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【秘】 『一番星』 スピカ → 一人の少女 ブラキウム>>-43 「っあー……」 眼鏡を外して、頬を数度叩いて気合を入れた。 「……うん、大丈夫ですよ。 ちょっと……色々見たのでね。食堂とかで」 『食堂のサルガス』は噂になっているだろうか? スピカには判断がつかなかったので、 とりあえずは濁すことにした。 来客用のテーブルに着席を促し、 いくつか保存食の中から甘味を見繕う。 「区切り……というと保険周りの話が 無事に終わったということですか?」 (-48) 2021/06/03(Thu) 22:16:28 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 夢の続きを イクリール>>-45 「君が謝る必要は無いだろう。 あれに関しては全面的に僕の自業自得だよ。 だから何も心配しないで笑っていればいい」 こちらもふっと笑いかける。 みんなは好きだと微笑む少女にこんな顔をさせていたのかと思うとやはり罪悪感がふつふつと湧いてくる。 そして、年相応にころころと表情豊かなあなたの顔が真っ白な仮面に見えていた自分の目を、盲目だったのだと再認識した。 「呼び出されたときに君の事もたくさん聞いたよ。 まぁほとんどは君の言う通り『せんせい』の過保護だったけど。」 はぁとため息。 「そんなに大掛かりでやるつもりなのかい? 君も少しは『せんせい』離れをしたほうがいいと思うけどね」 (-50) 2021/06/03(Thu) 22:24:25 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 『一番星』 スピカ>>-48 「あんまり無理するものじゃない。 僕らはもっとゆっくりのんびり生きてもいいと思うよ。 上に立つ者は休息もきちんと管理しなくては、いざという時に守るものも守れないからね」 まじめだなぁと思いながら席についた。 食堂の件についてはすぐには触れなかった。 「うん。ルヴァの事はもう大丈夫なんだ。 これからは僕がずっとそばに居る。 何があっても、どこに行ってもね。 だから君も君の大切なものの為にその善意を向けてあげて」 二人で向かう先はどんな地獄でも構わないと言ったから、そこにあなたをこれ以上巻き込むことはきっとお互いに良くない。 あなたまでが、暗闇に沈んでしまうことはない。 空に輝く一番星が必要な人は他にたくさん居るはずだ。 (-52) 2021/06/03(Thu) 22:34:28 |
【秘】 夢の続きを イクリール → 一人の少女 ブラキウム「……そう。ブラキウムがそう言うなら、そうするわ。」 そう言って、やはりいつものように柔らかく微笑んだ。 それがブラキウムの優しさの形だとわかったから。 だから何を後ろめたく思う事も無く笑えるのだ。 「あら……そうね、たしかに言われてみればそうだわ。 わたしだって、来年からは中等部だものね。 でも…もしも大勢でどこかを使うなら やっぱり『せんせい』にお話はしておかないと。」 ブラキウムは、あまり大勢とでは嫌かしら。 自分の事を聞いた、というブラキウムの言葉には あまり思う所も無いようで、ただいつかの事を真剣に考えている。 あまりにも不確かな未来の事を、ただ。 (-53) 2021/06/03(Thu) 22:35:36 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 夢の続きを イクリール「うん。その方が好きになれる。きっと、みんなも」 あなたがみんなを好きなようにみんながあなたを好きになれればいい。 今ならそうも思える。 だからあなたはそのままでいいのだろう。 それがあなたにとっての真実なのだから。 「……それとね。その言い方やめないかい?なんだか僕の都合のいいようになります、みたいな感じがして嫌。 イクリールはもう少し我を出していこう。 僕みたいに 」真剣に考えるあなたに難しい顔をする。 「とりあえず最初はささやかにやってからにしよう。 それなら準備にも時間はかからないだろうし、冬を越す前にもできるだろう? 大勢でも構わないけどあの『せんせい』ならいきなりパーティなんて認めないだろうし。盛大にやるのは君がもうすこし大人になってからでもいいんじゃないかな。 その時は君が好きな人を招待して主催になるなんてこともできるかもよ」 ブラキウムにとっても遠い未来のことは今まで以上に不確かだ。 けれど、あなたの前でくらいは何事もなく変わらない風に笑いあうのも悪くないと思った。 (-57) 2021/06/03(Thu) 23:06:55 |
