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【秘】 こどもの アルレシャ → 欠けた星 スピカ星空の下でお茶会をした後のこと。スピカのいる部屋のドアを叩く音がしました。 「あ〜け〜てっ!」 ドアを開ければ、パジャマ姿で枕を抱えたアルレシャがいます。どうやら使用人に部屋の場所を聞いたようです。 ……目的は明らかでした。 (-5) 2022/01/19(Wed) 21:53:42 |
【秘】 欠けた星 スピカ → こどもの アルレシャ「はい」 ネグリジェ姿の女が扉を開けた。普段ならドア越しに誰が来たのか問うのだが、声を聞いてすぐにわかった。 「あら。眠れないの?ええと……アル、は愛称よね。貴方、お名前は?」 パジャマ姿に枕。目的を何となく察したが、その前に聞きたいことがあった。 名前をちゃんと聞いていなかったのだ。 (-7) 2022/01/19(Wed) 22:11:32 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 欠けた星 スピカ「アルレシャ! ながいから、アルってよんで?」 開けてもらえない可能性など、ちっとも考えていませんでした。勿論、断られるなんて予想もしていません。 愛でられ、受け入れられるのが当然。 拒まれたことなど、ただの一度もなく。 そんな、恵まれた子供です。 「ねむれないってわけじゃないけど〜、スピカはいつかおわかれしちゃうでしょ? だから、いまのうちにたくさんおはなしするの!」 (-8) 2022/01/19(Wed) 22:36:13 |
【秘】 欠けた星 スピカ → こどもの アルレシャ「分かったわ、アル」 愛でられたことなどない。 受け入れられたかどうかは分からない。否、受け入れられるべく自分が常に期待されるものを出すしかなかった。 拒まれないように必死に生きてきた。 そんな、恵まれたと断言するのが珍しい子供時代を送った大人は、無邪気そうな子供を見て寂しそうに微笑んだ。ああ、眩しい。 「そうね、出口が見つかったらすぐにここを去るもの。 いいわ、お話しましょう。何の話がいいかしら」 扉を大きく開いて、部屋の中へ。ソファへ座ることを勧めるだろう。 城にいくつもある客室とさして変わりなく、綺麗に整えられている。 (-19) 2022/01/20(Thu) 0:48:27 |
【秘】 なんでも屋 アマノ → 欠けた星 スピカ「そういう言い方するっつー事は、本音は違うんだろうが」 あなたの様子を覗いながら酒を勧める。 眠られたり気分を悪くしてしまっては意味がない。 これはいい気分に、本音を吐き出しやすくするためのものなのだ。 「そうだろ? 女でも酒の強い奴はいるが、こういうものの方が大体好むだろ。 お前サンの旦那は相当見栄を張るタイプだなぁそりゃ」 少しずつ、少しずつ。 「おん? ……そうか? 俺ァ全く大丈夫だぜ、あぁでも、気分が悪くなるようならやめておけ」 お酒という海に溺れて、日常を忘れてみると良い。 (-20) 2022/01/20(Thu) 1:23:06 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「む。貴方が大丈夫なように、私だって大丈夫よ。これくらいなんともないわよ」 ぐいーっ。 そう言ってグラスを呷る。 甘く、熱い。とろとろとした熱が体を巡っていくのを感じる。それと同じくらい、頭がふわふわと軽くなっていく。 「でも……そうね、見栄を張っているのかもしれないわね。周りに舐められるといけないと思っているのでしょう。 領主として得られる税には限りがあるのに、それを自分の価値を示すことにばかり使えと言うのよ。主人は殆ど屋敷を離れてどこかに行くことが多いから、実質的な切り盛りは私が行っているけど……やりくりが厳しいわ」 ぽつぽつ。 少しずつ、熱を帯びた息と共に吐き出していく。 「自由に生きているように見えても、主人と貴方は大違いね」 (-27) 2022/01/20(Thu) 4:03:30 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 欠けた星 スピカ微笑みの真意に気付くことなく、アルレシャは笑みを返します。 「アルねー、きになってるの……!」 ソファーへ腰掛けると、枕を抱いてスピカの手元をじっと見つめました。聞きたい話があるようです。 「ゆびわ、してるよね! やっぱりけっこん……してる!? だんなさんって、どんなかんじ!?」 年頃の女の子ですから、やはり興味はあるようです。大きな目をキラキラと輝かせて指輪を見つめていました。 (-28) 2022/01/20(Thu) 10:22:25 |
