【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ――それでも。 捨てられない、捨てられる筈のない、もの。 音楽という存在… 自分の重苦しい楽曲も。 沈鬱な歌詞も。 とうに愛憎をも超越し、 自分の一部になっていたのだと。] (194) 2020/09/26(Sat) 12:17:48 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―昨夜・宿のロビーにて― [ 去り際に。 煙草を吸うならいい場所があるよと 楽器工房の彼女が耳打ちしてくれる。>>172 どこかと聞くと、それは 自分がこの国に来たときに 居心地の悪さから設営中のコンペ会場から逃げて 油を売っていた場所だった。>>0:3 あの場所で彼女も一服していたのか。 想像したその姿が様になっていて、 くっくっと笑った。 ] (195) 2020/09/26(Sat) 12:19:07 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 悟った真実、その底は昏く深く。 胸中に渦巻く靄が消えたわけでは無い。 しかし、] 『いいよ。 コンペ見に行く。』>>172 [ 昨日から変わらない、外連味のない口調で そう言う彼女に。 (…いい音を届けないとな。) 思い浮かんだのは、そんな、 先程まで見失いかけていた感情。 しかし奏者としてずっと持ち続けていた あたりまえの感情だった。 ] (196) 2020/09/26(Sat) 12:19:56 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―夕刻・コンペ会場― [ ――そして今。 本日の戦場―舞踏用大ホールの前に立っている。 ヨハン、ディミトリエ、 ノード、ニルソン、ダンテ。 地獄みたいだった山奥の寒村を抜け出して、 その先で出会えた5人の仲間と、 己の 武器 を携えて。会場アナウンスが、『30分間の休憩』 を告げる。>>166 仕組まれた命運を打ち破るように。 関係者用の搬入口から ホールという名の戦場に、 6人並んで踏み込んでゆく。 ――さあ、舞台転換の開始だ。 ]* (197) 2020/09/26(Sat) 12:25:23 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a50) 2020/09/26(Sat) 12:31:14 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―コンペ会場・通路― [審査員用の控え室と、>>202 ホールを結ぶ通路。 舞台袖に向かう途中、 目立つ紫のドレスを纏った婦人 ―この表現は独身の彼女には適切では ないのだが、そうとは知らず― とすれ違った。 その銀色の腕章の意味が分かった ディミトリエだけが、彼女に会釈をする。 ] (206) 2020/09/26(Sat) 14:22:47 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[エリクソンは何も知らず、 その女性を一瞥したのみ。 彼女が新旧国籍一切不問の 無類に音楽を愛する『大変人』で、>>1:8 異国から来た自分らのことを ずっと気に掛けてくれていたことも、>>202 いつの日かリジィに音盤を与え、>>0:54 間接的に招聘の一要因になっていたことも、 そして、昨日からずっと中心でコンペを動かし、 厳しい指摘を与えながらも、 つねに新たな才能を見逃さなかった、 幾つになっても輝きを失わぬ目も。 互いのことは、最後まで知らぬまま。 彼女は審査員席へ。 6人は舞台袖に繋がる通路へ。 思惑は交差しながらも 両者は同じ目的地に向かい、歩き去って行った。 ]* (207) 2020/09/26(Sat) 14:23:49 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―コンペ会場・舞台― [裏方を示す腕章を付けた会場スタッフと共に、 会場入り直前まで打ち合わせした通りに 機材を配置してゆく。] 今回、音楽祭に臨むにあたっては 一つの懸念があった>>1:11 自分らの武器の一つにノードの電子洋琴による シンフォニックなサウンドがある。 しかし、今回の審査員は、 平台やその他弦管楽器の、プロ集団。 電子楽器は、どんなに性能のいいもの ―オリジナルの楽器の再現性が高いもの―でも 微妙なニュアンスの付け方や響かせ方、 あらゆる面において 生の楽器には勝てない。 他の奏者達とも比較され 減点されること間違いなしだろう。 ] (208) 2020/09/26(Sat) 14:28:59 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ゆえに、 今回はウワモノにシンフォニック要素がなく 逆に電子楽器ならではの音を、 リズムセクションに置いた楽曲を 主軸に採用することになった。 リズムセクションとの同期には やや面倒な、別の機材がいる。 事前に打ち込まれた、 64チャンネルで構成された楽曲情報。 その中で、拍だけを鳴らした1チャンネルのみを 無線で飛ばし、 メンバー全員が耳に装着している 小型の再生装置に送られる。 これで全員がずれることなく 自動演奏と同期して演奏が出来るという寸法だ。 また、これだけ規模の大きい会場、 しかも電子楽器で大音量を奏でるとなると、 舞台の両端同士、 また床や壁に音が反響し、 自分らに跳ね返ってくる音に遅延が生じる。 無線再生装置には、 それを遮断する効果もあった。 ] (209) 2020/09/26(Sat) 14:29:27 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[舞台が室内ということで ある特定の音と、会場のどこかの壁が 変に共振を起こすことがないかは 一番の気がかりだったが、 流石はコンセールカリヨン随一の舞踏用ホール、 そんなことは一切無かった。 遠目には…あれは二階席だろうか? 先ほどすれ違った紫ドレスの婦人が 座っている一角がある。>>0 ばっちりだ。 音響装置の配置は、 ちょうど、彼ら審査員の位置で収束するように 計算されていた。 (なるほど、彼女も審査員か) 先ほどすれ違った彼女の 凜とした表情を思い出す。 今は表情はおろか姿もぼんやりとしか見えない その座席を見据え。 どんな評価でも受けてやろう。 