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【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ2月、花祭りの名残のある日和。窓の外には白い小花があちらこちらに散って見える。 いつかの日。遠く過ぎ去った春の日。 思い返すのは青年か、貴方か、どっちだったろうか。 ニュースにもならないような小さな話だ。 路地裏でたむろしているチンピラの一人が街から居なくなったという。 あるものは出稼ぎでも言ったんだろうといい、あるものは夜逃げでもしたかといった。 島の上から社会の益にもならない人間がひとりきり消えていったところで、誰も問題にはしない。 そんな誰かの名前なんて、誰も覚えていやしないはずだった。 いくつかある貴方の隠れ家の内、たかだかの駒であっても知れるような場所。 一つくらいは他のカモフラージュのために、近しい人間には明らかにしていたところがあったのだろう。 ちょうど貴方がそこに滞在していた頃、貴方が世話していたうちの子供が尋ねてきた。 子供、なんて言ってもとうに成人してから2年は経っていて、孤児院からは離れていて。 そのくせまだ日雇いやアルバイトを転々として身の置き所も定まらないような問題児だ。 ソレが意味のある言葉をやっと長く繋げて日々の報告だとかを向けてくるようになった頃から、 ずうっと貴方の手を煩わせてきた、ちょろちょろと周りをうろつくだけの、ただのガキだ。 「先生、居る? 留守かもな……忙しいって言ってたし、こっちには居ないかもな」 貴方が滞在している時に青年がちょうど訪ねてきたのは、おおむね偶然だったんだろう。 同じ組織の中にいるのでもない子供が貴方のスケジュールを把握しているわけもないし、 どこで今何をしてるか、だなんて聞ける相手を、知っているわけでもない。 気まぐれな生き物は、訪ねてみてから連絡すればいいか、なんて楽観的に考えてもいたのだろう。 インターホンを押して数秒。待つこともうしばし。貴方は顔を出してくれるだろうか、なんて。 そわついた素振りをして、窓に映した自分の顔を見ながら髪型を整えたりなんかしていた。 (-1) 2022/08/24(Wed) 23:25:52 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニーその昔、冷たい風が肌を撫でる季節。 春の訪れがまだ見えないのをいいことに暖炉にくべる薪を増やして、男は部屋に引きこもる準備をしていた。 外回りをするといって定期的に向かういくつかの隠れ家、人の暮らしている形跡を普段から残しながら使わないと脆く朽ちていく家具たちを消費する。掃除は嫌いだからハウスキーパーを雇いつつ、だ。 一息ついたところで鳴り響くインターホン、体を動かさずともスマートフォンから監視カメラの映像を確認する。映ったのは嫌でも心を揺さぶらせる子供の姿だ。子供、なんて言ってもとうに成人してから2年は経っている、立派な――社会の一員になるべき俺の駒の一人。 「あいつ、今の状態の俺に会いにくるなんて。 どれだけツいてないんだ」 居留守を使うにも幹部として確かめなければいけないことがある、今この目の前の子供が敵であるか。排除しなければいけない対象であるのか。 家具の隙間に隠してある拳銃の弾の段数を確認して再び戻し、数秒数えてため息をつけばネクタイを緩めて玄関へと向かう。 あのニュースにもならないような情報がひどく頭で響いていた。 「ごきげんよう、ソニー。 ……仕事終わりで今から休むところなんだ、風呂に入りたいんだが話は長くなるか?」 (-2) 2022/08/24(Wed) 23:58:00 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ「!」 足音が聞こえて来たなら慌てて姿勢を正し、すぐに開くのだろう扉の前に直立に向き直る。 別にそれも大きな音じゃない。今までの多くのために培われた教育と資質の賜物だ。 それでも今、いつかの未来よりも一層立ち振舞いはあからさまなくらいにわかりやすい。 唯人、ごく普通に市井を生きる一般人とは一挙手一投足の洗練のされ方まで違えてしまってるくせにだ。 「ごきげんよう、先生」 扉の隙間から見えた姿にほとんど飛びつくみたいに、一歩踏み出して両頬にキスを交わした。 別に特別なものじゃない、ふつうに人々が交わすバーチョだ。右に一回、左に一回。 