【秘】 黒眼鏡 → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオあなたが留置場を尋ね、そこにいる者に声をかけたなら 「こちらです」…と、普段あまり使わない一角へと案内してくれるだろう。 絶対に使わないわけではない。 ただ、そこは人数が一定以上の時だとか、他の受刑者の近くに置いておくのを避ける場合だとか―― そういう場合に使われる場所のはずだ。 とにかく、アレッサンドロは、留置場の中にいた。 場末のホテルよりは清潔な狭い部屋、簡易なベッド。 そこにごろんと横たわる長身の男。 なんだか顔やらあちこちがぼこぼこに腫れてはいるが、元気そうなそいつは、 あなたが覗きに来た時にはぐうぐうと寝息をかいているだろう。 (-262) 2023/09/18(Mon) 23:57:04 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ/* ご連絡ありがとうございます! 少し知れそうなことはロールに混ぜて思い当たってみたいと思います。 ルチアーノがヴィンセンツォに連絡して結局は検挙自体を防げないような流れになり……のような会話であると思うのですが、何卒ご無理のないようにお付き合いくださればと思います。 話しかけるのは検挙前、つまり三日目の夜間頃の予定ですが検挙される時系列はあまり固定せずお好きなように演出していただけるように心掛けます。 RPの機会をいただきありがとうございます、本編でもよろしくお願いします。 (-263) 2023/09/19(Tue) 0:13:57 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → マスター エリカ「それなら良かった。今はそこらじゅうが騒がしくしているけれども、 市井の人間には関わりのないことだ。業績に関わってこないことを祈るよ」 周りの騒がしさは杞憂の産物だと言いたげに肩をすくめる。 気さくで大きく構えた調子は、いかにも上がり調子の起業家めいている。 顔の知れている相手には意味のない振る舞いでも、こういう場では要とされた。 自らが誰か、何かに聞いたことなど朧げの人間には、 この場は唯唯の偵察の意しか持たないようだった。 「ああでも、みかじめ料を払っている人は不安に思うものか。 彼らも脅されているだけで非がないとはいえ、形見の狭い思いではあるだろうし。 うちは不払いを通しているが、その辺マスターの周囲ではどうだい」 ホワイトネグローニを一杯、伴には他愛無い雑談を。 働き人の愚痴めいた言葉には、しかし確かな探りがあった。 (-264) 2023/09/19(Tue) 0:15:48 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡あくまで、責任者然として男は留置所へと踏み入った。 おそらくは部下の何れかがあげたのだろう目標の取調べの一環として。 正式な手続きを踏んで下って来たのだから、何くれと言われる筋合いもない。 重ねて、これからの取調べを有利にするための布石だなどと言ってしまえば、 連れてきた人間も丸め込むことは出来た――おそらくは、だ。人の心などわからない――筈だ。 堂々たる姿勢をどう捉えるかはさておき、相手は確かに重鎮だ。 周りと多少違う対応を取られるのは、おかしな話ではないだろう。 そんな奥まった場所の部屋の前に立ち、壁を指先で叩いて音を出す。 直接叩き起こせもすればこそ、今はそうしたこともできない。 「随分な姿だな、黒眼鏡」 声音には、数日前に見せたものとも違う隔たりがあった。 こっちが正しい姿で、正しい対応で。マフィアの幹部に対する声の掛け方だ。 外よりもいっそうに冷えた廊下に染み入るような、重たい声だった。 (-266) 2023/09/19(Tue) 0:24:08 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 口に金貨を ルチアーノ/* こちらこそご相談いただきありがとうございます。 話しかける時間都合についても承知いたしました。 当方の都合で引き伸ばしていただいている手前もありますので、 そちらの良きようにしていただければ幸いです。 改めて、引き続きよろしくお願いいたします。 (-269) 2023/09/19(Tue) 0:43:44 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「元気……では、ないです」 「警部は覚えてないでしょうけれど、彼女も薬物事件の被害者です」 どこぞのマフィアと推察される誰かから唆され、少女は薬物中毒になった。 足元もおぼつかない状態で外を歩いていた所に交通事故に遭って半身不随となってしまったのだ。 養育院はあくまで子供を保護し養育し、社会へ出す所だ。 廃人となってしまった少女を看る余裕なんてどこにもないから、少女は病院を経て、今は薬物更生施設に居るということを説明した。 「僕は知ってて、見て見ぬふりをしてしまったから……」 「あの時、ちゃんと止めていたら彼女はこうはなってなかったんじゃないかと、思います」 薬物を与えた犯人は、まだ、捕まっていない。 だから男は、似たような案件には無条件に首を突っ込んでしまうようで、それが、数年前の事件の解決だったのだろう。 説明する男の表情には、熱はない。 凪いだ海のように静かなものだ。 (-284) 2023/09/19(Tue) 1:41:12 |
