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【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……ここから先は、聞かなくてもいい。 個人的な用を済ませる為にエリーにも来てもらいたいが。 それに際して、多分、エリーにとって 結構辛い事が起きる……と、思う。わからんけど。 俺が勝手に思ってる辛い事が、 俺が勝手に予想してる内容で、起きるかもしれんってだけ。 ……でも、多分、そうなるし、俺は……エリーを 泣かせるかもしれんが、内容も言うべきだと思ってる」 あなたにとって酷な事を伝える、とそう言っているらしい。 それでも、真っ直ぐに目は見つめたまま。 どんなに優しい嘘でも、あなたに嘘はつきたくない。 「聞きたくないなら、それを尊重する。 ここから逃げて、全部忘れたいって言うなら、 それでもいい。このまま車ぶっ飛ばして どっか別の国で生きるのもアリだ。 俺はそれについていくし、最後まで一緒にいる。 個人的な用だけ済ましたくはあるけど、 エリーが行くなって言うなら、諦めよう」 「けど、俺の話を聞いて、俺のする事を聞いて、 俺と一緒に行くって言うなら、改めて誓うよ。 俺は、お前を全部から守ってやる。 お前の心が痛い時、傍でずっと抱きしめてやる。 お前の足が折れそうな時、必ず支えて一緒に立つ。 ……どうする、エリー。」 (-207) 2023/09/29(Fri) 18:17:49 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ最後に触れた唇と。呼ばれたその名前と。 多分それで本当に、心の準備は整ったのだと思う。 そうやって、ふしぎなくらい凪いでいた。 聞こえる言葉に背筋が粟立つ。 報告書の内容はすんなり頭へと入ってきた。 「そっか。」 無感動な声。 多分今まで聞いたことがないくらい冷ややかな。 それでいて、その口元だけは歪に 笑んでいる 。「……ミネ」 しずかな声で促す。 「聞かせて。」 報告書を持つ手だけが不自然に震え。 合わせて紙がぱさぱさと揺れる音。 そうしてライムグリーンを視界に入れた女は笑い直す。 笑うのは得意だ。そしてそうしなければならないときは往々にして存在している。 今みたいに。 (-221) 2023/09/29(Fri) 20:54:24 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ…コーヒー豆の、香りがした。 ああそっか。 あの人は最初から、許してもらおうなんて思っていなかったんだ。 一番最初に腑に落ちたのはそのことだ。 ――いってらっしゃい。幼子の声。 その後数日顔を合わせることもなく母は死んだ。 …同じかもしれない。ずっと同じように時が過ぎるなんてことないって知っていたつもりだったのに。 ばかだなあ。ほんとうにばか。 (&0) 2023/09/29(Fri) 20:54:48 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「っ…………エリー……」 恋は胸を締め付けるなんて聞いた事があるし、 今までだって同じ相手に何度かそうなった事がある。 でもこれは、きっとそうじゃない。ああ、つまり、 これは本当に、……きついな。 せめて、と。震える手を握る。笑うその顔に近付き、 額を合わせる。目を閉じて、名を呼んで、目を開く。 ミントブルーが少し滲んだ。 「エリー。……ごめん、言うな。」 少しだけ、強く握る。だって、……自分の手も震えている。 「……ファミリーから狙われたら、逃げられない。 今は俺にも、他の誰にも見つかってないが、 時間の問題だと思う。アレっさんもわかってるはずだ」 遠回しに言いたくない。 それは希望の芽を潰しながら歩くようなものだから。 「そのくせ、襲撃は中途半端だ。設備施設に損害? 5人の負傷?アレっさんがやろうと思えば、 下手すりゃこの地域半壊までいけるだろ。なのに 『遠慮』してる。つまり裏切りは見せかけか、 じゃなきゃ……必要な処置って辺りだ」 自分の中でも整理をつけないといけない。 そうじゃなければ、目の前の子も守れない。 (-228) 2023/09/29(Fri) 21:31:10 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「それにこの前警察内で会った時、港を落ち着かせるよう 頼まれたし、指揮してもいいとまで言ってた。 メイドマンクラスの名前も出して使えとも」 つまり、完璧な港を扱う、用意周到で実力のある男なのに、 それを俺に渡す時点でもう、管理を投げたようなもの。 