けれどもなんとなく緊張だったり落ち着かなさだったりの滲む動きはほんのり不自然だし、 それをごまかすために一度唇を歯のうちにぎゅうと巻き込んでから笑顔を作って見せもするし。 貴方に対してはどうにもばかばかしいほど隠し事の出来ない男が、誰某れからの刺客である筈もなく。 けれどそこまでわかっていたって、背に回したままの片手には目を留めるだろう。 ちら、と自分の背中に一度目をやってからそれを取り出すんだから、凶器であるはずもないのだが。 「コレ、花祭りの季節だからさ。その辺の枝折ってきちゃった。 忙しいトコごめん! どうしても先生に話したいことあったんだけど、ダメ?」 目の前に差し出されたのは白い小花をつけた木の枝だ。言う通り、勝手に折ってきたのだろう。 もちろん街路樹を傷つけるなんてのは良いことであるはずもないのだが、 チンピラ上がりの青年には、目先のこと以外はどうにも後回しにしがちなんだろう。 未だに、一生相手の背丈を越せそうにもない小柄な上背の上にくっついて見上げる顔は、 簡単に用事だけ済ませて帰るつもりはなさそうな、既に名残惜しそうなさみしげな表情をしている。 (-3) 2022/08/25(Thu) 0:20:45 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー「それがっ、妄想だというんだっ あの方は、お前をいつも気にかけていただろう……!」 俺が何を持っているというのだろう。 確かに俺は可愛がってもらったが、上司の愛はお前のものだっただろう。と、男はそう思っている。 自分たちの間にあるのは、主従の関係であって、同じ高さに居るものではない。 父も母も、最初からいなかった。 養親は、最悪の人種だった。 今はただ、上司への敬愛と、幼馴染への親愛で生きている。 愛など、そんな不確かなもの。 俺は知らないし、要らない。 「んぅ……、っ、奪ってもないものの返し方など、知ら、ぃ、あ」 拭う手付きですら、快感にしかならなくて、 それで吐息をかけられれば、素直な身体はぶるりと震えた。 上司ですら、俺のものではない。 俺が、上司のものであるだけ。 元々俺のものでは無いものを返すことなど不可能だ。 ▼ (-4) 2022/08/25(Thu) 0:38:43 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニーだからこのアイオライトのピアスは結局、どういう意味を込めていたのだろうかと、耳を弄られながら思う。 やっぱり、犯し恨みをぶつける相手を、狙いを、俺に定めたという意味だったのだろうか。 それは、この男にしかわからないことだ。 ――ぎくり。 転がされ、告げられた言葉に心臓が鷲掴みにされた気分になった。 女相手ならともかく、男相手に性行為などしたことがなく、そこは、堅く閉ざされたままだ。 何をされるのかは最初から理解はしていても、簡単に受け入れられる身体になどならない。 それでも、気持ちいいよりも、痛い方がいい。 なんて、欠片だけ残った理性が叫ぶ。 「……はっ、どうせなら泣き叫ぶほど痛くしてしまえ。 愛撫なんぞ――――」 異物が。まさぐる。 どうして優しくしようとするのか、理解が出来なかった。 (-5) 2022/08/25(Thu) 0:39:30 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー(ここも引っ越して…… あえて残して仕事場に泊まっていることにするか? いや、完全に姿を消すような真似は怪しまれるな) 見える範囲のスキンシップは激しくなってきて、つるんでる連中の色も怪しい。おまけに色事がなんとも褒められたものではない噂が飛び込んできたんだが、信じられなくて監視の目を閉じてからもうどれぐらい過ぎたか。仕方ない身分なのはしっているが、本当に苦い虫を噛んでる気分には変わらない。 そんないつでも己の懐に入って幹部様を刺せそうな子供が差し出すのは白い花だ。警戒する方がバカらしくなってくる。 「……用が済んだら帰れよお」 頬に口づけを返して家に招いてやる。暖まった空気が余所者を迎え、玄関に向かう前に電源をつけておいたコーヒーメーカーから豆がが薫っているリビング。 ソファーにその疲れきったを沈めれば隣を開けてやった。 「話したいことって?例の話だったら すまないな 。あのしつこい就職の催促なら俺のせいだ。 この間ソニーが早く自立している姿が見たいと愚痴ってやったからな、次にあったら叱ってやると息巻いていた」 (-6) 2022/08/25(Thu) 1:01:37 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド「そうだね。