【秘】 黒眼鏡 → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオあなたを送り届けた職員は、何も言わずその場を辞していく。 何者かの意思が介在しているのかは分からないが、 少なくともあなたの邪魔をする気はないようだ。 「んぐ」 呻くような声。 見れば顔のあちこちは腫れあがっており、瞼が片方閉じ切っていない。 喧嘩と暴力を常に帯びていた以前ならばともかく、 ここ10年程のアレッサンドロが顔に張り付けるにはあまり見たことのない様相だろう。 「おう、旦那。 警察署にこんなスイートルームがあるとは知らなかったよ。 ガイドブックに乗っけた方がいい」 上体を起こしながら、ベッドの上にあぐらをかいて座る。 こちらの様子は、代わりはしない。 対面するものの声色が変わっても自分の態度を変えないのだから、 この男の性根が知れるというものだ。 (-297) 2023/09/19(Tue) 4:56:37 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオマフィアには様々な情報通が存在している。 その中でも一際表の世から隠れた情報屋は、 自らを情報屋とは名乗らず便利屋と呼ばれていた。 全て足のつかないまっとうな金を使い 他の情報屋や人を買収し、様々な真実を手に入れる道楽もの。 それは反社会組織のアジトからITグループの社長の女の住所まで多岐に渡る。 そんな猫の尻尾を掴んだ警察が一人、名をGasparo[ガスパロ]。 ガスパロが普段から隠れ潜む便利屋を見つけられたのは、 彼がよく使う駒が警察署内の人間を調べていたからに他ならない。 ターゲットになっていた警官は、 ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリア。 便利屋はヴィンセンツォを調べている最中にガスパロによる妨害に遭いトラブルに見舞われる。 即座に調べるのを取りやめさせたが、もう既に尻尾は掴まれており検挙されるまで秒読みというところまで追い込まれてしまった。 そう、思っていた。 (-317) 2023/09/19(Tue) 7:59:37 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 花浅葱 エルヴィーノ元気ではないと聞いて、そうだろうな、と得たように視線が僅かに翳る。 語り口からそうと知れたことを敢えて暈した、曖昧を貫いて吐露される言葉を聞く。 どうした意図をして己に伝えるのか、それを受け止めるように、 視線は側にあるだろう貴方を見上げる形で投げかけられる。 「君がそうだと感じるのなら、そうなのだろう。 けれども過ぎた出来事を、いつかの自分が出来ていたなら、なんて評価するのは、 君自身を壊してしまいたくないならやめておいたほうがいい。 全て知った後の自分がどう俯瞰しようと、当時の君にとって最善だった筈だ」 いつか、かつて。 見たこともない小さな少年の面影を、成長した貴方に見て説く。 今そこにある貴方から、かれを庇い立てするかのように。 僅かな緊張は尾を引いて。ふと瞬きをした瞬間にほどけてしまった。 「それに今の君は、よくやっている。 ……資料室の鍵、借りっ放しではいけないよ」 (-318) 2023/09/19(Tue) 8:08:26 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「……動きが無いな」 依頼人には理想の資料を用意した、後はこのまま身の回りを片付けて証拠を消すだけになっている。 「そろそろ何かあってもおかしくないと思っていたんだが……。 己惚れだったか? ん」 Trrrrr……着信音が鳴り響く、何か嫌な予感がしつつ電話に出れば 『ヴィンセンツォを検挙しようとしている動きがある』と予想もしていなかった知らせが駒の一人から告げられた。 「はあ? ……どうして、……」 自分の行動でまた誰かが危険な目に遭わされた。男に過ったのはそんな考えだ。 マフィアに狙われた上級警部など格好の的、別の理由があるかもしれないが今ならまだ間に合うかもしれない。 それに、彼は確か。 『ヴィンセンツォは黒眼鏡と昔から交流が――』 「それはもう知ってる! もう切る、お前達はもう動くんじゃない。 尻尾丸めて引きこもってろ!!」 やるせない怒号を受話器に向けどうしてくれようと深いため息を吐く。 時間は刻一刻と迫り、決して鈍間を待ってくれやしなかった。 (-319) 2023/09/19(Tue) 8:14:21 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡ああ、と。顔を見た瞬間に嘆くような吐息が唇から溢れた。 かつて視線より先に拳を突き合わせていた頃、貴方がこの地位でなかった頃は、 それこそ自分の手でこの留置所に叩き込む勢いであったこともあったろう。 実際に叶うことがあったかどうかはさておき、今更取り立てて言うことなんかじゃない。 腫れた顔だって、なおさらだ。 にも関わらず男は、人目もないのを良いことに格子の向こうで片膝をついた。 僅かばかり境界線を越えて、指先が部屋の中へと侵入する。 冷たい床を、素爪が叩いて僅かな埃を書いた。 スカイブルーの裏側がどんな色をしているか、だなんて。 こんなに暗いところでは伺い知れないかもしれない。 ただ、常より僅かに伏せがちの眦は、瞬きも少なにじいと貴方を見ている。 「誰にやられた」 と。ほかに聞かれぬように沈めた声は、炭の奥底のようにちらついていた。 (-320) 2023/09/19(Tue) 8:15:18 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ『Buongiorno、勝利の君。 ……──突然ですまないが、貴方は【A.C.A】に狙われている』 外部からの傍受のリスクを最大限に抑えた通信で掛けたのはヴィンセンツォの携帯だ。複数台あるのならいずれかの。 それは随分と怪しい連絡になってしまったが、遊び人の放浪息子が直接会いに行くよりはよっぽどマシであったように思えた。 (-321) 2023/09/19(Tue) 8:15:35 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 口に金貨を ルチアーノ海外のルートを潜って社会の裏側に潜り込み、通信は調査局の難を逃れる。 