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世良健人は、その日は家から登校したらしかった。 (a23) 2021/11/07(Sun) 1:27:00 |
【置】 風雪 世良健人結局の所、窓を割った件に関してのお咎めというのは少しもなかった。 それがたびたび起きていた騒動に追われていたことによる人手不足なのか、 それとも何かの根回しが動いていたせいなのかは健人には知り及ぶところではなかった。 空き部屋は、少し机の隊列は崩れていたものの元通りになっていた。 窓ガラスは直り、カーテンは教室の隅に収まりきっていた。 崩された積み木も、平たく並べられて細かな傷以外は暴力の跡はない。 何気ない日常のままであることに、なぜか荒涼とした気分を覚えた。 なにかひとつでも変えられるものがあるというのを、実感したかったのだろうか。 一日空きに戻ってみた談話室は、幸いにまだ人もいなかった。 運び込んだソファはやっぱり少しへこみやすくて、上等なんてわけもない。 けれども、寝っ転がるには十分だった。膝から下ははみ出してしまっているけれど。 タイガージプトーンの天井はお決まりの柄をしているくせに、なんだか妙に個性がある。 (L0) 2021/11/07(Sun) 2:25:48 公開: 2021/11/07(Sun) 2:30:00 |
【神】 風雪 世良健人>>15 生徒会室? それとはまた別の時間。放課後も放課後、日暮れかけの時間。 一応の顛末の後に、健人は騒動に関わった人間として呼び出されていた。 とはいえそれをバックレた者もいるだろうし、その場で書くのを拒んだ人間もいただろう。 そもそもこんな時間になる前に書き終えて引き上げてしまった人間も多い。 なにせ皆異能という個性をもつような生徒達だし、体育祭の準備もあるのだ。 原稿用紙にばかり構ってはいられない。 「なあ、これどういう事を中心に書けばいいの。 監督されていない環境下で薬を口にしたこと? それとも、窓割ったり机を床に叩きつけたりこと?」 一向に進まない筆をよそに、シャープペンシルの背で唇をつつく。 こうして反故にしようとし始めて、すでに一時間が経過していた。 教室よりも少しだけ座り心地のいい椅子に背中を預けて、 机の下から長い足を投げ出してみた。足先が、この場にいる誰其れの靴をつつく。 「形だけでいいっていっても、反省文なんか一年の頃ぶりだし。 読書感想文みたいにねらいをちゃんと定めないといけないわけだろ」 (G0) 2021/11/07(Sun) 2:40:03 |
【秘】 風雪 世良健人 → 朧げな遮光 守屋陽菜いつだかのタイミング、なんとなくふと、どこかの教室でばったりと会った。 もしかすると倉庫のように準備の道具の置かれた、技術準備室だったかも。 ふと目があったときになんとなく過ぎようとして、あの日の放送を思い出したのだ。 思えばあれは普通のことではなかった。 駆けつける前に普段通りに戻ってしまった、それが手を止めたままになってしまったけれど。 トントン、とやけに明るい色の樹脂ゴムで覆われた工具の持ち手で机を叩いた。 ちょうど、部屋にはほかに人もいなかった。 「あれからさ」 かけた声は何気なかったけれど、確証のなくふわふわとしたものを、一瞬持て余した。 自分だったらどう思うだろう。触れられるのていい思いをする傷ではないかも知れない。 望むようになることばかりではないと、何より思い知った後だった。少なくとも自分は。 ひとつ、ふたつ。呼吸を挟むようなまどろっこしい間があってから、溜息を付いた。 「何者かに、なれそうだった?」 (-45) 2021/11/07(Sun) 3:08:18 |
