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【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ少年が他者の名を呼ぶことは少ない。 客の名前なんかいちいち知りやしないし、それよりもずっと近しいあなたの名前さえ、碌に口にしやしない。 そういう習慣がついていないことがひとつ。 呼べば振り返らせてしまうと知ったことが、もうひとつ。 ――それでも今、確かにあなたを呼んだ。 「メシだけじゃなくて」 「ヒトのことばっかじゃなくて、自分のことも愛してさ」 「ヒトからちゃんと愛されろって言ってんの」 あんたはそうできる場所にいるだろ――と。 呆れたような声音は、暗にそう告げている。 あなたのことをよく知りもしないくせ、子供らしい無責任さで。無鉄砲さで。 ウインナーをかじる。翠の視線があなたをちらと見上げる。 「……やっぱこっちと換える?」 (-36) 2022/08/24(Wed) 13:26:46 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカあなたが止まれば、少年は一歩、前に出て。 その拍子につんと手が引かれ、振り返る。 「……そりゃそうだ」 「おれみたいなガキがいるにはさ、」 「――あんたはちょっと、キレイすぎる」 それは聞き飽きた賛辞だろう。 あなたはもっと美しい言葉をかけられてきただろう。 それでも、口の巧くない少年は、嘘のつけない少年は。 心からそう思って。 さざなみのようにかすかに、繋いだ手が揺れる。 狭い部屋の隅っこ。 毛布と本のある寝床。 きっと自由からは程遠く、けれど確かに、あたたかい場所。 ――家へ帰ろう。 ▼ (-40) 2022/08/24(Wed) 14:09:27 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカ「なんだよそれ」 「そういうのは、おれが言う方だろ」 「かえる場所をくれて、ありがとう」 少年はさみしさを知った。 (-41) 2022/08/24(Wed) 14:10:20 |
ヴェルデは、だから、やっぱり、幸せだったのだ。 (c17) 2022/08/24(Wed) 14:15:11 |
【秘】 いつかの夢 ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカもしも、こんな状況でなかったら。 もしも、明日も明後日もその先も、未来があったなら。 少年はいつかのあなたが言った通りに、他の仕事ができるようになろうと努めただろう。 お節介焼きのだれかさんに借りを作って、真っ当な教育を受けようとしただろう。 過去より架せられた苦痛を手放して、ほかの道へと目を向けただろう。 それは浅慮な子供らしい、想像力を欠いた夢。 困難を知らずに語られた無謀な言葉。 けれど確かに、自らの意思で。 呪縛でなく、義務でなく、強制でもなく。 十年後もこの手を、握っていたかった。 ――――それは、ここにはなかった、もしもの話。 (-42) 2022/08/24(Wed) 14:15:49 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ「……そ」 あなたがそう言うのなら、少年にはこれ以上、重ねられる言葉はない。 口が巧くはないのだ。 それに何より、元よりそこにないものを欠けていると認識することはむずかしい。 少年自身だって、そうなのだ。 それでも今、差し出そうとしている気持ちが届いたらと。 それは、ほんのささやかな我儘だ。 「無理に食べるのもかっこよくはないだろ」 「じゃあ、ええと――おれが」 「おれがほしいから、ちょうだい」 (-74) 2022/08/24(Wed) 19:47:59 |
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