【秘】 『一番星』 スピカ → 一人の少女 ブラキウム>>-52 「ね。本当、休んだほうがいいとは思うけど。 ご飯も食べないと……」 彼女に休憩の選択肢が与えられるのは もう少し先、大人から話が持ち込まれる時だろう。 が、今はあなたと語らうことが休憩になる。 「……へぇ。なぁるほど。 一緒にずっと歩いていけるのは、羨ましい。 ………私はやっぱりみんなの風紀委員じゃないと 駄目ですかねー」 大切な人にはフラれちゃったし、と苦笑いした。 それでも、大切な彼が言った通り、 みんなのための一番星にはまだなれるのかもしれない。 (-58) 2021/06/03(Thu) 23:12:26 |
【秘】 夢の続きを イクリール → 一人の少女 ブラキウム「ええと……そうかしら?ブラキウムがそう言うなら… …は、よくないのよね。うぅん…… わたし、ただ嫌と言われたことはしたくないだけよ。 それに人が喜んでくれることならしたいから…」 どうしたものだろう。 自主性を持つように、とはよく言われるものだけど それも一般的にはこうした方が良い、とされるような事を 自ら進んで行っていれば大抵は良しとされるものだ。 そして率先してそういった行動を取りがちなイクリールは 我を出していこう、なんて言われた事も無かったのだ。 「うぅん……そうね、まずは様子を見るのも大事だわ あまり急でもまた『せんせい』を驚かせてしまうでしょうし… うん、ブラキウムの言うように、まずはささやかに。 その次のことは、またみんなで話しあうのがいいわね。」 一先ずは気を取り直してブラキウムの提案に相槌を打つ。 けれどその前の発言に気を取られるあまり、 『冬を越す前に』という言葉の意図は掴み損ねてしまった。 抱えた問題と向き合う時間は幾らでもある。 だから、今はそれで良いのかもしれないけれど。 (-60) 2021/06/03(Thu) 23:46:22 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 『一番星』 スピカ>>-58 「そうそう。まずは栄養補給もちゃんとしないと。 まったく、朝食くらいちゃんと食べないと、なんてまさか君に言う日が来るとはね」 こうして口を動かしていればふさぎ込んでいるよりはマシなはずだ。 ブラキウムはあなたに何があったのか全てを知らないけれど。 知らないからこそ言える事もあるかもしれない。 「羨ましがるのが結構だけどオススメしないよ。 君には君のやり方があるさ。 君じゃないと守れない人は絶対に居るんだよ。 生きて前を向いていれば……それこそ明日にでも現れるかもしれない」 「君はもっと誇っていいと思うよ」 (-61) 2021/06/03(Thu) 23:47:27 |
【秘】 『一番星』 スピカ → 一人の少女 ブラキウム>>-61 知らぬからこそできることもある。 日常会話は、確かにスピカを癒やしている。 「ブラキウムさん……ありがとうございます。 私、ちょっと、今日まで…… 何も救えないし、 手に入れたいものも全部手から零れ落ちて。 そう思ってたんですけど。 そんな私でも、誰かの役に立ったのでしょうか」 スピカにはこの騒動で役に立てた感触がなかった。 でも、色々な人に背中を支えてもらえたら、 まだ前に歩けるかもしれないと思った。 そして、支えなしでは歩けない自分を少し情けなく思った。 (-63) 2021/06/04(Fri) 0:14:43 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 夢の続きを イクリール「悪い事じゃないから余計にそうなってるのはよくわかるんだ。 でも、やっぱりこれからの君の事を考えるとその方が……そうだね。面白くなるかもしれないよ」 いたずらっぽく笑う。 変わらない日常もいいけれど、あなたにはもっと刺激があっていいと思う。 それこそ時間はたっぷりあるのだからゆっくりと段階を踏んで。 忘れらないような日々にしてしまえばいい。 その手引きをするくらいなら喜んで。 ブラキウムはいい子ではないから怒られるだろうけど。 "お願い"されてからではなくてあなたが望んで人の手を取る日が来てほしいと思う。 「そうしよう。 みんなで一緒に話しておけばなんとかなるさ。 ……あぁそれなら今からどうするか考えておかないと」 だけどそれはもう少し先のお話。 今くらいはもう少しこのままでも構わない。 ここに居るにはまだ等身大の二人のこどもだ。 (-65) 2021/06/04(Fri) 0:31:59 |
