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【見】 郵便切手 フラン【街中】 バーで共犯を働いた後日。 青年は若干の寝不足を伴って配達業務に勤しんでいた。 「………眠いなぁ。」 帽子のつばで日陰を作って。 眠気覚ましのドリンクを一本飲み干してから、 荷物と共に石畳の上を歩く。 三日月島で足音を鳴らす人間の数が減ったことになんて、直ぐには気づかない。 或いはずっと。 「こちらへお受け取りのサインをお願いします」 配達員の日々は殆どいつも通りだ。 (@0) 2022/08/17(Wed) 21:19:37 |
【見】 郵便切手 フラン【街中】 「お届けものです。 ……今日も賑わっていますね」 民家を訪ねて、慣れた手際でサインを受け取る。 薄っすらと漂う屋台の匂いを感じ取りながら、ぎこちない世間話で間を埋めた。 普段は一言、二言で社交辞令を終わらせて、そそくさと車に戻るだけ。 それが今日は珍しく、遠慮がちに言葉を続けた。 増えた手札は少ないけれど。 「あの、お聞きしたいことが」 配達員の日々は少しだけ、いつも通りではなかったようだ。 (@1) 2022/08/18(Thu) 3:53:46 |
【見】 郵便切手 フラン【バー:アマラント】 ここ数日、毎夜のように配達員は仕事終わりにバーに現れる。 目的があるかなんてわからないし、 ありもしないかもしれないが。 「……今日も、開いてない」 提げられたままの『CLOSED』のプレート。 職場にアマラント宛の荷物が受取人不在で持ち帰られているのを見た。 だから此処は、先日来たときからこのままなんじゃないかと思ったりして。 店主の意味ありげな笑顔を思い浮かべながら、 青年は幾ら見つめようと裏返る筈のない板をじっと見ていた。 (@2) 2022/08/18(Thu) 11:56:44 |
【独】 郵便切手 フラン【路地裏】 昼間の配達の時間帯。 「………」 表通りから一本外れただけで、人の気配がまばらになる。 やけに響く自分の足音が耳に残った。 続いていた石畳を叩く音が、唐突に止まる。 路地裏のゴミ捨て場。 ただゴミが積み上げられているだけのそこをじっと見つめて。 何か独り言を呟くでもなく時間が過ぎる。 脳裏に浮かぶ写真より鮮明な光景をかき消して、配達員はまた歩き始めた。 (-115) 2022/08/18(Thu) 12:18:00 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタ今日も青年は、開かないバーの前に来る。 どうやら先客がいたらしく、今日こそは開店するのだろうかと思いながら歩みを進めて。 随分第一印象と様変わりしていたものだから、その後ろ姿が、己の焦がれた花であるとは気づかなかった。 「………え、」 掠れた声が耳に届いて、 漸く青年はあなたが誰であるかを認識した。 「ヴィオレッタ、さん?」 確認を取るように、その背中に声を掛ける。 振り返れば帽子を目深に被った姿があるだろう。 制服ではない所を除けば、配達員はいつも通りだ。 きっと泣き腫らした顔を見れば、目を丸くするに違いないのだが。 (-299) 2022/08/19(Fri) 21:07:10 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタそれが驚いたときの仕草だと、青年は知らなかった。 「……こんばんは」 挨拶が返れば、同様に。 彼女は"今日も"と言った。 少なくとも自分の知らないところで休業を知っていたらしい。 「…………」 いつも通りじゃない。 たった二度しか会っていなくても、 その表情が常である人はいないだろうと推測できた。 また会えて嬉しいだとか。 金平糖は美味しかったですか、とか。 言いたいことはたくさんあって。 でもそのどれもが、今言うべきことではない気がして喉が詰まる。 帽子の奥で眉を八の字にする様は、まるで道を失った迷い子のようだった。 「夜は、穏やかですが」 あなたの心はどうなのか。 やっとのことで選び取った問い掛けをあなたに示す。 (-311) 2022/08/19(Fri) 22:03:26 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタ「そう、ですか」 困らせてしまったろうか。 帽子のつばを引き下げて視線が落ちる。 