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人狼物語 三日月国


147 【ペアソロRP】万緑のみぎり【R18G】

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視点:


到着: アウローラ

【人】 アウローラ

 
 
[ ―――…この世界は、わたしにとって『美しい物語』。 ]
 
 
(147) 2022/05/18(Wed) 23:03:23

【人】 アウローラ

[ とおいむかし。まだわたしが小さかった頃。
 よく、夢を見ていたの。

 ここではない、どこか知らない場所。
 知らない景色。知らない人たち。
 そんな世界で、わたしじゃない「私」は生きてきた。
 物心ついた頃からずっと、そんな夢を、見てきた。


 先生やシスター、親代わりになってくれた領主様。
 孤児院で一緒に育った年上の兄姉たち。

 他の誰に聞いてもわからない、
 わたし以外の誰も知らない、
 その見知らぬ世界の記憶が
 所謂『前世』と呼ばれるものだと知ったのは、
 本当につい最近。


 ―――…半年前、わたしがはじめて、
 この学園に足を踏み入れたときのことだった。 ]
(148) 2022/05/18(Wed) 23:06:11

【人】 アウローラ

[ 『夜明け告げるは星の唄』
 あの遠い世界で、「私」が遊んでいたゲームの名前。

 そう。今、わたしが生きているこの世界は
 「私」がかつて生きてた世界の人たちにとっては、
 ゲームと呼ばれる架空の物語の一つなんですって。

 所謂『乙女ゲーム』と呼ばれるその物語は、
 とある地方の村の孤児院で育った主人公の許へ、
 ある日、王都から魔導師たちが訪れるところから始まる。

 魔導師たちによると
 主人公はこの世界では特に稀少な光の魔力を持っていて
 その保持者を保護する(或いは利用するために)
 王侯貴族の子女たちも通う王都の学園への入学を
 特別に許可されることになる。

 主人公は、この国の王子である双子の兄弟や公爵令息、
 騎士団長の息子や宰相の一人息子など、
 個性豊かな青年たちと出逢い、
 彼らとのさまざまな交流を通じて、
 恋に邁進したり(時に妨害を受けたり)
 彼らと協力して世界を救ったりする、そんな物語。]
(150) 2022/05/18(Wed) 23:10:02

【人】 アウローラ

[ 『夜明け告げるは星の唄』は
 元いたあの世界では、所謂王道とされる部類で、
 それほど珍しかったり、目新しい物語ではなかった。

 それでも、夢の中の「私」はあの物語が好きだった。
 ゲームという物語の中で、悩みや試練に向き合いながら
 少しずつ、主人公と心通わせていく、

 ―――…そんな、彼らの姿が大好きだった。 ]
(151) 2022/05/18(Wed) 23:12:56

【人】 アウローラ

[ だから、このゲームの世界に、
 あの物語の主人公として転生したのだと
 それがわかったときは、本当に嬉しかった。

 いつも、夢に見ていたあの人たちに。
 画面の向こうの彼らを、実際にこの目で
 見ることができると思ったから。
 彼らと、言葉を交わすことができると思ったから。


 だって、今のわたしはあの物語の「主人公」そのもので。
 夢の中で描かれた、彼等と心通わせる女の子の姿は
 確かに、今のわたしと同じ姿をしていたから。

 彼らに、愛してもらえるかも、なんて、
 そんな、ほんの少し都合の良い、甘い夢を見たの。


 ……それが思い違いだと理解するのに、
 きっと、そんなに時間はかからなかったと思う。 ]
(152) 2022/05/18(Wed) 23:15:23

【人】 アウローラ

[ 学園に入学してから、『攻略対象』と呼ばれていた
 彼らと何度か話をすることができた。

 この国のみならず、この世界でとても稀少な、
 『光の魔力』を持つ平民の女の子。
 それが、今のわたしの立場。

 この世界では本来、魔力を持つ者は
 王族や貴族などごく限られた者ばかりで、
 多くは地水火風の四大属性の何れかひとつ。

 複数の属性を持つ者もいるけれどそれはかなり珍しく、
 数年に一度現れるか否かといったところらしい。

 そして、そんな二重属性以上に稀少とされるのが、
 わたしが有する光の魔力、なのだそうだ。]
(153) 2022/05/18(Wed) 23:18:03

【人】 アウローラ

[ そして、そんな物珍しい存在であるわたしに、
 彼らも、彼ら以外の人たちも皆興味を持ったようだった。
 いい意味でも、…悪い意味でも。

 平民であるわたしが、王侯貴族である彼らと
 気安く話をすることを快く思わない人たちは
 もちろんいっぱいいたけれど。
 それでも、面と向かって彼らに
 意見を口にする人はいなかった。

