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【赤】 かれがれ ユメカワどこかの教室。 並べられた机。 人影ひとつ。足音も無く、いつの間にやらそこにいる。 「………ん、…」 出席を取る声へと返す声は、以前よりも浮かないもの。 けれどもその理由は近付く夜明けではなくて、 ましてやひとつ増えた名前でもない。 それは以前あなたに問いを投げ掛けた時に 挙がった名前の内のひとつだから。ただ納得だけがあった。 「……ねえ、先生。 前に……できることがあれば、って言ってたよね」 「聞きたい事があるんだ」 『生徒』として扱われる事に疑問を持たない子どもは、 教卓に立つ少女が、頼るべき『先生』であると信じて疑わない。 だからきっと、自分にわからなかった答えを知っていると信じている。 (*2) 2022/07/10(Sun) 23:29:29 |
【赤】 かれがれ ユメカワ「俺、あのあと夏彦と話をしたんだよ」 「ちゃんとあの日をやり直して、本音で話してさ 夏彦も俺と離れたくないって、好きだって言ってくれたから 一緒に来てくれるか聞いたんだ。 ……そうしたら、頷いてくれたから」 夢川深雪という人間が、既に死んでいる事を思い出した上で。 言葉に詰まりはしても、確かに頷いてくれた。 だからあの時、まさか拒まれるなんて夢にも思っていなくて。 あっという間に、殆どわけもわからず死んだ人間には 目前に迫った死の恐怖への理解なんて無くて。 「あんまり怖がらせたくなかったし、 俺みたいに……酷い見た目になってほしくなくて。 できるだけ優しく首を絞めたんだけど 結局怖がらせたみたいで、何処かに行っちゃって」 「何を間違えたんだろう」 ぽつり、ぽつり、前提から何から何まで狂った相談はそこで一区切り。 その内容に反して、それこそ生徒が教師に対してするような ごくありふれた、けれど当人にとっては深刻な悩みのような。 最初から最後まで、ただただそんな調子だった。 こうして確からしい答えを探すのは、 未だやり直す事を諦めてなどいない事の証左だ。 (*3) 2022/07/10(Sun) 23:30:41 |
【人】 かれがれ ユメカワ【空き教室】 >>0 ネコジマ 君が戻って来てすぐの話。 ふと、視界の端で何かが動いた気がして、視線を向けて。 それが誰かわかれば、ひらひらと手を振った。 「……おかえり、稔」 「何かあった?良い事、そうでもない事、なんでも」 選ぶのが下手くそだから机を椅子代わりにする事は諦めて、 床に座って、時折液晶を流れるメッセージを眺めていた所。 君の事を待ってると言ったから、有言実行。 直前に、また少し気まずい別れ方を誰かとしてしまったものだから この空き教室に入る時、少し中の様子を窺ってたりとか、したけど。 きっと誰にも見られてはいなかった。多分。 (3) 2022/07/11(Mon) 0:12:25 |
【人】 かれがれ ユメカワ【空き教室】 >>4 ネコジマ 再び空っぽになってしまった隣が埋まって、 今は空っぽの手にも掴めるものがあって。寂しさは少し和らいだ。 寂しがり屋にとって、君達は鍵のようなもの。 二つとして同じ形のものはないから、代わりに刺してみても きっとぴったりとは嵌らないけど、まったく合わないわけでもない。 つまるところはこうやって、一人で居る時に。 自分から人と接点を持つ事をあまりしない、少し不器用な君が 少し寂しさを汲んでくれるだけで嬉しくなれるような、単純な人間だ。 「ん……栗栖と? そっか。それは確かに良い事だね、……」 物言いはやっぱり捻くれていても、嬉しげなのは何となくわかる。 君達の間柄は、以前から結構そんな調子だったとしても。 ここに来て早々の事だったから、 単純に心配していた夢川にとってもそれは良い知らせだ。 「…何度も喧嘩して、何度も仲直りできるのは」 「ちょっと羨ましいな。簡単な事じゃないと思うから」 なんてのは、当事者じゃないから思う事かもしれないけど。 でも君の機嫌が幾らか良さそうなのも事実だしなあ。 思考をそんな脇道に逃して、浮かんだ寂しさを誤魔化した。 (10) 2022/07/11(Mon) 4:41:32 |
ユメカワは、それそのものに意味など無いと思っている。何もかも。 (a16) 2022/07/11(Mon) 13:15:50 |
ユメカワは、だからそれは、きっと罰などではない。 (a17) 2022/07/11(Mon) 13:21:43 |
ユメカワは、そして君達は、岐路に立っているだけだ。 (a18) 2022/07/11(Mon) 13:22:55 |
ユメカワは、猫島と内緒話。 (a21) 2022/07/11(Mon) 19:12:30 |
ユメカワは、肯定が欲しいわけじゃない。ただ訊きたかっただけ。 (a22) 2022/07/11(Mon) 19:12:35 |
ユメカワは、やっぱり笑ったままでした。ただ、前より少し複雑そうに。 (a23) 2022/07/11(Mon) 19:13:51 |
