鳥葬 コルヴォ(匿名)は、メモを貼った。 2022/08/27(Sat) 2:36:57 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 愚者 フィオレロ「ふうん。不幸せに?」 言葉を切るのは触れるなのサインだろうか。そうなのかもしれない。けれど、それ以前に零れてしまうということこそが、きっと抱えきれないというサインだった。 サルヴァトーレは、目の前に差し出された救難信号を、見て見ぬふりはしない男だった。 それがちらつくということは、少なくともそこに何か拭いされぬものがあるということだ。どんなに些細なことでも。 それを見逃しているようでは、顧問は務まらないし。「変な話なもんか。大切な話だろ? 君にとって重要な話だ」 「あはっ。つまり花のせいで目が眩んでしまって、大切なものを見失ったってわけだ。なるほど、ほら! 大事じゃないか」 別にどう足掻いても聞き出したいというわけではないけれど、そこにあるものには応えたいと思うのが人情というものだろう。どうもこの男はそういう、マフィアには不似合いなお人好しさを持っているらしかった。アルバという組織の特性ゆえだろうか。 「へえ、それは素敵な女性だね」 「いいのかい? そんな美しい人に贈るものを、僕が手伝ってしまうなんて。ああもちろん、僕にとっては幸甚の至りだけれど」 (-60) 2022/08/27(Sat) 3:05:34 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ最初から本当に友達になりたくて近付いていたわけではない。最初は偶然から。 或いはいつからか男は貴方の素性を探って、ひとつの失われた者に近しいものを見つけたから。 甘やかな絆を築くつもりではなくなってしまったのだから、貴方の瞳に映る色も。 男にとっては知ったことではないし、その逆も同じだ。 此処で何を説かれたところで、何を変えられるわけじゃない。きっと納得しない。 罅の入ったまま幹を育てた植物はいつまでもその内側に傷を残したままに育つ。 いつか傷ついたままの幼いままの心は、他人の言葉で納得するほど良い人間ではない。 「……逃がそうとしてたんだ。こいつが面倒見てた子供と一緒にさ。 こいつらはオレたちの争い事なんかとは殆ど関係ない身分のやつだから。 自分は何処にも行かない、ここに残るなんて言うもんだから、どうにか説得しようとしてて。 逃がすつもりだったんだ。どっか遠く、別の生き方の出来る場所まで……」 説得しなければならないということは、彼女の望みとは違えたもので、勝手な押し付けだった。 それを喜んだかもわからない、けれどそうすべきだと思っていた、それは全て破綻したが。 相手にとっては少しも関係のない話は、同情を買うつもりというでもないのだろう。 後悔だとか、無力感だとか。耐えきれないものと向き合えば吐露せずにはいられなくなる。 死体はころりと分厚い毛布の中に転げて、座席から少しも身じろぎせず降りようとしない。 幅の圧迫痕のある両手首の先にある爪先には、新しく塗られたネイルがエナメルのように輝いていた。 中身のないからっぽの胴体は、頭は、折れた骨と伴う肉は直しきれずにそのままで、 その凄惨さが軽減されたわけではなく、ギャップが余計に物悲しいものを思わせた。 大事にしたかったのだ。友達のつもりだったから。それも手遅れなら全てが無意味だ。 相手の答えが欲しい訳では無い、けれど。壁と話して溜飲を下げられるものでもなかった。 → (-61) 2022/08/27(Sat) 13:10:06 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォわかった、と頷いて運転席に乗り込む。助手席は空いているから、座れやするだろう。 そこにもいくらか花びらが落ちている、干からびたものはなくて新鮮なもので。 まともに体と頭が動いているうちは、きちんと掃除されていたのだとわかるだろう。 裏の顔と表の顔が混在する。つい最近まではそういう場所ではなかったのだ。 エンジンキーを回せば、少し古びたエンジンが起動し始めた。ギアを入れて、夕闇の中を走り出す。 手はハンドルとギアを行き来して、その間に狙われたなら簡単にとは言わずとも殺されていただろう。 片方が何も出来ないのが理由で、どちらも血を流すことはなく車は走り続ける。 