【秘】 風雪 世良健人 → 162cm 御旗栄悠その日はいつになく色々なことがあって、寮に帰る頃には空は藍の染液のようになっていた。 呉藍色、とはよく言ったものだ。それが真に指すのは国のほうであるらしいけれど。 ひょっとしたらもう寝ているかも知れないと、夕食も済ませていない体をそっと扉の間に入れる。 同室の後輩がいつも早くから頑張っているのは知っているからだ。 鞄を挟んで音が立たないようにしながら、そっと扉を閉めた。 (-47) 2021/11/07(Sun) 3:19:18 |
【秘】 朧げな遮光 守屋陽菜 → 風雪 世良健人他に人が居なかったから、女は静かにしていて。 道具をとりに来た拍子に、あなたを見つけておぉと目を開く。 薬を薦められたことも、それを口にしたのも知っていた。 ただそれだけの事実。 どうしての理由も、どうしたの結果も知らない。 ……きっとそういうものだろう。 トントンと、音がしてもう一度。 振り返れば声がかけられて。それなのに煮え切らない態度。 どうしたのかと、唇を歪ませて。 「……うん」 余った間を埋めるように、小さく相槌を打つ。 静寂の中、これくらいでも届くだろう。 柔らかく笑って、次の言葉を待ち。 「わからないよ、…………だけど こんな私を、守屋陽菜を見つけてくれる人はいたみたいだ ……ひとまずはそれでいいかな、なんてね?」 どうやら、彼らには何者かではあるらしいと。 だったら無理に、なりたい自分を取り繕わなくてもいい。 そんな気付きを得たのだった。 (-55) 2021/11/07(Sun) 8:03:31 |
【神】 風雪 世良健人>>G2 生徒会室 「そもそも、事実関係が認識出来てないから弁解のしようがないんだよな。 ほら、書かなくていいこと、書くべきことっていうのがあるだろ。 筆者の気持ちを求めなさい、っていうのは文章の意図を読み取れってワケで、 なにも本当にその当時の執筆状況の逼迫具合を教えろってことじゃないみたいにさ」 巻き込まれた生徒たち、というのはどこまでが織り込み済みなのかを知らない。 でもそれを求めようというつもりであるわけでもなかった。 向こう側に存在する思惑が、漫画のように黒く深遠なものでないとは、わかっている。 あくまで生徒側のほうについてではあるけれど。 そんな、面倒な役回りを任されている同級生をじっと見上げてみた。 「知ってたんだな、柏倉も薬のこと。 てっきりなんか……でも、思えばどういう生徒が協力させられてたのか、知らないな。 無作為に選ばれてたのかと思ったし、もっと怒られるかと思っ、た」 一週間足らずの出来事だ。そういえば今日はもしかすると土曜日? 目前に控えた体育祭をよそに、少し肩の荷が下りたような険の取れた顔つきで、 これまでにあったことの事情というのを、さりげなく問い質す。 (G4) 2021/11/07(Sun) 12:58:51 |
【秘】 風雪 世良健人 → 朧げな遮光 守屋陽菜>>-55 「そっか」 技術室の大仰な造りをした机に腰を預ける。 作業に耐えるようにつくられた造り付けの机は、やけにささくれて硬かった。 背の高い青年は、それでも床に足がついてしまう。体はとっくに大人になっているのに。 「まだ、もう少しのうちは……一人で何もかも形作らないんで、いいんだよな。 なんかさ、急いで一人にならなくてもいいのかなって、思った。 なんだろう。俺にとっては結局、異能は俺のことを助けてくれるものじゃないって、 そう再認識するためのきっかけにしかならなかった、な」 助けてくれるのは、そうした孤独のものではなくて。 結局は、それとは関係ない社会的な、周りとのつながりだったりするのだろう。 (-59) 2021/11/07(Sun) 13:15:48 |
