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【赤】 糸[ この地には仕来りがありました。 神社に奉られているのは――― ※※ 数年単位に一度、贄を捧げているのです。 海鳴に縁のある人間の中から一人が選ばれています。 と言いましても 人間側が勝手に決めているだけのこと。 ですから贄が逃げ出そうともわたくし共は 追いかけたりはしないのです。 いつかの昔、いえ、ごく最近のようにも 感じるある時のこと。 何のお告げが入れ知恵かは存じませんが 贄が二人選ばれる年がありました。 年が近く人間が選びきれなかったのでしょう。 こちらの世界へ迷い込むのは 海の呼び声に応えなければなりません。 こちらに来れる者は ”ある意味で”特別と呼べるでしょう。 ] (*1) 2022/08/24(Wed) 21:11:09 |
【赤】 糸[ さて、贄に選ばれた幼子二人。 この世界に迷い込めたようです。 一人は泣いて、もう一人は慰めていました。 わたくしは彼らに近付き名を問いました。 この地にいる者は幼子であれど 言い伝えを知っているはずです。 現に、一人は理解したのでしょうか 「ぼくは、なるみかいと だ」 と一人の幼子は名を名乗りました。 禁忌を犯す者に年齢は関係ありません。 何かに気が付いたと感じたのですが 思い過ごしだったのでしょう。 ] (*2) 2022/08/24(Wed) 21:13:41 |
【赤】 糸 『そうですか。 早めに見つけ出せると良いですね。 私は貴方の名前を教えて貰いました。 そちらの子も。 もうすぐこの世界から帰れるでしょう。 その名前が”本当に自分の名前であるならば” また会いましょう。なるみかいと。 いつか海が迎えに行き、波が連れてくるでしょう。』 (*6) 2022/08/24(Wed) 21:28:44 |
【赤】 糸[ そうして一人の”なるみかいと”は帰りました。 自らの名を名乗ったこと。 もう一人のなるみかいとのこと。 そしてわたくしのことも忘れて。 ] (*7) 2022/08/24(Wed) 21:30:22 |
【赤】 糸さて、 貴方は嘘をつきましたね 神前での愚行 この地に祀られている方の荒々しさも 知らなかったのですか 神は嘘を嫌う 浅ましい行為を許さないでしょう 贄としては失格 それでいてこの世界から帰ることも出来ず 貴方の存在はいずれ消されるでしょう その前にわたくし共の餌とならぬよう 精一杯逃げることを忠告しておきましょうか (*9) 2022/08/24(Wed) 21:35:38 |
【赤】 糸[ この年、一人の存在が消えました。 贄は不在。 海は荒れるはずでした。 けれどもう一人の贄の名前は こちらにあり、すでに手に入ったようなもの。 いつも通りのお祭りを終えられました。 その生はゆっくりと蝕まれていき 彼がこの上ない幸せを感じた時 波が彼を見つけるでしょう。 ] (*10) 2022/08/24(Wed) 21:36:37 |
【赤】 糸[ 懐かしい話もこれで終わりです。 偽りの”なるみかいと”は消えました。 名前も、存在も、誰の記憶にも残らないまま。 ただ、同じ名前だと信じていた子は 少しだけあの子の存在を覚えていたようですね。 ]* (*14) 2022/08/24(Wed) 21:42:08 |
【赤】 願……だ、そうですが どうするんですか、『糸』 私は嫌ですよ 貴方だけなら兎も角 神の領分に触れるのは 面倒なので [引き抜かれた管を自身に引き戻し、 二つの黒と宙を泳いで 一つの生き物の様に身体を寄せ合い、 離れんとするそれを見下ろす]** (*15) 2022/08/25(Thu) 6:38:35 |
【赤】 糸どうしたか…… はて、 わたくしは何も聞いておりませんので 聞いていないものは わたしくにはどうともできません わたくしは、ただ、繋ぐだけ 必死にお互いを繋ぎ合った二人を どうして引き剥がせましょうか (*19) 2022/08/26(Fri) 5:59:31 |
【赤】 糸[ 私はまだ願いを叶えるとも 代償をもらうとも 一言も言ってませんから。 そもそも聞いておりませんでした。 わたくしでも 聞き逃すことだってあるのです。 ] (*21) 2022/08/26(Fri) 5:59:54 |
【赤】 糸[ 何もかもなかったことにはならないでしょう。 ですが、二人の繋がりは強固なもの。 わたくしには引き離せない糸 二人の繋がりが”まこと”ならば あの者の声も戻るのでしょう。 ] (*23) 2022/08/26(Fri) 6:00:16 |