 そのぶんの皺寄せがわたしのほうへ来るのは、
 まぁ…仕方のないことよね。 ]
(155) 2022/05/18(Wed) 23:19:25

【人】 アウローラ

[ 閑話休題。

 『攻略対象』の彼らと話をするたび、
 殆ど必ずと言っていい程、話題に上がる人がいた。
 
 マティルダ・ルース・デア=フォルトゥーナ。

 攻略対象の一人である弟王子とは
 幼い頃から親同士の決めた許嫁であり、
 公爵令息にとっては義理の姉にあたる。
 ゲームの中では所謂『悪役令嬢』とされていた彼女。

 かつて「私」がプレイした記憶の中でも、
 マティルダ様は初対面からいきなりきつい言葉で
 嫌味を言ってくる怖い女性という印象だった。

 そして、それはゲームの中の攻略対象たちにとっても
 同じだったらしく。

 ゲームの中では、彼女はどのルートを辿っても
 次第に婚約者である弟王子から距離を置かれ、
 貴族たちのグループからも、次第に孤立していく。

 そうして最終的に、ラスボスである闇の精霊に
 心の隙を突かれ悪堕ちし、主人公たちに倒される。

 そういう、キャラクターのはずだった。 ]
(157) 2022/05/18(Wed) 23:20:21

【人】 アウローラ

[ ところが、攻略対象の皆が語るマティルダは
 「私」の知っているマティルダとは大きく違っていた。

 ―――誰にでも優しく、分け隔てなく接する
 まるで女神のような存在。
 入学してまもなく聞いた、マティルダに関する噂話。

 実際、この世界で生きる彼女はゲームの彼女とは
 何もかもが正反対な少女だった。

 ゲームの中では内心距離を置かれていた弟王子とも
 険悪な間柄になっていた義弟である公爵令息とも
 その関係は良好そのもの。
 時折、その二人がマティルダをあいだに挟んで
 彼女を取り合う姿をわたしも何度か見かけたことがある。

 そして、仲がいいのはその二人ばかりではない。
 本編では特に接点の無かったはずの、
 騎士団長の息子とも、宰相の一人息子とも、
 いつのまにか幼馴染といっていい間柄になっていて、
 その関係はいずれも、穏やかで親愛に満ちたものだった。

 そして、先に述べた様に
 マティルダが優しいのは攻略対象ばかりではなく。
 学園に通う貴族の子女からも、
 王都の人々からも頗る評判がいい。 ]
(159) 2022/05/18(Wed) 23:24:31

【人】 アウローラ

[ ……攻略対象の皆から話を聞くたび、
 ずっと、思っていたことがある。
「マティルダ様は、もしかしたらわたしと同じ
『転生者』なのかもしれない」って。

「不仲だった自分たちの仲を取り持ってくれた」
双子の王子たちが微笑って話してくれたこと。

「娼婦の子として産まれ、孤独だった自分に、
手を差し伸べて、家族の温もりを与えてくれた」
公爵令息の彼の、懐かしむような温かな眼差し。

「国の英雄である父を越えなければいけないと、
自身の才能の無さに思い詰めていた自分を諭してくれた」
騎士団長の息子の真摯な眼差しと言葉。

「母を病で失くしてから愛を知らず育った自分に、
人として本当に大切なことはなにかを
何度も何度も、母のように根気強く語ってくれた」
そんな彼女の力になりたいと、
わたしに語って聞かせてくれたのは
かつての「私」のイチ押しだった宰相の一人息子。 ]
(160) 2022/05/18(Wed) 23:31:49

【人】 アウローラ

[ ゲームの中の彼らが抱えていた問題を
 マティルダは彼らが幼少の頃に解決、
 あるいは心の整理、決着を果たしていて。

 わたしの知らない十年近い年月の中で。
 マティルダと彼らは、穏やかで、あたたかくて
 それでいて強固な絆を築き、成長していた。

 少なくとも、彼らとマティルダのあいだに
 わたしが割って入ることなんてできないくらいに。

 そんなことは許されないと、はっきりわかるくらい、
 彼らの関係は―――…わたしの目には、とても、
 眩しいものに映っていた。 ]
(161) 2022/05/18(Wed) 23:33:04

【人】 アウローラ

[ ……でも、それなら。

 「わたし」は、どうしてここにいるのだろう?
 今、この世界に生きているわたしは、
 なんのために存在しているんだろう?