【秘】 欠けた星 スピカ → こどもの アルレシャ「……」 指輪を見て、それから君を見る。 隠すように右手で左手を重ね、暫く悩むように口を閉じた後。恐る恐るといった勢いで言葉が紡がれ始めた。 「……そうね。結婚しているわ。 主人は……自由な人、と評するべきかしら。ふわふわふらふらしていて、自分のやりたい事をやる人。私はそれを支えるの。 …………アルは、どんな人が好きとかあるかしら。まだそういうのは早い?」 嘘は言っていない。事実だ。 (-30) 2022/01/20(Thu) 11:03:46 |
【人】 欠けた星 スピカ「……え。どう、して?」 信じられないと言わんばかりの、呆けたような声だった。 「う、嘘よ。だってアマノは約束したもの、出口を探す協力関係にあったのよ。 そ、そう! それに、あの人は信頼を積み重ねた“なんでも屋”なのよ!? 裏切るはずがないでしょう!?」 「ねえ、ラサルハグはどこ? あの人が悪い冗談を言う筈ないわ。どんな時でも落ち着き持って行動するラサルハグが、こんなタチの悪い冗談する筈ないじゃない!」 (6) 2022/01/20(Thu) 11:09:15 |
スピカは、アマノと協力関係を結んだ。そして、色々と教わった。 (a0) 2022/01/20(Thu) 11:09:52 |
スピカは、ラサルハグに助けられた。努めて落ち着こうと考え始めたのは彼女のおかげだ。 (a1) 2022/01/20(Thu) 11:10:38 |
スピカは、使用人達に二人の所在を聞き続ける。城の中を歩き続ける。 (a2) 2022/01/20(Thu) 11:11:12 |
スピカは、途方に暮れたまま立ち尽くした。 (a3) 2022/01/20(Thu) 11:12:44 |
【秘】 なんでも屋 アマノ → 欠けた星 スピカ「薄々そんな気ィはしてたが……、 お前サンの旦那は領主じゃねぇな 」義務を投げ出して権利だけを主張するのはもはや貴族ではない。 特権を得る代わりに、領地の民のため、国のために義務を果たすのが貴族のはずだからだ。 きっとこの女は。 その領主にとっては都合のいい女なんだろう。 「お前サン、旦那はどこかに行くことが多いとは言うが……本当はわかってんじゃねぇのかイ。 まず間違いなく仕事なんざしてねぇし、遊んでる。 もっと言えば…… ソイツは外に女が居るぞ 」確かに、自分とその男は比べるまでもないだろう。 (-32) 2022/01/20(Thu) 13:04:32 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「……ッ」 グラスを握る両手に力が込められる。 ひといきに残りを飲み干して、近くにあった酒瓶を荒っぽく掴んでグラスに注いだ。中身が何かすらさえ確認しない。 「……それが、どうしたっていうのよ。私の知ったことでは無いわ。 私は私の役割を果たすだけ、私は己に与えられたレールを真っ直ぐ進むだけ!それが私と言う人間に許された生き方なのよ!」 「どれだけ頑張っても私は後継ぎが出来ない役立たずなのだから、それ以外の責務を果たすしかないでしょう……」 (-34) 2022/01/20(Thu) 14:17:50 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 欠けた星 スピカ指輪が覆われた理由も、沈黙の理由も、アルレシャにはわかりませんでした。いつもと話し方が違うことだけは、わかりました。 「んん〜……あそびたいから……いっしょにあそべるこがすき! スピカはだんなさんといっしょに、 なにをするのがすき? 」好きでもない人と一緒にいる理由がありませんから、きっとスピカは旦那さんのことが好きなのです。アルレシャは、そう思いました。 ですから『共に何をするのか』ではなく、『共に何をするのが好きか』という問いでした。 (-35) 2022/01/20(Thu) 14:22:17 |