……でもオレだって、此処にいなかったらアンタの位置に居たかもしれない。 わかってる、オレが此処に居るのは蔑ろにされてるからじゃない、わかってる……」 伝わっていないわけじゃない。疑っているわけじゃない。 だからといっていつだって、納得出来るわけじゃない。納得したくない、わけでもない。 肩を押しやって添えられた手、その指にひきつったような力が込められた。 貴方が彼の隣に居るのは己とは何も関係はなく、逆も然り。けれど、羨ましいのは変わりない。 そしてその決定を疑ったり覆したり――彼の決定を間違いだと言いたいわけえでも、ない。 不意に背中に水が落ちた。一滴、それだけ。 読んでいる途中の本を曲げ広げるみたいにぐ、と背中に掌を押し当て、上体を下げさせる。 濡れたシャツの絡んだ腕はその上。後ろ手に腕を組んだような形で固定して、そのまま。 安くはないものの柔らかくて沈むようなソファに、肩と膝とで身体を支えさせる。 肩の力だけで立ち上がるにしたって、普段どおりに動きやすくとはいかないだろう。 「ああ、痛いのが好きだった? 知らなかったな、その情報は。 でも苦しめるためにやってんだからそんな気が楽になるようなことするわけないだろ。 ……煙草の、匂いがする」 背中に落ちる視線は痛く刺さるようなものじゃない、どこか、遠くの景色を見ているような。 薄く透けてしまいそうな曖昧で、何も見てやしないようなかすかなものだった。 ふ、と口にしたのはどこか肌に染み付いた残り香だったかもしれないし、錯覚だったかもしれないし。 背筋からするりと腰のほうまで上がってきた手は、尻肉を親指で押し広げる。 急に蹴りつけてきたり暴れたりしないように余った手で抑えながら、覆いかぶさるようにして。 つ、と舌先が触れる。まだその先を想像したこともないだろう窄まりを、尖らせた舌がなぞって。 皺の一つ一つを外側へと押しのけるように、ゆっくりと動かす。唾液が滴って跳ねる音がした。 深い呼吸が舌の付け根から落ちるように聞こえる音と重なるそれだけで、 見えないところで自分の身体に何をされているかっていうのは、感触を含め想像はつくだろう。 (-7) 2022/08/25(Thu) 1:58:56 |
【秘】 風は吹く マウロ → 天使の子供 ソニー舌を絡ませて、口内に残る酒気が混ざり合っていくのを感じる。 喉を鳴らす音に、ぞくりとした感覚。 自分のちょっとした支配欲のようなものが刺激されたような。 身体を触れさせる代わりに、口付けは主導権を握ってやると言わんばかりに 貪るように深く。 鼻を擦り付けるような様相には、まるで犬のようだななんて思いながら 耳から後頭部に移した手で口付けを深くする手伝いとしていた。 お互いの口端から唾液が零れていくのも構わず、浮かされたように暫くそうしているだろう。 「ああ、クソ……それも、そうだ」 納得させられてしまうのが、ほんの少しだけ腹立たしい。 その感情の矛先は自分なのか、相手なのかは分からなかったけれど。 そう思ってしまえば、この状況を受け入れるしかなくて。 青年のそれも、このシチュエーションと酒が入って興奮気味であることもあいまって。 口付けの高揚もあったものだから、常時よりも張って その存在を下着の下で主張し始めていた。 ボクサーパンツの中で窮屈そうにしているのが見て取れる。 君の物が擦り付けられるのなら、小さく声が漏れて。 お互いの興奮を感じ合う事で、更に下半身に熱が溜まっていく。薄らと下着も湿っていくのだろう。 君の見上げた青年の顔は、薄く目を開けてはいるけれど 眉間に皺を寄せて、先ほどよりも紅潮しているのがはっきりとわかるだろう。 自分のそれを誰かの前で触るのは憚られて、 だから、少しだけ君の張り詰め始めている性器の先の方を下着越しに触れる。 時折、爪の先で強く弄ってみたりして 殊更に興奮を煽ることが出来るだろうか。 (-9) 2022/08/25(Thu) 3:39:12 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー大事だからこそ遠ざけておきたいという思考は理解できる。 そうだからこそ、自分たちマフィアの世界に巻き込みたくないと思うのは当然の理だ。 それくらい、本当はこの男だって気づいているんだろう。 だからこそ蟠りが燻って、恨みとないまぜになってしまっている。 雫が背中に流れて、それが何なのか気づいたけれどわからない振りをした。 