【秘】 夢の続きを イクリール → 一人の少女 ブラキウム「なら、覚えておくわ。 今はまだ、どうすればいいかわからないけれど… わからないなら、これから知っていけばいいのだものね。」 それは数日前にブラキウムへ語った事のリフレイン。 わからないなら、知らないのならこれから知れば良い。 イクリールが盲目のブラキウムの手を引いたように、 ブラキウムがイクリールの手を引いたって良いのだ。 何度だって。 そうして受け取ったものは、きっと二人の宝物になる。 たとえいつか忘れてしまったとしても、 決してその日々が無かった事にはならないのだから。 「ええ、そうね。 ブラキウムさえよかったら、一緒に考えてくれるかしら? わたし一人じゃきっと、全部には気が回らないから。」 二人の子どもはただ顔を見合わせて笑う。 きっとこのギムナジウムは、その子ども達は 今よりもずっと、良い方向へ進んで行ける。 そうである事を願う心があるのだから。 (-67) 2021/06/04(Fri) 1:15:24 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 『一番星』 スピカ>>-63 「君は真面目すぎるんだよ。 今回はたまたまそうだっただけ。確かに救えなかったものもたくさんあるけど、救えたものもあるはずだよ。 森に近づかなかった子は守られたし、君たちの見回りが結果的に抑止にも繋がったのは確かだと思う。 それに僕だって君という保険があったから賭けにも出られたんだよ?」 あの日のブラキウムのような子どもにも隔てなく接するあなただからこそだろう。 「一人でできることなんてたかが知れてるんだよ。 上に立つものが一人きりである必要なんてきっとなくて、だから誰かと話をして手を取るのさ。 本当に欲しいものがあるなら遠慮とか捨てちゃって、君自身が選び取るんだ。 スピカはもっと欲張りになってもいいんじゃないかな」 (-71) 2021/06/04(Fri) 18:01:24 |
【秘】 『一番星』 スピカ → 一人の少女 ブラキウム>>-71 「そう……そうね。 私がいなかった時どうなっていたかなんて、 誰にもわからないけれど。 きっと、みんながそう言ってくれるなら役に立てた。 そう思える気がするわ」 『いない』ことにされてからの数日を思い返す。 自分の行動を客観視なんてできないし、 自分が正しく働けたとも思えなかったけど、 目の前の少女と、それから彼女と語らった色々な人が、 自分を頼ってくれたということは、 そろそろ認めてもいいと思った。 「ええ……本当にね。一人で立ち回ることの困難さは、 随分と身にしみたわ。 我儘を言っても、 苦しみを吐いてもいいって言ってくれる人もいたし。 一人で戦おうなんて、思わないほうがいいみたい」 本当に欲しかったものの顔を思い浮かべた。 未だ諦めてはいない。そして、ブラキウムと話しているうちに 決心が固まった。 (-74) 2021/06/04(Fri) 19:20:27 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム――森の中。 なんとなく、誘って、あの日と同じものを並んで見ていた。 何もかもが元に戻ったわけではなくて。 何もかもが前を向くためのものではなくて。 お互いの全てが理解し合えたわけでもなくて。 お互いの関係が劇的に変わったわけでもない。 ただ居なくなった友人がいて、 でもそこに変わらぬ日常があって、 明日への怯えが薄れて、 隣には、変わらず君がいた。 「………」 森が少しだけ風にそよぐ。 (-89) 2021/06/05(Sat) 6:13:30 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウムすぐに、お互い気になった全てに無遠慮に手を伸ばすことが出来なかった。 自分のこと、相手のこと、大人のこと、サルガスのこと。 自分の過去のこと、やってきたこと、お互いの病気、これからのこと。 