【赤】 空虚 タチバナ[どこまでなら許されるのかを探るように、 少しずつ彼の身体に闇を這わせていく。 一生をかけても手に入ることのなかった 私だけを見てくれる目が、 いつ覚めてしまうのかと怯え、縋り、求める。 これまでの現実がありえないと否定しても、 彼が育んだ欲が恐怖も真実も塗り潰していった。 彼がこれまでの人生で知るのなかった特別を 命尽きるまで与え続けるのだろう。] (*22) 2022/08/14(Sun) 16:06:42 |
【赤】 空虚 タチバナ[もっと、心の内まで入り込んで あなたのすべての関心を奪い尽くしてしまいたい。 なんて、 口にしてしまうと、 あなたは未練なく旅立ってしまいそうだから。] (*23) 2022/08/14(Sun) 16:07:04 |
【人】 空虚 タチバナ─ 特別個室病棟 ─ [向かい合わせて一対ある二人掛けのソファは、 二十年余りの月日を考えれば十分しっかりしている。 電子レンジ>>114と同じく生者を招き入れる妄執が 異界化したこの場所を保っているのかもしれない。] みんな、お気に入りの場所があるから。 お気に入りというか、引き寄せられるの……かな。 [推定お金持ちの入院患者は喰われてしまったか 他に気になる場所でもあるのだろう。 しかし別の怪異が突然入って来てもおかしくはない。 ただ、今はどこか場違いにも聞こえる 電子レンジのぶうんという音だけが響いていた。] (120) 2022/08/14(Sun) 16:09:24 |
【人】 空虚 タチバナ[彼も好きだと言うナポリタンがテーブルに置かれる。 湯気の立つ様を見る瞳は、 この部屋を探索した時のように新鮮な色を乗せた。] ……。 [暫くは黙って彼の横顔を眺めていた。 彼に乗って見下ろしたことも 覆いかぶさる彼を下から見上げたこともあるのに、 ここから見るのは初めてだなと思った。 柔く齧りついた鼻筋や、瞬きする度に震える睫毛、 胸に穿たれた空虚にも触れた唇が 赤いソースの絡んだ麺を飲み込んでいく。 咀嚼して、嚥下して。 喉仏が鷹揚に上下する様子まで、すべて。] ……え? [故に彼のフォークがこちらに向けられた時>>114、 ピントを合わせるのに数秒を要した。] (121) 2022/08/14(Sun) 16:11:12 |
【人】 空虚 タチバナ[最初、その動作の意味を考えるように瞬きをして、 分かった後は迷いと戸惑いに唇を噛んだ。 確かめるように彼の方を見て、手元を見て、 意を決したように小さく口を開ける。 雛鳥のように餌を待つ姿からは、 彼の問いにすら答えなかった頃とは違う 従順さのようなものが覗いているだろう。 彼が私だけの獲物であるように、 私は彼の内を埋め尽くす存在になるのだから。 あなたにとって私がとびきりおいしくなるよう 感情ひとつひとつを捧げていく。] (122) 2022/08/14(Sun) 16:11:34 |
【赤】 空虚 タチバナ[フォークから一房解いて口に含んでは見たが、 残念ながら味はよく分からなかった。 飲み込み切れない物体が口腔内に居座る。] ん……。 [蝶が花に吸い寄せられるように唇を合わせた。 途端、彼の感じた味が僅かに染みた気がする。 いつか、もっと彼の中まで入り込んだら 味を思い出す日も訪れるんだろうか。 それは満たされる日が近いことに他ならないけど。 口の中の物を咀嚼するためか、彼の唇を啄むためか、 食事でもしているような口づけを贈った。] (*24) 2022/08/14(Sun) 16:12:12 |
【赤】 空虚 タチバナんぅ……ふふ。だいじょうぶ。 ここに叱る人は……誰も、いないから。 [そう、誰も。私を許してくれない人はもういない。 あなたの願いを阻む人もいない。 戯れの合間、離れた唇から擽るような返答をして。 食事の邪魔をすると理解しつつも首に腕を回し、 おかわり≠ねだった。]* (*25) 2022/08/14(Sun) 16:14:16 |
空虚 タチバナは、メモを貼った。 (a33) 2022/08/14(Sun) 16:19:51 |
【赤】 空虚 タチバナ[戯れに啄む甘い口づけは深いものへ変わっていく。 甘酸っぱいソースは瞬く間に彼の舌に攫われて、 恐怖も不安も痛みも全部彼に塗り替わってしまった。 腹の底から湧き上がる何かが全身を駆け巡る。] ぁ……、 うん。 [彼の手からフォークが離れるのを横目に見ていた。 今、その手は自身を横たわらせるためだけにある。 仄暗い悦びが目元を溶かし、笑みを滲ませた。 右手を持ち上げ、彼の方へと伸ばす。] (*35) 2022/08/14(Sun) 23:14:44 |