ともすれば直接顔を合わせるよりも安全な一般の電話は、平時とは別の意味で男を驚かせた。 電話越しの声はわずかばかりの焦らすような間を持って、『いい警官』が語るよりも些か低い声で返った。 「……そういう親切なお前はどこの誰だかな。 それとも嘲るのが目的だったか? 予見していたよりかは、随分若い声をしているな。 俺のことを知ってるならてっきりもっと年寄り連中かと思ったよ」 電話越しの応答は市民に向ける其れよりもずっと冷たい。或いは、此れが素顔なのかもしれない。 姿の見えぬ連絡主とは、お互いに知らぬ顔だろうから誰と聞いて見知ったわけでもないが、 直接会う必要性を感じるかどうかは貴方の自由だろう。 誰とも知らぬ人間に声ばかりで伝えられることは少ない。 (-325) 2023/09/19(Tue) 8:47:38 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ壊れる、という事が。 初恋を歪に変質させた情をかかえて、人一人の人生を左右させるような、自分勝手で傲慢な幸を与える思想に至った事も含むのだとしたら。 この男はもうとっくに壊れてしまっていることだろう。 「どうですかね……、まぁ。でも……これは個人的に報復を考えてるから犯人を探してるだけです。 幼馴染の家族が殺された事件も調べてますし……」 「彼女には、ただ、施設を出ても人として生きるだけのものを与えようと思っています」 養育院にいたのだから、女には身寄りがない。 施設を出ても、重度の精神疾患と動かぬ体を抱えていては、死ぬしか道はないだろう。 男の行動は、やること成すこと彼女と幼馴染の事に直結しているが、内情をあまり話すことをしてこなかったため、これを知るものは極端に少ない。 それでも自分の身さえどうでもよく、手段をあまり選ばない思考を除けば、優しいだけの男に見えてしまう。 生活態度の件がなければ、相当の優等生に見えていたかもしれない。 「……あ、はい。 見回りに行く時間になったら返します」 鍵を、手の中でしっかりと握り直した。 (-326) 2023/09/19(Tue) 8:50:29 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 花浅葱 エルヴィーノ貴方が例えその腑を曝け出すことで大多数の他に指差されるような人間であってしても、 この男は今と変わらない態度を向け続けることだろう。 それが絶対評価たる上司としての務めだ。情のためではない。 そういう類いの寛容を含む目は、貴方からの返答を聞いて微笑むように細められる。 「いつも通り、忙しくならないうちにやるべきことを終わらせて息抜きしてしまいなさい。 常通りのコンディションでいられるのが一番いいことだ、我々はね」 今も、そして日が経って混乱が彼らに忍び寄ろうとしてもそれは変わらない。 手袋に包んだ手が貴方の腕を軽く叩いて送り出す。 その日ばかりははっきりと、何事もなく過ぎていったことだろう。 (-328) 2023/09/19(Tue) 8:59:27 |
【秘】 マスター エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ肩をすくめ、ほんのちょっぴりだけわらう。店の経営は趣味……道楽のようなものだとは聞いたことがあっただろうか。少なくとも、金銭的な利益を求めて経営しているわけでないことは、店の形態から窺えているはずだ。 「うちも同じだが……さてな。 今は何を口にしても理由になる。 生憎と、この耳でそうした話を聞くことはない」 酒瓶に手をやりつつ、そんなことを返す。耳によってでなければそれなりに把握していることはあるらしい。とは言えその内容を教えてくれはしないだろうが。 並べられた瓶は三つ。ビアンコサルティ、ベルモットの白、ドライ・ジン。氷入りのグラスに注がれた中身が混ぜられる。 さっぱりとした味わいのホワイトネグローニの中でも、ハーブがよく香る爽やかな取り合わせだ。 確かなそれに全く気付かない程、彼女は鈍くもない。それでも彼女の見てくれは至っていつも通り。彼女はここで、彼女の思ういつも通りを送るだけ。いつも通りを提供するだけ。その視野をもってして知り得る情報で、誰ぞに何ぞを説くこともないのだ。 コトン 最後に皮結びをした輪切りレモンを添えて、 グラスはあなたに差し出された。 (-329) 2023/09/19(Tue) 9:02:15 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → マスター エリカ或いは、商売熱心な働き者による市場調査にも思えなくはない。 問われればそう返すくらいの余長を引いた上で、男は悠々と過ごしている。 ふ、と。貴方の所作に目を向けて。瞬きがふたつ。 それから、僅かに自分に対してそうするように緩く首を振って、よく手入れのされた髪を振るった。 或いは。施行されつつある過激な法案を振るえるだけの手を他の警官たち同様に持ちつつも、 愚直にそれに従うことの馬鹿馬鹿しさを、再確認しにきたのかもしれない。 「もうじきぶどうの収穫時期になる。酒に関わることは何かと目をつけられがちだ。 何事もなく季節が過ぎたなら良いのだけどな」 酒精を纏った鮮やかな香りを口元に運びつつ、商売人めいた愚痴が一つ。 貴方の元を生身で訪れた警官の用事は、有耶無耶に過ぎた。おそらくは、きっと。 (-330) 2023/09/19(Tue) 9:10:51 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオさてどこまで、いや、直接会いに行ったほうが伝えられることは多い。 その上通信は短ければ短い程リスクが無いのを知っている。 「……ルチアーノ、黒眼鏡の元部下だ」 少なくともその術で誰かを救いたいと願ったのなら、苦々しくも手の内を明かすしかなかった。 貴方達がどこまで仲がいいかも知らなければ協力体制を敷いているかもわからないが身分としては一番身近だろうと。 「あんたが良ければ直接会えるが、このご時世。 無理にとはいえん、だが」 逃げてくれというには随分年上であることとその声の威圧感だけでも憚られる。 「……無罪の輩が放り込まれるのが見過ごせんのだ」 そういえば。誰かが貴方を“怖いおじさん”と言っていたことを思い出して苦笑いをした。 (-336) 2023/09/19(Tue) 9:36:49 |