【神】 風雪 世良健人>>G7 生徒会室 「じゃあ、今までの騒ぎが収束してたのは生徒会のおかげだったのか。 それなら……風紀の方もどっちも、知ってのことだったんだろうな。 そりゃあ損害なりなんなりが尾を引いたりしてしまわないわけだ」 片一方が知り及ぶところであるなら、もう一方が知らずであるとは考えづらい。 結託するにしても拮抗するにしても、同じ情報は共有しておかねば立ち行かないからだ。 そしてそれなら学校側も知っている事、そこまでを確認して表情が更に気が抜けた。 信頼がある。今まで自分を受け入れてきた学校の周知のことならと、取っ掛かりは抜けたようだ。 自分のことへと話題が移ると少しだけ目を細めた。 カリカリと紛らわすように筆を進めながら言葉を耳に入れて、少し考える。 自分のことを見つめ直すのは、なんだか無責任な推測よりも慎重になる。 「そうだな、俺もきっと少し期待してみたくなったんだろうな。 自分が持ってる異能ってやつに賭けられるなら……結局はそんなこともなかったけど。 あとはさ。突っぱねるばかりで先んじて行動してみないわけにもいかないだろ。 どんな形でも先輩風吹かしておかないと、頼りがいがないからさ」 そうして頭に浮かんだのは、自分に薬を渡してきた人物のことだ。 誰であるかというはっきりとは言わない、関わった人間が誰かを知っているなら推測できるだろう。 少なくとも、自分から責任を持って選んだことだ。 (G8) 2021/11/07(Sun) 14:39:31 |
【秘】 未完の英雄 御旗栄悠 → 風雪 世良健人後処理は頼れる先輩方に投げたものの、 練習も薬騒ぎの主犯もこなして、となると、 流石に疲れは隠せなくて、微睡ながらベッドに横たわっていて。短距離走者の虫にスタミナがあるはずもないのだ。 「……ん」 だけどその姿を見つけると、緩やかに身体を起こす。 呑気に、腕を挙げて伸びをして。 灯りのスイッチを一瞬だけ見て、また逸らした。 「お疲れ様です。 ……結局何にもならなかったですね」 自分を振り返って、あえてその言葉を選ぶ。 僅かに胡乱気な黒い瞳は、黒い髪は、夜が更けるにつれて、溶け込んでいくように。 「この騒ぎも少しすれば、また日常に戻っていく。 ひととき出し抜いても、すぐ忘れられていく。 些細な自己満足しか残らないものです」 (-75) 2021/11/07(Sun) 18:15:21 |
【秘】 未完の英雄 御旗栄悠 → 風雪 世良健人「ただ……満足はしました。 今は異能のことが嫌いでも。 今は自分のことが誇れなくても。 誰かが好きでいてくれる自分の人生は大切で。 なら、光が当たらないうちに、 子供のようにやりたい放題、癇癪を起こして」 「それでもまだ、人は好きでいてくれるなら。 きっと、必要以上に卑下することもないんでしょう」 底辺から眩い光に手を伸ばすのは、疲れる。 なら少しでも、近くの温かな灯りがあることに安心して、走る脚を緩めるのも、悪くないと思った。 回り道でも、牛歩でも、いつか辿り着くのなら、 ちょっとラクをしてみても構わないんだろう。 そうでしょう?なんて、聞いてみたりして。 (-76) 2021/11/07(Sun) 18:21:41 |
【秘】 風雪 世良健人 → 未完の英雄 御旗栄悠>>-75 >>-76 「おす。悪い、起こしたっぽいな」 返す声は小さい。微睡みを醒ましてしまわないように、そうっと部屋に響いた。 目線を追って指がスイッチをなでたけれど、結局つけないまま部屋の中に足を踏み入れた。 勉強はもっと小さな明かりで出来るし、荷物をおいてからもう少しやることもなくもないし。 手荷物を自分の机に起きながら、ぽつぽつと独白めいた言葉を聴いていた。 自分に薬を与えた彼はその顛末も薄々察しがついていて、 そして自分には見えていない全体の動きというのがあるのだろう。 渦中で、中心で、多くを動かしながら多くを見てきたのだ。 → (-77) 2021/11/07(Sun) 19:46:08 |
