【教】 XI『正義』 マドカ[『正義』が『運命の輪』を見つけた時、 何もかもが手遅れになっていた。 崩れ始めた箱庭で、 『運命の輪』は『正義』にとっての希望に等しく、 『運命の輪』さえいてくれれば、 何かが好転していくのではないかと、 そんな淡い期待を抱いていた。 それなのに。] ……………? [その光景を、呆然と、ただ呆然と、 『正義』は眺めて、 それからゆっくりと、歩み寄る。 あと一歩のところまで近づいて、立ち止まった。] (/44) 2022/12/18(Sun) 23:48:44 |
【教】 XI『正義』 マドカ……ぅ…そ、だ、 [零したのは、たったの一言。 その光景を、どうしても、受け入れられない。 『運命の輪』の声が、聞こえない。 君は僕のことを、呼んだろうか。 それなのに、僕は間に合わなかったんだろうか。 『正義』は『運命の輪』の身体を抱き上げて、抱きしめた。 腕の中に収まった身体は、どこまでも冷たい。] 間に合わなくて……ごめん。 君の傍に、居られなくて…… [ほたほたと、雫が『運命の輪』の身体を濡らす。 けれど、そんなもので、 既に熱を喪った身体が温もりを取り戻すことはない。] (/45) 2022/12/18(Sun) 23:48:59 |
【教】 XI『正義』 マドカ[『正義』にとっては幸いなことに、 『運命の輪』を殺した犯人はすぐに知れたし、 その犯人が既に自らの手で 亡き者であることも、見て取れてしまった。 『正義』は幸いにして、復讐に狂うこともなかったが、 それは 『正義』の公正性が失われるまでを先伸ばしたに過ぎず、 結局のところ、この事件を機に、 『正義』の悪夢は加速していくことになった。 『正義』はこの悪夢を打ち消すために、 “ よく眠れるお茶 ” を誰かから貰っていた…… という記述も一部の文献に残されているが、 それについては定かではない。*] (/46) 2022/12/18(Sun) 23:49:44 |
【人】 XI『正義』 マドカ―― 深夜、ブランコのある裏庭で ―― [きっと、僕の出す結論は、 初めから概ね決まっていた。 外へと出向いたのは、ただ…… 洋館の中の空気が、 少しばかり重たく感じたからだ。 ……まさか、先客がいるとは思わなかったけど。 僕が君の姿を見て驚いていると、 君は子供にするみたいに、 内緒話の仕草をして見せた。>>2:322 僕はひとつ頷いて、それから君の隣へと 静かに歩み寄る。] ……終わると思う?世界。 [君が、明日世界が終わるなら…… なんて言うから、 僕はぽつり、そんな問いを投げた。**] (229) 2022/12/18(Sun) 23:54:59 |
XI『正義』 マドカは、メモを貼った。 (a50) 2022/12/18(Sun) 23:59:25 |
XI『正義』 マドカは、メモを貼った。 (a51) 2022/12/19(Mon) 0:01:04 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 回想:7年前 ── [行き合った青年に示された通り、 扉の向こうには洗面台があり、 そこで口を濯いで、顔を洗って。 見上げたところに鏡があった。 見慣れた顔であるはずなのに、 真っ白な顔には見覚えがない。 妙な錯覚を覚えて、つい、鏡面を指先でなぞる。] “ お前は誰だ? ” [問うたのは、僕か、鏡像か。 頭の中が、グラグラする。 と、入ってきた扉が音を立てて開いた。] (375) 2022/12/19(Mon) 19:56:31 |
【人】 XI『正義』 マドカ………え……っと…? [洋館に来たばかりの僕には、 その相手が誰なのかまだよくわからなかった。 勢いに負けて、手に押し付けられたそれを、 反射的に握りしめる。>>245 それが、初対面。 彼は何かの折に、 僕を構ってくれるようになった。 折り紙は、僕の方が上手だった。 君が島風の衣装を着て見せた時は、 少し首を傾げてしまったけれど、 君が来た衣装は割合大きな島の文化だったから、 僕にもそうと知れた。 だから、まぁ、少なからず好意はあったのだ。 ────“それ”を知るまでは。] (377) 2022/12/19(Mon) 19:58:00 |