【秘】 黒眼鏡 → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「転んで顔をぶつけてね」 チャオ、なんて掌を見せながら、おどけて言う。 それはいつだったかのはるか昔、 珍しく喧嘩に負けた時のアレッサンドロが悔し紛れに発していた言葉だ。 だがその時とはまるで違い、まったくもってどうでもよさそうな態度は剥がれない。 「旦那、今怪しげなことしないほうがいいぜ。 俺と話しただけでしょっぴかれたやつがいるらしいじゃねえか? トシなんだから、大人しくチェスでもしてな」 ごろり、と再び横になり。 「こんな悪ふざけ、すぐに終るさ」 からからと口元が笑う。 (-338) 2023/09/19(Tue) 10:17:45 |
【秘】 マスター エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「過ぎるさ」 確信めいた言葉が返る。 「…ぶどうと言えば。 どこぞの国では、もう少し先の頃を葡萄月と言ったか」 ヴァンデミエール──葡萄月を年の初めとした暦。彼女はその頃のその国を生きたわけではないが。いつかの革命の折に定められたそれを、知識としては持っていた。 人から聞いた話だった。 (-352) 2023/09/19(Tue) 12:03:15 |
【秘】 マスター エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「葡萄月から冬に向かって」 「霧月、霜月、雪の月」 「雨月、風月、芽ばえ月」 「花月、草月、収穫の月」 「熱月、実月と来て……」 「…そうしてまた、葡萄月に帰ってくる」 ひとつの歌のように、音は小気味よく続いた。 普段彼女は比較的ゆったりと話すものだから、そのリズムの良い音は、多少なりとも意外性を持つものだっただろう。 「いつも通りになっている、その頃には」 それは長い目で見過ぎかもしれない。 (-354) 2023/09/19(Tue) 12:09:40 |
【秘】 マスター エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「季節は巡る。何を為そうとも、何を為さずとも」 「…己の荷と上手く付き合って生きたいな、自分は」 静かに転がされた言葉は、胸を張ってのそれではなかった。願望の域を出ない──そんなふうに感じられたかもしれない。 上手に生きたい。失敗せずに生きたい。 苦しまずに生きたい。楽をして生きたい。 似ているようで違うこと。酷く迂遠な、あなたにとって、あなたの道が良いものとなるようにとの祈りだった。 あなたの道は、そうなるといいな。 (-358) 2023/09/19(Tue) 12:13:45 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ一声目。 いつもより緊張の混じる声を聞けばやっぱり勢いが過ぎたかなと過ったものの。 次の瞬間にはいつも通りの微笑みがそこにあったから、内心ほっと安堵した。 「あ、……はい、立ち話のままでよくて! えっと、あの、その…… ここで聞くべきじゃない、かもしれないんですけど」 少しだけ言いづらそうにしてから、それでも。 おずおずと形にして、問いかける。 「今朝決まったって聞いた、あの法案。 ヴィトーさんも……賛同しているんですか?」 その答えがどんなものであれ、印象や好意を変えるわけではない。 この世には様々な思惑と立場があるのだと、視野がまだ狭いなりにも理解はしている。 だからこれは本当に知りたかっただけの問いだ。 ある種の理不尽としても受け取られてしまうかのような強制力を持った法案に対し。 初めて己が知った警官である貴方の、言葉が聞いてみたかった。 (-388) 2023/09/19(Tue) 15:10:10 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 口に金貨を ルチアーノああ、と。間を置いてから通話の向こう側に取り落とされたような声に混じるのは悲痛だった。 海の只中に浮かんだ観葉植物の葉のような場違いの静けさは、次に言葉紡いだ時には失せていた。 たったひとつきりの溜息なんて、どう解釈するかどころか聞いてなくたって仕様のないものだ。 「いいさ。……俺が狙われてるっていうんなら、むしろお前の方が危険かもしれんがな。 だが、そう、伝えておくべきことはむしろ俺の方にありそうだ。 場所はそっちで決めてもいいが、……昔ペットショップだった廃家が郊外にあってね。 他の意見がないなら、そこで落ち合おう」 曲がりなりにも警官であるのは変わらない。何かしらの罠を想定されてもおかしくはない。 袋の鼠はどんな暴れ方をするかだってわからないものだから、選択の余地を貴方に残して。 電話越しの声は、気遣うみたいな貴方の言葉に対して僅かばかりの嘲りさえ込めた。 その矛先が貴方であるとは、限らないが。 「それにしても、無罪……ね」 返答の如何を聞いたならば電話は切られる。 長引くほどお互いを危険に晒すのは、こちらも承知していてのことらしい。 (-404) 2023/09/19(Tue) 16:54:56 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡「お前のためじゃない。