或いは、もうとっくに準備を済ませていた。 また、手を握る力が強まった。もう、唇の震えも隠せない。 (-231) 2023/09/29(Fri) 21:39:49 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「エリー。アレっさんは、……死ぬ気だし、 死ぬんだと、思う。殺されるのか、死ぬのかは、 ごめん、わからない。でも、命を落とすと、思う」 「俺より付き合いが長いエリーがどう思ってるかは わかんないけど……俺も、あの人には結構世話になった。 それに、エリーをあの人は世話してくれてたと、 思ってる。……俺、親ってものの事は、正直言って 全然わかんないから、間違ってるかもしれないけど、」 逡巡。迷い。口にしてはいけない、と思う。 でも、口にしないといけない、とも思う。 「 俺、アレっさんの事、エリーの親父さんみたいに思ってる。 俺がこっちの世界に来てから何度も世話になって、 カフェでバカ話して、なんだかんだ可愛がってもらって、 俺も、アレっさんのこと親父みたいに思ってたのかも。 ……アレっさんが、俺らの事どう思ってたかは、 全然わかんないけど。もしかしたら、 なんとも思ってないかもしれないけど、でも、」 「……俺達の親父が死ぬ前に、礼とか、文句とか、 ワガママとか、色々。……言いたい。言っておきたい。 すっげー辛いと思うけど、……言えないより、いいと思う」 「一緒に、言いに行かないか。中身はなんでも、いいから」 (-232) 2023/09/29(Fri) 21:41:26 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ「……うん」 震えた手と震えた手が重なる。 目を伏せた女はその手を持ち上げ、あなたの手に口付けた。 語る間、相槌を続ける。檻の中の言葉。預けられた荷物。 …事前に計画され準備は済んでいた。それは女の方が、きっとよく分かっていた。 「…うん」 そしてファミリーが彼を追うことだって。 面子にかけて逃がすわけにはいかないことだって。 頭の中で分かりきっていたことひとつずつ、言葉にされて形になって。 「………………うん。」 だから、そうやって。 ただ聞き分けのいい子供みたいに頷いて。 「…あたしは、」 (-244) 2023/09/29(Fri) 23:34:45 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ檻の中の言葉。渡された荷物。コーヒーの香りする紙片1枚。 …答えは出ているはずだった。 彼が自分を、どう思っていたかは知らないけれど。 …少なくとも。 (&1) 2023/09/29(Fri) 23:35:31 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ「……。」 言いかけた言葉を止めたミントブルーがあなたを映す。 それを口にする勇気のない意気地無しだった。 そうやって、やっぱり受け取ってばっかりだった。 そんな数年が、こういうときに、返ってくる。 「…言えるかな。」 そんなだから、あまり自信はなかった。 それが必要なことなのかも、全然判断できなかった。 ただ何が起きても隣にあなたがいてくれるなら。…逆にいえば、それしか確かなものはここになかった。 「………… いく 」それでも。 そうやって頷いたのは。 ずっと聞きたかったことが、ひとつだけあったのを、思い出したから。 (-245) 2023/09/29(Fri) 23:36:21 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……。」 言葉を止める姿をライムグリーンに映す。 互いを映し、認める姿。 きっとどちらにも――震える女が映っていた。 子供の頃からあんまり変わらない二人。 我慢する方と、しない方。 わがままを言えない方と、言える方。 頷くあなたの言葉に、こちらも頷いてみせる。 「言えるよ。エリーなら……言える。 一緒に、言いに行こう」 勇気づけるように、あなたの手にくちづけを。 静かにしかし断言するその瞳には、あなたへの信が満ち。 もう、瞳に揺れはない。これはあなたの隣を行く。 (-248) 2023/09/30(Sat) 0:27:42 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……よし、そうと決まればエリーは少しでも休むんだ。 俺のチームが今、アレっさんの移動先を探してる。 最新の機器でフル稼働でだぞ?楽勝で見つけてやる。 見つけたらすぐ、かっ飛ばして現地に向かうからな。 後はまあ、なんだ。……ノープランだ!