【秘】 なんでも屋 アマノ → 欠けた星 スピカ「 あ”ぁ? …………お前サン、それをソイツに言われたのかい」 子供ができないのは何も女のせいではない。 男に原因がある場合だってあるはずなのに、どうして。 むしろ、外で遊びまくってる割に私生児がいないのであれば、男の方に原因がある可能性のほうがたかいのではないだろうか。 「あ、おい。 その酒はあんまガバガバ飲むものじゃ…… あー……聞いてねェな…… 」「俺が聞きたいのはそういうことじゃねぇなぁ……。 お前サンは本当は……どうしたい? 一度義務やレールの事は忘れて考えてみな」 俺は”なんでも屋”だ。 何でも叶えてやる力は……ある。 (-37) 2022/01/20(Thu) 14:35:59 |
【秘】 欠けた星 スピカ → こどもの アルレシャ「一緒に遊べる子。いいわね、一緒だときっと色んなことが出来そうで」 君を見ているようで、なんだか遠くを見ているような眼差し。 「私は……。 ………………」 閉口。沈黙。それから。 「…………分からないわ。私は、主人を支えることばかり考えてたから。 ……何が好きなのか、考えたこともなかった」 (-39) 2022/01/20(Thu) 16:00:11 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「何も気にするのは主人だけじゃないわよ。家系、血筋を絶やさないようにと考える主人の血族達もよ」 ぐいと更に酒を飲み干す。 喉が焼ける。思考が溶ける。でも今はそれでいい。 今はただ、もう楽になってしまいたかった。 「どうしたい?」 思案する。 ぼんやりとした目がら貴方を見つめる。 胸の奥底に沈んだ本音。それは―― ▽ (-41) 2022/01/20(Thu) 16:04:57 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「――どうしたい、のかしら。 アマノ、私、わたしは…… …………からっぽだわ」 すぐに出せる願いすらも無かった。 役割に殉じ続けてきた女は、正しく領主に嫁ぐ嫁として作られたのだ。 (-42) 2022/01/20(Thu) 16:05:12 |
【秘】 なんでも屋 アマノ → 欠けた星 スピカ「―――私生児は。 お前サンの子じゃねぇ子供はいるのかい、お前サンの旦那には」 確認するように問う。 貴族というのは血筋を絶やさないように気を配っているのは知ってることだが。 何もそれだけが人の価値ではない。 ぼんやりとした、蒸気を帯びた顔が、瞳がこちらを向く。 「……何も考えられない……か。 しかしなァ、からっぽってンなら……これから満たす事は出来ンだぞ」 満たしてやろうか、と。 薄く笑う。 (-43) 2022/01/20(Thu) 16:16:00 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「分からないわよ……教えてくれないもの……。私は気持ちを汲むのが上手くないから、返ってきたのは癇癪と拳だけよ」 ゆるゆると首を振る。ああ、だからダメなのだろうか。役割に殉じる為に他のものを捨ててしまったのがいけないのだろうか。 「満たす……?」 ぼんやりとした頭で言葉を繰り返す。 「どうしたらいいか、教えてくれるの? 貴方なら答えを知っているの?」 本音がこぼれ落ちる。 役割ではなく、女の意思で―― 「教えてよ、アマノ」 ――貴方にそう問うた。 (-48) 2022/01/20(Thu) 16:53:14 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 欠けた星 スピカ「ぇ……ええ! すきじゃないのに、けっこんしたの……? むかしはすきだった、とか……?」 親や家といった、自分以外の都合で決まる結婚というものは想像もできません。 アルレシャは枕を抱え、スピカを心配そうに見上げています。 「なんか……、けらいのひとみたい。たいへんそう……」 アルレシャが知っている大人といえば、絵本に出てくる家来や木こり、職人くらいです。中でも1番イメージに近いものが家来でした。 決して貶めているわけではありません。それ以外に言葉が思い付かなかったのです。 (-49) 2022/01/20(Thu) 17:24:25 |