俺が安心したいからだ。 こんな機会に乗じて頭から落としていくような豪気な奴を残してなんかいられるか。 終わった先でまた狙われでもしたら厄介だし、面子に関わる問題だろ」 微かな苛立ちで声の調子が跳ねた。廊下に響く前に、そうっと抑えられはしたが。 自分のことでもないのに、小暗い感情が瞼の内側をちらつく。 別にそんなもの貴方が気にしてやらなければいけないものでもないが。 どうせ、離れゆく他人だ。二度と交わりはしない。 「どうせこれで最期の捕物になる。お前と俺は立場も、後ろ盾の在り処も違う。 それとも、お前のせいで何の罪もない奴が同じ目に遭わされる方がいいか? 警官連中でないならお前の下の人間がお前を売ったのかもしれないものな」 (-406) 2023/09/19(Tue) 17:04:30 |
【秘】 黒眼鏡 → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「やっぱ旦那も、そう考えるよな」 苛立ちも目の奥の熱も。 背中合わせに燃える炎を、 その輻射だけで感じて、笑う。 「大丈夫さ、旦那」 ごろん、と再び転がって、上体が僅かにそちらを向いた。 黒い瞳は、燻る堅炭。 その爆ぜる火の粉を黒い眼鏡の奥に隠して、 くろぐろととぐろを巻き燃え盛る。 「もう残っちゃいないからよ」 ──確信したような口ぶりは、いかなる故か。 再びごろん、と頭が落ちて、その瞳も口元も良くは見えなくなってしまう。 「旦那はまぁ、どうにかするだろけどさ。 俺もせいで警官サンとか、若ぇのがブチ込まれたら、まあそれは申し訳ないなー。 それは嫌だな、うん」 売られたかどうかについては言及ナシだったので、あんまり気にしてないのかもしれない。 (-417) 2023/09/19(Tue) 18:24:43 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「……もう危険な目に遭う覚悟はできてるさ。 こうして連絡してしまった時点でな」 間違って後悔の色を混ぜた声にならぬよう最大の配慮をしつつ、その場所へ向かうと返事をすれば短い応答の末通信を切った。 声は震えてなかったか、俺のせいだと言うのも烏滸がましい。 今から会う相手には自分の事情など一切関係ないのだ。 だから引き締めなければいけないというのに、緊張で普段通りはできそうになかった。 「お人好しの馬鹿野郎と思われたほうが気が楽か?」 一体何様のつもりで俺はと電話の向こうにいた主のことを考える。 心は処刑台に向かう気分でその待ち合わせ場所に向かっていった。 勿論誰にも知らせず嗅ぎ付けられないように、行き場所の情報は徹底して隠しておいて。 (-458) 2023/09/19(Tue) 21:10:18 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → マスター エリカゆっくりと巡る季節を聴く。 言葉の響きを知れば、知らぬものであっても瞼の裏に色彩の移り変わりを思うようだった。 温暖なフランスであるならば、同じように葡萄の熟すのを想うのはおかしくない。 繊細な味わいを舌の上に移しながら、秋の黄金が広がる記憶を思い浮かべた。 まだ、家族が引き裂かれずにあった頃。今の職分でなく、家業を継ぐと思っていた頃。 この島のはずれの山深いほうにあった黄金の海こそが自分の居場所だった頃。 あの景色と、家族とが、自分の元に戻ってくることは二度と無い。 「いい心がけだ。殊勝、というわけでもないか。 自らの足るを知ることほど、己を尊重しているといえることもない」 途絶えた道の行き先を願われること、綻びた道を歩む足が外れていないのであったなら、 貴方に願われるだけの価値もあっただろうものを。 「いい夜だ」 邂逅の夜は更けていく。 其処に交わされるものは言葉ばかり。 いずれ街が静かになる頃には、男も店を出ていくのだろう。 身一つ、手につかまえた身柄も無い。 → (-487) 2023/09/19(Tue) 22:51:26 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → マスター エリカ夜は巡る。 朝日の昇る頃には外の情勢は変わり、とぐろを巻いた悪意が、或いは擦れ違いが渦を巻く。 それに影響されてうねりを持った重たい霧に変わっていくのは、何も例外ではなく。 いつか、貴方への問いを持ちかけた曖昧だったそれは、 今は墨を混ぜて淀んでしまったかのようにどろどろと濁った汚泥めいている。 いや、もとよりさして御綺麗なものなどでは、なかったか。 最初から、傷ついて腐り落ちた掃き溜めみたいなものだったのだろう。 淀んでうねる靄は、いつかのように"情報屋"に投げかける。 あるいは、答えのない問答を心中に吐き連ねている呪詛じみたものが、 偶々貴方の元へ届いただけなのかもしれない。 声、ともつかぬ悲痛の叫びは、答えを求めて貴方に問いかける。 自分のもの――勝手にそう思っているだけだ。手の中にあることなんて永劫無い――を、 貶めたものは何であるのか、と。嵐の中の雷鳴じみて、ごうごうと怨讐が叩きつけられる。 /* お疲れ様です。情報屋ロッシへの三回目の問いになります。 黒眼鏡さんに能力行使した人物は誰かについてをお伺いする形になります。 が、プロローグでの説明にあった「役職等の秘匿情報」に該当し、 答えを得るのは難しいことかなと思うので、回答は無しでも問題ありません。 また、樹木子の監視先していはお答えがあるならその人物、 ない場合/既に犠牲者になっている場合は「パス」で予定しております。 諸々遅れており申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。 (-488) 2023/09/19(Tue) 22:52:04 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 暗雲の陰に ニーノ「ああ――そのことか。確かにそうだね、ここで話すことでもない。 もう勤怠を切っているなら、パン屋にでも寄って公園ででも話そうか。 屋外とはいえ、そっちのほうが話しやすいだろう?」 問いかけの内容を聞いたならば、それとなく話題の中心を曖昧にしながら提案する。 自分よりも立場の低い貴方を守るためだ――今となってはその配慮も無意味だったわけだが――。 ただ少なくともその態度だけで、貴方には"言い辛い側"であるとは伝わったかも知れない。 答えだけを得たいのなら、それだけでも十分な回答にはなるか。 不安がってあるように思える貴方の、低い位置にある顔に。 子供にそうするみたいに首を傾けて少しだけ高度を合わせて問う。 連れ立っていってきちんと話をするかどうか、それとは別に。 「……大丈夫かい、フレッド?」 (-495) 2023/09/19(Tue) 23:09:50 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡「……そうか」 長く、長く沈黙があった。少なくともそこには納得があった。 思考がぐるぐると落ちた先には少なくとも着地点がはっきりとあって、 遣り切れない思いを消化するだけの道筋を得た、そういう響きだった。 「お前がそう云うんだったら、そうなんだろう。 そういうことにしておくさ」 憎まれ口めいた言葉を残して、冷たい廊下から立ち上がる。 長らくいられるわけではないし、こんな情勢で出来ることも多くはない。 いずれは案内をした職員も戻ってきかねない、それだけの時間が過ぎていた。 「アレッサンドロ」 最後に一言だけ、貴方の名前を口にする。呼び寄せるように。 けれども貴方に応える義理のあることではない。貴方に責のあることではない。 放り投げられたボールをどうしてやるかなんて誰が決めるものでもない。 振り向かない権利は貴方にあって、引く指に引かれてやるかどうかなんて、強制力もない。 そのくせ、こちらを向かない瞳に向ける諦めは、縋るような輪郭をしていた。 (-502) 2023/09/19(Tue) 23:31:12 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 口に金貨を ルチアーノ「若いな。相手が何者かも知れないってのに」 溢した声には多少の笑いが含まれていた。それを無礼と取ることも出来るだろう。 声音からいくらか相手が年若いことを見て取ったのが一つ、 こんな施策を振るう側であるのは違えない警官を相手にして尚案ずるほどの、 優しさ、あるいは俠気だろうか、それを懐いている姿勢に対してが一つ。 少なくとも警官のほうは、警戒ばかりを電話口に向けているわけではないようだった。 数刻。 入念に監視の目を欺いて追手を撒いて、待ち合わせ場所へと辿り着く。 貴方の前に現れた男は、長いコートを着込んではいるものの丸腰であるようだった。 拳銃の一つも提げてしまえば、あるいは防弾ベストなんて着込んでしまえば、 きちんとした仕立てのスーツは見かけの型が崩れてしまう。 一般人にはわからない違いだろうが、部下を率いるソルジャーの立場、 有望だろう貴方であればそうした違いは見た目でわかる範疇のことかもしれない。 片手にはアタッシュケースを持ち、小暗い廃屋の中に座る。 かつては待合席なりだったのだろう破れたソファの上に、男の姿はあった。 「……どうも。 少なくともここに押し込みが来ることは無い筈だ、安心しな。 確か話じゃ、俺が狙われてるってことだったが。どうしてお前がそれを知らせる。 俺が多少お前たちについて、口利きしてやってるからか? 今じゃあいつが捕まっているんだから、その利点もお前たちにあるかどうかわからんがね」 まずは、貴方の言葉に耳を傾けるべきだろう。 とはいえどこまで話すべきかなんてのは、貴方の立場を思えば難しいことだろう。 それとなく、己の側で思い当たりのあるところをぽつぽつと挙げる。 (-510) 2023/09/20(Wed) 0:04:49 |
【人】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ>>3:27 テオドロ 0日目 「一つ一つ挙げるつもりはないが、君は諦めるのが早すぎるな。 諦めきれないものも、そのくせ多いように見える。 若年寄ぶるのはあまり君には似合わない気がするよ」 なんて、さして貴方を知るわけでもない上役の人間の言うことだ。 それが的を射ていると感じるかどうかは、今の貴方、あるいは将来の貴方に委ねよう。 茶化したような言い方をするのは、今は考え込ませるのは一区切りの合図。 眼の前の風景に目を向けさせて、先ずは貴方の目的地へと足を向けよう。 「自分のできることを正しく評価できるのは、君のいいところだ。 いま、どうにかしなくちゃいけないことなんてのは意外と世の中少ない。 君の将来が私は楽しみだよ」 いつか、いずれの時まで見守っているかのように言うのだ。 その保証など少しもないくせに平気で嘯いて見せる。 それじゃあ、とふたつの足音は商店街を抜けていく。 貴方の買い物は内訳が決まっているけれど、男の方はそうでもない。 ぽつ、ぽつとアドバイスを貰ったりなんかしながらに焼菓子ふたつなんかを選んで、 他愛無いやりとりがあった頃の夕暮れが過ぎていく。 まだ、処刑台に上がるよりも前のことだった。 (28) 2023/09/20(Wed) 2:08:14 |