都市部の郊外から郊外へと抜けていく道中は、誰に邪魔されることもなく静かだっただろう。 今も尚互いのファミリーを狙う問題が解消されていない今であっても。 「ビアンカを、こいつを狙ったのがアンタらじゃないのはわかってる。 ……そう構えなくていいよ、疑ってるわけじゃないから。他はともかく。 アンタが、オレがやったことをどれだけ知ってるかもはわからないけど」 そろそろようやくはっきりと、言外に己が何者であるかを明かした。 本当なら、普段ならそんな無意味なことはしない。幾らでも黙ったまま取り繕う方法はある。 迂回せずに会話を続けることが気怠くなったのかもしれない。もうそんな必要さえないから。 さして車は走り続けたわけでもなかったろうに、長い長い道中。 ぽつぽつと時折口を開いた時に出てくる言葉は、以前よりも迂闊にさえ思えるものばかりだ。 相手がそれを気にすることはないだろうから、ただただ事実の羅列でしかないのだろうけれど。 (-62) 2022/08/27(Sat) 13:10:30 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ貴方が褒める度、アベラルドはそれを拒むことなく受け入れた。 誰が自分の事を評価してもそうだ。受け入れた。 その度に居心地が悪いような気がしたけれど、 それでも感謝をされるのは悪い気はしなかった。 期待があれば失望がある。失望が怖いわけではないが、 勝手にかけられた期待を裏切り勝手に失望されるのが非常に面倒臭かった。 思えばアベラルドは、貴方に失望されることを考えていなかった。 それもきっと貴方に対する信頼だったんだろう。そして、甘えの一つだ。 「そうかい。でも懲りないんだろ、お前」 軽くあしらえど貴方はまたそういう言葉をこちらに掛けるのだ。 ……明日からは、こういう事ももう誰も聞けなくなる。 「……そうだよ。どうしてもだよ」 「死なない訳ないだろ。お前も、俺も、家族も、いつか死ぬ。遅かれ早かれいつか死ぬ。それが今ってだけだ」 旧知の友を手に掛けるとなれば怖気付きでもするのだろうかと思ったが、案外自分に迷いは無いらしい。 貴方の首をぐるりと包む手付きに震えはなかった。その上を走る動脈の位置を確かめるように、親指が皮膚を撫ぜた。 自分を見下ろすアメジストを見つめる。 「俺も不思議な気分だよ。……安心しろ。うまくやる。苦しいのは短くて済むようにさ。他の奴に殺されるよりきっとずっと楽だ」 「……ハハ。そうか。お前、死ぬんだな」 「俺も惜しいよ。ありがとう」 他人事のような言葉を皮切りに手に力を籠める。 壁に押し付けるようにぎゅう、と。 貴方の最期の体温を掌に感じながら。 (-63) 2022/08/27(Sat) 13:56:54 |
【秘】 プレイスユアベット ヴィオレッタ → Ninna nanna ビアンカ>> ビアンカ 「えぇ、そうですね。 お金があれば、穏やかな生き方ができるでしょうね」 期待通りの素直な答えに、目元を緩めて。 あなたらしい現実を見据えた答えに、僅かに苦笑する。 そしてその通りだとゆっくり頷いて。 「でも、きっと。 あなたはもう色々なものをヴェルデさんに あげられていると思いますよ。 そうでなければ、ひな鳥なんて すぐ親の元を去るものですから」 いつかその子から伝えられるだろうから、 余計なお節介だと知りつつも、言葉を注ぐ。 穏やかな笑みと声に、ひと匙だけ。敬意を込めて。 [1/2] (-64) 2022/08/27(Sat) 14:30:11 |
【秘】 プレイスユアベット ヴィオレッタ → Ninna nanna ビアンカ少しも残念そうではない声に 口の端を僅かに上げる。 そう、この日々こそが辛い夜に見る、儚くも楽しい夢だった。 「はいはい、随分と賑やかなお客様ですね。 すぐ準備いたしますので、少々お待ちください」 催促の声にくすり笑って、席を立つ。 ついでにグラスをその手から救い出した。 「次は少し時間をいただきます。 その間に愚痴などあれば、聞きますよ?」 別のグラスに今度は赤ワインを注いで、手元に一つ。 あなたの前に一つ。こちらにはウィンクを添えて出す。 ここからはきっと、いつも通りの二人。 愚痴を零して、愚痴を聞いて、とるに足らない話をして。 慰めたり、笑い飛ばしたり、飾らない話を聞かせあう。 強くて弱い女たちの、 ささやかな、けれど大切な夢見る時間が今日も始まるだろう。 [2/2] (-65) 2022/08/27(Sat) 14:36:48 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 愚者 フィオレロ「変なやつといい仲になるのがうまいなあ……違和感を感じたのがその辺りだったんだよ。 たらい回しにするつもりはなかったぞ、斡旋というんだ」 愛の形に趣味がありすぎた、普通を求めるのなら、なんて。そんなことを説教連ねたって仕方ない。 「喜ばせるのが上手かったら、少なくとも部下をこんなめに合わせることにはならなかったんだ。頭がいたくなる説教だ」 死なせることもなかった。 共に並んで好きなことができて。 未練を残させることもなかった。 これは身勝手な、贖罪。 「おう。 ……まあ俺を"待っている"やつなんて何処にも居ないがな」 大切なものを守りたくて。 手を伸ばされても掴めない場所に全て置いてきた。 だから今だって、また一つ手離す。 「フィオレロ」 それでも俺たちが遺したものは確かな形になるだろう。 生きている兄弟の手によって。 「もう迷子になんなよ。 お前は生涯ノッテだったんだからな」 ごきげんよう、手をあげながら何処へともなく男は足を向けた。 (-66) 2022/08/27(Sat) 15:17:01 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド君の甘えを男は際限なく受け入れた。 君だけではなく誰の甘えもそうだった。それが家族に乞われるものであれば、求められるものであれば、欲しがられるものであれば、どこまでも与えた。注いだ。そこに微塵の躊躇も、遠慮もなかった。 結局は早い者勝ちだった。 笑顔は肯定。いつだって男は笑顔を浮かべて、いつだって君の言葉に肯う。 君の言葉は正しい。 今だって失われる命がある。昨日だって誰かが死んだ。そもそもこの波乱は相手の頭が飛んだことから始まっているし、そうでなくても日々何がしかで人は死ぬ。それら喪われたものを悼む男の姿を見たことはあるだろうし、もしかしたら一緒に花を手向けに行ったこともあるのかもしれない。 だから、やっぱり。 男の言葉は甘い。まるで使い古された陳腐なフィクション、或いはぬるま湯で生きる市井の人々に通ずる無頓着さがあった。 「そうだね」 今、彼は君に命を明け渡す。無防備に無遠慮に差し出してしまう。 性別なりに喉仏の浮いた首元に指を這わせれば、橙の瞳と紫の瞳がかち合った。酷く殺風景で寂しい路地裏のこの空間で、互いの瞳に灯る夕暮れと夜の手前だけが鮮やかだった。 最期の交わりが途切れないように見据える。 男が少し唇を噛んだように見えたのは気の所為かもしれない。 そして。 「どういたしまして」を告げる猶予は果たしてあったのか。 首が絞まる。気道が潰される。空気の供給が絶たれる。息が、詰まった。 (-67) 2022/08/27(Sat) 15:28:19 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ欲した者から与えられるのであれば、今貰い受けようとしているこの手の中の命も早い者勝ちだったのだろうか。 いや、きっとそうだ。そうだと思っているからこそ、 自分は今ここでこうしている。許されるままに。 貴方の骸が遺れば悼む者はきっと多いのだろう。 自分だって貴方の墓標があれば毎日花の一つでも添えるだろう。花屋で買う花が一本増えていた事だろうし、 この話はこれからの未来で起こり得ぬことだ。 「サヴィ」 返事は出来ないだろうに、声を掛ける。 「お前、人は死んだらどこへ行くと思う。天国でも、地獄でも、あるだろ。もしかしたら、どこにも行かないのかもしれないけど」 声音は努めて冷静でいつも通りだった。込められる力ばかりが強くなる。貴方の瞳が閉じるその時を見逃さないように、一時も目を逸らさずに。 「俺、お前と一緒に地獄に行きたいよ。お前はもしかしたら天国へ行くかもしれないけどさ」 いつ貴方が自分の声を聴きとれなくなるのかもわからないのに、世間話のように続けるのだ。 「道の途中で待っててくれよ。サヴィ」 「お前と言葉を交わせなくなるのは少し惜しいんだ。お前と話すの、嫌いじゃなかった」 「嫌いじゃなかったんだよ」 それで、いつもみたいに笑うのだ。 貴方が事切れるその時まで。 (-68) 2022/08/27(Sat) 17:01:07 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド────息が苦しい、 今更になってそんな当たり前のことを思う。 涼し気な顔をしていても、穏やかな物言いをしていても、男はただの人間だった。ロボットでもアンドロイドでもないのだ。息を絶たれれば苦しみを感じる。死に瀕すれば痛みを感じる。緩やかに弧を描いていた唇の形が歪んで、ぱくりと開くまでにそう時間はかからない。強ばった指が震えて衣服を掻いた。 酸素が回らない。 頭が割れそうに痛む。このままでは死んでしまうと訴える。顔が酷く熱いのに身体の内側はやけに冷えていた。足の感覚は既に消えてしまって、自分が今立っているのかも分からない。行き場のない諸々が身体の中で暴れ回るようで、酷く痛くて五月蝿くて、それでも君の声だけは呪詛のように聞こえてくる。いつもの癖で返事をしようとしても咳すら出ない。 ────ああ、 死ぬのだ、と。 不意にはっきりとわかったのは、ようやくその時だった。それで一瞬頭が晴れて、それから限界を迎えたように霧散していく。意識がゆっくりと溶けていく。意思の束がほつれていく。とろとろと思考がほどけていく。 ああ、くるしい。 あたまがいたい。 陽がもう落ちる。夜が来る。 暮れる瞳から生理的な涙が零れ落ちた。 消える直前の火は一際強く輝くという。 いきができない。 とてもくるしい。──── 閉じようとした双眸は最後にもう一度、一際大きく、大きく開かれた。 「──── 、」 ▼ (-69) 2022/08/27(Sat) 19:10:03 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド色を失った唇が微かにうごく。 「Baciami,」 「Baciami, ────mio,」 " Baciami, amore mio. " キスして、僕の愛しい人。 色を失った手が緩慢に伸びる。 男の手は真白の手。君の守った無垢だった。 (-70) 2022/08/27(Sat) 19:18:38 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (a4) 2022/08/27(Sat) 19:20:15 |
【人】 孤独では死なない兎 ツィオ【ノッテアジト廊下】>>19 >>37 ファミリー ――すれ違いざまに 軽い音で叩いていった手と、軽く重ねられた手に、 目を瞑って、笑いながら満足げに、口の端を持ち上げた。 「おかえり、俺の愛しい悪童ども――」 振り返ると、すれ違っていった怪我人二人の首を 纏めるように両手で抱いて廊下の行く先を指さす。 そこには。 あの日三人で忍び込んで、こってり怒られてなお、 網膜から消えてなくならなかった『街並み』がある。 俺たち大人になり切れない少年が、 ――不要の烙印を押されたはずの孤児が。 何かを求め、希求してしまうほどに光り輝く街並みがあった。 ▽ (38) 2022/08/27(Sat) 19:51:39 |
【秘】 グッドラック マキアート → 天使の子供 ソニー「こんな、ッ!ことで─── ハァ、死んだら、恨むからな……」 なんてことを口走るんだ、と叱るようなニュアンスを込めて。つられて苦笑をするものの、力強い突き上げに耐えかねて直ぐに表情はだらしなく崩される。 アナル全体から奥の一点まで甘い痺れを訴え始めたころ。散々嬲られたところを包み込まれる感触がすると、ひゅ、と息を呑む音がした。 腰を逸らそうとしても今度は杭のように突き込んで前立腺を擦るそれが許してくれないどころか、より一層絶頂へと押しやってきて、肌を打ち付け合うたびに気が狂うような射精欲が込み上げてくる。 「んはァッ、あっ、あぁ゛! わか、った、わかった、から……ぁン!」 天を仰ぎ、甘い善がり声で鳴かされる。こんなの直ぐにどうにかなってしまいそうだ! ただその中で、意図をなんとなく察する。向こうも限界が近いのだろう、背中に整えられた爪を突き立てたり掻き抱いたりして、一身に受ける快感への抗議としておいて。 けれど相手の顔を立たせるべく、抗わず瞼を閉じて腰から全身までに駆け巡るエクスタシーを懸命に拾い上げようとする。 蕩けきった声で名前を呼び、イキそうなことを何度も伝え、情欲に突き動かされるまま可愛らしく吠えた。 (-71) 2022/08/27(Sat) 19:55:49 |