【人】 XI『正義』 マドカ[君の生い立ちを知った時、 僕は洋館に来て初めて狂気を見せた。>>247 僕はどうしても、『僕』に刻まれた宿命から 逃れることができない。 やっぱり僕の預かり知らないことだけど、 『正義』の証を持って生まれる子どもは、 みんな“そう”だった。 そうやって『正義』の魂は、 円環から抜け出すこともできずにずっと、 生まれ変わるたびに、もがいている。 『べき』『べき』『べき』…… 人間らしい心を何一つ赦さずに。] (378) 2022/12/19(Mon) 19:58:22 |
【人】 XI『正義』 マドカ[その日から僕は、 君と少しずつ距離を置き始めた。 いつでも笑い続けている君の心の内など知らない。 感情を否定してきた僕に、 分かるはずもなかった。 君が『不幸』を否定する度、 僕の中の『正義』が揺らぐ。 だってそれを認めたら、僕は…… *]『証持ち』を迫害することを許す世界を、 僕から故郷を奪った世界を、 ……『正義』として生まれた僕を。 何もかも否定し、呪わなければならなくなる。 (379) 2022/12/19(Mon) 19:58:45 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 売店:フォルス── [君にそんなつもりはなかったかも知れない。 けれど僕には、 『逃げんじゃねぇよ、クソ餓鬼』 という副音声付きで聞こえた。>>267 突然に眉間を殴られたような気分で、 反射的に身構える。 心臓が、冷たくて、痛い。 そこに刺し傷なんて、ありはしないのに。 椅子を蹴って立っても良かった。 むしろそうすべきだった。 けれど僕の中の『 』が、僕の尻を 椅子に縫いつけたままにする。 喉がカラカラで、手にしたカップには、 液体はほとんど残っていなかった。] (380) 2022/12/19(Mon) 19:59:14 |
【人】 XI『正義』 マドカそれがわかったら苦労していない。 [言葉を遮るようにしてこぼれ落ちたのは、 思いの外低くて大きな声だった。 僕にとっては幸いなことに、 結果として君は、最後の一言を言い損なった。 その一言を聞いていたら僕はうっかりすると、 世界の滅亡を見る前に 舌を噛み切ってしまったかも知れない。 ……もしかしたらその方が幸せかも知れないが。 ぴん、と空気が張り詰める。] (381) 2022/12/19(Mon) 19:59:30 |
【人】 XI『正義』 マドカ[世界が広くなればなるほど、 人の数が増えれば増えるほど。 秩序を保つのは難しくなる。 たった22人が存在していただけの箱庭で、 神の生み出した愛子たちですら、 保つことができなかったそれを。 一体どうしたら、 この広い世界でたった一人の人の子が 保つことできると言うのか。 それは土台無理なことなのだと、 まだ幼い少年の頃、誰かに諭されていれば。 あるいはもしかしたら、 『正義』の呪縛から 逃れることもできたのかも知れない。 ……今となっては、もう無理だ。 この信念に従ってきた時間が、長すぎる。] (382) 2022/12/19(Mon) 19:59:49 |
【人】 XI『正義』 マドカたとえば…… その偏りは。 僕が、僕なりの基準で判断して、 僕にとっての平等を目指している。 そうだよ、全部僕のための平等だ。 僕が“ 生きる ”のに必要な平等だ! [言い切ると同時、 自分の表情が歪むのが分かる。 涙は出なかった。 自分の吐いた言葉が、既に痛くて仕方のない 自身の心臓に突き刺さる。 『正義』の証は、命に優しくない。 僕が平等と認められない世界では、 息をすることすらままならない。 不平等が視界に映る度、 身体中をムカデが這うような不快感が襲うのだ。 背中の火傷痕だけじゃない。 僕の身体には至る所、自身の爪で付けた 何かを引き剥がそうとしたかのような痕がある。] (383) 2022/12/19(Mon) 20:00:32 |
【人】 XI『正義』 マドカ[君は侮蔑の表情でも浮かべるんだろうか。 いつかみたいに、 冷たい言葉で突き刺すんだろうか。 僕だって、こんな吐露をするつもりはなかった。 暴いたのは君だ、なんて、 太々しく責任転嫁してやる。 僕は君の視線を正面から受け止めようと、 睨みつけた。 『正義』の証は、事あるごとに、 その所有者すらも裁きの対象とする。 僕自身が、その理不尽な『平等』観に 幾度殺されそうになっていることか…… 『平等』の行き着くところは究極、 『皆殺し』 だから……だから多分、僕は、 この世界の中で、 僕だけ は、経典の『正義』が何を恐れたのか、 わかってしまうし、 分かってあげなくてはいけない……と思う。 君は知らない。 知らなくて良い。 『僕』は『君』にだけは、赦されてはいけない。 **] (384) 2022/12/19(Mon) 20:01:13 |