泣いているのか、と。 指摘したってどうにもならないことだし、隠そうとしているのだからそれに合わせてしまったほうが良いだろう。 代わりに、少し、押し黙ってしまったけれども。 そもそも体勢がもう、自由に喋ることを許してはくれない。 腕の自由を拘束された上で腰だけ上げれば、自然と顔は下に突っ伏してしまう。 柔らかなクッションがあるからこそ痛くはないが、大きな声を出さない限りはくぐもった声になってしまうことだろう。 完全に屈服させられている姿勢に、触れられている事に、流石に快楽とは別の羞恥心が大きくなった。 「――――っ!! な、に……をっ」 その煙草の香りは、上司が使っている物と同じものだ。 いつも買ってこいと言われるから、同じものを用意したら喜ばれたからそうなってしまっただけで他意はない。 それでも、この男が同じ香りをさせていることについてどう思うかは話は別。 受け入れるのを決めてはいても、やめろ、と。叫んでしまいたい気分だった。 痛くされないのはまだしも、まさか、そんな所を舌で刺激されるなんて思わない。 柔らかな感触が堅く閉ざされた窄まりをほぐそうとしているのが、ひどく気持ち悪い。 動く度に喘ぐ声は、クッションに溶けて消えていく。 身体が根本的に作り変えられていってるような、そんな気分だった。 (-10) 2022/08/25(Thu) 8:01:01 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ今も昔も、そんなふうに案じられているなんているのはいざ知らず。 心はとうにずうっと飽きもせず途絶えもせずに貴方のものだ。けれど相手はそうではない、と。 大人と子ども、相手にされやしないものだと内心仕方なく思いながらに追いかけ続けていた。 とっくの昔に捧げた心、それ以外の身体だとかっていうのはどう振る舞おうが構わないと考えていた。 今更操立てして他に目移りすることがないなんて示したところで、何か意味を成すわけじゃないのだし。 聞き方を変えれば長居はするなと嗜められているようなものなのに、大層嬉しそうに笑う。 それがなんとも得意げそうなのだ。別に自分の功績ではないんだけれど。 いつまでたっても子供っぽさの残るような仕草も、垂れ目の童顔の上では浮いても見えない。 あなたの前じゃいつだって、背伸びをしただけの子供だった。 跳ね回るように後ろをついて歩いて、当然のように開けられた隣に座って足を伸ばす。 ぽきりと折られた白い花の枝は、挿す花瓶も都合よく空いてるわけじゃないから、 適当にテーブルの隅っこに置き去りにされてしまう。季節の花を見せたかっただけなのかもしれない。 「そうなの? ちぇ……そのこと報告に来たんだけどな。 オレだっていつまでもあちこちほっつき歩いてるワケじゃないよ、ホント。 最近はバイトだって続くようになって来たし……」 隣にぴったり座っていたって尚身長差を感じるような小柄な体躯とは裏腹に、振る舞いはいっぱしだ。 いっぱしのチンピラだという意味でしかないけど。放っておきゃもっと始末に追えなかったろう。 心配をかけてばかりの生き物は、言い訳めいた言葉を吐くごとに段々と声を小さくする。 ちら、と怒られる気配を察したみたいに、上目遣いに貴方の目を覗き込むのだ。 「先生もやっぱ、……困ってた? オレがいつまでもフラフラしてるから……」 (-11) 2022/08/25(Thu) 8:37:31 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー「ああ、早く一人前になって」 ノッテの刺客かと疑われたソニーのファミリー加入は容易でなかった。孤児院はマークされているし、なによりも俺と仲がいいことぐらい監視の目があればいくら誤魔化しても知られるのだ。 「まともな金を稼いで、家族たちに出来るようになれ。 懐の余裕は心の余裕だ。しっかり背広を着こなすお前はそれはいかした男になるだろう」 であればできることは余計な接触を持たず、子供たちがいる所でのみ会話し、こうした密会など持っての他で、とっくに気づいているその熱のこもった瞳を見つめ返さないようにすることだ。 あの事件さえなければ変わっていた距離感に気づいてはいけない。 うまくいったのはたったひとつのコネだ。 先代が救ったアルバの知人はひとつだけ何かを融通をしてくれると約束をしていた。彼が亡き今通用するとも思わなかったその願いを聞いてくれたときは、ただではつぶれない組織になると感嘆したものだ。合併の推進派はすでに押し込まれて、互いに敵対をしている立場。互いの信用と誓いの証は、二度と接触をせず全て管理を任せ、情報を渡し合うことをしないことに収まった。 「なんだ?今さらか、お前の振るまいには困ってたさ」 視線は白い花に注がれている、さてこいつの種類はなんだったか。手は伸ばさずにただただ見ている。 「なんせ俺はお前をずっと見てきたんだからな、 この間だって医者に胃に穴が開く寸前だと言われた」 誤魔化してばかりの人生だったが、これは真実である。 (-12) 2022/08/25(Thu) 10:06:59 |