【人】 孤独では死なない兎 ツィオ【ノッテアジト廊下】>>38 "マウロ" "リック" "ツィオ" ――俺は嗤う。 「――天辺取ろう。 今度こそ、手を伸ばしても届かなかったあの景色を、 諦めの悪い死にぞこないの俺たちのものにしよう。 独りじゃ無理だ。二人でも足りない。 ただ三人なら、急に敵が居なくなる――そうだろ?」 こいつらの顔を束ねて見えなくしたのは、 互いの表情を見えなくするため。 だってキャラじゃないだろう――? 本気で夢を見るときの横顔なんか、 いつだって、男は見られたくないもんだ。 その三つ並んだ背中が。 あの日、監視塔の上で街を眺めたその背と重なる。 carina. 「――さあ。――踊ろうか、カワイコちゃん」 兎は、マフィアの顔で嗤った。 (39) 2022/08/27(Sat) 19:58:25 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーあなたの素性にも、その腹の底にも、大して興味は無かった。 仮令何者であったとしても、もう誰も懐に入れるつもりは無くて。 初めから、これは何処までもそんな薄情な人間の言葉なのだから。 そのようなものが、誰の心に留まるなど期待するはずもない。 何れにしても、確かな事といえば。 あなたが何者であっても、掃除屋にとっては重要な事ではなかった。 あなたは死者の前で無粋な真似をするような人間ではなかった。 今はただそれだけが判れば十分だった。 「だが、何も得るものは無かった。」 「あんたも、あんたが手を差し伸べてやろうとした相手も。 少なくとも、あんたの思ったようなものは、何一つとして。」 死者は黙して語らない。 少なくとも、凡そ大半の人間にとってはそうだ。 ともすれば、それ以外の何かは得ていたのかもしれない。 それでも、あなたがそうして描いた望みの通りにはならなかった。 だから生者にとっては、今ここにある事実だけが全てでしかなく。 日常の中、薄っすらと死の気配が漂う車内は、静かなものだった。 死者は何も語らず横たわり、及ばなかったあなたの思慮を物語る。 後には破綻した願望の跡と手遅れの悔悟ばかりが虚しく転がって。 心の軋むようなその独白を、慰めるようなものは何処にも居ない。 その疵に寄り添うようなやさしい答えなどありはせず、 けれど、物言わぬ屍体や壁と言うには幾許か聞く耳を持って。 それを聞き届けるものだけが、確かにそこにあった。 (-72) 2022/08/27(Sat) 20:02:00 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー対話とも、一方通行の話ともつかない距離感の助手席で。 夕闇の中、目的地へと着くまでの、長くも短い道中の事。 取り繕わないあなたの言葉を聞いて、息吐くように笑った。 「俺があんたの仕出かした事を幾つか知っていた所で、 今更何にもなりやしませんよ。 起きた後に何をしたって、そこには何の意味もありはしない」 「後には何も残らない。たった一つ、俺達の、後悔を除いて。」 持ち込まれた遺体に何ら関わりが無いのは、言うまでも無い事。 あなたが何をしていたとて、何もしないのも本当の事。 無い仮定として、あなたが唯一の友人を殺めていたとしても この掃除屋はきっとここで何をしようともしなかっただろう。 「…そうは言っても、腹の底も知れない人間の前で、 ちっとも構えもしないなんてのは。 それはそれで、却って疑わしいもんでしょう?」 なんてのは、今のあなたの様子を鑑みれば 随分と皮肉の利いた言葉になってしまうのだろうけど。 たとえば付け入る隙があれば、誘い込むような怪しさがあれば。 魔が差す事は、或いは猜疑が首を擡げる事はあるだろう。 掃除屋は、相手が身内であっても、それ以外であっても。 何れにしても、同じだけの線を引いていた。 互いにそれをしない為の均衡は、必要なものだった。 事ここに至ってしまえば、それも不要なようだったけど。 (-73) 2022/08/27(Sat) 20:02:31 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー「結局は。さっきも言ったように、後は時間潰しなんだ」 「俺はこの後どうなろうと構いやしない。 あんたも、そこの知り合いを連れて帰ったら…… その後は、どうなるんだかな。」 