って怒られちゃった。てへ。 それでも諦めた顔で了承する辺り、また突拍子もない僕の思いつきだと思ってくれたかな?] (*80) 2022/01/22(Sat) 14:48:50 |
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