 今、彼らの物語に、わたしは。
 「ゲームの主人公」は必要ない。
 葛藤も、孤独も、焦燥も、愛に飢えることもない。
 それを解決するための存在を、彼らが求めることはない。

 だって。彼らは今、とっても満ち足りていて、
 幸せなのだから。 ]
(162) 2022/05/18(Wed) 23:35:01

【人】 アウローラ

[ わたしがまだ「私」だった頃
 いつだって、彼らの幸せを願っていた。

 目の前でわたしと話してくれる彼らは、
 かつての私が願っていたように…ううん。
 私が想像していた以上に、眩しいくらいに幸せそうで。
 …そんな彼らを見るたび、ちくりと胸が痛んだ。

 ほんとうなら、わたしは。
 彼らの幸せを喜ぶべきなのに。

 彼らに幸せを与え、笑顔にしているのは
 彼らにとっての幸せな物語を作り上げたのは、
 そして、彼らが幸せを願うのは。

 ―――…他の誰でもない マティルダという、
 彼らにとってかけがえのない、たった一人の女の子。

 そのことを想うと、どうしようもなく
 自分の中に目を逸らしたくなるような、
 そんな気持ちが芽生えてしまう]
(164) 2022/05/18(Wed) 23:38:29

【人】 アウローラ

[幸せなのに…幸せな、はずなのに。


でも、どうしょうもなく寂しくて、悲しくて、胸が痛くなる。* ]
(165) 2022/05/18(Wed) 23:40:35

【人】 アウローラ

―― 星燈祭の夜/図書館 ――


  ……はぁ。


[ 溜息と共にそっと視線を窓の向こうに向けた。

 色とりどりの魔法の燈に照らされた中庭の噴水が
 きらきらと煌めくのが見える。

 王都に瞬く星々を消し去ってしまいそうな輝きと、
 楽団の軽やかな演奏を背に、学園の生徒たちが
 次々にパートナーと手を取り合って踊り始める。
 見知った顔も、あまり馴染みのない顔も、
 皆、等しく、華やかに着飾って。 ]
(166) 2022/05/18(Wed) 23:42:07

【人】 アウローラ

[ 年に一度、ちょうど学園に入学してから
 半年ほど経った頃に開催される『星燈祭』。

 あちらの世界でいう「学園祭」と呼ばれるものに近い
 このイベントは、ゲームの中でも特に重要なものだ。

 星燈祭の夜、裏庭にいると
 攻略対象のなかで一番好感度が高い人物が
 主人公の目の前に現れる。
 そしてそれは、その人物の攻略ルートに入ったということ。

 『夜明け告げるは星の唄』では、
 基本的に誰かしらのルートに入る仕様になっている。
 仮に攻略対象全員の好感度がゼロだった場合、
 キャラクターにはそれぞれ優先順位が存在していて、
 その優先順位に沿う形でルートが解禁される。
 少なくとも、そういう仕様になっていた。 

 攻略対象の好感度がゼロの状態で、
 特殊なフラグを立てておくと
 攻略対象以外のキャラのルートへ行けるらしいが
 「私」はそこまで詳しくはなかった。
 ]
(167) 2022/05/18(Wed) 23:44:39

【人】 アウローラ

[ でも、裏庭にいっても、そこには誰もいなかった。

 考えてみれば、当然よね。
 だってここはゲームの中ではなくて、
 そしてなにより、わたしは…あの夢の中で見たような
 『ゲームの主人公』ではないもの。
 
 どんなに他の人たちから特別だと言われる力があったって、
 わたしは、ただの平民の女の子。

 どれほど彼らを想ったとしても。
 子供の頃からずっと絆を築いてきた、
 彼らを救うために奮闘してきた彼女には、敵わない。 ]
(168) 2022/05/18(Wed) 23:47:14

