【人】 帝王学部3年 ヴィルヘルム[ 学園生活は飛ぶ様に過ぎて逝った。 そう感じるのは濃密な日々の所為か、 疾く去れと秒針に向かって吼えたからなのか。 ] [ 何れにせよ、彼女の居ない季節は少し色褪せて、 再び零れ花の時期を迎え、終わりを意識する頃には 学び舎を懐かしむ想いもいつの間に消えていた。 ] (25) 2020/11/28(Sat) 23:06:26 |
【人】 帝王学部3年 ヴィルヘルム( ……あんな物は、 未来が無いから終わらせてくれと 自ら明かしている様なものだ。 ならばお前は何故に戻れない路を征く? 其れ程迄にお前を突き動かす訳は、 ) [ 其れが■■であると気が付けないのは、 或る意味では幸運だったのかも知れない。 ] (26) 2020/11/28(Sat) 23:06:49 |
【人】 帝王学部3年 ヴィルヘルム[ 誰かに激しい執着を注がれては息を奪われる日も、 誰かにしがみ付いては温もりの分け合い方を教わる日も、 隣から寝息が立てられるのを聞き取れば 決まって同じ人物の行方を思い浮かべた。 ] [ 歪んだ執心と、真心による献身の違いは 二人と関わっていれば次第に判るもの。 遊びでは済まされない行為に火傷を重ねながら、 恋 慕と博愛 の相違を学ぶ。 ]( 盲愛の火に飲まれる前に身を引き、 それ以上燃え広がらない様に振る舞う。 未知である仁慈の施しに慣れる頃には、 それが夫婦の間にある様な物とは異なると知れた。 ────人心掌握と処世術を身に付け、 知りたいものを欲のままに得る為に 上手く立ち回っていたつもり。 ) (27) 2020/11/28(Sat) 23:07:42 |
【人】 帝王学部3年 ヴィルヘルム[ 妄 [ 気心知れた仲だとばかり思い込んでいた白の王子を 情欲に狂わせてしまったのが自分だと云うのなら、 とどめの銃爪を引いたのも己に違いなかった。 柔らかな笑みの裏に隠したものを暴いてみたいと、 好奇心から踏み込んでしまったこの過ちは 未だ薄く残る縄の痕と花の残り香に代わる。 ────其れでも、心までは渡せない。 だから何も告げずに去った。 ] 演じた [ 獅子は演目の末に冷酷無比な暴君に成った。 ] (28) 2020/11/28(Sat) 23:08:12 |
【人】 帝王学部3年 ヴィルヘルム[ 深い 海 [ 唯一恐れたものと言えば、 何かを得てこれまでの自分より弱くなってしまう事。 空の器に仁愛を溢れんばかりに注げば脆くなる。 其れを乗り越えて抱き締め方を知ったからこそ、 自分の居場所は此処ではないのだと強く思えた。 与える先 ────『ありがとう』で正解だったのか、 正直今もよく分からないまま。 ] [ 愛されなかったこどもは得た知識と共に飛び立った。 ] (29) 2020/11/28(Sat) 23:08:36 |
【人】 帝王学部3年 ヴィルヘルム[ 己はこれから学友をも殺す。 教師を手に掛ける事だって有り得る。 報復の為に死ぬと解っている闘いへと赴き、 英雄となり────そして死ぬのだ。 ] ( 近い未来に起こりうる事実を話したのは一人だけ。 己が戦を巻き起こした事もいずれは耳に届くだろう。 だからお前達は「今は」何も知らなくていい。 初めから遥けき星屑に過ぎなかったのだと、 嘆息の儘に────老いて逝け。 其処に悲哀を背負い続ける様なことだけは あってはならんのだ。 ) [ 悪役になるからには、飽くまでも解り合えぬ存在として 使命に生き、生涯を捧げ、必ず最期には滅びよう。 ] [ “だからどうか誰も引き止めないで” 正門を去る背はそう語っている様に見えただろう。 ] (30) 2020/11/28(Sat) 23:09:36 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム[ ────花など受け取った所で副葬品になる様なものだ。 解っている筈なのに、同級生にも在校生にも さんざ揉みくちゃにされて贈り物に埋もれた。 静かに過ぎ行く充実した日々に 何もかも忘れて閉じ篭っていたいと思ったのは、 二年生の頃までの話。 ] [ 砂時計は逆さには昇らない。 ] [ 既に自分の闘いに身を投じているであろう者に、 腑抜けた姿は見せられんと、一年振りの花道を踏む。 門を過ぎれば立っているのは暴虐の王だ。 そう念じながら 愛した 学び舎を後にした。 振り返ることはもうない。 ]* (31) 2020/11/28(Sat) 23:10:11 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム[ ────アーレンベルクもその例外でなく。 血の禁術に悪魔との契約、 生まれ落ちた時より背負った使命に 死後の振る舞いでさえ異邦の存在に委ね…… 生殺与奪を投げ打って尚、 故国に戻って初めに果たすべき役目は決まっていた。 ] [ 即ち、父帝の 殺 害。帝国の命運を握る皇子は玉座に上がる時機を 意のままにする事さえ出来た。 命を刈り取り、力を得ることで戦支度は整う。 帰国して直ぐ行うと決めていたのは、 還御の報せが冷めぬ内に民を焚き付け 士気を保ったまま火蓋を切り落としたかったから。 ] (39) 2020/11/29(Sun) 2:26:38 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム( 人殺しも初めての経験ではない。 剣で兵を殺す方法なら十の頃、罪人を練習台に教わった。 大将であり、最も強力な駒で在るべき『王』は 血を見ることを誰より早く知っておかねばならなかった。 王とは象徴だ。そして同時に兵器でもある。 国の治め方をありとあらゆる視点で習ったが、 どれも空虚な教典の様に記憶からすり抜けた。 父と己とではまるで本質が違うと知っていながら、 殺して奪う事には……一抹の不安が存在した。 ) (41) 2020/11/29(Sun) 2:27:41 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム[ 少年は剣を取る。 新たな王に相応しい佇まいで陽の光に其れを翳す。 抱いたあらゆる雑念を振り払おうとする様には、 まだ僅かに幼さと未熟さが混ざっていた。 咎人でも、魔女でも、平民でもなく。 誰より神聖な存在である実の父は、 同時に運命に呪われた子を生み出した張本人で。 ] ( ……この路を恨んだ事は無いが、 選択肢などあってなかったようなもの。 “自身で選んだ”などと宣えたのは 俺の見栄か、或いは恐れからだったのか。 今となってはもう分からないが、 この瞬間、確かなのは──── ) ──────── 父上、 (42) 2020/11/29(Sun) 2:28:10 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム栄光を掴み取ったその後──── 再び相見えるは地獄にて。 ( 我々はどうしようもなく、 業火に灼かれるべき人殺しだと云うこと。 ) (43) 2020/11/29(Sun) 2:28:41 |
【人】 仇討王 ヴィルヘルム[ 僅かに横に『ずれた』果実は、 重力に従って滑り落ちようとする。 重い剣を庭園の床へと放り捨てて、 代わりに蜜を零す赤い実を胸に受け止めた。 新皇帝の足許には切り倒された木が横たわり、 その洞から同じものを垂れ流していた。 ] ( 何を言い立てた所で 我々が殺人者なのは明白だとしても、 この 業 は神にさえ裁かせはしない。 ) (45) 2020/11/29(Sun) 2:30:32 |
【人】 仇討王 ヴィルヘルム[ 刀身を伝う雫を振り払う。 平原は赤く染まり、立ち開かる者は全て斬り殺してきた。 かつての学友。見知った顔。 家を継ぐ為に生家に戻り、戦に駆り出された者達。 打ち拉がれるものも、心悩ますことも最早存在せず。 ] [ 見えない痛みばかりが降り積もっていく。 ] [ 未熟な若者を殺した。肉盾紛いの老兵を殺した。 奴等が戦支度など出来ていなかったのは明白だった。 その上で、退かぬならば討ち滅ぼすのだ。 汚泥と化した大地に屍を積み上げ、 必要とあらば 灼 表面上の平穏を長年貫いて来たこの大陸に、 これ以上ない程の巨大な篝火を上げる。 ] (67) 2020/11/29(Sun) 17:14:14 |
【人】 仇討王 ヴィルヘルム我が民よ Brabant! 篤と視よ。之こそがお前達の拝する力。 幼帝に始まる暗黒の時代の幕を引く者の姿だ。 お前達は再びの栄光の先駆者となる。 我が祖先を屠りし雨を晴らさんとする者達よ、 其の御旗を、武器を、天に掲げるが良い! 『 我々は必ず借りを返す! 』 (70) 2020/11/29(Sun) 17:15:54 |