お互いにすり合わせていかなければならないことはたくさんあったけれど、 でも、それにすぐ触れてしまうと今が砂城のように崩れてしまいそうで、 何も言えないまま、日々が続いている。 ただきっと、それが少しだけ大人になるということで、 だからその緩慢で心地のいい苦しみの中で生きていくということが、 多分子供ではなくなるということなんだと思った。 どちらかがいつかそれに触れ、互いに痛みを共にする時が、 完全に大人になって歩き出すということなんだろうと思っていても、 もう少しだけ、この状態をとお互い思っているのかもしれない。 この傷口が乾いていくのか膿んでいくのか。 それは、今はわからない。 息を大きく吸った。 「ブラキウム。 一つだけ、お願いがあるんだけど」 座ったまま隣を見て。 袖で口元を押さえて、首を傾げてブラキウムに尋ねた。 (-90) 2021/06/05(Sat) 6:14:21 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 夢の続きを イクリール「そうするといい。 それだけ相手に踏み込んで行ける度胸があるなら問題ないよ。 知ればできることがある。まずはそこからだ」 ブラキウムが何度手を引けるかの保障なんてどこにもないけれど、それでも大切な友人にみんなの事を頼まれたからせめて手の届く範囲くらいは伸ばせるうちに。 ブラキウムはもうあなたの顔も忘れない。 自らの罪も感謝も忘れないであなたが好きなもの知れる手助けくらいはできればいい。 「もちろん任せて。 これでも長年培ってきた実力はあるからね。 それに放っておいてなんでもかんでも好きだからでやられたらキリもないし」 加減も覚えてくれると助かるんだけどね。 冗談めかしてやっぱり笑う。 ちっぽけな子どもの願いも一人一人が集って願うことで大きな何かを動かしていける。 無駄なんて一つも無かったんだと、僕たちが証明しようじゃないか。 明日のギムナジウムはきっともっといいところになるよ。 (-93) 2021/06/05(Sat) 10:44:08 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 『一番星』 スピカ>>-74 「うんうん。 そういう素直でまっすぐな方が君らしくていい。 スピカは君が思う以上に人の支えになれるんだよ。 はっきりと言葉にできなくてもいつの間にかね。 一種の才能だよ?」 自分の行動の結果が見えるか見えないかの違い。 見えないからその価値が劣ることなんてない。 何気無い日常というのは、まさに見えない努力によって成り立っているのだとブラキウムも痛感させられた。 「風紀委員である前に一人の人間なんだからさ。 誰にどんな扱いをされようとまずは君がそうしてあげないと……君のこころが泣いてしまうよ。 スピカは強い人だから我慢できてしまうかもしれないけど並び立てばもっと強くなれると思うんだよね」 一番星の他にも空に煌めく星ははじめからずっと数多ある。 あとはそれに気づくだけだ。 (-94) 2021/06/05(Sat) 10:44:42 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァこうして森の中をあなたと歩くのも随分と慣れてしまった。 あなたと二人で約束を結んだ場所。 あなたと二人で素顔を見せた場所。 あなたと二人で想いを交わした場所。 ギムナジウムの中でも特別な場所。 今はただ付いて行くのではなく隣に並んでいる。 ほんの少しの違いだ。 それでも一歩前に踏み出すだけで来られた位置は随分と遠かったと、自分を大きく見せようとしていた一人の御曹司の姿を背にして前を向く。 訪れた明日の後ろには明るいばかりではない昨日が積み重なっていて、忘れたくなるような、無かったことにしたくあるような事も多い。 だからこそ、それら全てを抱いて僕の明日に変えていく。 その目でありのままの世界を見通す。 全部が本物で受け止めると宣言したから恐れはなかった。 今の二人は昨日と明日の狭間に居るのだろう。 ブラキウムはあなたに連れ添う。 甘い夢でも苦い現実でも変わらない答えを返す。 現状がどちらかは曖昧で、それは手足に絡みつく心地よい停滞だろう。 ――けれど、永遠に時を止める選択はしなかったから あなたがそこで足を止めてしまう事があれば前に進んで行きたかった。 子どもたちはみんな大人になっていくのだから。 「なんだいルヴァ。 