181 忘却の前奏曲、消失の1ページ
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| [ 伸ばした手を掴んだ人は 甘く優しい香りがする人だった。 >>10>>12 独りかもしれないという恐怖心が 少しだけだけど薄らいだ気さえする。 ] (14) 2022/10/26(Wed) 17:40:23 |
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[ わかる。この人は、優しい人だ。 指先から伝わる感情が全てを物語っている。
彼女の手は、ボクにとっては確かな救いの手で。 ボクは彼女に強い感謝の念を抱くことになるだろう。] (-4) 2022/10/26(Wed) 17:42:19 |
| (-5) 2022/10/26(Wed) 17:42:50 |
| [ 彼女が何者なのか。 どれだけ記憶を辿っても、答えが見つからない。 元親くんって誰の事だろう? >>10 どうして彼女はここにいるのだろう? 何も分からないボクはキョトンとした様子で。] (15) 2022/10/26(Wed) 17:43:55 |
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えっと、とりあえず…大丈夫です。
なんか身体はまだ痛いけど まだ耐えられるくらいのものだから。
(16) 2022/10/26(Wed) 17:44:13 |
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ところで…
はじめまして、ですよね。 貴女のお名前を、聞いてもいいですか? (17) 2022/10/26(Wed) 17:44:41 |
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[ ボクがキミにそう尋ねた時だ。
先生がボクの所へやってきて ボクの身に起きたことを説明してくれた。]*
(18) 2022/10/26(Wed) 17:45:21 |
| [ 私の両親が私に強く言えないのは 決して君のせいじゃない。 元から壊れてたんだよ。 それがよく見えるようになったきっかけは 確かに君だったのかもしれないけれど 君は何にもしていないよ。 ] (19) 2022/10/26(Wed) 18:42:15 |
| [ 私は君が無事かどうかで頭がいっぱいで。 自分の親のことなんて構ってる場合じゃないって そう思ってしまったから。 ……君の親がいない、って事実に すぐには気づけなかったんだ。 普通なら真っ先に来るはずの 二人がいないってことに。 ] (20) 2022/10/26(Wed) 18:43:49 |
| [ 君の手はいつも握っていた手と同じだった。 その手がちゃんとあたたかくて、 私は安心するんだ。
君が死ななくてよかった、って。 ] (-6) 2022/10/26(Wed) 18:44:29 |
| (-7) 2022/10/26(Wed) 18:44:57 |
| [ 君のよそよそしい言葉づかいに 私は戸惑ってしまう。 どうして、そんな顔してるんだろう。 まるで……私の事を知らないみたいな。 ] …………はじめまして、じゃないよ? [ だから、君に名前を尋ねられて 私は頭が真っ白になっちゃったんだ。 どうして? どうして、ハツナ、って呼んでくれないの? ] (21) 2022/10/26(Wed) 18:46:07 |
| [ なんて言ったらいつもの君に戻るのかも わからないまま、名前を言おうとしたら、 先生がやってきて、説明してくれた。 >>18 私、ここでようやく気付くんだ。 君のご両親は、何処なんだろう、って。 先生と一緒に来るのかと思ったのに。 先生はそんな私をよそに教えてくれた。 身体の怪我の方は、ちゃんと治るみたい。 でも問題は別にあって……。 ] (22) 2022/10/26(Wed) 18:47:05 |
| (23) 2022/10/26(Wed) 18:47:38 |
| [ それを聞いた時、 私はさっきの朝日くんの反応に 納得せざるを得なくなるんだ。 嘘だ、って言いたいよ。 言いたいけど、君が私の名前を知らないはずない。 さっきの君は冗談言ってるような顔じゃなかった。 だから、それが事実だって、 受け入れざるを得なくて。 ] (24) 2022/10/26(Wed) 18:48:33 |
| 元親くん……え、っと……。 私の名前、わからない、んだよね。 惜別ハツナ、だよ。 君にはハツナ、って呼ばれてた。 (25) 2022/10/26(Wed) 18:49:14 |
| 君と私は、付き合ってるんだよ。 私にとって、君は誰より大事な人なんだ。 (-9) 2022/10/26(Wed) 18:49:51 |
| (-8) 2022/10/26(Wed) 18:50:13 |
| [ そう言って、君の手をぎゅっと握る。 信じてほしい、でもいきなりそう言われても 君はすぐに理解できないのかもしれない、 拒絶されるかもしれないと思うと、怖くて。 それを誤魔化したかった。 こわい、怖いよ。 いま私、泣きそうなんだ。 でも君の前でだけは、泣くわけにはいかない。 泣いたら、優しい君はきっと自分を責めてしまう。] (26) 2022/10/26(Wed) 18:50:49 |
| ……何も、覚えてないの? たとえばそう…… 私が屋上で歌を歌ってた時とか。 [ もしかしたらなにか、 記憶の欠片が残ってるかもしれない そう思って、聞いてみるんだけど。 覚えて、ないのかな。 ]* (27) 2022/10/26(Wed) 18:51:16 |
| [ ボクが彼女の名前を聞いた途端に 空気が凍りついたような気がした。 >>21 ボクの言っていることがおかしいと。 信じられないと、そう言いたげな顔で ボクの記憶を否定する。] ……え?