【赤】 空虚 タチバナ……おいしそう、だったの。 [穴がないか確かめるように彼の顔へ触れようとした。 行為においしそうが何を指すかも伝わっただろうか。 本来持ち得た、あるいは当時出せなかった幼さも 彼の前では隠すことをしない。 時折様子を伺いはするも、 彼が嫌がる素振りを一切見せないものだから、 満ちる日を遠ざける努力が泡になってしまいそうだ。 甘えも、妬みも、怒りも悲しみも、恨みさえ、 己の持つ何もかもを彼に注ぎ、爪痕を立てる。 希薄さなんて一度だって感じさせたくない。 顔を確かめた手は、彼の左胸へと下りる。] (*36) 2022/08/14(Sun) 23:14:54 |
【赤】 空虚 タチバナ[上から順にボタンが外れ、 ワイヤーすら入っていない簡素な下着が現れる。 何もかも無気力だったあの頃、 不幸にしてしまった家族から与えられたものだ。 死んだ時の形がそのまま残っているのか パジャマ同様左胸に穴が空き、 左の肩紐は今にもちぎれてしまいそうだった。 問うように彼の名前を呼び、反応を見る。 少し迷うような素振りを見せた後に 鎖骨の辺りまでずり上げることにした。] ……ぜんぶ? [真白く、冷たい肌が露わになる。 心臓の位置にはぽっかり穴が空き、 背中に敷かれたパジャマの白が覗いている。 そのせいか左胸のボリュームは右より劣り、 仰向けなこともあってなだらかなラインを作った。 右もまた決して大きい訳ではないが、 女性らしいふくらみが顔を覗かせている。 その肌が熱を帯びることはない。ないはずだ。 それなのに、彼の眼前に晒された二つの蕾は 淡く色づくように存在を主張していた。] (*38) 2022/08/14(Sun) 23:16:26 |
【赤】 空虚 タチバナ……ぁ ッ、 むすぶ、 や、 [肌を顕わにする度、褒めてくれるかのように 彼のてのひらがあちこちを撫でていく。 それに対する反応すら、灯りの下、 彼の視界にすべて曝け出してしまい、 恥じらいに何度か身を捩らせた。 けれど、ベッドよりも狭いソファでは限界がある。 彼の手から逃れることなど不可能に近かった。 結局ふれられ、なでられ、ふるえてないて。 彼に言われるがままに腰を持ち上げる頃には 食べ頃の肢体が出来上がっていたことだろう。] (*39) 2022/08/14(Sun) 23:16:41 |
【赤】 空虚 タチバナ[彼がシャツを脱ぎ捨てたところまでは覚えていたが、 いつの間にか彼もすべてを曝け出していた。 力の抜けきった表情で彼を見上げる。 細身だろうか。肌も生者にしては白いように思う。 比較対象のほとんどが己に怯える人間ばかりだから 正確なところは分からない。 それ以上を考える前に、 最後の布が取り払われる感覚に意識を戻した。] ……あっ 、あ [温度のない太ももに、何かが触れる感覚がした。 すっかり出来上がった身体は蜜を滲ませており、 離れていく布に引いた糸が肌を濡らしたのだ。 彼の掌が下腹部に振れる。>>*31 いつかの自分と同じように。>>22 こぷりと溢れた蜜がひと掬い、足の間を伝う。 目にすることはできないが、 普段より白く濁っていることは想像に容易い。 彼の掌の下で、奥がきゅうと締まるのが分かった。] (*40) 2022/08/14(Sun) 23:17:19 |
【赤】 空虚 タチバナ[死の甘い香りを彼に浴びせる余裕もなかった。 植えつけた種≠熏。はまともに機能しないだろう。 それなのに彼がここまで貪欲に求めてくれるのは この地に溜まり切った怨念や淫欲のせいか。 あるいは、] ――ん、 [何度だってキスをした。何もかも足りなかった。 彼の唇が離れると、喉を寂しそうに鳴らす。 しかし、下へ辿るように唇が滑るのを感じれば、 感じた肩を跳ねさせることしかできない。] あ…… ぅ そこ、 [淡い蕾を二つ咲かせた胸元は期待に震えていた。 空虚な穴ではなく、放置された食事でもなく、 白い膨らみに彼の口が吸い寄せられる。 唇で柔く食まれると、それだけで背がしなった。] (*41) 2022/08/14(Sun) 23:17:42 |
【赤】 空虚 タチバナあっ ぁ、 あ ……ッ [うれしい。きもちいい。もっとほしい。 彼に対する欲望で頭がいっぱいになる。 ひんやりとした両腕で彼の頭を掻き抱いた。 頭頂部に顔を押し当て、口端から甘い声を漏らす。] ね、 ぁっ、 むすぶ 、 [自分の知る、彼の唯一のこと。彼の名前。 求める時も呼ぶ時も願う時も唱える、 一生を超えてたったひとつの響きだ。] (*42) 2022/08/14(Sun) 23:18:05 |
【人】 空虚 タチバナ[目に見える変化はないだろう。 けれど、 もし彼らが望む未来を阻む悪意があったなら。 たった一度だけ、 細く広がる闇が脅威を引き裂くかもしれない。 それは誰かを攫った女の黒く長い髪に、 ほんの少しだけ似ていた。]* (150) 2022/08/14(Sun) 23:27:30 |
(a43) 2022/08/14(Sun) 23:33:10 |
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