【赤】 灯守り 立春[パパは、私の知らないことをなんでも知っていた。 ママは、私の出来ないことがなんでも出来た。 お姉ちゃんが現れるまで身近な大人が 両親かご近所のおばさんくらいしか居なかったから、 『大人』はみんなそうなのだと思っていた。 だからお姉ちゃんは、幼かった私にとって 『めずらしい大人』だった。>>*21 お姉ちゃんは、おままごとで 『お料理』を食べるふりをするんじゃなく その『お料理』をきっかけにお話をしてくれた。 ママを真似してどんなに『おいしいお料理』を作っても 『本当のごはんみたいには食べられない』のは 子どもの私もちゃんと理解していたから、 お姉ちゃんが話してくれる色々なお話が 楽しくて、わくわくして、大好きだった。 パパはいつだって私より先に私の気持ちを察そうとして パパの考える最善を尽くそうとしてくれて、 それはそれで優しかったと思っている。 けれど、『ぱぱの役』を担ったお姉ちゃんは 私の気持ちをひとつひとつ根気強く尋ねて、 私自身も上手く言葉にできなかったような私の望みを 丁寧に紐解いてから形にしようとしてくれた。] (*60) 2022/01/23(Sun) 23:04:07 |
【赤】 灯守り 立春[空を映したような虹色のピクニックシートの上で ほとんど休みなく毎日のように生み出される "ぱぱ"と"まま"とぬいぐるみたちとの物語は、 最初は確かに両親の真似事だったけど そのうちに私達ふたりしか知らない新しい物語になって それがとても楽しかったのを憶えている。 お姉ちゃんが、ごっこ遊びじゃなく現実に 代理を担っていたことを 幼い私はまだ知らなかった。 お姉ちゃんが一体何者なのか、さえも。] (*61) 2022/01/23(Sun) 23:04:15 |
【赤】 灯守り 立春[何の疑問も抱かずに目の前のものを素直に吸収しては 模倣と反復、少しの創造を繰り返していた幼少期は、 やがて身近にあるもの全てに疑問を抱く いわゆるなぜなぜ期へと突入する。 どうして空は青いの? どうして夕やけは赤いの? どうしてお花が枯れると木の実ができるの? どうして土にお水を混ぜると固まるの? どうしてアメンボはお水の上を歩けるの? 世界のありとあらゆる物事が不思議で仕方ない。 最たる謎に包まれていたのは他ならぬお姉ちゃんだった。 どうしてお姉ちゃんは、 まつりにやさしくしてくれるの? どうしてお姉ちゃんは、 まつりのおねがいを何でも叶えてくれるの? どうして、『行かないで』は叶えてくれないの? どうして、どうして、 『行ってきます』じゃなくて 『また遊びに来ます』なの?] (*62) 2022/01/23(Sun) 23:04:20 |
【赤】 灯守り 立春おねえちゃんは、 まつりのほんとのおねえちゃんなんだよね……? どうしてずっといっしょにいられないの? どうしてどこかにいっちゃうの? パパも、まいにち、どこかにいっちゃうの。 なんにちもあえないときもあるの。 おしごとだ、っていってた。 おねえちゃんもおしごとなの? どんなおしごとなの? [お姉ちゃんがどんな想いで私に付き合って どんな想いで私の質問を聴いていたか、知らない。] おしごと、たいへん? あのね、パパもママも、かたをとんとんってしたら よろこんでくれるの。 とってもらくになるんだって。 おねえちゃんも、 とんとんってしたらげんきになれるかな? (*63) 2022/01/23(Sun) 23:04:35 |
【赤】 灯守り 立春[今にも泣き出しそうな笑顔で 私の絵を受け取ってくれたお姉ちゃんが、 どうしてそんな表情をしたのか、知らない。 幼い頃から貰い続けている抱えきれない程の愛情に 感謝の気持ちを返せている気は 大人になった今でも全然していない。 けれど、 お姉ちゃんがどうしたら心から喜んでくれるのかは ずっと、ずっと、今も考え続けている。]** (*64) 2022/01/23(Sun) 23:04:42 |
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