【秘】 風雪 世良健人 → 未完の英雄 御旗栄悠寝かしつけでもするみたいに枕元へ寄っていって座り込む。 めちゃくちゃ質がいいわけでもないマットレスに肘をつくと、ぐんと沈み込んだ。 そうだろう、と聞かれるのならば、きっとそうなんだろう。 「なんにもならなかったの、かもな。どんな形になれば、証明になるかはわからないけど。 俺も、ちょっと期待してみたほど、期待に答えてくれるものはなかったよ。 それでもさ、薬もらってみてよかったと思った。 もう、あやふやなものに期待しなくていいんだって。 漠然とした希望にもしや、たられば、なんて賭けなくていいって、わかって、よかった」 虫類の嗅覚であれば感じ取れるくらいの、人には及びもつかない域の薄い匂い。 ほんのりと手の内側に残った血の匂いは石鹸で手洗いしたくらいでは消えなかった。 傷もなければ痛みもない、ただ怪我をしたという事実しか残らないほどの異能の進化は、 それでもきっと、なんにもならなかったものの一つなんだろう。 「異能ってやつがあってもなくても、それと関係ない道の上にいていいんだなって。 俺はそう思えた。あってもなくても、お前の周りのやつは、きっとお前のことが好きだよ。 人だなんていう曖昧な集合でなくて、そうだな、俺はお前の人生のことが好きだと思う」 柔らかな肯定は励ましになるだろうか。 良くも悪くも、努力をしたあとは人は打ちのめされているものだから。 言葉のひとつひとつを拾い上げるように、肯いている。 「結局のところ、異能は俺の一部だけど、俺は異能の一部ではないんだよな。 当たり前だけれど、ああそうなんだなあって……決別しきれた。 だから、俺は結構今回の騒動で助かったよ。 ありがとうな、御旗。お前が、あやふやな気の迷いを殺してくれたんだよ」 (-78) 2021/11/07(Sun) 19:46:43 |
【神】 風雪 世良健人>>G9 生徒会室 「俺が織り込み済みのうちに手にすることができたってだけで、 きっとそこまでじゃないやつも多かったんだろうな……ってのも、仕方ないことだし。 てんやわんやになってたのは事実なんだから、特別手当とかほしいよなあ〜」 同学年であるあなたの前だと、ほんのちょっとだけ年相応だ。 一歳二歳の違いに大きなものなんてないのに、漆喰壁の内側だと大きな違いになるのが不思議だ。 明日には夕焼けの色も洗い流されて、変わらない日が来るのだろう。 赤茶けた色の髪は、山際のふちで交わる影の色によく似ている。 互いに何があったのだとしても、明日からはふつうの学生に戻るのだ。 「見つめ直すことができたものくらいは、あったかな。 あくまで俺は、だからみんなきっとそうだったとは言えやしないけどさ。 柏倉はどう? なんか、いいもん見つかった?」 さりさりと原稿用紙の繊維をシャーペンの芯がなぞっていく。 自分達の、この学校で評価されているものの、アイデンティティに近いものの、 それらへの不確定で煮え立たせるような騒ぎがあったにも関わらず、 返す言葉は軽い調子で選ばれた。 けれどもあと数ヶ月を残した学園生活での"いいもの"が、軽いものとは思っていない。 (G10) 2021/11/07(Sun) 20:06:00 |
【秘】 朧げな遮光 守屋陽菜 → 風雪 世良健人「そっか」 それだけ人の為になれる異能なのに、とは正直思う。 だけど人の数だけ悩みがあって、異能の数だけ悩みもある。 ただそれだけの話、なのだ。 この度の騒動で、ずっと見て居た事。 「世良がさ、言ってた社会の話 たった一人、個人の異能で助けられる範囲は知れてるって あれ、……きっと異能だけじゃないんだよなぁ この学園でだって、問題があった時 事前に動くやつ、直接対処するやつ、後処理に回るやつ みんなばらばらで、どれも必要なんだよ そんで、大人になったらその範囲は広がるんだ」 この社会で、独立して存在できる人間はいない。 不確かな少女はそう信じて居る。 「だから、助けは別に求めればいい 自分の手が及ばない範囲なら、手を取り合うのもいいんだ ……これは、私もつい最近知ったことだけど 世良には、一生物の近しい人がいるんだからさ ────……へへ、上のもんは大変だよねぇ?」 (-82) 2021/11/07(Sun) 23:23:06 |
