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【人】 陽葉 シロマ>>2:62 >>2:63 マユミ 「き……ら、き、ら、ひ、か、る……」 目を伏せ、うろ覚えの歌詞でオタマジャクシの後を追う。 演奏が終わり、ややあって目蓋を開けた。 「ありがと。 やっぱりきらきら星は弾ける人が多いんだねえ」 水筒を隣の椅子に置き、ゆっくりと立ち上がる。 壁に貼られたまま朽ちた掲示物を見ながら、美術館の中を回るように歩き出す。 「……あと、牧夫が見つかった時もありがとね。 私はああいうの、わからなかったから助かったよ」 知っていれば、現場の保存をしたのだろうが……白間は、指摘されるまで気付かなかったから。 暫く歩くと、ピアノ側に置かれていた専用の椅子に腰を下ろす。 「多分弓道部で色々あったから、知ってたんでしょ? 思い出したい記憶でも無いだろうにさ。 辛いこと、思い出させちゃったんじゃないかって……」 (1) 2022/07/10(Sun) 21:58:06 |
【赤】 陽葉 シロマどこかの教室で、少女が教鞭を執っていた。 「 鳥飼 。」「 夢川 。」「…… 司馬 。」名前の増えた出席簿を満足気に読み上げ、閉じる。 前回との違いは、更に名前が増えたことと──窓から見える夜空が、白み始めてきたことだろうか。 「学校って感じ、出てきたな〜。良い調子!」 笑顔で頷けば、窓へ視線を向ける。 その横顔には僅かに哀愁が漂っていた。 「……急がないとね」 (*1) 2022/07/10(Sun) 22:12:28 |
【人】 陽葉 シロマ>>2 マユミ 「私は……う〜ん……」 尋ねられれば、こちらも歯切れを悪くする。 どう言ったものかと、言葉を選んでいた。 「まだ実感が湧かない、って感じ? 自分より気が動転してる人がいると逆に冷静になれる、みたいなこともあるだろ?」 それにさ、と言い辛そうに口を開く。 貴方の横顔へ、伺うように視線を向ける。 「……外に出られないってことは、多分外からも入れないんじゃないかと思う。 ってことは、だよ。 犯人がこの中にいるってわけだから。 そっちの方が気掛かりでね」 嘆息と共に、鍵盤へ指を伸ばす。 ……偶然、鳴らない箇所だった。 「牧夫と誰かと揉めてるなんて、聞いたことも無いし。 あいついじめとか、家同士の諍いとか、そういうのとも無縁じゃないか。 揉め事なら私の方が有り得るよ」 (17) 2022/07/11(Mon) 10:50:08 |
【赤】 陽葉 シロマ少女は真剣に、時折相槌を挟みながらその話を聞いていた。 生徒の悩みを解決しようと、真摯に努める教師の様に。 「……ふぅむ。同意の上でも、となれば。 原因は単純だ、只怖かったんだろうね。 人間は本能で死ぬのが怖いのさ。だって、死んだことが無いんだから」 最初に感じたのは冷たさにも近い熱さだった。 脚が燃えるように熱くて、次に喉を焼く痛みにのたうち回った。 焼けた肉の臭いがする。 「御国の為に命を捧げよう、なんて教わって。 そう思っていたけれど──実際死ぬ時は、本当に恐ろしかった。 理由なんて無いんだ、 とにかく苦しくて…… 熱 く て 「…………、……」 教卓が視界に入る。そこで自分が俯いていることに気が付いた。 嗚呼いけない。先生なのだから、前を、生徒を見ていなければ。 (*4) 2022/07/11(Mon) 15:42:02 |
【赤】 陽葉 シロマ「…………苦しむ、時間が……長ければ、それだけ恐ろしく思う時間も長くなる。 即死とか、それに近い死に方ならきっと怖がらせないんじゃないかな」 ゆらり、顔を上げた。 額に汗が滲んだ気がして、手の甲で拭う。 当然、何も付かなかった。 「ただ、即死は見た目が酷くなりがちだ。 綺麗なままにしたいなら、足を縛っておくか、高い所から…… あ。 」自身の髪を指し示す。 「そのリボンで小指と小指繋いでみたらどうだろう、 それに……一緒なら、飛び降りても怖く無いかも」 きっと生者がいれば、そんなことはないと反論するであろう提案をした。 (*5) 2022/07/11(Mon) 15:43:11 |
【人】 陽葉 シロマ「あ、」 硝子の割れた音の方へ向かっていると、見覚えのある帽子が落ちていた。 硝子を踏み、拾おうとして──永瀬の言葉を思い出した。 そっと離れて、窓の方を見る。 破片で怪我をしないように気を付けつつ、窓から下も覗き込んだ。 「……ま、君はそんな死に方しないよね」 姿勢を戻し、スマートフォンを取り出す。 さて、どうしたものか。 少女は暫し考えていた。 (29) 2022/07/12(Tue) 7:46:54 |
【人】 陽葉 シロマ>>31 マユミ 「まさか。マユちゃんの言ってたことを疑ってるわけじゃない。 でも、だったら幽霊がそうした理由っていうか動機?がわからないだろう」 普段感情を表に出さない貴方が、唇を震わせている。 ……友人が死んで、何も感じない人間などいるわけがないのだ。 珍しい姿を見つめた後、こちらも淡々と告げる。 「これまで、肝試しや廃墟探索でこの校舎を訪れた人達はいた筈だ。 だけど死者が出たって話は聞いたことがない」 しかも市の所有する敷地だ。もしそうなれば、市役所が動くだろう。 しかし、現実にはこうして容易く侵入できている。 「生きた人間への怨みとかがあるんなら、前の人達も死んでないとおかしいよ。 ……マユちゃんは何か思い当たる理由、ある?」 (32) 2022/07/12(Tue) 18:51:12 |
【赤】 陽炎 シロマ気遣われなかったことに安堵しつつも、生徒に助けられたことには違いない。 先生の道は険しいな、なんて思いながらセーラー服の背中を見送った。 「ああ、……いってらっしゃい」 そうして、教室を再び静寂が支配する。 短いチョークを指で摘めば、黒板に大きく『自習』の二文字を書いた。 チョークを摘んだまま、思う。 「……、…………」 夢川と違って、自分は無理矢理連れて来たようなものだ。本音を言えば、やはり自ら此方側に来て欲しかった。 しかし結果的には、変わらない。 彼なら……匠介造なら、もっと上手くやれただろう。 彼に憧れて、彼のような人になりたくて、共に教師になろうと約束を交わしたのだ。 「……ま、時間だけなら気が遠くなる程あるからね」 これから、理解してもらえば良い。 自分は自分なりのやり方で、先生になれば良い。違う人間なのだから、全く同じようにできるわけがないのだ。 そう自分を納得させて、チョークを置いた。 永い刻は人を狂わせる。 それは、死者も同じこと。 (*8) 2022/07/12(Tue) 19:33:41 |
シロマは、内緒話を始めた。 (a78) 2022/07/13(Wed) 17:29:27 |
シロマは、負けたから、欲しがることにした。 (a80) 2022/07/13(Wed) 22:54:58 |
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