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【置】 元騎士 フランドルやるべき事を終えれば、後は。 「──じゃあな、あぶれ者の街。 上も下も表も裏もそれ以外もろくでもないくせに、 そのくせろくでもないばかりで居てくれない卑怯なやつ。 生きていれば再び訪れる日も来るだろうが…」 遠く街並みを見下ろして、散々な捨て台詞。 今となっては、大した思い入れも無い街、でもないが。 とはいえそれらは一度ここに置いて行くとしよう。 得てして旅人というものは身軽であるに限るし、それに。 囚われる先は、一つあれば十分だ。 「その時は、今よか良い空気になってると思いたいな」 かつん、軽い音と共に踵を返して。 「…ま、良くなるにせよ、悪くなるにせよ。 『相見えるは黄昏の先』。そこで終わりじゃないだろう。 いつか黄昏に眠り、そして再び目覚めるその日まで。 今はまだ、白日の夢を見続けるといい」 よそ者は、今度こそ街並みに背を向けた。 (L6) 2021/12/20(Mon) 20:51:32 公開: 2021/12/20(Mon) 20:55:00 |
【置】 元騎士 フランドルそうして、ヨルムガンドの街や人々を巻き込んだ この騒動は今一度幕を下ろす事になるのだろう。 この慌ただしい数日間は、果たして人々にとって何であったのか。 或いは、この街は、世界は徐々に良くなって行くという喜劇。 或いは、人一人に救えるものは限られているという悲劇。 或いは、"蝙蝠"の言葉など信用してはならないという道徳劇。 或いは、革命及びその弾圧の巻き添えとなる人々という不条理劇。 或いは、 人生の一断片«Tranche de Vie»。 (L8) 2021/12/20(Mon) 20:52:08 公開: 2021/12/20(Mon) 20:55:00 |
【置】 元騎士 フランドルもしも、もしも。 これらが人の一生のただ一断片、 けれど掛け替えのない、一つたりとも欠けてはならないもの。 そんなただ一つの断片を映したものであるならば。 この世界は、すべてこれ一つの舞台。 人間は男女問わずすべてこれ役者にすぎぬ。 それぞれ舞台に登場しては、退場していく。 そしてその間に一人ひとりが、さまざまな役を演じる。 舞台は年齢によって七幕に分かれているのだ。 きっと終幕にはまだ早い。 今はこうして一度幕は下りれども。 人生は、これからも続いていくのだから。 (L10) 2021/12/20(Mon) 20:53:44 公開: 2021/12/20(Mon) 20:55:00 |
【秘】 残氷 の エアハート → 元騎士 フランドル「え?いや、別に。俺だけでよかったけど。 まあ言いたい事はわかるけど、人間貴族と吸血鬼がこう、 そもそも突拍子もなさ過ぎて、 異能の一部な感覚でさ。俺にとっては。 忘れがちだが独占欲の塊である。貴方が他を向かないと信じているからこそ束縛がないだけであって、ある意味表向きはまだカラッとした性格に見えているのは貴方のお陰、とも言えるのだろう。 「なので、まあ。今までもし、 俺に引かれると思って我慢してたならさ。 これからは、吸いたかったら吸っていいよ。いつでも。 ……いや、衝動によるもので 毎回後悔するなら止めとけするけど。 でもこれさあ、血が半分になったらどうなるんだ? 自分で自分の血啜りだすならエクソシスト呼ばないと…」 無論冗談半分、半分はその特性だけ祓おうとする半分。 別に血を捧げたって、気にやしないのだ。 なんせ別に半分丸ごと上げるのにすら躊躇しない男なのだから。 (-160) 2021/12/20(Mon) 20:57:19 |
【秘】 残氷 の エアハート → 元騎士 フランドル「夢が万が一叶っても、 死後にバレて俺に詰め寄られてたかもだ。 それに、息苦しいだろ、隠し続けるお前もずっと。 ──『全部』は受け入れられない。 元より物語から弾かれたような場所の生まれの俺達だ。 全てを平等に、在りのままに肯定する公平な騎士様。 そんな綺麗な人間にはなれなかった。 お前の言う夢は消えた。 でも、内心で怯え続けるお前と、それに気づけない俺。 そんな夢なら、壊れちまってよかったと思う」 何度目だったか。3度目だったか。 本当にこいつは、と言いたいのを堪える。 ほら見ろ、結局1発殴る事すら忘れてるじゃないか。 「お前、ほんとその点だけは心配性だな。 別に靡いた事は……組織はノーカンな?洗脳だしな? ないんだから気にすんな、って言っても気にするんだろうなあ」 自分がこんな手段ではないと割り切れないように。 理屈は簡単でも実行に移せない事だって幾つもある。 そう言えば、実行と夢で思い出した事があった。 「お前が気付いてないだけだよ、フランドル」 (-161) 2021/12/20(Mon) 20:58:17 |
【秘】 残氷 の エアハート → 元騎士 フランドル「…覚えてるか?俺達騎士になるの、死ぬほど苦労した。 入るまでは馬鹿にされて、入っても“やれ下級市民が” 皮肉なことに路地裏で得た、闇討ちと脅しの技術が、 お坊ちゃん育ちが多い騎士団に多いのはちょっと痛快でさ。 下手すると、路地裏生活の頃にパンを盗んで捕まって、 店主に1時間蹴られ続けてる方が楽なくらいだったのに、 それでも夢物語と言われてた騎士になって── ──そんで、あっさり捨てた。 お前は見切りをつけかけてたけれど、俺は結構さ、 気に入ってたんだ、騎士様。物語に自分が成ろうと思った。 実は思ってたんだぜ?でも、お前の事知って、捨てた。 捨てられる程度の事だったんだよ。あんな努力したのに」 思い出話を騙りながら、地図を取り出す。 騎士団から飛び出した際に使っていたもの。勿論盗品。 でも、だからこそ正確で、行き先だって無数にある。 不意に、「そろそろ気づいたか?」と呟いた。 「俺の世界には、最初からお前しかいなかったんだよ」 動機が怒りや妬みや嫌悪だとしても。 それでこれから再び取り返せない、自分が持っていた全てを、 投げ捨ててしまえるなんて、考えなしでももう少し考えるだろう。 「だから、待たせた分、見せてやるよ。影だと言うなら、 お前がより強くなる、とびきり眩しい場所に。 ──な? “残影” さん?」 (-162) 2021/12/20(Mon) 20:59:15 |
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