【人】 仇討王 ヴィルヘルム[ 血のような瞳に映り込んだのは、 城壁を焦がしてゆく無数の焔。 誰もが天を仰ぎ其れを見詰めた。 斯くも怨みとは激烈であるか、と。 対岸から黒煙が上がるのと同時、 眼前の橋は遂に降ろされた。 然れど望むのは交渉ではなく。 裏切り者の 命 を以て代価とする未来のみ!雄叫びを上げ、軍勢の先頭から境内へ流れ込む。 退路を切り開く為に現れた敵兵とぶつかり合い、 全ては燃え盛る戦場と赤い霧の中に消え行く──── ] (72) 2020/11/29(Sun) 17:17:05 |
【人】 仇討王 ヴィルヘルム[ 其れから幾許かして出された手紙。 小さく丸められた羊皮紙を渡鴉の鉤爪に括り付け、 小瓶に残された微かな魔力を道標に、空へ送り出す。 “Arryn” 『 白き鯉は獅子の懐にて灰へと変じ、 アズールの流れに揺蕩う薔薇の一欠片が 今は遠き故郷への路を報せるだろう 』 初陣から快進撃を重ね、兵を引き上げれば 次に攻め込むのは山脈に掛かる雪が融けた後。 暫しの休息であると示す様に。 ] ( ……何も変わりない。地図が少し塗り返されるだけだ。 其れを真っ先に伝えたかったのは待つ民でなく、 一足先に戦いへ身を投じた誰かだった。 返事は期待しておらなんだ。 故に復路の為の筆と紙を運ばせる事もせず。 )* (73) 2020/11/29(Sun) 17:17:33 |
仇討王 ヴィルヘルムは、メモを貼った。 (a1) 2020/11/29(Sun) 17:21:01 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ しろかねの翳りがその頸を 断 つ。 ][ 父帝に剣を振りかざしたその時とは異なり、 唾棄すべき謀反人の頭は石畳に転がり落ちた。 その髪を掴み上げ、戒めの様に掲げる。 断罪とは呼べぬ二百年越しの報復だったが、 獅子がその爪と牙で一つの貴族の全てを奪い 歴史から消し去ったのは確かだった。 ] ……生まれ落ちた其の日から、 欠かさず貴様の死を望み歌い続けたが 聴こえていなかったのか? 其れは遺憾だ。 (100) 2020/11/30(Mon) 9:22:04 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 騎士団長に渡された毛皮で懐剣を拭う。 刀身には焼き焦がされた血が硬化してこびり付いている。 切り伏せた刹那に命まで燃やそうとしたかの様だ。] 加え、俺の様な男はこの俺だけだ。 ( 俺で最期にすべきだ ) [ その眼が、主君の死を見届けた敵兵をなぞる。 恐怖に竦み上がり、思わず声を上げる者までいる始末。 だが、而して屠った無抵抗の羔などに価値は無く。 ] [ 出生から将来に至る生涯の全てを火に焚べた心には、 仇敵の言葉など最早何一つ届かない。 ] (101) 2020/11/30(Mon) 9:22:53 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム施しがあれば受け取るのは構わん。 だが、此方から要求する事は許さない。 奪い取るなど言語道断だ。 ────彼等は“今も昔も”余の民であるが故に。 ( 恐怖による支配を望んだ訳ではなかった。 とは言え、歴史書が其れを記す事はないだろう。 ……後の世など知った事ではないが。 ) (103) 2020/11/30(Mon) 9:24:01 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 添い遂げられないと知っていて選ぶのは、 他国からの協力を得られる可能性があったから。 政略結婚など幾らでも目にして来たが、 いざ当事者となっては誰の眼も直視出来ず…… 家柄も、容姿も、振舞いも考慮はせず 唯一人悲しむでもなく、一度たりとも俯かなかった 凛々しい横顔の彼女を選んだのだ。 ] ( 選ばれた者が幸運なのか不幸なのか、 其れすら確かめるには時間が足りない。) (105) 2020/11/30(Mon) 9:25:06 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム( 選ぶ立場でありながら、誰と向き合っていても 『何かが違う』と過去に思いを馳せるなど──── 図々しいにも程があるとは解っている。 其れでも、夫婦の務めは果たさねばなるまい。 ) (106) 2020/11/30(Mon) 9:25:43 |
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