回りくどく取り繕う事を止めたあなたの言葉は、 もはや殆どそれなりの事をしていると白状したようなもの。 そこには幾らかの差こそあれど、それはこちらも同じ事で そして今している事も、互いに随分と勝手な事だろう。 いったい、自分勝手に行動を起こしたツケというものは。 果たして誰にとって、どれほどのものになるのだろうかな。 結局の所、掃除屋もあなたに答えを求めてはいない。 互いに何を語った所で、恐らく殆どは互いに殆ど関係の無い話でしかなく、 だから何れに答えが返って来ようと、或いは何も無かろうとも。 きっとじきに二人と一人を乗せた車は目的地へと着いて、 そうしてきっと、この夜もまた、一つの死が葬られる。 名もなき烏の仕事場たる僻地の廃倉庫。 広くがらんとした庫内には、あたかもそこがガレージであるように 花屋のものとは違う、一台の商用バンが乗り入れられている。 暗い夜に、内部全てを照らせるだけの灯りは随分と目立つものだから。 灯されるのは幾らかの作業灯だけ。 薄暗く、人の営みの気配の感じられないその場所は、 ともすれば、その倉庫そのものが、一つの棺のようだった。 (-74) 2022/08/27(Sat) 20:03:21 |
【人】 銀の弾丸 リカルド【ノッテアジト廊下】>>37>>38>>39 俺の家族 「――ハ、ついに天辺ときたか」 夢を語るのは俺の役目だったはずなのにな、と嗤う。 俺の上にいるべき上司は、たった一人だけ。 その上司に送り出されたのだ。……ならば、あの方の元へ行くときは、誇れる自分であらねばならない。 「お前たちに耳に入れておくべき情報がある。 特大級の機密だ……3人でなら……、 上手く料理できるだろう。――わかるな?」 これだよ、と。 ツィオが持つノートパソコンとUSBが入ったカバンを撫でた。。 上司が長年努力して作り上げた情報収集装置。 ラウラが残した軌跡を見たならば、貴方達はなんと言ってくれるだろう。 閉じた目の裏に描くのは、あの日見た広い街並み。 あの全てを手にするために。 地獄のよしみだ、肩を組んで歩いていくとしよう。 (40) 2022/08/27(Sat) 20:36:45 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 風は吹く マウロ【アジト内のリカルドの部屋】 廊下で兄弟たちと再会して、それから。 リカルドに充てられた部屋で、上司と密かに眺めながら情報を得ていたパソコンについて話した後だろうか。 上司のために淹れるのがとても上手になってしまった珈琲を入れ振る舞ったりして、不意に話題を変えるように2人に声をかけた。 「あぁ、そうだ。 俺がマウロに手術を施した医療施設についてだが……、あそこは秘密裏に作ったものだから機密にしていて欲しい。 もしもの時に活用してきたものだからあまり知られたくないし……それにだな」 「あそこに今、 テンゴさんを入院させて匿っている 」このゴタゴタの中で、彼やヴェネリオを邪魔に思っていた身内の犯行と断定しながら、語る。 自分たちには、今すぐてっぺんを取る力はない。 個人的な事情をおいて考えても、ヴェネリオが居ない今、まだまだ彼に引退されるわけにいかない。 それが最大の機密にしたい理由だ。 「俺やマウロ以上の絶対安静の状態だ。 ……そう言えば容態に関してはわかるだろうが……、よかったら時間を見つけて顔を見に行ってやってくれ」 (-75) 2022/08/27(Sat) 20:57:13 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ貴方の表情の変化を、苦しげな様子を、夜さりの頃のようなその穏やかな色から雫がころりと零れ落ちるのをじっと眺めていれば、そういえば人が死ぬ様子をこんなにゆっくり見た事は無かったな、なんて頭のどこかにぼんやりと浮かんだ。 人を殺すのにこうやって首を絞めるのも初めてだった。 普段であればこんな面倒な事、しないのだから。 ただ、貴方の命を仕事のように簡単に終わらせたくないと思った。 これは仕事でもなんでもない。 ただの私情で、甘えで、エゴだ。 どれも貴方以外にはあまり見せなかったものだ。 貴方の命を大切にしたくて、こんな事をしている。 これは矛盾だ。判っているとも。 命の灯が一つ消えて暗澹とした帳が意識を覆い包むのも、 また一つの夜の訪れとも言えるのだろう。 月の明かりも碌に届かないようなこの場所でも、 この男の瞳の色は尚も明るく。 