[ でも明らかにボクへの意地悪じゃない。 本当に、心から信じられないって顔だ。 すると決して噛み合わない鎖が 先生が繋げてくれた。 >>22>>23] (28) 2022/10/26(Wed) 19:38:20 |
| [ ボクの記憶が無い。 今度はボクが信じられないという顔を浮かべた。 でも、さっきの噛み合わない会話の説明をつけるには あまりにも納得がいってしまう事実で。 ボクは思わず頭を抑えてしまった。 だって頭が、痛くて仕方がなかったんだ。
] (29) 2022/10/26(Wed) 19:39:10 |
| (30) 2022/10/26(Wed) 19:40:03 |
| [ 何も知らないまま産み落とされた赤子のように 右も左も分からないという恐怖心に 頭がクラクラと悲鳴をあげてしまう。 それでも落ち着いていられたのは ボクと同じくらい真剣な表情で この事態を受け止めている人がいたから。 >>24] あの…先生… ボクの記憶って… それに、ボクの父さんと母さんは… [ ボクの質問に先生が首を横に振る。 ボクの記憶が戻る確証はなく、 地道に治療を続けていくしかないらしい。 そして真にボクの心を抉ったのは 両親がここにいない理由だった。
] (31) 2022/10/26(Wed) 19:41:23 |
| [ 先生がボクと彼女の前で口を開く。 彼女の前で言っていいのかと躊躇う先生に 構いませんと言い切ったからだ。 ボクの父さんも母さんも >>0:106 違う場所でそれぞれ家庭を築いている。 中学生の頃までは親戚のお婆さんが 親の代わりになってくれていたけど、 そのお婆さんもボクが高校に上がる頃には 既に施設に入ってしまっていて。 今は元両親から養育費だけが >>0:107 毎月振り込まれている。 それがボク、朝日元親の現状なんだと。 緊急連絡先に登録された母さんの携帯に繋げて 先生が全て母さんに確認してくれたらしい。] (32) 2022/10/26(Wed) 19:43:17 |
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[ ボクがこんな目に遭っているのに それらしい人が誰も来ない理由が分かる。
でも、涙は見せなかった。 見せるほど、悲しくも感じなかったから。]** (33) 2022/10/26(Wed) 19:45:00 |
| *** [ 心の整理がつかないことを察してなのか。 先生が病室から出ると、彼女と二人きりになって。 すると、彼女がさっきのボクの質問に答えてくれる。] ハツナ、さん…? [ 確かめるように名前を呼んでみて。 >>25 必死に記憶の中を探ってみても、心当たりがない。 ハツナさん、と名前を呼んだのは ボクが以前そう呼んでいたと聞かされたから。 でも、ボクの手を握る彼女の言葉に ボクは首を横に振る。 >>26 予想だにしなくて当然驚いたけど 疑うよりも先に、哀しかったんだ。] (34) 2022/10/26(Wed) 19:45:58 |
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キミみたいな素敵な女の子は きっとボクみたいな男には勿体ないよ。
本当にキミを忘れてしまったなら ボクは最低で、救いようのない男だ。 (-10) 2022/10/26(Wed) 19:47:16 |
| [ ボクの言葉が紛うことなき本音であることを 彼女は分かってくれないかもしれない。 それでもボクは そう思えて仕方がなかったんだ。
彼女の感情が、届いた気がして。
] (-11) 2022/10/26(Wed) 19:47:51 |
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………ごめん。
[ 彼女の微かな望みを断ち切るように ボクはまた、首を横に振る。 >>27 もし彼女の話が本当だとしても 今のボクに彼女の特別である資格が あるなんて到底思えなかった。 ]* (35) 2022/10/26(Wed) 19:49:00 |
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