【人】 九朗[あちらへふらふら。 こちらへふらふら。 風に舞う薄紅の花弁のようにとめどなく、人の流れに流されて。 気づけば淡い色の金平糖が荷物の中に増えていた。>>23 それでも堀之内の端から端まで歩いていれば、いつかは薄墨神社の石段前に着くというもの。 長い石段のふもとに探していた褐色髪の長身を見つけて、九朗は荷物片手に手を振った。] あぁ、居た居た。 探しましたよ。 [探していたのは事実なのだが、一二三はあきれた顔で「探したじゃねぇだろう」と肩を落とした。 だがまぁ、十分に祭りを堪能している様子の九朗を見れば、一二三でなくともそう言いたくなるだろうか。] (30) 2022/04/14(Thu) 22:47:00 |
【人】 九朗やだなぁ、ちゃんと探してましたよ? あ、喉かわきました? 一二三の分もお茶買ってありますよ。 [そう言って買った荷物の中から、封を切っていない竹筒の茶を渡す。 一二三はいくらだった?と言いながら受け取ったが、九朗はいいよと首を振る。] そういえば、途中で澤邑のおじさんに会いましたよ。 子猫を飼い始めたと聞いたんですが、随分かわいくて。 [ご隠居の腕に抱かれてすやすやと眠る子猫の愛らしさを思い出し、口元へ手を当ててくすりと微笑んだ。*] (31) 2022/04/14(Thu) 22:47:29 |
【人】 九朗[そういえば縫いぐるみに着けるリボンは買ったのか?と尋ねる一二三に、九朗はまだと首を振る。] どうせなら社務所の飾り紐をと思いまして。 それにしても一二三、よくここで待ってましたね? 待つなら神楽殿の前の方が確実だったでしょうに。 [そう九朗が疑問をそのまま口にすれば。 一二三は飲み終わった竹筒に栓をしつつ、なんでだ?と真顔になった後で 「九朗が俺の前を歩いてたんならはぐれるはずもねぇし。 だったら俺の後ろを歩いてたんだろ? じゃあ石段の前で待ってりゃいいじゃないか」 と答えたので、今度は九朗の方がぽかんとした間抜け顔になった。] (36) 2022/04/14(Thu) 23:09:26 |
【人】 九朗それはつまり… 後から私が来るって、 分かっていたからここで待っていたと? [確かに神楽殿のある境内に入るにはこの石段を登らなければならない。 神楽目当てで混むだろう境内や神楽殿周辺ではぐれた相手を探すよりも、一本道の石段前で待つ方がよほど確かだ。 ただしそれは、相手がすでに石段を登って神社の境内に入っていないことが前提なわけで。] まったく… あなたには敵いませんね、本当に。 [実際一二三の後ろを歩いていたのは確かだが。 一二三の言い方では前を歩いていたなら見失うはずがないと明言したようなものだ。 言った男自身にその自覚があるかどうかは別として。 …いや、恐らくないのだろう。 竹筒を懐にしまい、シンプルな杖を手に取る一二三に、九朗はこの人たらしめと内心で悪態をつく。]* (37) 2022/04/14(Thu) 23:09:38 |
【人】 九朗[さぁて、そろそろ上がるかと。 石段の先を見上げる一二三に、九朗もそうですねと頷いて。 神が通る中心を避け、人の流れに沿い石段へ向かう。 出店で買ったあれやそれやを抱える九朗と。 自前の杖を手に歩き出す一二三。 その姿に今度は隣へ並び立ち、自分より頭半分は高い位置にある顔を面越しに見上げる。] 肩、貸しましょうか? [それに一二三は否と言いかけ。 散る桜の花弁を視線で追った後、からりとした顔で「頼むわ」と笑った。 石段のひとつを登る度、杖の先が石段を叩くこつりという音がする。 草履が静かに石段を踏むたび、祭囃子や人のざわめきに紛れて発条が重心の移動を補助してきしむ音がする。] (47) 2022/04/15(Fri) 0:06:27 |
【人】 九朗[一二三に合わせた歩みはゆっくりとして、 四歩、五歩、六段、七段 ―――― 数えることを忘れた頃に長い石段が終われば、朱塗りの鳥居と、白と見紛うばかりに色の薄い花弁がしっとりと重なり枝垂れ咲く、櫻の古木が二人を出迎えた。>>9>>25 そろそろ神楽が始まる時間だろう。 場所が悪くてよく見えなかったでは、後で姪にへそを曲げられてしまうかもしれない。 そうなれば布団に籠って全力で怒りを主張した、幼いころの妹再来である。 借りていた肩から手を放し。 正面は無理でも、姪の舞う姿が見える位置が空いていればいいですねと互いに言いあいながら、二人の歩みは神楽殿へ向かう。**] (48) 2022/04/15(Fri) 0:06:43 |
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