【秘】 黒眼鏡 → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「わるいね、旦那」 立ち上がるあなたを、見送る。 ──いつものように。 「うん?」 普段なら、引き止めることも追い求めることもない。 だが、あなたとの間に横たわる――実に二十五年の歳月が、 男の首を再び持ち上げた。 「なんだい、ヴィンセンツィオ。 あんたらしくねえな」 腹筋の力だけで起き上がり、よ、っと床に降りる。 無造作な足取りでぺたぺたと、裸足のままで格子に近づき、 「言いたいことあんなら言えよな。 昔っからそうで――いや、それならあんたらしいのか? …いややっぱ、らしくねえ」 自問するようで、結局答えは出ている。 がしゃん、と手をつき檻を揺らせば、 その隙間越しに黒い瞳があなたを見た。 (-528) 2023/09/20(Wed) 2:19:47 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡自分よりも背の高い人間なんて見たこともないような、高い上背が貴方を見下ろす。 普段はサングラスの向こう側に隠れた目を覗き込んで、ああ、とこぼして。 歳を重ねて水気の失われつつある頬を緩めて、小さく笑った。 鉄格子に掛けられたその手へと、屈むように背を曲げて。 ほんの少しだけ。払った埃が触れるくらいに微かに。 貴方の指先に、触れるだけのキスをした。 「元気でな」 一つきりの言葉を最後に踵を返す。 こんな悪ふざけはすぐに終わるだろう。 では、その後は? 歩き慣れた革靴の底が廊下を叩いて、街へと上がっていく。 秋から冬へ巡る。10月を過ぎれば金星は見えなくなるだろう。 ヴェスペッラの名と同じように。けれど、それも牢の中では見えやしまい。 貴方の影に紛れ込んだ大嘘吐きは、それで潔く退場する。 (-535) 2023/09/20(Wed) 2:43:06 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ誰も訪れることがなくなった建物に、乾いた音が鳴り響いた。 時間が止まったようなその空間で長いコートは翻される。 その整ったシルエットから導き出された身軽さの違和感に気づけば疑念で眉をしかめつつも、 その出で立ちに圧倒されてしまった男は安々と席につくことなどできず、がら空きのソファを眺めるだけしかできなかった。 「どうも、ご丁寧に。 ……どこに行っても安心できない中嬉しいね」 「さてどうしてだって? 言ったとおり無罪のやつが放り込まれるのが嫌だったからだ。 でも其れが一番じゃあない」 「俺は例の法案の実行役を見つけるために情報を漁っていた。 その時にあんたの名前をあげたんだんだが……」 男の口から語られたのは貴方の身辺を詳しく調べようとした事実だ。 しかし妨害に遭い調査は中止、いくつかの連絡先は手に入ったが目立つ情報は集まらなかったという。 そして、あくまでも確率が一番高いとされる推測を男は続けた。 悪事を裁く執行の目がいつの間にか自分ではなく、貴方にターゲットを移したこと。 もし、自分が貴方を調べようとしなければ貴方は危険にさらされることなんてなかったのではないかということ。 「妨害を起こしてきた輩とあんたを嵌めようとしている警官は同一人物だ。 タイミングが良すぎる。その上で俺は……矛先が向いたのを自分のせいだって思っている。 これで捕まりでもしたら目覚めが悪い。 だから……こんな偽善、全部自分のためだ」 (-542) 2023/09/20(Wed) 5:11:20 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 口に金貨を ルチアーノ男は静かにあなたの言葉に耳を傾けていた。 此処まで足を運んだ労力を無碍にするわけでもなく、経緯を聞き取る。 しかし、最後まで聞いたならばやはり男は低く唸るように笑った。 他人を青く見たような、威圧的で尊大な態度だ。 表立っての上級警部殿、の振る舞いとはまるで違った陰険さを男は持っていた。 「……確かに道理は適っている。矛先が向いたのは、お前のせいかもな。 けれども残念ながら俺は無罪の輩ってわけじゃあない。 大方、こっちを挙げたほうが成果になると踏んだんだろうさ」 立ち尽くす侭の貴方に対して、アタッシュケースが差し出される。 受け取らないのであったとしても、押し付けるように足元まで蹴り出された。 慎重に扱うべきものにしては、その扱いはぞんざいだった。 「このまま俺が持っていれば警察の手に渡る。 どうせ仔細に至らない程度には調べ尽くされているだろうが、 それじゃあお前たちの手には渡らなくなっちまうからな。 何、物騒なもんじゃない、唯の情報だ」 葉巻の一つでも吸おうかとポケットに手をやって、やめた。 閉鎖空間で目立つことはないだろうが、 どうせこのあと殴られでもするなら勿体ない。 「俺のことが知りたけりゃ古株の――……そう、オルランド辺りにでも聞きゃよかった。 それで俺がどんな奴だかわかる。 お前の上司の"港"を荒らした、ニ年間とおまけの記録だ。受け取れよ」 (-551) 2023/09/20(Wed) 7:19:07 |
【秘】 黒眼鏡 → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ骨が軋み、肉が弾ける。 ヴィンセンツィオとの間にあった物質的交流なんて 大体はそんなものだったから、指先に触れる感覚にぱちぱちと、 瞬きだけを返す。 「旦那?」 困ったように頬をかく、けれど。 その立ち去る背中が、革靴の後が、恐らくはあなたの選んだ道なのだろうと思えば、 もはや伸ばす手も問う言葉もない。 「はー……」 くるりとその体を反転させて、がしゃん、と格子に背を預けた。 「あんたともっかい、 殴り合ってみたかったけどな」 ──ぽつり、と呟いた言葉を聞く者は、牢獄の中には誰もいない。 鉄格子の隙間から広く細い廊下へと残響して、 いずこかへと消えていく。 (-552) 2023/09/20(Wed) 7:24:49 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ上部層にいるわけでもない一端のマフィアと、上級警官である貴方を捕まえるのならたしかに旨味の軍配はそちらに上がるだろう。 