【秘】 ザ・フォーホースメン マキアート → 天使の子供 ソニー役に立ててる気分になれるから、身体を求められること、求められた分だけ返すことが好きだ。 その間柄に偽りのない愛情がこもっていれば申し分ない。 腰を導かれる間、切羽詰まった声で何度か名前を呼んで。散々愛撫で翻弄された尻穴に熱いものが宛がわれると、本能のもと待ち侘びたとばかりに咥え込んでいく。 音にならなかった喘ぎを荒々しく吐いては、今度は浅い呼吸を繰り返し、視線を下に落として表情を窺う。見るまでもなく心地よさを感じてくれてるのだろうけど、それでも。 「あ───……入っ、ぁ゛、 気持ちい、ソニー……キミも、オレの中……イイでしょ?」 額に触れるような口づけを何度かしたり、包むように両腕を回して肌を触れさせたり。こちらが辛くないように、という気遣いを細々としたところに感じると、人懐っこい笑みを零す。 陽物が抜けていく動きに合わせ絡みつくように肛を締め付けて、それから奥まで抉ってもらえるように緩める。客を喜ばせる為に覚えたことを、己が満足の為に卑しく行って。 でもそんなちょっとした余裕は、動きが速まるのであればぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、やがてされるがままに。 (-16) 2022/08/25(Thu) 18:58:58 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 風は吹く マウロ「ん、」 きゅ、と眉根が寄せられる。抗議のようにも性感に落ち着かなさを覚えているようにも見える。 全てが演技なわけじゃない、得られた快楽を普段よりも深く受け取って、わざと弱気を曝け出している。 こんなところに連れ込んで、強気に出たところでそそらせることは出来ない、から。 自分から仕掛けたくせに文句の一つでも言いたそうな顔をして、深く深く息を吐く。 手先に誘導されて顎を上げ、絡み合う舌は相手に任せながらに時折顎の裏側をなぞった。 息の苦しいのをごまかすように、時折顎を引いて短い言葉を交わす。 「それ、好き、かも。もっと触って、マウロ」 甘えたように懇願して、時々額をこつりとぶつけた。堪らないものを伝えて、せがむよう。 布越しに擦れ合う陽物はだんだんと芯を持ち始めて、下着を引っ張る形の先に体液が滲む。 手の内で質量を増すごとにふ、ふ、と息が弾む。爪先が凹凸をなぞるとぞわりと背を震わせた。 恥じて怖気突いて、興が冷めてしまう前にと自分が先に下着の中から腫れた肉を取り出した。 充血して、亀頭は滴った先走りでじわりと濡れていて。望みを伝えるようにコツコツと腰を合わせる。 交差するように合わさった陰茎を片手で包む。筋張った指がふたつ、包み込んで擦りあげる。 互いの熱が混じっていくごとに、抑えが利かないみたいに腹筋に力が入った。 互いの頭のコントロールをすっかり相手に任せて、片手の指先を唾液ですっかりと濡らした。 片手は相手のベルトを緩めながらボトムの裾に入りこんで、さして自由の利かない空間の中で動く。 街路からのかすかな喧騒から隠れるように、ほとんど体勢は変えないまま。 そのくせこれからどうしたいか、表すように指は段々と裾から中へ、尻肉の間に入っていく。 尾骶骨を指が押し上げて、その下に捩じ込むように入り込んで。隠れた窄まりに、触れる。 長く、息を吐いた。 「……片足、ちょっと開いて」 (-28) 2022/08/25(Thu) 23:07:20 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー音も無く、幽鬼じみた影が一歩、また一歩と近付いて。 それが発する声は、やはり随分と生気の削げたように聞こえる。 柔くも鋭くもなく、ただどこかうつろに底冷えしたその音を 対話とその他のどちらともつかない距離で聞いて、息を吐く。 「烏は選り好みをしない。 仕事とあらば何だってやりましょうとも。