穏やかな声色が、沈む心を少しばかり慰めてくれた。 「自分の方は、相変わらずです。 でも、祭りの終わりも近いのでそろそろ落ち着いてくると思います」 街を賑わせている祭り関連の仕事がなくなれば 配達業務も落ち着きを取り戻すだろう。 「お疲れでしたら、あの。 立ち話もなんですから、また甘いものでもと……思ったのですが。 以前のご恩も、ありますし」 口下手な自分の話を聞いてくれたあなただから、同じように聞きたいと思った。 とはいえ、"仕事"の重みが違う。 青年に話せることは限られているのだろう。 (-319) 2022/08/19(Fri) 23:04:57 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタ誘い返す笑みが、硬い面持ちを和らげた。 その笑みも甘いものに入ります、なんて言ったら笑われてしまうだろうか。 あまり眠れていなさそうなあなたを連れ歩くのも気が引けたのだけれど、それでもまた話せることが嬉しかった。 「遅くまで開いているカフェがあって」 此方ですよ、と踵を返す。 沈黙があまり続かないように、時折なんでもない話をして。 不慣れであることが手に取るように判るエスコートで店までの道を歩いただろう。 「酒類も提供していますから。 ……でも、ヴィオレッタさんはホットミルクとかの、方が」 余計なお世話ともとれるのだが、強い酒で思考を誤魔化すよりはそちらが良いと思った。 歯切れ悪くそんなことを零しながらも、何もなければ、そのまま店に着いて席に通される筈だ。 (-362) 2022/08/20(Sat) 11:34:25 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタ「お強いとは承知してますが……それでも、心配……なので。 体調が優れないときのアルコールは良くない、ですし」 口を出しすぎているだろうかと躊躇いつつも 隠しきれない腫れた目元をどこか痛ましそうに見ながら。 いつも一枚隔てた壁のように己を守る帽子は、屋内では外されて。 あなたを案ずる気持ちと一緒に未練がましくそれを抱えて今度はメニューに視線を落とした。 「では、あの。 お付き合いいただけると嬉しいです……」 遠慮がちに口元を緩めて。 青年はクロスタータとミルクセーキを頼む。 生地にジャムやチョコクリームなどのフィリングを詰めて焼いた定番のタルト菓子だ。 このカフェのものはブルーベリージャムを使っているらしい。 おすすめですよ、なんて言いながらあなたが注文を決めるのを待った。 (-376) 2022/08/20(Sat) 14:18:15 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタ「……そうですね。 世の中、信じられないくらいの暴力が急に降りかかる。 まるで嵐です。後には残骸しか残らない。 自分には、そんなことをするつもりも度胸もありませんから」 テーブルを見つめたまま、帽子の生地に少し皺が寄る。 息を吸って吐いて、気分を切り替えた。 「………喜んでいただけたのなら良かった。 また差し入れができれば嬉しいんですが」 願望を一つ呟く。 明日の命も不確かなことなんて知らないけれど。 少し待てば、注文はつつがなく運ばれてくるだろう。 (-405) 2022/08/20(Sat) 17:28:38 |
【秘】 郵便切手 フラン → ショウダウン ヴィオレッタ「……妹を思い出してしまって」 疲れを覆い隠して笑む姿が。 口説き文句には到底ならない言葉だ。 ともすれば、自信なさげなこの青年の方が年下に見えそうなものだし。 「だから、かもしれません」 不思議といつもより言葉が多くなるのは。 ホットミルクを飲む姿の方が、この人には似合っている気がして安心した。 断りの言葉にはこちらも少し申し訳無さそうな顔を見せて『すみません』と返しただろう。 「お仕事、あまり無理はなさらないでください」 上手い言い方なんて思いつかなくて、だからそれだけ。 帽子は膝に置き直してフォークを左手に取り、 一口分の大きさにタルトを切り崩してから口に運んだ。 薄く、表情に明るい色が乗る。 (-432) 2022/08/20(Sat) 19:24:46 |
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