そんな改まってお願いだなんて……言ってごらん」 肩を寄せてじっとあなたの顔を見つめる。 あなたが足を止めないのならば 僕は砂城が崩れることも受け止められるよ。 (-95) 2021/06/05(Sat) 11:25:42 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム森を、再び風が撫でる。 そのブラキウムの目を覗き込みながら、 ちょっとだけ真剣な顔で、 今さっき思いついたことのように 今までブラキウムに見せていた顔でいつも通り、 どこまで本気か分からない気分屋のように、 ……尋ねた。 「………。 キスしていい?」 (-96) 2021/06/05(Sat) 11:32:06 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「…………へ?」 あぁ、でも。 あなたのその言葉はちょっと想定外で。 思わず結んでいた視線を外してしまう。 肩は寄せたまま、何と応えればいいのか言葉を探っている。 顔に熱が灯るのが嫌でもわかる。 あなたにはこんなことまで全部筒抜けになってしまうのが恥ずかしくてまた帽子を目深にずらした。 「きゅ、急にどうしたのさ。 どういう風の吹き回しだい?」 問いながら時々ちら、と影の下からあなたを覗いている…… (-97) 2021/06/05(Sat) 11:40:22 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム袖を口元にやる。 少しだけ考えるような動作。 相手のリアクションを経て初めて 頬も若干朱に染まったかもしれない。 首をさらに傾げて。 「俺が……したく、なったから。かな? あとその、言うと怒られるかもしれないけど、 ちょっとだけ、試してみたくなって。 ……ブラキウムが嫌なら、しないよ」 そもそもが、順番を吹き飛ばしていることは、 自分にもわかるけれど。 でも一方で、自分にとっては、 その飛ばしていることが今は重要なことなのだけれど。 だめかな。と帽子の下を覗き込む。 (-98) 2021/06/05(Sat) 11:48:22 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「い いけど…… 」尻すぼみになる。 嫌ではない。 嫌では無いのだけれど…… 「試すって……そんなこと、しなくてもさ。 ルヴァになら……いいのに」 覗き込まれると逃げるように、ぼそぼそ零しながらとさらに帽子を深くかぶって真っ赤な顔を隠す。 しばらくせめてもの抵抗が続いた後大きく深呼吸をして、こてんとあなたの肩に顔をのせる。 「……その。やさしく、ね」 そのまま動かない。 じっと、あなたを待つ。 すっ飛ばした過程の分はやっぱりブラキウムには眩しくて眩暈がしてしまう。 それでも、その光が暖かくて惹かれるのだ。 (-99) 2021/06/05(Sat) 12:04:26 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウムその返事に。 少しだけ、顔が明るくなる。 拒絶されなかったことは、素直に嬉しかった。 ただ、すぐ、何かを考えるような、 少しだけ真剣な表情に変わり。 「うん……」 とだけ、余裕のない返事をした。 下から、素顔に潜るように。 少年の顔が、少女に近づく――。 (-100) 2021/06/05(Sat) 12:12:27 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム――作法は、知らない。 やり方も、分からない。 そういう行為が、世の中にあると、 ただそれだけを知っていて。 真似事であるし、 だからごっこ遊びでしかない。 言う通りそれでも丁寧に優しく。 ブラキウムの髪を手ですき、頬に触れた上で。 ――静かに、唇を重ねた。 恋慕のキスというにはあまりに拙く、 親愛のキスにしてはあまりに長い。 唇だけが触れ合うような行為は、 子供の指の先程だけ想定より長く、静かに――。 風が、頬を撫でた。 (-101) 2021/06/05(Sat) 12:13:10 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「ん……」 帽子で隠した期待と不安が入り混じった表情であなたと触れる。 髪を流す手にぞくり、体を震わせる。 