はは……」 弱く笑うと額を離して、壁際に座り込む。 護送車の床は少し硬いが、持ち込んだ毛布が2枚。 1枚は床に敷いて、もう1枚はあなたに。おいで、と手招き。 「……なんとかなるよ。なんとか、する。 俺が傍に居る。俺が支える。俺が守る。 ……安心しろ、は無理かもしれないけどさ、 ちょっとはマシだろ?それこそ、この毛布みたいに!」 へら、と笑っておどけたようす。傍らのラップトップには、 絶えず状況連絡の様子が流れ続けていた。 (-249) 2023/09/30(Sat) 0:44:57 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ…一緒に。 うん、とまた頷いた。 でも。言って、どうするんだろう。 それで、何か変わるんだろうか。 そう湧くのは女の場合、仕方がないことだった。 突然の喪失ならばとっくに識っていた。 それだって乗り越えてきたはずだった。 だからこの場合、信じたのはやはりあなたの言葉だったように思う。 手当のされたこの手に直接口付けが触れずとも、そこには熱がともるようではあったから、それだけをただ、頼りにしていたのだと思う。 手招きに応じて、敷かれた毛布の上へ。 ぺたりと座り込んで、あなたへ手を伸ばす。 やけに控えめな甘え方だった。それでもそうできたのは、きっと幸なことだった。 横たわって、目を閉じる。いつものようにすぐに眠れそうにはない。 瞼の裏には、ずっと同じ人の顔が流れていた。 幼子が、いつだって心の中にいる。 でもその幼子は、『 』に甘えることだけが本当に下手くそだった。 (-286) 2023/09/30(Sat) 8:49:53 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラいつもよりずっと控えめな甘え方。 それはどうしても、何かを我慢するようにしか見えなくて。 心の内がじくりと痛んだ。 その手を取って、ゆるやかにいざなう。 引きずる事も、迎えに行くことも簡単だ。 でも、カンターミネは、出来ればあなたの意志で 傍へ来ることを選んでほしかった。 これが強制では、ただの自分のエゴではないと信じたかった。 横たわったその顔にかかる髪を、少し退けてやる。 いつもの寝顔と違う表情にまた、じくり。 小声で運転手に指示を出すと、向き直って。 「……、una regina fulgida e bella al pari d'una fata siede accanto alla culla tua dorata...」 少しでも。ほんの少しでも、今が穏やかであるようにと、 前と同じ子守歌を歌って、怪我のない箇所を撫でさする。 やがて、ラップトップの端末から通知が届くのだろう。 あなたを起こすまでの間、これはずっと傍から動かなかった。 (-314) 2023/09/30(Sat) 16:56:38 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネいつかと同じ『子守歌』。 身動ぐように身体を寄せた。その身体は震えてもいなかった。 それでもやはり寝息となるには些か時間はかかっただろう。 一緒にハーモニカの音色を思い出せば、まるで、自分のやってきたことが返ってきたようですらあった。 …いづれ、女は夢に落ちる。 そのとき見た夢が幸せな夢だったのか不幸な夢だったのか、後になっても思い出すことはない。 呻くような寝言が誰かのことを呼んだ。 Madre.と。 あとはずっと静かなものだ。 あなたが女を起こすまで、女が目覚めることはなかっただろう。 (-338) 2023/09/30(Sat) 19:46:12 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-372 目覚めてから車に揺られている間も、女はあなたの傍を離れようとしなかった。 どうして港なんだろう。 アジトに置き去りにした荷物のことを思うと、余計な期待をしないでもなかった。 しかし、まあきっと違うだろうなとどこかでそう感じてもいる。だからこれは余計な期待なのだ。 一度の仮眠を経て頭はだいぶスッキリとしている。 スッキリとしたからこそ、これからの意味を考え始めていた。 こんなに慌てなくたって、案外何とかなると思い始めている。 檻の中のあの人に、自分が向けた言葉も思い出していた。 …あの人はあの時、本当に正直だったんだなと今なら思える。 それがこんなに早く来たことに勝手に傷ついているのはきっと自分が悪いと、納得するだけの準備すら整っていた。 多分、このときには感じていた『不安』の意味が変わっていたのだと思う。 ずっとずっと、浮かぶのは、こんなことしてどうするんだろうって逃げるみたいな思考だったから。 …それが逃げだと自覚もある分、やっぱり損をしているのかもしれないけど。 「…。」 女は静かだった。目的地に着くまで、本当に静かなものだった。 それでいてずっと、意味を考えていた。 そんなものなく博打に出たってよかったけれど、博打には最近負けたばかりだから尚更に。 聞きたいことじゃなくて、████ことにしてしまったらどうだろう。 それに至ったのはきっと、車が目的地に到着する、本当にぎりぎりのことだった。 (-374) 2023/10/01(Sun) 5:48:38 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-403 >>-404 ことり、と。 窺うような表情に、女は首を傾ける。 「…んー。」 「……んー…。」 言葉を受けて、少しして。 えへ…と力なく笑った。 作り笑顔にしては下手くそすぎるそれは、きっと いつもの と少し違う。「ミネはあ。」 「ふふ。あたしを甘やかすのがあ、じょおず」 額をこつんと、あなたに寄せて。 「…あんねえ。…あたし」 「こわいんだあ。」 甘やかな声。 「お母さんみたいに」 「アレッサンドロさん、いなくなるんだあって」 「…でも」 「ずっと、勝手な上司さんだったしい」 「今更だなあって思うのも、あってねえ」 重ねた手が僅かに、ぴくんと震えた。 (-410) 2023/10/01(Sun) 19:17:20 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-403 >>-404 >>-410 「だから」 「今1番こわいのは、そのことじゃなくて、ねえ」 ゆっくり、手を返して。握り返す。 「…聞きたいこと、あるんだけどお」 「間に合わなかったり、いやな返事きたら、いやだなあって」 「……そんだけえ。」 ゆっくりと、額を離して。 またへにゃりと。そして。 「だからあ」 「もしそおなったら、…ミーネ」 もう一度。甘えた声。 「いっぱい、いっぱい」 「慰めてねえ。」 困ったような笑顔と一緒に。 …やだなあ。逃げないのって。本当に、やだ。 (-411) 2023/10/01(Sun) 19:18:14 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 は、と短い息を吐き。 色んな物が遺っているのに、 何もなくなった その港で。「…ミネ……」 ぱちくりと、その大きな声に瞬いて。 あはは、と笑う。…気持ちだけなら、ものすごくよく分かって。 だけど、やっぱり。 我慢とはまた別の話で、同じような文句は出なかった。 そういう人だと分かっていたから。 それを呑み込めてしまうくらいに、聡かったから。 そんな時、ドローンの照らした地面に何か光るものを見た。 見覚えのあるものに、見慣れないものがついている。 …その見慣れないものすら見覚えがあるものだから、また笑えてしまって。 「はーあ。」 「本当に、あの人はあ……」 徐にそれを拾い上げた女は、海に向かって大きく放った。 そうして大きく、息を吸う。 (-418) 2023/10/01(Sun) 20:13:34 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 >>-418 「忘れ物、ですよおー!」 「…あげたものくらい、大事にしてくださいよお」 「……ほんとおに」 それは大きく放物線を描いて。 ぽちゃん、と。波の間に落ちて見えなくなった。 …まったく。最後の最後まで、結局文句を言わせるんだ。あの人は。 そういう人だった。知っていた。 それでも、本当に、大好きな人だっただけ。 何も見えなくなった昏い海を見守る。 へたり、と女はその場に座り込んだ。 いつの間にかその頬に、また涙が伝う。 暫くの間そうやって、いつかみたいに、その空と海を見つめていた。 (-419) 2023/10/01(Sun) 20:14:35 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (136) 2023/10/01(Sun) 20:26:47 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (138) 2023/10/01(Sun) 20:32:21 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (140) 2023/10/01(Sun) 20:45:00 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-429 ぐし、と少し乱暴に涙をふいて。 くるりと女は振り返った。 「…もおやだ。」 「今日なんもしたくない。」 文句だ。…お望み通りの。 そうして変わらず、ゆるりと絡みつく。 ずび、とまた鼻をすする音だけが聞こえて。 「ん、…帰ろお、ミネ」 足音がひとつ、ふたつ。 港を離れて、車へと消えていく。 (-430) 2023/10/01(Sun) 20:56:01 |