【人】 アウローラ

[ ……頭では、わかっていた。
 あの人たちが誰を想っているのかなんて、
 そして、誠実な彼らが彼女以外に
 目を向けたりしないなんてことは。

 わかっていた。そのつもりだった。

 それでも、心のどこかで
 期待していた自分がいたことも
 否定できない。

 いつか、攻略対象の誰かが…たった一人でもいい、
 彼女と比べることなく、わたしを見てくれることを。
 そんな夢物語みたいな展開を、
 望まなかったといえば、嘘になる。 ]
(169) 2022/05/18(Wed) 23:48:34

【人】 アウローラ

[ この半年間、ずっと、自分なりに努力してきた。

 ゲームではみんなを攻略するためには
 ステータスも重要な要素だったから、
 彼らと話をするだけじゃなくて、
 学園での勉強も、魔力磨きも、身体を鍛えることも
 思いつく限りのことはなんだってしてきた。

 其れと同じく、ゲームでは
 彼ら自身の好感度を上げるだけではだめだったから
 学園内の他の人たちとも心を通わせようとしてきた。

 あの人たちと一緒にいたくて……ううん、
 いつか、誰かに「わたし」を選んでほしいなんて。

 そんなバカみたいな思い上がりをカタチにしたくて
 がんばった。がんばってきた。]
(170) 2022/05/18(Wed) 23:50:11

【人】 アウローラ


[ でも、それは叶わなかった。
 さっき窓から見えた光景を思い出す。

 踊る生徒たちの中心にいたのは、
 マティルダと、彼女が愛してやまない弟王子。

 そして、そんな二人を温かく見つめる攻略対象たち。 ]

 ……。

[ そんな光景に堪らなく胸が締めつけられて
 窓に背を向けて、その場を立ち去ろうとした。 ]
(171) 2022/05/18(Wed) 23:50:46

【人】 アウローラ

[ 彼らのことが、大好きだった。
 今でもきっと、その気持ちは変わらないまま。

 彼らに幸せでいてほしいと願っていた。
 わたしが「私」であった頃から、ずっと。

 そしてこの世界は、そんな願いが叶った世界。
 悲しみや辛さ、悩みを抱えていた彼らが
 抱えていたものから解放されて幸せでいられる世界。

 この世界は、わたしにとって『美しい物語』
 かつての「私」も夢見た世界。

 ……だけど、この世界にきっと、「わたし」はいない。

 
わたしの居場所は、ない。
 この世界の、どこにも。
 ]
(172) 2022/05/18(Wed) 23:51:44

【人】 アウローラ

 ……きゃっ。

[ 先程まで見ていた景色に気を取られていたせいか
 何かに躓いて転んでしまう。
 運が悪いことにその拍子に近くにあった本棚から
 本が数冊、此方に落ちてきた。
 
 ほとんどの本が直撃を免れたのと、
 それほど重い本じゃなかったのは幸いだったけれど。 ]

 …。
(173) 2022/05/18(Wed) 23:55:01

【人】 アウローラ

 ……っ

[ 不意に視界が歪んだのは、
 本と一緒に落ちてきた埃が目に入ったから。

 そして、本が落ちてきた痛みが、
 急に時間差で襲い掛かって来たから。

 熱を帯びた頬をさらに熱い雫が伝って、
 目の前の黒い装丁の本にぽたりと雫が落ちたのだって。
 ……決して、泣いてしまったわけじゃ、ない。]

[ ―――…でも、]
(175) 2022/05/18(Wed) 23:56:45

【人】 アウローラ

[ その黒い本に手を添えたとき。
 確かに、声が聴こえたの。 
 『泣いているのか?』って。

 窓の外から差し込む光で、青みがかった景色の中。
 気がつけば、さっきまでは聞こえていた外の喧騒が
 いつのまにか聞こえなくなっていて。

 ……シン、とした静寂が、部屋の中に満ちていた。]

 …………。

[ 暗闇の中から問いかけてきた声は。

 床に倒れ込んだままの私を見おろす、
 暗闇に潜んだままの血のように赤い瞳は。

 恐ろしいはずなのに、
 なんだか酷く奇妙で、…そして少しだけ、
 優しげに見えた。]*
(178) 2022/05/18(Wed) 23:59:27
アウローラは、メモを貼った。
(a12) 2022/05/19(Thu) 0:41:51

 




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