情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレさて、少年は口が巧くないから、丸め込むことも簡単だったろうけれど。 あなたはどうやら、応じてくれる様子。 暮れかかる空に似た色の、ずっと高いところにある瞳を見つめる。 少年もまた、唇をかすか、笑みのかたちに歪めた。 「……大袈裟だな」 「食べてみないとわかんないけど、多分、ヘーキ」 そうして、食べかけの串焼きをあなたへ差し出すのだ。 だってきっと、『家族』とは、こんな風に支え合うものなのだろうと、知り始めているから。 愛することも愛されることも知らなかった少年は、あなたの姿に、振る舞いに、それを学んでいるのだから。 (-50) 2022/08/26(Fri) 23:51:08 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ誰が口を付けたものであれ、躊躇うことはない。 そう、特に、あなたが相手であれば。 「そんなの忘れるなよ」 呆れたような声。 かたちのよい眉が片側だけ、わずかに歪む。 少年は、あなたが普段、どんな風であるのか知らない。 あなた方の集まるような場へ顔を出すこともないのだから、少年の前のあなたしか。 あなたが何であれ、どのような人物であれ。少年にとっては、そういうあなたがすべてだ。 だから少年も、いつもよりすこし、ただのこどもみたいに。 交換したウインナーをかじる。 辛みがじんわりと舌に熱を灯す。 「そお、よかった」 「おれも大丈夫。 でもそうだな、これは喉が渇くかも」 よく叱られる相手と言えば、脳裏をよぎるのは一人だけ。 けれど彼女だって存外、口が悪いことを知っている。 それに、何より。 怒らせたいわけでは勿論ないけれど、彼女に叱られるのはべつに、少年はそんなに嫌ではないのだ。 くす、くす。唇がかすかに、笑声をこぼした。 (-81) 2022/08/27(Sat) 22:12:36 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ「そういうところ。 もっと自分のこと気にしろっていうのはさ」 などと言う少年は、やはりあまり表情を変えないから、平気そうに見えるだろう。 ひと口、ふた口と食べ進めるごと、口内が熱くなるのを感じてはいるのだけれど。食べられないほどではなかったから。 撫でられても、瞬くだけで。 けれどそう、嫌ではないのだ。いつも。 言葉を交わしつつ人波の中を歩き、スープの屋台に立ち寄って。 あたたかな液体を啜り、ウインナーも食べきって。 のんびりと食べ歩くふたりは、最初の目的地だったジェラートの屋台へとたどり着く。 そこでもあれやこれやと並んだフレーバーに、少年は悩む姿を見せるのだ。 (-108) 2022/08/28(Sun) 22:46:47 |
【置】 金毛の仔猫 ヴェルデ>>-17 >>-18 >>-19 うたがきこえる。 おまえなんか生まなければよかった ――Ninna nanna,mio figliuolo! 幸せそうにはにかむ美しいかんばせ。 私を見ないで、その目がいちばん嫌い ――Ninna nanna,occhi ridenti… 石畳の上を踊るステップ。 私を呼ばないで、その声も嫌い ――Canta,canta,rusignolo… 繋いだ手が揺れる。 おまえも同じ苦しみを知るべきよ ――…che il mio bimbo s'addormenti! (L14) 2022/08/28(Sun) 23:08:22 公開: 2022/08/28(Sun) 23:10:00 |
【置】 金毛の仔猫 ヴェルデ>>-17 >>-18 >>-19 あなたはいい育て親ではなかったのかもしれない。 ――それでも、その細腕は確かに、ゴミ捨て場の命をすくい上げた。 あなたは母親ではなかったのだろう。 ――それでも、その不器用な愛が、人間を育てた。 天使は自らを生み落とした女を見殺しにした。 だれも、それがわるいことだと教えなかったから。 けれど翠眼の少年は、 の手を握ったままでいたかった。 自ら考え、選び、そういう未来がほしかった。 おやすみ、■さん。 死んでしまってごめんなさい。 少年はあなたのことを愛していたし。 ――――死にたくなんて、なかった。 ただそれだけの、ことだった。 (L15) 2022/08/28(Sun) 23:09:11 公開: 2022/08/28(Sun) 23:15:00 |
【置】 翠眼の少年 ヴェルデ>>-17 >>-18 >>-19 確証はないけれど、託したものは何となく、届く気がしている。 裸の紙幣をそのまま渡したのは、残るものは少ない方がいいと思ったからだ。 ただでさえ、部屋に荷物を置いたまま。 そう多くないと言えど、処分するにはやはり、手間もかかるだろう。 思い出してしまうかもしれない。悔いてしまうかもしれない。旅行の約束は守れなかった。 それでもヴェルデは幸せだった。 意識を手放すそのときに思い出した、この歌が。 よく眠れるようにと祈ってくれたから。 願わくば、あなたもよく眠れますように。 (L16) 2022/08/28(Sun) 23:09:52 公開: 2022/08/28(Sun) 23:20:00 |
【秘】 翠眼の少年 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ二つと聞けば、「そんなに食べられない」と。 三つと聞けば、「なんで増やすんだ」なんて。 そんなことを言って、少年はかすかに笑う。 早く決めてしまおうと目についたものにしようとすれば、他のものを示されたりして。 それはきっと、慌てなくていいことの裏返し。 あなたは少年が選ぶまで待っていてくれるし、きちんと選べば何も言わない。 「……ん。じゃあ、これ」 そうしてたっぷり迷って選ぶのは、紫色のぶどう味。 結局また支払いはさせてもらえないから、困ったような、呆れたような顔で。 なんでもない普通の親子のような、或いは兄弟のような気安い距離で。 ひんやりと甘いジェラートを食べ、祭りの喧騒を楽しんだ。 迷子の仔猫みたいに所在なく立ち尽くしていた少年は、確かに。 あなたに誘われて、この騒がしさを楽しむことができたのだ。 (-132) 2022/08/29(Mon) 13:54:19 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新