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【人】 小泉義哉[戸の隙間から、まっすぐな陽光が差し込んでいた。>>17 部屋も日常とつながったようだ。 ぐちゃぐちゃになった部屋着を身にまとい 「ジャングルだったらまたこの部屋に戻ろう」と笑いながらも 一抹の不安を胸に戸を開けると、 柔らかな木漏れ日が、二人の顔に降り注いだ。 さわやかな若葉と土の香りが吹き抜けて 部屋にこもった隠微な空気を清めていく。 ジャングルとは言わないが、つながった先は林だった。 戸から首を伸ばしてあたりをうかがってみるに 自分たちは古い納屋のような建物にいるらしい。 どうやら正門ではなく、裏口の戸を開けているようだった。 といっても、この古びたちっぽけな建物の外観と比べ 出られなかった部屋の内部は明らかに広く豪奢で いったいどのように次元が歪んで この部屋につながっているのか 全く理屈がわからない。] (19) 2021/06/13(Sun) 8:53:48 |
【人】 小泉義哉……とにかく、外に出てみよう。 建物からして、ちゃんと日本ぽいし…… [ぎゅ、と香菜の手を握りしめると、 昨晩は溶け合ったはずの熱が ひんやりと冷めていることに驚いた。 ふわ、と素足のままに柔らかい土を踏みつけて 一歩、二歩と踏み出すと、背後で鍵のかかる音。 振り返ると扉など無く、ただ壁があるばかりだった。 その古びた木面には見覚えがある気がしたが その時は思い出せなかった。 何も考えずに歩きだすと、さっそく彼女が転びかけた。] あ……そっか、ごめん。 [ようやく自分の短慮に気付き、違う歩幅を合わせながら まだ痛みが残るらしい腰に手を回して ゆっくりと建物の表に回った。] (20) 2021/06/13(Sun) 8:55:54 |
【人】 小泉義哉[その時、雷に打たれたような衝撃が 脳芯から爪の先までを駆け抜けた。 今すぐに誓わねばならなかった。 古くからこの地に根付く 神々の住まうこの神社で。] (22) 2021/06/13(Sun) 10:45:13 |
【人】 小泉義哉香菜、 [つないだ手を両手で包み、気づけば恭しく跪いていた。 朝露を含んだ若葉が陽光を乱反射させながら香菜の頬で踊り 朝日を取り込んでますます活々と赤みのさした髪の毛は 少しもつれて汗ばんで額ぎわに貼りついていた。 自然、見下ろすような姿勢になった大きな美しい瞳が やわらかい木漏れ日ともに自分に注がれるのに見惚れていた。 その瞳に映し出される感情を読み取ろうとするうちに 男の目には哀願というよりも ある激しい感情の涙が薄く宿った。 男の心の中の一番奥深いところがけがされないまま ふと目から覗きだしたかのような光だった。] (23) 2021/06/13(Sun) 10:45:55 |
【人】 小泉義哉[名前を呼びながら、何から言えばいいのかわからずに言葉が詰まる。 雄弁な舌を持たぬ男は、たどたどしく ただごまかしのきかない強い想いを胸の奥から拾い上げた。] その……俺、本当に詰まんない男で。 傷つけたいとか、そんな気持ちは全くなくても 今までだって、香菜を一人で苦しませてきたし、 順番もすっ飛ばして昨日みたいなことして、 さっきも、香菜の体がしんどいのとか頭から抜け落ちてて。 少し考えればわかるような人の気持ちを察するのが苦手で そういう能力があれば、 もっと香菜を傷つけずにすんだのにって思う…… [肌を重ねたとき、一つになったというあの陶酔は 一晩明けて日常に戻ってみれば ただ一夜の夢だったのだと突き付けられた。 同じものを食べ同じように美味いと言い 同じものを見て同じようにじっと見惚れ 同じものを聞き同じように耳を傾けていても 内に生ずるものは違う。 香菜と自分は、似通っている部分があっても 髪の毛一本に至るまで全く違う人間だった。] (24) 2021/06/13(Sun) 10:47:52 |
【人】 小泉義哉正直言って、それがすごく怖いんだ。 好きだから傷つけたくないって思うし、 俺と一緒にいることで傷つけてしまうなら、 無理して一緒にいない方がいいんじゃないかとも思う…… [これまでうまくいかなかった交際だって 決して敵意があって一緒にいたわけじゃない。 ただ、覚悟が無かったのだ。 だから少しでも陰が差すと、すぐに嫌になった。] (26) 2021/06/13(Sun) 10:50:04 |
【人】 小泉義哉だけど、香菜を傷つけても、俺が傷ついても それでも一緒にいたい。 香菜の好きなこと、嫌なこと、 俺自身も気づいてなかったうれしいこと、されたくないこと、 そういう一つ一つの経験と失敗を積み重ねて、 時々ままならなくて衝突しながらでも、 少しずつお互いの心地良さを探って 同じ時を共有したいって…… 我儘だけど、そう思うんだ。 [すべてを捧げたいのに、自分は何も持っていない。 道端に咲く一輪の花を手折ると 茎でくるりと輪っかを作り、彼女の左手の薬指に触れさせた。] (27) 2021/06/13(Sun) 10:51:09 |
【人】 小泉義哉[香菜。俺の愛しい香菜。 いつも見守ってくれた香菜。 いつも笑ってくれた香菜。 たくさん待たせてごめん。順番も道筋も出鱈目でごめん。 香菜がいくら傷ついていない、大丈夫だって言っても やっぱり俺はつい「ごめん」と言ってしまう。 どうしても不思議なんだ。 いつでも胸を張っていて、まっすぐ前を向いて、 頼りになる香菜が、うじうじした俺を選んでくれたのか。 家は、俺は香菜がいてくれればどこでもいいんだけど。 そうだな、香菜は陽だまりの中にいるのが似合う。 花のことだって何もわからないけれど たんぽぽとシロツメクサの季節になったら 家の中で、思い出話に花を咲かせたい。] (62) 2021/06/14(Mon) 21:24:21 |
【人】 小泉義哉[俺、結婚って夢とか憧れじゃなくて、 けじめだと思ってた。 だけど、あの神社の中で、朝日の下の香菜を見た時、 朝目覚めた時に隣にいてほしいし、 夜寝る前に会話をするのも香菜がいい。って…… それが叶うなら、これ以上の幸せは無いって…… そう、気づいたんだ。 俺の奥さん。プロポーズを受けてくれてありがとう。 願いを聞き入れてくれてありがとう。 「今更たんぽぽサラダで満足できる?」なんて冗談言ってたのに ささやかなたんぽぽの指輪を受け取ってくれた香菜。 欲を言えばもう一つ、甘えさせてくれないか。 見たいんだ。香菜の花嫁姿が。 香菜の美しさに負けない装いを、 次の休みに探しに行こう。]** (63) 2021/06/14(Mon) 21:25:35 |
【人】 おむこさん 小泉義哉[仕事を終えて「もりや」に顔を出すと 唐揚げではなくキスで迎えられた。>>58 いくら関係性が変わったとはいえ さすがに店の中で口づけを送られるとは思っていなくて 虚を突かれたような顔をした後に 照れくさそうに笑う。] (65) 2021/06/14(Mon) 21:47:24 |
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