「………………、si」 伸ばされた手を最期に握ってやれないのは少し残念だった。 汚れのない貴方のその手は、頬にでも伸ばされただろうか。 「Volemtieri tesoro.」 そう言って、貴方の首を絞める手はそのままに。 少しだけ背伸びをして、冷たくなってしまった貴方の唇に口付けた。 僅かに残った貴方の命を啄んでいるかのようだった。 (-76) 2022/08/27(Sat) 21:15:31 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー噛まれた指をわざとらしく痛そうに振って立ち上がった。 冷蔵庫に入っていたのは男の得意料理。あえて教えてもいないが主食であり娯楽のひとつであるのは既に知られてもおかしくはない。 もっとも仕事ですら分け与えているのは20年来の友人と直属の部下ぐらいであり、プライベートでの付き合いなんて当の昔に潰してる上に、今では足を揺らして座っている子供ぐらいとしか面と向かって話さないのをきっと彼は知らない。 電話で今では何でもすむ、聞かれてもいい内容だけを話すのは厄介だが少しでも接点を作らないことが他人に疑われない秘訣だ。 伝えてやる機会なんて早々ないだろう、関係はないと言うにはあまりに冷たいがこれから離れ離れになっておかしくないのだ。向こうもファミリーからノッテの悪態をどれほど吹き込まれるかわかったもんじゃない。 「ブラーヴォ、ソニー。 相変わらず花が好きだなお前は、祭りならどこでも花が見れるだろ……まあ暖かくなってくるこの時期は嫌いじゃねえけどよ」 食べかけのタルトタタンを取り出し調理台の上に乗せ、一人分を綺麗に切り取れば残りの半人前は全部自分用に。 食事代わりにもしている甘味は、林檎の蕩けた甘味が凝縮されたような琥珀色をしていて作りなれているのがよくわかる。 「なんだ、まだ何かあったのか? 思い付かないな……教えてくれ」 表情からしていい報告なのだろうか。 お互いの機嫌や回りの視線を気にしなくていい最後の時間かもしれない、そう思っていた男は努めて気さくに。普段通りと、名残惜しさを含めて再び隣へと向かう。 銀のフォークを並べる頃にはその顔を覗き込もうとした仕草を抑えて、時間をかけて挽かれた珈琲へと手を伸ばしていた。 (-77) 2022/08/27(Sat) 21:21:28 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド「いいんだ。どうせもう会いには行かない」 しばらくは。この時にはまだそれくらいのつもりで、本当に二度と会えないとは思っていなかった。 知っていたならばもう少しくらいは考えた行動が出来ただろうか。それとも、余計に錯乱していたか。 互いに知ることの出来ない朝日の色を、想像したところで意味がない。 けれど相手の感じていたように、素のままの自分を見せていたのは、たった一人にだけだ。 手が届かないと思っていて、見上げるばかりだと思っていて。 手に入るなんて思っていたならもっとずっと、何もかも振り切って何でも出来ただろうに。 二人分の体重と身悶えを受け入れて、柔らかいソファが大げさなくらいに音を立てる。 初めは殆ど強引にこじ開けているようであったのも、ごくゆっくりと引き抜いて、押し込んでを繰り返すごとに段々と少しくらいは身動きがとれるようになってきた。 流し込まれた潤滑液を絡めて、体の中をぐらぐらと茹だったような熱が動くの感じるのだとしたら、 神経に由来する快だけでなく、痛みや単純な体温の上昇のためもある。 信号の全てを撚り集めて錯覚させたなら、それはそれは随分と脳を揺さぶるものだろう。 脳髄を突き抜けて飛び出すような快楽も、異常なほどに目の前を眩ますような昂揚感も。 精神論の一本で耐え足掻こうともままならないから、それは罪であり、薬なのだ。 「どんだけ吠えたって外には聴こえやしないから、安心してよ。スタッフにも少し騒ぐと伝えてある。 ……こんなのさ、味わったことないでしょ? クセになっても困らない状況で、良かったね」 空間を押し広げて奥まで突き込み、雁首の抜けそうになるまで腸壁を引きずる。 肉がぶつかるたびに、流れ落ちる液体が卑猥な音を立てた。それも耳に入ってるやら、どうか。 元々こうした行き過ぎた行いが好きな訳では無い。自分の気分を乗せるために、上体を傾ける。 背中を見下ろして、短い髪を指で梳いて。過剰に巡る血流の為に赤く染まるだろう首筋に触れる。 シャツ越しの肌が、背中に寄せられた。 → (-79) 2022/08/27(Sat) 22:02:54 |