【赤】 願 ………まぁ、 私は所詮ただの海月火ですから 切るも繋ぐも出来ませんし 干渉するなら、そも、どちらかの好意を 我々か神にでも向かせて―――おや、 なんですか、何か文句でも? [先程まで浮かんでいただけの二つの光が、 その動きを激しくさせて、ぽこぽこと頭を叩く 海月の感触など、無いに等しいのだけれど] (*26) 2022/08/26(Fri) 6:53:28 |
【赤】 願 だから友達が居ないと言われるって? 何を滅相な 私達は主従の縁でありながら、 皆家族みたいなものでしょう? いいじゃあありませんか 『糸』の言う通り、 あの二人に真の繋がりがあるとしたら 落とし子が歌を辞めるとは思いません 届いていたじゃあありませんか この海の中にも、貴方達の元へ (*27) 2022/08/26(Fri) 6:54:06 |
【赤】 願 o .゚.。. .゚.。o... ゜。 o 。゚ ゚ 貴方達の「願い」は、 きちんと叶えて下さった神なんです 任せましょう、頼りましょう 私達は「今」を揺蕩っていればいいのです ** (*28) 2022/08/26(Fri) 6:55:43 |
【人】 闇崎 宵稚 ………………ッ……ん、う? [次に、ぐらり、と身体が揺すられる。 ぐらり、ぐらり。その度頭も揺られて、 どこかにぶつかる位の痛みにも感じた] イッ………痛ぅー…… ……あ、れ、 何処、ここ……浜…?? [痛みが他の神経にも効いてきたのか、 漸く身体の筋肉も目覚めたか。 ひどい頭痛を伴っていたが、俯せの身体は、 ようやく上体を起こすことに成功した。] な、に。なんで俺、浜……? ………。 …………かい、と? [右手でこめかみ辺りを押さえながら、 隣に映るのは昨日今日で見慣れた姿。 ただどうしてだか――自分もなのだが、 レンタルの浴衣ごと身体はずぶ濡れで、 『どうしてだか』、それすら気に留めないとばかりに 必死な形相の友人の姿ががあったのだ。] (1) 2022/08/26(Fri) 21:24:59 |
【人】 闇崎 宵稚…あれ、お れたち。 ……確か、 昨日、飲んで、お前のホテル部屋泊まって、 その後、祭りで、軽く遊んで、 それで……――― それで? それでどうして、浜いるんだっけ…?? (2) 2022/08/26(Fri) 21:26:43 |
【人】 闇崎 宵稚[ただ惰性の心地で、 それでも久しく会えた海音に対して、 内心で浮かれてでもいたのか。 それとも、昨日あれだけいっておきながら、 俺のほうが酒で記憶、飛ばしたのか? ……肝心な所が虫食い。いや。もっとひどい。 ほぼ何も覚えてないと来た。 飲んだ酒すら覚えてないとは相当だ。 ……薬無しで酒で失敗したのはこれで初めてか? 思い出そうとすると、頭の痛みも激しくなる。 虫歯をつついた時みたいだ。暫く後引くかもしれない] (3) 2022/08/26(Fri) 21:27:15 |
【人】 闇崎 宵稚 海音、俺たち、祭り抜けたのか…? まさか酔って泳いでた? この歳になって大人げなさすぎるだろ… せめて着替えてから、……つか、 一緒ってことは、海音、どこまで覚えて…? [とにかく、自分一人では 記憶に穴がありすぎて、話にならない。 海音に問いかけるようにしながらも、 自分でも一番記憶の新しい所を手繰る。 (その間、お前の表情は辿れなかった) 痛みでままならなくて、それでも、 波に削られたかのような記憶の断片を辿って、 潮風に乾いた頬を誤魔化すように拭い。 ───ふと、砂まみれの指で唇に触れる。] (4) 2022/08/26(Fri) 21:28:02 |
【人】 闇崎 宵稚………………………………。 ………………………………。 …………………………………… あ 。[記憶の断片を捉えた。 かと思えば顔から蒸気が溢れて、真っ赤になる。 ……思わず、口元を押さえた。 ]** (5) 2022/08/26(Fri) 21:29:57 |
【赤】 願[ 言い伝え通りであれば。願いを叶えた者は、 隠り世の出来事は忘れてしまう それが、叶わなかったのだ 隠り世に囚われた儘でもおかしくなかった 本来なら、覚えて残る記憶になる筈だった それでも、男の「願い」…「欲」は、 神の贄を奪い去るに等しく 願いとは別に――神へ代償を支払った] (*30) 2022/08/26(Fri) 21:32:03 |
【赤】 願[そして、あの男の人生は。 男の言葉通りのまま――その人生の殆どは、 並大抵、想い人を想う感情のお陰で、幸せだった。 故に、『殆どの記憶は残ったまま』でした。 この世界で結ばれたと思わしき繋がりも、 否、それこそ明らかな「形」だった 故に、我々の存在のみを忘れ、 都合よく「幸せだった記憶」ばかり残っている それは奇しくも、願いを叶え、 この世界から去った人間と大差なかったようです] (*32) 2022/08/26(Fri) 21:33:44 |
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