【赤】 かれがれ ユメカワ──つん、と鉄臭い臭いが鼻をついた、錯覚。 「………死ぬのが、怖い……」 最期の日の、最期の瞬間の記憶。 俯いて考え事をしていたから、周りは見えていなくて。 音も遠くの事のようで、それに気付いた時にはもう手遅れで。 は頭を強く打ち即死だったと── その後の記憶は、何も無い。 最初は自分が死んでいる自覚も殆ど無いまま、 気付けばここに居たようなものだった。 「……即死かあ」 どろり、生暖かいものが額を頬を流れ落ちる感覚。 けれど何も滴り落ちはしない。これも、錯覚だ。 (*6) 2022/07/12(Tue) 1:57:50 |
【赤】 かれがれ ユメカワあなたの言葉をなぞるように繰り返す傍らに。 ふと視線を上げた。 今際の記憶を語るその声が、徐々に淀んでいったから。 「わかった。次はそうしてみる」 優しい──中途半端なやり方ではだめらしい。 どんなに甘く言葉を重ねても、迫り来る死の恐怖は拭えない。 死してなお残るほどに強いものなのだと、理解した。 自分と同じような死に方の方が、皆にとって優しいのだと。 「ありがと、先生。俺一人だったらずっと迷ってたかも」 提案はあっさりと『次』の手段の一つとなり、 少女に掛けられる言葉は、気遣いではなく感謝だった。 この場に於いて、あなたは『理想の先生』だから。 『生徒』に気遣われるなんて、きっとあってはならない事だ。 「…もう一回、夏彦に会いに行って来るね」 浮かない表情を、そっと笑みに変えて。 またね、少女や物言わぬ友達に手を振ったのちに踵を返した。 (*7) 2022/07/12(Tue) 1:58:23 |
ユメカワは、その言葉の理由が自分勝手だろうと気にしない。 (a40) 2022/07/12(Tue) 8:01:09 |
ユメカワは、きっと。もっと自分勝手だから。 (a41) 2022/07/12(Tue) 8:01:15 |
ユメカワは、それから暫しの後、裏道達が戻って来る前に。 (a42) 2022/07/12(Tue) 8:08:05 |
ユメカワは、いつの間にやら、空き教室から姿を消していた。 (a43) 2022/07/12(Tue) 8:08:30 |
ユメカワは、そこにいる。 (a53) 2022/07/12(Tue) 15:28:09 |
ユメカワは、それはきっとどうしようもなく現実で、だから (a54) 2022/07/12(Tue) 15:28:29 |
ユメカワは、現実から覚めて、夢に起きる。 (a55) 2022/07/12(Tue) 15:28:45 |
ユメカワは、本当は。君の事をもっともっと深く感じていたい。 (a65) 2022/07/13(Wed) 1:32:33 |
ユメカワは、けれど、今は時間が足りなくて。 (a66) 2022/07/13(Wed) 1:39:45 |
ユメカワは、君に連れていってほしい。 (a73) 2022/07/13(Wed) 14:04:19 |
ユメカワは、自分勝手だ。 (a74) 2022/07/13(Wed) 15:17:24 |
ユメカワは、未来をあんまり信じていない。 (a75) 2022/07/13(Wed) 15:25:06 |
ユメカワは、何一つとして失くしたくはない、ひどく欲張りな子どもだった。 (a76) 2022/07/13(Wed) 15:30:47 |
ユメカワは、約束をまたひとつ。いつかの事。 (a79) 2022/07/13(Wed) 21:42:19 |
ユメカワは、君に手を引かれるままに。 (a83) 2022/07/14(Thu) 3:45:42 |
ユメカワは、ぎ、と踏み台を踏んだ。 (a84) 2022/07/14(Thu) 3:45:48 |
ユメカワは、鏡の前で呟いた。「俺が悪いの?」 (a85) 2022/07/14(Thu) 4:51:30 |
ユメカワは、鏡の中で笑っていた。ただただくらく笑っていた。 (a86) 2022/07/14(Thu) 4:52:35 |
ユメカワは、そんな、いつかのどこかでのお話。 (a87) 2022/07/14(Thu) 4:52:42 |
ユメカワは、いつも通り笑って。 (a92) 2022/07/14(Thu) 20:05:57 |
ユメカワは、君にお別れをしない。 (a93) 2022/07/14(Thu) 20:06:04 |
ユメカワは、校舎の屋根の上。 (a94) 2022/07/14(Thu) 20:54:53 |
ユメカワは、君と手を繋いで、君と抱き合ったまま、 (a95) 2022/07/14(Thu) 20:54:58 |
ユメカワは、屋根の端、その向こうへ、身を投げだした。 (a96) 2022/07/14(Thu) 20:55:09 |
ユメカワは、君と同じ夢の底へ落ちていく。 (a97) 2022/07/14(Thu) 20:55:14 |
ユメカワは、そして──現実から覚めて、夢に起きる。 (a98) 2022/07/14(Thu) 20:55:18 |
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