そう心を決めた。] (210) 2020/09/26(Sat) 14:43:09 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 日はとうに西へ落ち 沢山の小さな連れとともに会場に入る者、 失意とともに会場を去る者、 馬車で会場に向かう者。 会場におらずとも、 どこか他の場所で、流れる音に耳を澄ます者。 人によって多少はあれど、 たった二日間のコンペの中でも、 音楽によって喜び、憂い。 様々な感情が生まれただろうか。 そのコンペも、間もなく終わりを 迎えようとしている。 ]* (211) 2020/09/26(Sat) 15:00:09 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 昨日ちらと見かけた、派手髪の若者が、>>1:300 少年のように頬を紅潮させて此方を見ている。 その対岸にいるのは、あの男。>>1:301 憎々しげな表情で舞台を睨め据えている。 ――もう、逃げることはしない。 お前みたいな視線は慣れている。 こともなげに視線を外し、 派手髪の若者に目を戻すと、 彼はこちらをずっと見ていたのか 計ったように笑みを向けて、 音盤らしきものをこちらに振って見せた。] (212) 2020/09/26(Sat) 15:11:27 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 最終調整が終わり、 ダンテが裏方に向かって合図する。 場内の照明がフッ…と消えた。 それまで明るく照らし出されていた 赤と金を基調とした内観も、>>1 中央の豪華なシャンデリアも、>>0 闇に隠され、もう見えない。 ――『辺りが闇に沈む頃。』 日陰者の俺が、 日の当たる者達にとって代わることのできる 唯一の瞬間。 ――ようこそ。俺らの舞台へ。 (213) 2020/09/26(Sat) 15:13:37 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a53) 2020/09/26(Sat) 15:15:08 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a54) 2020/09/26(Sat) 15:20:11 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―舞踏用大ホール・舞台上― [ 暗幕の張り巡らされた会場。>>213 ホールが闇に包まれると、 千人規模の観客は 潮が引いたように静まりかえった。 キリキリとした耳鳴りがしてきそうな その静寂を破るように…曲が始まった。 ] (230) 2020/09/26(Sat) 20:31:08 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 精緻に計算された不協和音とともに 開始する#1。 枯れた音。沈み込む重圧感。 その上に重ねられる、 這い出るような低いグロウル。 曲全体に通底する仄暗さの間にはしかし、 電子ではない"生の"六弦による とろけるようなアルペジオが差し挟まれ、 そこが哀愁漂う叙情性を付加している。 …まるで、寒く霧深い、 針葉樹林の森のように。 哀愁漂う情景を想起させるとの 評価を受けており、 俺の原体験を色濃く残しているのは明白 6人組といえばこの楽曲、と言われる キラーチューンは、 それなくしては生まれなかったものだろう ]* (231) 2020/09/26(Sat) 20:31:26 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ メランコリーと耽美の狭間を行き交う#1が 終わるやいなや、 エレクトロニックな打ち込み音が 会場を包み、 そのまま、先程とは打って変わって "激しさ"を全面に押した#2へ。 序盤の打ち込み音は、それ以降も 拍を刻むように続き 曲の躍動感をさらに加速させている。 食い気味のリズムは、 クライマックスで唐突に 落ち着いたと思いきや、 その上に、トレブルの効いた 強靱なファルセットが重なった。 主歌唱のダンテの声遣いが両極端 な楽曲が、二曲連続で並ぶ。 かなり負担を掛けたが 完璧に歌いこなしてくれた。 ]* (232) 2020/09/26(Sat) 20:31:42 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 前2曲とはまた趣を異にする、 短調で激しさはありつつも、 どこか前向きさを感じさせる#3。 ツインの電子六弦がメロディー部を担い 絡み合いながらハーモニーを作り、 楽器演奏者も副歌唱者として全員参加、 合いの手とハーモニーを添え 歌唱に厚みを与えている。 作曲はディミトリエ。 俺の作った他の曲に比べてポップに聞こえ 好きになれなかったが、 コンセールカリヨン出身の、 品のいい彼らしい曲だ。 ]* (233) 2020/09/26(Sat) 20:32:04 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 最後の#4。 これは、今までと一変した雰囲気を持つ。 昨日、一晩で仕上げた エリクソンの新曲。 六弦のフィードバックと 怒濤のスネアロールで始まるこの曲は 低い調弦も激しい音像も 変わらないが、どこか涼しげなドライさを 感じさせる音像。 歌詞は、抑圧された少年が 電子六弦を手にして 決意を固めるというもの。 壊れゆく世界の中で、 信じるものはただ自分のみという 悟りを開いている 最後には葛藤と決意に満ちた 歌い上げるような歌唱で以て、 曲は終わる。 ] (234) 2020/09/26(Sat) 20:32:29 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 鬱々とした『陰』から始まり、 その正体を知り、 飲み込みながら、 "その先"を見据える『陽』への進化。 この二日間、この国で過ごした 自分自身の変化を表すような セットリストと共に。 ――全ての演奏が、終わった。 ]* (235) 2020/09/26(Sat) 20:33:45 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a56) 2020/09/26(Sat) 20:37:32 |
(a62) 2020/09/26(Sat) 22:56:36 |
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