頬を撫ぜる手が磁石のようにひっついて離れられない。 逃げるつもりなんてない癖にどうしても浮ついてしまう体がまるで自分のものじゃなくなったみたい。 ブラキウムも何も知らない。 けれどもっと好きになりたくてもっと知りたいと思う。 形ばかりの逃げ腰が解きほぐされて、反対にあなたの方へもっと、もっとと傾いてゆく。 子ども同士の未熟な行為はそれでも二人にとっては特別で、次から次へと湧いてくる未知の感情に突き動かされ、応えるようにこちらからも唇を押し返す。 か細く拙い繋がりでも、そよぐ風に攫われないようにあなたと確かめ合う。 いつの間にか少女の顔は柔らかくほころんでいた。 (-102) 2021/06/05(Sat) 12:33:10 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム永遠に似た時間が、現実に溶ける。 やがて、少しだけ温度という 未練を残して、体が離れる。 ブラキウムの表情を確かめるように瞳を覗いた。 そして、少しだけ、自分の唇を噛み。 その至近距離にある顔に、笑ったような顔を見せた。 「良かった……。 ちゃんと――」 (-103) 2021/06/05(Sat) 12:40:54 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウムそれは。頬は誰が見ても分かるくらい赤く、 やっぱり泣き笑いのような――。 心から嬉しい笑顔のような。 居なくなってしまった誰かを悲しむ泣き顔のような。 ――そんな表情だった。 「――ちゃんと、ドキドキした」 だからこれは――ちゃんと恋で。 それが、恋で。 本当に良かったと思う。 早鐘のように鳴り響く恋の証明。 相手のことが好きだという言葉は今でも、 それだけは偽りでもごまかしでもなくて。 君のことが好きで、本当に良かったと思った。 (-104) 2021/06/05(Sat) 12:41:21 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム――自分たちの身体の中では、 ちゃんとまだ金魚が泳いでいる。 恋が、生を証明してくれていた。 トクトクと、胸の中で響くその音が、 胸の中で生きている金魚の存在を、自分たちに教えてくれている。 相手の身体を抱きしめる。 同じように鳴り響いているであろう金魚同士を確かめ合うように。 曖昧な時間の中で、相手の金魚を誰にも渡さないように。 このギムナジウムという透明な鉢の中で、 俺たちは今日、生きている。 (-105) 2021/06/05(Sat) 12:41:54 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァあなたの名残惜しさを埋めるように今度は目を逸らさずに真っすぐ受け止める。 淡く揺れる瞳を少しの変化も見落とさないようにじっと深く見つめる。 「……えへへ。僕も。お揃いだ」 蜃気楼のようにも思えた気持ちはやっぱり本物で、触れて抱きしめられる宝物だ。 一元的な仮面では表せない複雑な表情のあなたを見て、これで良かったのだと思える。 ほんとうの喜びも悲しみも一緒に背負えるから。 あなたの全部が愛おしくてそれを余すところなく味わえる今が尊い。 「……ルヴァ。ルヴァ」 名を呼ぶ。 抱きしめる全身であなたを感じる。 あなたと心を通わせてありのままの鼓動を響かせる。 (-106) 2021/06/05(Sat) 13:41:32 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「ずっと一緒だよ」 どうしようもなくあなたに恋をしている。 小さく澄んだ世界の中にかけがえのないものを見つけた。 恐れて間違えて随分と遠回りをしてしまったけれどもう迷わない。 大好きなあなたの手を握って離さない。 僕があなたの明日になって、あなたが僕の明日になってくれる。 さぁ幸せな明日を祈って旅立とう。 あなたと見上げるギムナジウムの星空は美しくて。 いつか、彼方に羽ばたいた日にも同じように広い世界を覆う星空を見上げよう。 一人の少年と一人の少女が 幾度空を廻ってもきっとまた二人になれますように。 〆 (-107) 2021/06/05(Sat) 13:42:25 |
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