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【人】 結城 朔也[ やよいの両親が事故で亡くなった、と聞いたのは、 10年前のこと。 僕も会ったことのあるその人たちが、 もう二度と会えなくなったのだと、 死というものを実感したのは、 その時だったかもしれない。 けれど、やよいが感じたこと、 それから、やよいに起こったことは、 僕の比ではないだろう。 ひとりになったやよいを抱きしめて、 小さな手で頭を撫でた、 そんなことも、あったかもしれないね。 幼いやよいは親戚に引き取られて、 ここから離れることになった。 幼い僕にはどうすることも出来ず、 守りたかった女の子に、手を振ることしか出来なかった。 身を裂かれる程、苦しい思い出だ。 ] (132) 2023/02/18(Sat) 11:45:10 |
【人】 結城 朔也[ 母さんが亡くなったのは、やよいとの別れがあった後だ。 突然分かった病気によって……あっという間、だった。 不幸の比べ合いをするつもりもないけれど、 僕には父さんがいるから、と、 思っていたのも事実だ。 ……やよいはもっと、と、思ってしまった。 父さんは精神科医だけど、 最初から、跡を継ぐのだと思っていた訳ではなくて。 僕が医者を目指そうとしたきっかけは、 きっとここが始まりなんだろうね。 ――というのは、誰も知らなくていい話、だ。 ] (133) 2023/02/18(Sat) 11:45:51 |
【人】 結城 朔也[ もしも、やよいとの“デート”中、 君が、記憶の中にいる、僕の母さんについて尋ねたなら、 亡くなったのだということを、 君には話したかもしれない。 当時のことを知っている子は知っているだろうけど、 知らない人に、わざわざ言うことのない話を。 きっとさらりと口にしていた、と思うけれど。 ] ……寂しいと、思うことは、あるよ [ 少しだけ、君に弱音を吐いたかもしれないね。 彼女 には言わない、恋人同士の秘密だ。 ] (134) 2023/02/18(Sat) 11:46:35 |
【人】 結城 朔也[ けれど今、また、 大切にしたいものが、 僕の手から零れ落ちていきそうになっている。 離れたくないと思う。 離したくないと思う。 けれど僕には、どうすることも、できない。 間違えてしまった僕には、 ステージに上がる権利などないのだと、 ずっと、思っている。 僕がずっと好きだったのはやよいなのだと、 やよいに告白を重ねて、恋人同士になれたけれど、 僕はずっと、どこかで後ろめたさを感じていたんだろう。 そしてやよいも、どこか割り切れない思いを、 抱えていたんじゃないだろうか、と思ってしまう。 ] (136) 2023/02/18(Sat) 11:48:07 |
【人】 結城 朔也[ ねえ、あの日僕が間違えなければ、 もしも、僕が望んだなら、 君は僕のために生きようとしてくれた? 彼女を、殺してでも。 ] (137) 2023/02/18(Sat) 11:49:55 |
【人】 結城 朔也[ ―― ふと、愛智くんに言われたことを思い出した。 これは、一人で勝手に考えて、 一人で勝手に決めている、だけなのだろうか。 ……例え叶うことのない未来でも、 口に出すことくらいは、許されるのだろうか。 ] (140) 2023/02/18(Sat) 11:52:22 |
【人】 結城 朔也[ 僕は逃げているだけ、なのだろうか。 自分の中で言い訳を重ねて、 誰かを殺すのが、怖くて、 それを誰かに押し付けているだけ、なのだろうか。 ] (141) 2023/02/18(Sat) 11:52:53 |
【人】 結城 朔也―― “彼女”について ―― [ あの春の雨の日、僕に傘を差し出してくれた“彼女”。 僕を助けて、優しくしてくれた、彼女。 彼女のことを、好きになったのは、間違いじゃない。 そして、彼女のことを今でも好きだということも。 ] (143) 2023/02/18(Sat) 12:32:04 |
【人】 結城 朔也[ やよいは、彼女を大切に思っているみたいだし、 父さんに見せることを提案したのも僕の方で、 だから、僕にとっては大切な人の家族…… 妹?みたいな感じ、かな。 同い年なのに妹なんて、変な話かもしれないけど。 だから、彼女には幸せになってほしいと思うし、 ……そうだね、愛智くんになら、託したいと、思った。 ] (145) 2023/02/18(Sat) 12:32:56 |
【人】 結城 朔也[ 僕は彼女に、謝らなければいけないのかもしれない。 やよいとのデート中、彼女が目覚めることがあったなら、 「幼馴染」だから、と誤魔化した。 彼女の前ではずっと、幼馴染であるだけなのだと、 そんなフリをしていた。 幼馴染という言葉に甘え続けて、 おかしくないのだと、誤魔化そうとした。 ] (146) 2023/02/18(Sat) 12:33:35 |
【人】 結城 朔也[ だけど、もっといけないのは、 僕にとって、彼女は幼馴染でもないと思っていることだ。 幼い僕との思い出があるのは“やよい”の方。 だから……本当に、『幼馴染』だなんて、 都合の良い言い訳、だ。 「桧垣やよい」はやよいのものだ。 だから、諦めるべきは彼女の方なのだと、 思ったこともある。>>0:88 ……例え、どちらかが消えない未来があったとしても。 やよいは表向きは僕と幼馴染で あろうとしていたのだから。 これからもやよいは「桧垣やよい」であろうと、 ……自分を隠し続けるのではないかと。 それは、僕には、納得できなかった。 彼女の幸せを願いながら、 愛智くんに、素直に「ただの幼馴染」だと言えなかった。 彼女だけの幸せを、願えなくて。>>1:5 やよいにも、幸せになってほしかった。 それに、僕だって、やよいと幸せになりたかったから。 そんな醜い感情だよ。 ] (147) 2023/02/18(Sat) 12:35:35 |
【人】 結城 朔也[ 消えるならば彼女の方だ 、と。……どうしたって、やよいと比べてしまう。 だけど、それがどうしようもなく苦しい。 彼女に申し訳ないと思うし、 そんなことを思う自分も嫌だ。 やよいにとって、彼女は家族のようなもので、 ……僕も、家族の大切さは、分かっているつもり。 だからこそ、やよいの考えることも察してしまう。 彼女のことも……大切にしたいから、 僕にはどうしても選べない。 ] (148) 2023/02/18(Sat) 12:36:50 |
【人】 愛智 哲弥[ 一縷の望み。 そんな想いで願った言葉は、 一つずつ、紡がれる君の言葉で、 黒く、痛みを持って、事実を刻んでいく。] ………… そう [ 二人一緒では生きていけない。 絶対に無理だと、 泣き出しそうな顔で、笑う君は、] (151) 2023/02/18(Sat) 13:11:14 |
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