けどね、 身内の死体をどうにかしてやろうってのは、結構なことですが」 見せたくない、ではなく、見せてやりたくない。 敢えてそのような言い回しを選ぶ事から、身内のものと推測した。 それを選ぶ人間は、世に居ないわけではないけれど。 「掃除屋に処分を頼むって事が、どういう事なのか。 あんたもわかってないわけじゃないだろうに……」 掃除屋に処分される。人によっては、それそのものが冒涜になる。 持ち込まれた遺体はバラバラに切り刻まれて、炉で焼かれる。 キリスト教圏では土葬が主流で、その理由を思えば、尚の事。 「……まあ、いいさ。 それがこっちに一つとして利の無い仕事だったとしても。 死んだ奴にだって、見るに堪えない姿を晒さない権利はある」 「お時間頂けりゃ結構。どうせ後は時間潰しだ」 どこか冷めた声色は、あなたのそれとはまた異なるもの。 何ら信の置けるでもない相手からの、大した益も無い仕事。 それでも理由はどうあれ了承を返して、何処へも足は向けない。 一度相手の言葉を待つ。用事のある者は何処に、と問うように。 (-29) 2022/08/25(Thu) 23:33:58 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルドたいそう大事にされていたのだろう男は、けれども背中に隠されていた時間が長すぎて。 大事にされていたのだということそのものが見えなくなって、離れて遠くなりすぎた。 分かる筈もない。随分と遠ざけられて、すり減って。そうして在るのが、今此処の彼岸だ。 薬というのは、弱いものほどセッティングが大事だ。集中できる環境が無ければ悪酔いするだけ。 そして強度が違えど機序は、通る神経は同じだ。薬効の危ういほど、対外的な補助は不要になる。 場が整えば、神経を走る感覚と融合すればするほど。一層脳が蕩けだす。 鼓動が打つほどにきっと、血の廻るように楽園が血管を流れるのは、最悪の気分だろうな。 口を開いて乾けば、唾液腺からつうと水気が溢れる。それを舌に伝わらせ、潤すように。 尻肉の間に鼻先を埋めるようにして、丹念に穴に舌を這わせて、馴染ませて。 そう簡単に熟れてくれるものじゃない体も、薬のおかげで真っ更よりかは扱いやすい。 しつこいくらいに舐めていればどうしたって何もしないよりかは受け入れやすくなるはずだ。 相手の声の調子が随分と変わってくるくらいになると口を放して、膝をの間に足を割り込ませる。 着衣のままの男は、ポケットからプラスチックの瓶を取り出した。手先に中身を出して、少し温めて。 粘度の高い温感ローションに塗れた指を、今しがた舐め解していた穴に擦り付ける。 少量から、量を増やして。門渡りに垂れるくらいには、いくらか指先をねじこんで。 「……ね、気持ちいい? ケツの穴舐められて、ほじくられてさ。 イヤそうにするわりには随分よく鳴くよね。興奮してるワケ? コールガールにでもいじらせてた? ああでも女避けがちなんだっけね」 相手の事は相応に調べていた。普段のスケジューリング、弱み、嗜好や交友関係に至るまで。 一端のソルジャーよりも余程重要な立場だからこそ、噂は立ってしまうものだ。 だからこうやって揚げ足取りのように論う材料には、事欠かない。 言い返す元気はまだあるかな。ゆるゆるとかったるく動く指は優しいのに、口先は下品なものだ。 (-31) 2022/08/26(Fri) 0:24:59 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ「はあい……オレに出来っこないよそんなの。先生くらい背が高けりゃな。 でも先生も着こなすって感じじゃあないよ。たまにシワ取りきれてないじゃん」 返事はするけれど、やはり青年はいわゆる優秀な子供ではなかった。手先は器用だが、頭は並だ。 荒事ばかりが運ぶわけではない世界に混ぜ込むための人材を作る施設の中では、評価は良くも悪くも。 身体能力では劣っていても頭の良さで青年を上回って見込まれた人間のほうが、それなりに多かった。 だから、望まれるような一人前の姿は……ちょっとだけ、自信がない。 「……いじわる」 説教じみて耳に痛い言葉から逃れるように、低い位置にある頭は貴方の肩に埋もれた。 肩口というにはもうちょっと内側、胸板につながる辺りのところに、少し固めの髪がうずくまるよう。 子供じみた仕草をするにはもう大人に過ぎる。昔から、怒られるとよくこうしていたのだろう。 いつまでも子供のつもりで居る、わけではない。自分の年齢に相応しい振る舞いを弁えてないわけじゃない。 