【神】 風雪 世良健人>>G11 生徒会室 「正月にさ近所の郵便局のバイトが学校経由で受けられたりするじゃん? ああいう感じでちゃんとやってくれたらちょっと負担大きくてもチャラにできそう。 あーあでも、焼き肉とかでもいいよなあ。口止め肉」 こうして生徒たちの間の話として幕を閉じられているうちはありえない話だ。 そういう、とりとめもなければ期待も実現性も低い話が今はしておきたかった。 体育祭を駆け抜けたら、きっとそれぞれの冬が来る。 この秋はモラトリアムのくだらなさを抱えていられる、最後の時間だ。 「もう少し踏み込んでみれば、きっとそれもわかるんじゃないかな。 曖昧模糊なまま手を出さないでいるよりは、きっといい結果になる……。 ……もしかして柏倉、彼女とか出来た?」 元々頭の出来は悪い方ではないし、国文の掴めなさも勉強の末に慣れ親しんでいる。 方向性と構成が決まれば、あとは過度に集中しなくても筆は進んでいった。 黒鉛が作文用紙を埋め終えてしまえば、二つ折りの反省文を置いて出ていくのだろう。 それまではほんの少しだけ、稚気の時間を。 反省なんてしていなさそうな、子供達のからかい声がさらさらと響いている…… (G13) 2021/11/08(Mon) 9:05:35 |
【秘】 風雪 世良健人 → 朧げな遮光 守屋陽菜>>-82 もしも世良健人があなたの、あるいは誰かの異能を知ったなら、羨むのかも知れない。 違った異能をもっていたのなら、この瞬間も誇れていたのかも知れない。 そんなたらればはあるはずもなく、けれどもそれがあったからにこそ、今がある。 「……うん、そうだな。異能っていったって、ほかと大きな違いなんか、ありゃしなくて。 誰もが違った適性があって、そうでなくてもすぐ体の動くやつがいたり、 考えてから動く人間がいて……勿論、それが出来ないからその場を離れるのも、間違いじゃない。 支えって生きていて……なんての、実感がない内はなんとも思ってなかったけど。 最近そういうの、思い知ってる」 言葉ばかりにならべつらねたことというのはいまいままでは空々しく思えていたのに。 自分の手の内に来てみると、これほどに尊いと噛みしめるものも、ないものだ。 なんとなく、そんな話の流れに照れくさくなってまぶたを上げておどけてみる。 「そうだなあ、なんていうか。助けたいと思うのと同じくらい、助かりたいと思ってよくて。 望んでくれるから差し伸べられる手があるって、そう感じたかな、この一週間。 ……そろそろ道具持っていかないと、どやされるかな。 買ってきた部材の大きさが合わなくててんやわんやしてんだってさ」 (-96) 2021/11/08(Mon) 16:49:25 |
【秘】 未完の英雄 御旗栄悠 → 風雪 世良健人傾斜のできたベッドがなんとなく愛おしく思えて、改めて身を横たえなおす。 目蓋を閉じ、紡ぐ言葉を探して。 「期待は裏切られるもの。ずっとそう生きてきたんで……ああ、でも、そういう考えも、あるんですね。 必要なのはきっとその、漠然とした、積み重ねもないところに乗せる期待じゃなくて……人生単位の、信頼」 自分が幾度となく怪我して、治してもらった後に感じたことのある淡い匂いが、自分の部屋で、自分ではないところから発せられているのは初めてで。 それの意味することを、眠い頭で何となく把握する。平気だから、で何を、と苦笑して。 「持たされた異能は……才能は。顔の美醜とか、性格とか、きっとそういったものに過ぎなくて。 当たり前のようにコンプレックスを抱くし、それがあることで歩きやすい道の上にいることが当然だ、ということもあるけど……」 「それが無くても魅力が損なわれることはない。それには最後まで気づきませんでした。 あることで嫌われることを恐れてたけど、“ないことで真に価値がなくなること”もまた、恐れていたんですね」 自嘲するように、重ねて笑う。 がむしゃらに走り続けたのはその先に早くたどり着きたいという想いに加えて、今にも後ろから、崩れていく足場が迫ってきそうだと思ったから。 まさかトラックが崩れるなんてこと、ありはしないのに。 (-97) 2021/11/08(Mon) 17:51:38 |
