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【人】 ヨシュア…… コスモス、ありがとうございます。 花瓶に生けるだけの世話しかできませんが。 美しく咲いてくれています。 [ 思い出したように、話題にしたのは。 先日渡された真っ白なコスモス。 流石に生花と共に国を渡ることは出来ないので。 彼女はハイアーム家に置いてきてしまったが。 種子の方はおそらく、上着のポケットに入れたまま。 細く繊細で、魔法使いのような指を持つ彼女とは違い。 自分では、何処まで世話ができるか分からない。 それでも新しい土地で、また巡り会えるのを願って。 ] (24) 2020/09/27(Sun) 11:49:40 |
【人】 ヨシュア素敵な出会いをありがとう。 どうか、これからもこの国で。 人と花との出会いを繋いで下さい。 [ 最後にそう告げたなら、目を合わせたまま。 あとは一本一本、丁寧に。 繋がった指を解いて行った。 ]** (25) 2020/09/27(Sun) 11:49:49 |
【人】 ヨシュア…… 何故貴女がここに? しかも、そのような身体で。 [ 問う声は冷ややかで、 これまで見せたことのない鋭利な眼差しで 射抜く視線と対峙する。 ] ご自分の立場を理解していないわけでは ないでしょう? [ ただでさえ病弱な上。 非道い乱暴を受けたばかりの身体。 屋敷で安静にするべきだったと。 責めるような声で音を紡ぐ。 彼女は貴族だ。 崇められ、民の為に、その身を捧ぐ存在。 その御身を守ることを責としている者とて、 決して少なくはないのだ。 ] (39) 2020/09/27(Sun) 13:19:49 |
【人】 ヨシュア………… と、このようなお小言。 今の私には、言う資格がありませんが。 [ 時に耳に痛い言葉を入れるのも、臣下の役目。 しかし今の自分は、その立場にいない。 ならば。 ] その意味が、お分かりですね? アメリア様。 [ 貴女にも、己を止める資格はないのだと。 逸らさぬ眸で告げる。 彼女が何故このような無茶をしたのか。 その心情は理解できるし、有り難いとも思う。 それでも、今の自分が彼女の元に戻る事。 正しいとは、どうしても思えなかった。 ]** (40) 2020/09/27(Sun) 13:20:32 |
【人】 ヨシュア…… それこそ、勿体ないお言葉です。 [ 語る言葉に耳を傾け、頭を下げる。 自身の主人であると言う贔屓目を抜きにしても アメリア・コンタータ・ハイアームは 心優しい少女だと思う。 その澄んだ心根で、 一人でも多くの民に寄り添って貰えればと思う。 願わくば、…… 可能な限り長い生と共に。 ] (41) 2020/09/27(Sun) 15:01:36 |
【人】 ヨシュア───っ、アメリア様! [ ふらりと傾く身体。 弾かれたように駆け寄り、抱きとめる。 閉ざされた睫毛。 それでも、口元が呼吸するのを確認すれば、 安堵の息を吐いて。 意識を失った彼女を抱え、部屋に運ぶ。 これまでは、自分の役目だった。 しかし、今はもう違う。 この身は、アメリア様を傷付けた。 ] (42) 2020/09/27(Sun) 15:03:39 |
【人】 ヨシュア[ 自身が教会の腐敗を匂わせなければ、 アメリア様が調査に乗り出し、 結果、拐われる事も、辱めを受ける事もなかった。 男は、主君を守るどころか、 その心と身体に消えない傷を負わせたのだ。 本来なら、その身に触れる事すら許されない。 隠れた翡翠に、祈るように囁く。 ] さようなら、アメリア様。 ええ、貴女のことは決して忘れません。 だからどうか、私のことはお忘れください。 そして、輝きに満ちた生を御送りください。 (43) 2020/09/27(Sun) 15:06:19 |