甘やかされるのを期待しているのが半分。甘えてもいい相手だと思っているのが、半分。 心臓の音と体温を感じて、うまく詰めきれない距離をどうにかしてしまおうとしているのが、ほんの僅か。 「オレも先生といっしょがよかったな。また会いづらくなる…… 先生のお菓子だって最近食べてない気がする。味忘れちゃうよ。なんかない?」 言葉にしてみると思い出したように、ぐうと腹が鳴った。条件反射が早すぎる。 これだけ寄り添っていたくせに現金な目は急にきょろきょろと部屋の中を見回す。 わがまま放題に振る舞うのは、貴方に随分甘やかされて育ってしまったからなんだろう。 同じような季節の、木に成る花に近しいようで違う独特の甘い香りのせいかもしれない。 この時期、一部の観光地や街路樹には、机に今転がされているのと同じアーモンドの花が咲き誇っていた。 花祭りの季節、別にそれを目にするのは珍しいことでもなんでもなかった。 (-32) 2022/08/26(Fri) 0:47:38 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー体を触られ始めて、どれくらいの時間がたっただろうか。 実際にはそんなに経ってなかったとしても、自分には永遠にも長い時間が経過しているように感じられて、危険だ。 「――――――ふ、うっ」 最後に残った羞恥心が、クッションを噛むようにして声を殺した。 もう十分に回ってしまった強い酒と薬が混ざり合って、身体の中で暴れていて、熱い。 喉はからからと乾いているくせに、湿らされた下の方ばかりが熱を求めて震えている。 頭の中では警笛が鳴り響き続けているけれど、それに従う理性はもう欠片も残っていない。 ただただどうにもならない飢えが、叫びだしているかのようにその舌を、指を受け入れてしまっていて、 とろりとしたローションにまみれてしまう頃には、空気を求め浮いた口から甘くなった吐息が漏れ出た。 「そ……な、こと、した―――ことな、っ、あ、あぁ」 決して女のようには柔らかくないそこが、男根を受け入れるための受け皿になっていく。 熱があるかのように火照ったそこだけは潤んで、身体がどんどん作り変えられていくかのようだ。 どんなに言い返して見せたって、その顔はもう、生真面目な幹部候補のそれではなかった。 (-33) 2022/08/26(Fri) 1:46:49 |
【秘】 天使の子供 ソニー → ザ・フォーホースメン マキアート小さな椅子の基部とクッションとが、重みで引っ張られて軋んだ。よく働いてくれるものだ。 きし、きしと小さく耳に立つ音に合わせるように、喉奥から弾む息が漏れる。 呑み込まれる感覚にひく、と眉を動かし、喘鳴のような声が絡むように混じった。 直接的な快ではなくとも、額に柔らかな感触を受けると幸福感で腹筋に力を入れる。 「んァ、やば……も、出しちゃいそう。 もちっと、格好つけさして、よっ」 相手が貴方とあっては、自分のペースに合わせて余裕綽々にとはいられない。 すねたような文句を飛ばしつつ、腰に巻き付けた腕を引き寄せてホールドする。 辛うじて伸ばした爪先を起点に、自分の体を持ち上げるようにして下から突き上げる。 締め上げられるたびに耐え難いものに縋るように引きつった声を上げ、上がってくる何かを塞き止めた。 汗の絡んで柔くなった髪が、互いの体が跳ねる度にくしゃくしゃになって揺れる。 「すっげぇ、気持ちい。死んじゃうかも」 今の状況にあっちゃ縁起でも無い言葉だ。 自分で言ってしまってから自覚したのか、なんだかやけに可笑しくて笑ってしまった。 椅子の軋む音がどれだけ続いたか自分自身ももうじきの限界を感じ始める。 左の下腕で抱いた腰の重心を任せ、顎で胸板を押すようにちょっとだけ隙間を作る。 腰の動きだけでぐ、と神経の先に感じるとっかかりを引っ掛けるように刺激し続けながら、 余らせた手で相手の性器を包み、追い詰めるように扱き上げる。 息が弾む。まだイカされないうちにと、自分に相手を追いつかせるように前後から責めたてて、それで。 (-35) 2022/08/26(Fri) 6:43:46 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ「……半分は、もう見つかってるから」 人の魂はどこに宿るのだとか、怒られるかも知れないだとか。考えないわけじゃない。 けれどもうまく答えが出なかった。相手からしてみれば呆れるようなものかもしれないな。 死んだ人間の処分に困る、なんてことは今までなかったのだ。