【秘】 未完の英雄 御旗栄悠 → 風雪 世良健人「ただ、好いてもらえることに胸を張るのはまだ難しいかもしれません。 でもやっぱり、俺がやったことで、何かを見返したり……好きな誰かが何かを見つけられたら。この上なく嬉しいと思う」 漠然とした未来への希望は、 同じく漠然としたものへの期待ではなく、周りの人との信頼から来るものなら。 ゆっくりそれに駆けてみたっていい。 「どういたしまして」 だからこれからは、打ちのめされた自分が肯定されることを許してあげようかな、なんて思った。 (-98) 2021/11/08(Mon) 17:58:59 |
【秘】 朧げな遮光 守屋陽菜 → 風雪 世良健人「おう、良かったなぁ……お互いに そう思えたんなら、きっと大丈夫 ……やっぱ、君なら心配はいらなかったようだ」 なりたい者も、そのための道を歩むことも、 全部わかっていたのだろうから。 躓いた先でも、誰かが引っ張ってくれることも知った。 そう、お互いに。 「────世良、正直さぁ 私、あんたのこと……あんた達のこと羨ましいと思ってた 双子で、一年生の頃から噂をよく聞いてて 一人抱えるような悩みはないんじゃないかって ……すっげー眩しかった」 「けど、そうじゃないんだよなぁ 世良も私も同じだ……なんか、安心したわ ……おかげで世良のこと、より好きになれた」 陽が傾いてきたからか、二人きりだったからか、 女は、これまでの抱えた感情を打ち明けた。 憧憬だったり、羨望だったり、そんな複雑な感情を。 そうして、遠くに見ていたから気付かなかったのだろう。 君も、一人の男の子だった。 「……頑張れよぉ 私も、あんたに負けないように頑張るからよ」 なんでもなかったように、送り出す。 気持ちを言葉にするのは難しいと、耳まで陽に染まった。 (-101) 2021/11/09(Tue) 3:46:22 |
【秘】 風雪 世良健人 → 未完の英雄 御旗栄悠>>-97 >>-98 「望んだだけ叶えばそれはうれしいけれど、そうはいかないし、 叶える方法だってひとつきりじゃないから……そういう風に、考えたいかな。 なんだろうな……やっぱり、考え方とか意識の問題だから、不意に襲う不安には弱いよ。 でも、どこかで立ち直るきっかけがつかめれば、誰かの手も取れるし、伸ばせるから」 こうあれかしと胸に誓うだけで解決したりはしないから、それはあくまで心がけに尽きる。 向かい来る嵐には何も意味がないのかも知れない。 それでも、折れてしまうことを自分にも、誰かにも、望んだりはしないから。 「きっとそれでいいんだ。こうあろうと決めても、思い通りにならないことは多いから。 だから、こうありたいと目指すくらいで、ちょうどいい。 それだけでも、歩く足は軽くなるんじゃないかな」 身を削るように走り続けるのをやめても、足を痛めてしまわないように。 まだ大人になるまでのいくらの猶予を持つ自分が、相手が、希望を持てるなら。 → (-107) 2021/11/09(Tue) 20:44:57 |
【秘】 風雪 世良健人 → 未完の英雄 御旗栄悠>>-97 >>-98 「……御旗は偉いよ。 まわりがついているから、なんてのに賭けるのは怖い。 まわりを見る余裕も、受け入れる勇気も、ちゃんと持ってるのは、えらい」 ぽす、と手のひらの重みが掛かりすぎてしまわないように、側頭部に手を寄せた。 自分の言葉を受け取ってくれたように、待つというのを承諾してくれたように。 自分だって、たすけられたものは多くあったから。 「おやすみ。体育祭も、無理しないようにな」 (-108) 2021/11/09(Tue) 20:48:11 |
【独】 風雪 世良健人小さな明かりを黒鉛の文字が照り返す。 同室の住人が自らの道を歩むように、 目指すもののために手を動かす。 いずれはたどり着くものを目指すため。 未来は、手の中にある。 (-146) 2021/11/10(Wed) 20:53:23 |
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