【念】 摘まれた花 ダニエラさて、翌日。 正式な手続きを踏まず脱獄した女にどれほどの時間があるだろう。 少なくとも今ここで、自宅のアパルトメントへと立ち寄るような女ではなかった。 「…ただいまあ」 だから、最後に立ち寄ったのはそのホテルだった。 …変わらず、照明はついたまま。誰もいない室内に声をかける。 そうして真っ先にデスクへと向かい。 そこにある『大切なもの』たちを見つめ、ひとつひとつを回収してく。 冷蔵庫から、チョコレートも取り出した。 (!0) 2023/10/01(Sun) 20:56:53 |
【独】 摘まれた花 ダニエラライムグリーンのウィッグをつけたテディベア。 これは大事に飾っておこう。 ブーゲンビリアの花束も。 枯れるまでは大切に、花瓶に生けて。 このチョコレートは、紅茶と一緒に食べようかな。 ミネは、チョコが大好きだし。 バスボムは、特別疲れた日に使っちゃおうか。 …今夜とか。 (-431) 2023/10/01(Sun) 20:57:11 |
【念】 摘まれた花 ダニエラ片腕にそれら『大切なもの』たちを抱いて。 そのまま振り返り、部屋の隅を向く。 ちょこんと最後にひとつ残されたスーツケース。 片腕で、よいしょ。これもそこそこ重いから、怪我した腕ではひと苦労。 …この中身は、どうしようか。 それだけは、まだ決められそうにない。 自分ひとりの問題ではないからかもしれない。 でも、いづれは決める心算ではあった。 (!1) 2023/10/01(Sun) 20:57:36 |
ダニエラは、「ああ、でも…。」 (a57) 2023/10/01(Sun) 20:57:49 |
ダニエラは、この中にある、鍵だけは、どうしようかは決めていた。 (a58) 2023/10/01(Sun) 20:57:59 |
ダニエラは、きっと近いうち『お兄さん』に連絡を入れる。 (a59) 2023/10/01(Sun) 20:58:33 |
ダニエラは、彼の方が、自分よりずっとあの場所での思い出が多いと知っていたから。 (a60) 2023/10/01(Sun) 20:58:39 |
【念】 摘まれた花 ダニエラ「常連さんには、結局なれませんでしたしねえ」 そうひとりでに、からころ笑う。 喜ぶべきか悲しむべきか微妙なところだ。 女はそもそもコーヒーという飲み物の味が好きではなかった。 今まで一度も、誰にも、そのことを口にしなかっただけで。 荷物に両腕を抱えて、女はホテルを後にする。 もうここを訪れることもないだろう。そうやって初めて照明を消した。 (!2) 2023/10/01(Sun) 20:58:59 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ 苦い水面に砂糖を2つ。 そうやって飲める味にしても尚やっとだった。 それでもダニエラ・エーコは、日常的にコーヒーを嗜んだのだ。 でないと、喫茶店になんて足を運ぶ事も出来やしない。 そしてそのための我慢は全然苦でもなかった。 きっとこれも、石であり、星だったのだろう。 もう、そんなかいがいしい我慢もする必要はない。 だというのに、スーツケースの中、手放す気のないものがひとつだけあった。 …この香りが好きだったのは、本当だったから。 (&2) 2023/10/01(Sun) 20:59:21 |
【置】 摘まれた花 ダニエラねえ、アレッサンドロさん。 あの日、聞くことができなかったこと。 だから、本当のことはわからないままのこと。 あたしは、―― 親孝行 できていましたか?聞けた方が良かったのか。 聞けないままで良かったのか。 その答えすら、今も出ない。――きっと、これからも出ることはない。 (L7) 2023/10/01(Sun) 20:59:40 公開: 2023/10/01(Sun) 21:00:00 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ荷物を転がし、抱えて、少しの距離を往く。 虚実不明の明るい鼻歌を奏でる。 そうやって向かう先にいるのは王子様。 あたしのひと。いつものように、女はその名前を呼んだ。 (141) 2023/10/01(Sun) 20:59:55 |
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