【人】 ヨシュア[ 場には成人した男子が複数いた。 他国の王子であるとは想像が及ばぬとも、 アメリア様の同行者であるし、 身なりから、地位も保証された者だろうと判断する。 その中の一人に、 両の手でアメリア様を抱えながら、近寄って。 ] お願いします。 どうか、アメリア様をハイアーム家のお屋敷へ。 [ 無事、彼女を託せたのなら。 黙って頭を垂れた。 ]** (44) 2020/09/27(Sun) 15:07:16 |
【人】 ヨシュア[ しばらくして、事もなげに口にする。 ] コンセールカリヨンは豊かな国ですが。 私のような人間には、少々肩身が狭い。 解雇されたのを機会に、見聞を広めようと。 [ 嘘でもないが、本当でもない。 そういった戯言には慣れている。 言うべきことは言ったとばかりに。 後は黙して、解除を待つ。 初対面であるはずの男。 心の内を見抜かれる道理はないと思うが、 果たして。 ]** (47) 2020/09/27(Sun) 17:17:33 |
【人】 ヨシュア…… 綺麗な声ですね。 俺は歌はあまり好きではないのですが。 貴女の歌声が持つ力くらいは、わかります。 [ 薄闇の中、顔を伏せる少女。 どのような表情をしているのか、 此方からは窺い知ることはできない。 男もそれを確認することなく、 ただ、奇譚のない感想を口にする。 ] (56) 2020/09/27(Sun) 23:33:53 |
【人】 ヨシュアコンペには出場されたのでしょう? では、どうか今すぐお戻り下さい。 そして貴女にふさわしい賞を受けて下さい。 [ 審査員の中には、メイレン・シュレグマーがいる。 彼女がこの才を見逃す可能性など 最初から考慮していない。 ならば彼女がいるべき場所は、ここではない。 ] エヴィ嬢。 私にとって歌は、忌むべきものです。 しかし貴女にとっての歌は、紛れもなく力です。 その力でどうか、貴女自身と、貴女の大切な人。 そしてまだ見ぬ誰かを救ってくれるのなら。 俺は……、とても嬉しく思います。 (57) 2020/09/27(Sun) 23:35:39 |
【人】 ヨシュア[ 目を細めて、微笑めば。 顔を上げて、此方に向ける相貌を 見せて貰えただろうか? 叶わなければ、多少残念に思うくらい。 ] …… これから先、アメリア様には、 一人でも多くの味方が必要です。 もし貴女が彼女の隣にいてくれるのなら。 これほど、心強いことはありません。 [ 最後に、そんな我儘を添えたなら。 別れの挨拶は既に済ませた。 彼女に贈るのは、別の言の葉。 ] (58) 2020/09/27(Sun) 23:36:49 |
【人】 ヨシュア─── [ 一人になったのをいいことに。 小さく、息を洩らす。 それから口を開けて、声帯を震わせ。 遠い、空の彼方へ響かせようと ───、 ] (88) 2020/09/28(Mon) 13:26:38 |
【人】 ヨシュア[ …… そんな思い出も、 いつかは過去の一幕として風化されるのか。 再びこの地を踏む日が来るのか。 未来を見通す目を持たぬ男には、わからない。 できるのは、これから進む道を、 真っ直ぐに見据えるだけ。 ] …………。 [ やがて閉鎖も解除される。 方向を確認しようと、顔を上げ、星の位置を確認し、 そして、気付く。 何処に行くのかも、決めていない。 ] (90) 2020/09/28(Mon) 13:28:47 |
【人】 ヨシュア[ 進むのは、宮廷とは正反対の、 しんと静まり返った薄暗い道。 見送る者のない後ろ姿。 その旅立ちを見守るように。 一つの星が、尾を引いて落ちて行った。 ]** (92) 2020/09/28(Mon) 13:30:12 |
