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【秘】 →視界に光が射し込む。 まるで眠りから覚めたかのように、 意識が身体へと落ちると私は驚いた。 さっきまで算数の授業を聞いていたと思ったのに 黒板に書いてるのは「スイミー」の文字。 今は国語の時間らしい。 この不思議な感覚は何度目だろう。 (-20) 2023/02/11(Sat) 9:43:07 |
【秘】 →こんなこと誰にも話せなかった。 昨日の朝は仲良しのユキちゃんが怒ってた。 わたしがユキちゃんちに遊びに行くって言ったのに、 来てくれなかった!って。 そんな約束したっけ?って質問したら、 ユキちゃんはもっと怒っちゃった。 「やよいちゃんなんてもう知らない!」って。 それでもわたしは、わたしのことを うまく人に話すことができなかった。 可笑しい子だと思われるのが怖かった。 (-22) 2023/02/11(Sat) 9:43:19 |
【秘】 →手元のノートに目線を下ろすと、 見覚えのある字で、見覚えのない文字が並んでいた。 わたしがまだ知らない漢字が、 わたしの字で書かれてる。 これを書いたのは、誰? 授業を途中から聞いてるみたいな感じだから 先生の言ってることがよく分からない。 手持ち無沙汰になったわたしは、 ノートの隅に好きな動物のネコの絵を描いた。 水色のリボンを付けた、家にあるぬいぐるみのネコ。 それからその横に、吹き出しを添えた。 (-23) 2023/02/11(Sat) 9:43:28 |
【秘】 →ひろい うみの どこかに ちいさな さかなの きょうだいたちが たのしく くらしてた みんな あかいのに いっぴきだけは からすがいより まっくろ でも およぐのは だれよりも ──── (-28) 2023/02/11(Sat) 12:12:38 |
【秘】 →きづいたときには、 私の手の中には猫のぬいぐるみがあった 水色のリボンをつけた猫。 いつからリボンがついていたのかは、 私、ちょっと思い出せなかった。 「 あ、あれ? 」 学校は?みんなは? さっきまで私は国語の授業をしていたはずなのに もう気づけば、外は随分と真っ暗だった。 給食もおやつも食べた記憶なんてないのに、 ずいぶんとおなかはいっぱいで、 口の中、なんとなくカレーの味がする。 (-30) 2023/02/11(Sat) 12:13:09 |
【秘】 →一昨日、ユキちゃんちに遊びにいくはずだった だけど、行けなかった。 次にユキちゃんに会ったとき、 目も合わせてくれなくて、 私、ひどいことしちゃったんだ、って 「 ごめんね、昨日 私、寝ちゃってたみたいなんだ 」 そんなふうに謝ったら さっきは忘れてたって言ってたくせに!って ……さっきも何も、今、話しかけたばかりなのに。 (-32) 2023/02/11(Sat) 12:14:04 |
【秘】 →ふと机の上を見ると、 まるでしまい忘れたように、 ノートが一冊、開いて置いてある。 何気なしにそれを手に取って、驚いた。 見覚えのある字で、見覚えのない言葉が並んでる お話を読んでどう思いましたか?なんて 私、書いたおぼえがないのに きっちり私の字は、スイミーの感想を綴ってた。 どこか感想がずれてるようにも思ったのは、 その子が途中から授業を聞いていたから、 なんて、私にはわかるわけがない。 ……そんなことより、 もっと驚いてしまったのは、 (-34) 2023/02/11(Sat) 12:14:33 |
【秘】 →「 あなたは、だれ…… 」 文字をなぞりながら、口の中で転がして、 その意味を、さぐる。 そうして鉛筆を取り出せば、 その隣に、好きな犬のぬいぐるみの絵を描いた。 吹き出しを添えれば、 まるでこの子が喋っているようにも見える。 (-36) 2023/02/11(Sat) 12:15:06 |
【秘】 →「 こんにちは わたしは やよい 」 私、という漢字はまだ習っていなかったから 当時の私はひらがなで綴る。 「 あなたは だれですか? 」 この時の気持ちを言葉で言い表すのなら、 わくわく、だろうか、どきどき、だろうか。 言い表せない感覚を抱きながら、 私はノートを閉じたり開いたり。 (-37) 2023/02/11(Sat) 12:15:23 |
【秘】 →朝になって目が覚めて、 ノートを開いてみたけれど、 まだそこに、文字は増えていなくって ちょっと残念に思ったりもして。 もちろん学校の授業なんて上の空。 算数の時間だって国語のノートを開いたり閉じたり 体育の時間、ノートを置いていくのも名残惜しくて (-38) 2023/02/11(Sat) 12:15:42 |
【秘】 →私が次に、その文字に気付くのは たぶん、もうすこしあとのこと。 またいつもの不思議な感覚≠ 経験した、直後のことだった。 ** (-39) 2023/02/11(Sat) 12:15:53 |
【独】/* >>63 ここでやよいが断言したとことか、はづきちゃん辛いんだ、知ってる〜〜〜〜知ってる〜〜〜大丈夫、やよいが幸せなのは今だけで突き落とす気満々だから… 任せて… (-63) 2023/02/11(Sat) 22:56:37 |
【秘】 →国語の授業が終わって、給食を食べて 友達にバイバイして、夕食にカレーを食べて。 宿題やらなきゃって国語のノートを開いたら、 最後に書かれた文字はまだ覚えのあるものだった。 「赤いさかながいっぱいできれいだと思いました」 内容のない感想分。 水色のリボンを付けた猫のぬいぐるみを抱いて考える。 わたし、ぼーっとしてただけなのかもしれない。 「ちゃんと、忘れないようにしなきゃ。」 物覚えが悪いんだろう。 だから前の家でもこの家でもどこに行っても、 腫物扱いされてしまうんだろう。 (-72) 2023/02/12(Sun) 8:17:33 |
【秘】 →気が付いたのはすぐだったけれど、 だいぶ時間が経っていたようにも感じた。 目の前には国語のノートがあったけれど、 時計の針は進んでいるどころか戻っていた。 教室の黒板、無意識のうちの日付を見つめる。 うろ覚えだけれど、 さっきまでは木曜日ではなかったはずだ。 こういうものなのだろうか? そうなんだよ、と言われたらそうなのだろう。 手元を見ると、覚えのない犬の絵と目が合った。 わたしの絵だけど、わたしの絵じゃない。 (-74) 2023/02/12(Sun) 8:17:53 |
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