【秘】 なんでも屋 アマノ → 欠けた星 スピカ「暴力まで受けたのか、女相手に…… とんだクソ野郎だなソイツは」 レールに沿って、役割に殉じるだけの生活。 それではただの人形と同じだ。 昔のことを思い出して頭を振る。 「俺が相手でいいのかい?」 やっと本音がこぼれたかと。 あなたの頬に手を伸ばし、ゆるりと撫で。 「心のやり場がわからねェってんなら……教えてやんよ」 ――そうして重ねた唇からは、甘い酒の味がした。 (-55) 2022/01/20(Thu) 20:19:40 |
【秘】 欠けた星 スピカ → こどもの アルレシャ「いいえ。親が決めたのよ、私と主人は将来結婚しなさいって。子供の頃にね。必要なことだったの。私のお家を守る為に」 まっすぐな言葉に一度瞳を伏せる。 「…………。そう、ね。家来みたい。 妻は主人の為に尽くして、なんでも言うこと聞かなきゃいけない。そういうルールのようなものがあったから」 言い返すことも訂正することも出来なかった。 まさにそうとしか言いようがなかったのだ。 夫の顔を立て、我儘を聞きながら屋敷を切り盛りする。その為だけに女は生き続けているのだから。 (-59) 2022/01/20(Thu) 21:23:42 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「仕方がないのかもしれないわ。領主の気持ちなんて、私が知るはずないもの。もしかしたら本当は主人も辛い思いをしていたかもしれないし……」 眼前に迫る男をぼんやりと見上げる。頬に手を添えられてもそのままだ。 唇に何かが触れる。 甘い何かが体を満たす。 「アマノ」 手のやり場がなくて思わず拳をわずかに握れば、指輪をした左手の薬指が圧迫感を訴える。 それを……見て見ぬふりをするように、そっと瞼を下ろした。 「貴方しか、いないわよ。 ……こんな、物好きな女に何かを教えてくれる人なんて」 (-60) 2022/01/20(Thu) 21:34:48 |
【秘】 なんでも屋 アマノ → 欠けた星 スピカ「まぁ、……そういうのもあるかもしれないが…… ったく。こういう時にまで相手を立てなくてもいーだろうが」 頬に触れても、唇を奪っても、抵抗はない。 「ハハ、教えるさぁ…… お前サンの旦那が教えてくれなかった事を、俺が全部埋めてやる」 貪るように熱く唇を重ね、酸素を奪う。 あなたの力が抜けてしまえば、優しく腕に抱き、己のベッドにあなたの身を横たえるだろう。 その先は―――、言わずもがなだ。 (-61) 2022/01/20(Thu) 23:39:14 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 欠けた星 スピカ「……すごく、がんばってきたんだねぇ」 小さな手をスピカの背中に伸ばしました。掌をゆっくり、優しく労るように動かします。 本当は頭を撫でたかったのですが、手が届かなかったのです。 「――――よし、よし。スピカはえらいね……」 その手付きはまるで、母親が子供を宥めるようでした。未だ子供であるはずなのに、何故か手慣れているかのような。 ……かつて自分がお母さんにしてもらったことを、真似ているのかもしれません。 (-62) 2022/01/21(Fri) 0:05:42 |
【秘】 欠けた星 スピカ → なんでも屋 アマノ「……ぁ…………ぅ……」 そんな情熱的な口付けを知らない。 そんな労るような手つきを知らない。 そんな優しい感情を、私は知らない。 知らないものがいっぺんに与えられて、どこか胸が苦しくなって。たまらず、目の端からほろりと涙が一雫こぼれて落ちてシーツに飲み込まれていった。 本当は拒まなければならないのに。 一人の夫を尽くす役割を持つなら、これはよくないと分かっているのに。 体が、動かない。 「忘れさせて、今だけ」 全て全て、酒のせいにしてしまおう。 (-70) 2022/01/21(Fri) 9:57:38 |
【秘】 欠けた星 スピカ → こどもの アルレシャ大人しく背中を撫でられる。 小さな子供にこんなに気を遣われるなんて。本来なら自分が子供の面倒をきちんと見るべきなのに。 「偉くなんてないわよ。これは、必要なこと……で……」 言葉尻が萎む。思わず顔を上げる。 その優しげな手つきに身を預けていたが、一欠片の疑問が胸に落ちてきて、少女へと視線を動かした。 真似るにしても、どうしてそこまで違和感なく撫でられるのだろうか。 違和感がないことこそが、違和感だ。 (-71) 2022/01/21(Fri) 10:02:42 |
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