【独】 天使の子供 ソニー果たして本当はあの日、自分はどうしたかったのだろう。 誰かに殺されるくらいならと恐れて、焦って。その前に自分で手をくださなければならないと思った。 それが叶わず指が震えるのなら、どうか殺して欲しいとさえ考えていた。 けれども結局は、向かい合う誰かに何を伝えるのも尻込みしてしまって、喉がつかえて。 何も言い出せず逃げるようにその場を後にしてしまった。 振り返ってもう少しだけでも言葉を交わしていれば、己の意思を伝えていれば。 何か違う結果を手にしたのだろうかと、今になってもそう思う。 それは敬愛だったし、性愛だったし、甘やかな思慕であったのだろう。 なんだってよかった。傍に在れるならどんな形であってもよかった。 それが壊れるのも、一度突き放されたように距離が離れたのも怖かった。 舌先に僅かに残った薬が己を錯覚させる。求めるものはこの場にはない。 けれども増幅された共感は、夢見る思いをほんのすこしだけ表層に押し出した。 (-78) 2022/08/27(Sat) 22:03:06 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド「、ずっと。こうしたかった」 腕を回し、自分よりも背の高い体を抱き寄せる。そうだ、多分これくらいだ。 微かに鼻に触れる甘い匂い、煙草の匂い。虚しいだけの錯覚を後押しする。 一度決壊し掛けたものがつんと鼻の奥をなでて、少しだけ声を震わせた。 ほとんど自分が満足するためだけのピストンを繰り返しながら、肩に頭を埋める。 首筋に、やけに控えめな浅い鬱血痕が残された。唇は柔らかい。 「先生、」 (-80) 2022/08/27(Sat) 22:06:24 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ誰が口を付けたものであれ、躊躇うことはない。 そう、特に、あなたが相手であれば。 「そんなの忘れるなよ」 呆れたような声。 かたちのよい眉が片側だけ、わずかに歪む。 少年は、あなたが普段、どんな風であるのか知らない。 あなた方の集まるような場へ顔を出すこともないのだから、少年の前のあなたしか。 あなたが何であれ、どのような人物であれ。少年にとっては、そういうあなたがすべてだ。 だから少年も、いつもよりすこし、ただのこどもみたいに。 交換したウインナーをかじる。 辛みがじんわりと舌に熱を灯す。 「そお、よかった」 「おれも大丈夫。 でもそうだな、これは喉が渇くかも」 よく叱られる相手と言えば、脳裏をよぎるのは一人だけ。 けれど彼女だって存外、口が悪いことを知っている。 それに、何より。 怒らせたいわけでは勿論ないけれど、彼女に叱られるのはべつに、少年はそんなに嫌ではないのだ。 くす、くす。唇がかすかに、笑声をこぼした。 (-81) 2022/08/27(Sat) 22:12:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → グッドラック マキアート君の言葉に男は目を細めるだろう。 君はいつだって素直で、優しく、そして聡明だった。マフィアという組織はどうしたって暴力的な側面を孕んでいる。法を嘲笑い、倫理に抵触し、時には道徳に砂を掃きかけもする。 そんな中にあって、いつまでも擦れてゆかない君のような人間は貴重だったのだ。もちろん多少要領がよくなったり、隠し事が上手くなったりはしているのだろうけど。 「へえ、それはいいね」 こちらも同じく、楽しみだという表情を。 「その時は何でお祝いしようかな、君はあの子ほどお酒も好きじゃないし……」 「君が何を選んでも、僕は応援するよ。何でも言うといい」 未だない先を想うのは、生者の特権だ。 少なくともこの時二人は、無責任な明るい未来を絵図に描いていた。それくらい、穏やかな夜だった。 (-82) 2022/08/27(Sat) 22:45:43 |
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [メモ 匿名メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新