ひゅ、と止まった筈の息が詰まる。
首筋に触れる手が、まるで首輪のように思えた。
己を罰する男の魂は、
愛情という名の呪いによってのみこの地に留まるだろう。



永遠を誓う言葉を、小さく呟く。
その永遠に未来などひとつも無く。

──……結ばれた縁の色は、もう見えない。

「ふふ……なんか、結婚式みたい」

細い指の腹が頸動脈当たりの肌を滑る。
そのまま首裏へ手を回すと自分の方へと引き寄せて、冷たい唇の端へ口づけを贈った。

「『汝を妻とし、今日より共にあることを誓います』……」

悪戯に子供のごっこ遊びのようなことをして幸福そうに目を細めて笑う。
そんな言葉も貴方にとってはさらなる首枷となるかもしれない。

何の抵抗もせず口付けを受け入れる。
覆水は盆に返らず、後戻りなどできやしない。

目を細め笑う少年を見て、思う。
自分はいつかきっと、逃げたくなる。
しかし貴方は、絶対に自分を離さない。
だからこそ、赦されたと安堵できるのだ。
……一人では難しい約束も、二人でなら守れるから。