高圧的だが不動たる貴方が揺れる姿を望むものは多いように思えた。 「オル……あの人は今、 ―――は? それ、は」 ボスは今はバカンスだとはっきり言いそうであった愚か者は、その差し出されたものに息をのんだ。 アタッシュケースに目を見開いてから改めて貴方の表情を見る、中身はこの際関係はない、続く言葉を聞いた瞬間にそれは大きな意味を持ってしまったが。 反応が遅れてぞんざいにされたそれの動きまで様になってるなと、場違いな感想を持つほどにこの行動を理解することが出来なかった。 「なんで……。 あんたは今ここで俺をしょっ引くことぐらい余裕なのに」 あくまで警察だ、殺されはしないと踏んでいたが何らかの処罰や拘留は覚悟していた。 もしかしたらまだこれからこの事実を告げられるのかもしれないが、今渡されたのは手土産のように思える。 「今ならまだ身を隠せば捕まらんかもしれないだろ! 捕まったらどうせろくな目に、たとえ……くそ……っ」 ああ、貴方は何処にとっても何か仄暗いものを持っている男であったのか。 自分の敬愛する上司の事件にも関わっていれば、十二分にマフィアとの縁も捕捉されている。 その上自分はすぐに恨み言すら吐けない甘ちゃんだ、たしかに無罪とはもうこの口から言えなくなってしまっていた。 「……黒眼鏡もあんたが務所にぶち込まれて喜ぶやつじゃないだろ」 「どうにか、ならんのか。ただ俺は……」 一番誰かを責めたいのは、此処で理不尽な目に合うのは貴方だと言うのに。 男は貴方が検挙されることを愚図って嫌がる子供のように意味もない言葉を吐いた。 (-571) 2023/09/20(Wed) 11:01:19 |
【秘】 マスター エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ巡る季節、美しい響き。言葉だけで移り変わる景色が思い浮かぶとは、彼女もこの暦を聞いた際に思ったものだった。 二度と訪れない何かは、彼女にもまた。 「…ああ、そう思う」 特別なこともない、いい夜だ。 夢で多くを知る彼女は、現実では何も知らない己が普通に言う何かを渡すだけ。小さなきっかけで、ほんの少しでも良い方に揺れ動くのなら。それが望ましいものだから。 ……そしてその小さなものが、確固たる何ぞかに影響できるほどでないことも知っている。己の行いにはどうにも無駄が多いと思えても、そうしないこともできないのだ。彼女はそういう人だった。 そうして何事もなく夜は過ぎ、 あなたが店を出る際には、年の暮れの挨拶が送られたのだった。 「良い年を」 凡そ可能性がないことと考えていようとも、 彼女はただ祈るだけ。 (-584) 2023/09/20(Wed) 13:38:27 |
【秘】 情報屋 エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ────── ──── ── … その夢は、静謐とはかけ離れた様相を呈していた。 どす黒く、どろりとした粘着質の重さを持ったうねりは、"情報屋"の目にはどう映ったものだろう。目を細め、何やら思案するような沈黙があった。 その沈黙は、この匿名希望の情報屋を担う者としては必要のないもの──ともすればない方が望ましいものであるのだが、それをあなたが知ることもない。 (-585) 2023/09/20(Wed) 13:40:54 |
【秘】 情報屋 エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオたっぷりの沈黙の後に落とされた返答は、至ってシンプルなものだった。前任者であればもっと色を付けただろうに。 とは言え、誰であるかがわかればそれで十分、行える手立ては増えるはずだ。 /* おつかれさまですありがとうございます! こちらこそ遅くなりました。 先んじてPL連絡させていただいた通り、返答は上記の通り既に犠牲者になっている人物ですので、樹木子の能力行使先は「パス」として受け付けていますね。 (-588) 2023/09/20(Wed) 13:43:53 |
【秘】 情報屋 エリカ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ/* 忘れていました。追記です。 四日目時空の黒眼鏡様のパンツは「グレーの無地」です。お納めください。 (-596) 2023/09/20(Wed) 15:16:47 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ提案には幾度か瞬いていた、というのもきっと貴方は忙しいだろうと思ったから。 そこまで時間を割いてもらえるものと思わず驚愕の色が先に出ただけ。 けれどすぐにこくこく、と二度ほど頷く。 その返答の仕方だけでも伝わったことはあったにせよ、それでもやはり言葉でちゃんと聞いてみたい。 そうして、じゃあ、と提案を受け入れる言葉を形作る……前。 「────」 近づいた視線と呼ばれたかつての名に、心が揺れたのを自覚して声が詰まる。 だいじょうぶって形作ろうとした唇はうまくいかなかった。 誤魔化すように眉を落として笑ったけれど、なんだかそれも。 疲労でうっかりと漏れてしまっただけかもしれない、なのにその名で呼ばれるとどうにも、よわいから。 「……ヴィトーさんと。 パン一緒に食べて、話したら。 大丈夫になるかも……」 上官に対してそんなことをするのはあんまりよくはないのだろう。 わかっているの指先を伸ばし、ちょん……とその外套の端を摘まむ。 なんとも分かりやすい甘え方だった。 (-624) 2023/09/20(Wed) 18:37:19 |
ヴィンセンツィオは、目に映る誰も彼もを全てを欺いている。 (a29) 2023/09/20(Wed) 20:56:37 |
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