XI『正義』 マドカは、メモを貼った。 (a83) 2022/12/19(Mon) 20:04:18 |
【教】 XI『正義』 マドカ[『正義』にとって、 『幸福』と『不幸』は常に等価であるべきものだった。 その概念を覆したのは、『運命の輪』の存在だった。 『運命の輪』の掌の上では、 『幸運』と『不運』が交互に訪れる。 そう、等価でない瞬間があっても良いのだ。 後で、必ず帳尻が合うから。 『正義』の手の中では、常に均衡を保たれる必要があった 『正』と『負』。 『正義』は『運命の輪』の在り方に、 救われた。] (/91) 2022/12/19(Mon) 22:35:20 |
【教】 XI『正義』 マドカ[『運命の輪』の言う通り、 二人は共に在ってバランスの取れる存在だった。 『正義』に与えられた贈り物は、 必要な時に情を殺して裁定を行える、 『運命の輪』と比べれば随分とつまらない 能力だった。 情というものは判断を大きく鈍らせるもので、 『正義』に与えられた役目を考えれば、 確かに必要なものではあったのだが。] (/93) 2022/12/19(Mon) 22:35:53 |
【教】 XI『正義』 マドカ[『神様に一番愛されている』と 臆面もなく言ってのけられる『運命の輪』を、 『正義』は愛していた。 それは間違っても 欲の伴うような種類の愛ではなかったけれど、 実は案外 女々しいところのある『正義』からしてみれば、 愛さずにはいられない存在だったのだ。] (/94) 2022/12/19(Mon) 22:36:34 |
【教】 XI『正義』 マドカ……ねぇ、『運命の輪』。 全然、大丈夫じゃなかったよ。 いや、違うか。 君が居てくれたら、君さえ居てくれたら。 僕もきっと、大丈夫だったんだ。 君が居ないなら、居なくなってしまったから。 僕は、もう—————、 (/95) 2022/12/19(Mon) 22:37:08 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 選択の日の朝 ── [答えなんて、初めから決まっていた。 それはクロに尋ねられなくても、 フォルスに暴かれなくても、 アリアと話をしなくても。 『正義』の証を持つ僕の答えは、 決まっていた。* ] (440) 2022/12/19(Mon) 23:25:28 |
【秘】 XI『正義』 マドカ → 『箱庭の神』 ヴェルトこの世界は、滅びるべきだと思う。 [僕は神様にそう告げる。 『箱庭』が理想郷とも思っていないけれど。 それでも僕は、この世界に『存在していていいよ』とは どうしたって言えない。] でも……きっと、 皆、滅ぼさないで、って、言うんだろうなぁ。 [僕は、ほんのり苦笑する。 貴方はどんな顔をするんだろうか。 その姿をした、貴方は……] それでも僕は、 この世界と共に生きていくことは できそうにないんです。 [どんな顔を、したんだろうか。] (-174) 2022/12/19(Mon) 23:26:03 |
【秘】 XI『正義』 マドカ → 『箱庭の神』 ヴェルト[この洋館に囲われてからでさえ、 僕は日々、僕を見失いそうになっていた。 僕は、僕が僕でなくなる日が恐ろしい。 教典の『正義』のようには力を持たぬ僕だから、 狂ったところでできることはたかが知れている。 それでも、怖いものは怖いのだ。] 世界が存続するとしても、 僕を貴方の『箱庭』へ、 迎え入れてくださいませんか。 [僕は、何もかもを諦めて笑った。 最初から、諦めていた。 神様は、そんな僕を赦してくれた。 僕はきっと、新しい『箱庭』で、 いつかの幸せな未来を夢見ながら、 眠りにつく……そんな希望を胸に抱いた。*] (-175) 2022/12/19(Mon) 23:26:29 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新