【人】 ヨシュア── epilogue ── [ とある午後の日。 仕事の待ち時間。今のうちに一息つこうかと、 巣に帰る鳥達の声を聞きながら 窓に近い椅子に腰を掛ける。 途端、鼻腔を擽る甘い匂いに すん、と鼻を鳴らす。 どうやら、誰かがクッキーを焼いているらしい。 ドアの隙間から漂う香ばしい焼き菓子の香り。 それと同時に頭の中に響くのは、かつての自分の声。 ] “ …… お見事です、お二方。 よければそのクッキーは、メイド達にもあげて下さい。 お嬢様達に仕事を取られたと、拗ねていましたよ。 ” (297) 2020/09/30(Wed) 15:53:33 |
【人】 ヨシュア[ 程なくしてヨシュア、と呼ぶ声に、 伏せていた瞼を動かす。 クッキーを焼いていた誰かの正体は直ぐに知れた。 階段を上って現れたのは 狐色に焼き上がった菓子を持った 同僚の、少し変わった名前を持つ女性。 眸を細めた悪戯っぽい笑みで、クッキーを勧める姿は、 如何にも何か企んでいそうだが。 何のことはない、彼女が愛しい恋人へ贈る手作り菓子。 その毒味役を申し付けられたのだ。 …… 多くは知らないが、同僚は複雑な出自を持ち、 現在も多くの負債を抱えているようだが。 恋人との出会いは、 朴念仁である自分にもはっきり分かるほど、 彼女に良い影響をもたらしたようだった。 断る理由もないので、一つ摘んで。 バターの香りと、サクッとした歯触りを楽しめば、 どう?と、評価を求める眼差しに。 ] (299) 2020/09/30(Wed) 15:55:05 |
【人】 ヨシュアええ、そうですね。 とても……美味しかったですよ。 [ 何で過去形なわけ? 訝しげにこちらを見つめる眼差しに詫びると 慌てて、回らぬ口で感想を伝えた。 ] (300) 2020/09/30(Wed) 15:55:20 |
【人】 ヨシュア[ この男は当てにならない。 彼女は早々に男に見切りをつけたようで。 椅子を引いて腰かけると、 自らもクッキーを口に放り込み始めた。 しかし直ぐに退屈になったらしく。 胸元の星屑のネックレスを揺らしながら、 座ったばかりの腰をあげて、窓際のラジオをつける。 若干のノイズを拾った後。 古い小さな箱が流すのは、 生きとし生きる者、その全てを魅了するような、 穏やかで美しい旋律。 思わず顔を上げるとぱちり、一つ瞬いた。 そんな男の様子には気付かず。 彼女ははしゃいだ声で、最近近隣諸国で有名な 新進気鋭の歌姫の曲だと教えてくれた。 そのあと直ぐに何かに気付いたように、 はっと口を閉ざす。 …… どうやら以前、 自分は歌があまり好きではないと告げたことを 思い出したようだ。 慌ててラジオを消そうとする後ろ姿に、 首を横に振る。 ] (301) 2020/09/30(Wed) 15:56:05 |
【人】 ヨシュアそのままで大丈夫ですよ。 俺もその曲は知っています。 良い歌ですよね。 [ 本当に〜?と、疑わしい目でこちらを見た後。 ならばとばかりに、意気揚々と 仕入れたばかりの情報を披露してくれた。 その歌姫がどんな境遇から、その栄光を掴んだのか。 窮地の彼女に手を差し伸べた、 美しく聡明な貴族の令嬢とは、 今も身分を超えた友情を結ばれていることを。 ] (302) 2020/09/30(Wed) 15:56:51 |
【人】 ヨシュア[ 亜麻色の髪を揺らしながら、 クッキーを頬張る横顔に小さく頷いて。 ゆっくりと顔を動かし、窓から外を見れば、 小さな花壇の中で、風にそよぐコスモス達。 その白い花弁を照らすように、 いつか見た空に似た、茜色が広がっていた。 ] …… ご立派に、なられましたね。 [ 彼女達なら大丈夫、いつかのクッキーのように。 二人で力を合わせれば、 どんな困難でも成し遂げられるだろう。 ] (304) 2020/09/30(Wed) 15:57:30 |
【人】 ヨシュア[ 小さく呟いた後。 夕の陽を受けた鮮やかな オレンジ色 の空を、もう一度見上げて。 男は口元で笑みを浮かべると、 眩しそうに眸を細めた。 ]** (305) 2020/09/30(Wed) 15:57:40 |
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