困るほど選択肢に迷いがなかったから。 「望まないかも知れない、けど、これでいい。もう充分辱めを受けた、だから。 これ以上きれいにしてやれないなら、もうこれで、いい」 滔々と流れるような言葉はテープレコードのような無機質を孕んでさえいる。 拙い頭を動かしはして、考えるだけはして、その結果だ。他に思い浮かばなかった。 わかっている。わからないわけじゃない。貴方が本来敵対する人間なのも。 狭き門を潜る門を閉ざす行いだということだって、ちゃんとわかっていて、それでも。 暗がりの向こうを指差す。そこには白いバンの輪郭が浮かんでいた。時折街を走る、花屋の配達車だ。 こんな場所、こんな用事にも関わらず乗り合わせてくるなんてのは見るからに冷静じゃない。 どんなに頭を巡らせたところで、とうに錯乱し切って頭は壊れているのかも知れないな。 貴方がついて歩いてくるなら男はバンの扉を開いた。後部座席、小さな花びらが点々と散るその中に、 男物のジャケットを着せられた、女の上半身がやわらかいブランケットの上に寝かせられていた。 夏の三日月島は穏やかだ。死臭が満ちて、水気を含んだそれは既に状態も悪くなり始めている。 貴方が今朝方のニュースをアジトで耳にしていたなら、アルバファミリーの庇護下にある女が一人、 抗争の混乱の中でひどい死に方をしたのだという話を聞いていたはずだろう。その、片割れ。 海の匂いのかすかに混じり、髪には真水で洗いきれなかった塩がほんの少し残っていて。 それでもなんとか小綺麗にまとめて、顔の化粧を薄くやり直してやって。裸の体を隠してやって。 今貴方に、彼女にとって縁のない人間に引き渡す直前までは、礼儀を尽くされていたのだろうそれは、 このまま警察に引き渡したならこの男が犯人だと断定されかねないくらいには手を加えられていた。 → (-37) 2022/08/26(Fri) 8:17:53 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ胸元の皮膚を削ぎ取るように与えられた傷は、すっかり血が抜けてから出来たものなのだろう。 そこに何が刻まれていたのかだって、件の報せを聞いていたなら察しがつくはずだ。 可能な限りに整えて、与えられた侮辱を覆い隠して、あまりサイズの変わらない上着を着せられて。 それでも凄惨だ。耐え難く、おぞましい。人の悪意の残り香がある。 そういう、用事だ。 「見つかるなら、逆ならよかった。けれどそうならなかったなら、見せるべきじゃ、ない。 女たちに追い打ちをかけるわけにはいかないだろ? わざわざそんなこと、さ、 ……どうするの、移動したほうがいいの」 空笑いが声に混じった。努めてなんでもないと振る舞おうとしたのは、失敗した。 男女の情愛では無いこそすれ、目の前の彼女と男の間にはそれなりの心の通い愛があったのは、 ばかばかしいくらいきちんと整えられた彼女の有様を見れば、貴方にもなんとなくわかるだろう。 呆然と眺めるのをやめて、貴方に指示を仰ぐ。 (-38) 2022/08/26(Fri) 8:18:22 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー小さな重さを受け止めつつ、一瞬上がった熱を感じながら深呼吸をした。 鼓動がいつもより早くなりそうで自分でも驚いた、油断すれば――その距離が0になってしまうのも時間の問題だったのだ。 一度過ちでも犯してしまった方が楽なのかと思考が走り、この子供が大人しくなる光景が浮かばない。与えるのは甘くて溶けるような、そんなドルチェだけでいい、そう繰り返してため息をついた。 「雇ってもらえただけありがたく思え。 そう簡単に選べる立場でもないだろお? もっとお前自身がしっかりして、 雇い先が潰れでもしたら次の仕事を斡旋してやるよ」 子猫のように部屋を見る貴方を暫く眺めていてもよかったが、小腹をすかせ過ぎるのも困り者だ。 懐から出すのは変哲もないキャンディで。 包装を外し、フルーツのフレーバーをした雫を人差し指と親指でつまめば餌を求める口元へと連れていってやった。 「もっと美味しいのは冷蔵庫だ、今はこれで我慢できるか?」 差し出しながら立ち上がり、座って待っていろと視線を他所へと向けた。 こんな四年後の男が見ても甘すぎる態度。今の男が四年後を見ても、触らなくなっただけじゃないかと乾いた笑いを溢す仕草。どうしようもないほど甘くて、他のもので中和するのに一苦労している。 薄く香る白い花も、二つ分の温度もこの家にはあまりに余分すぎる。祭りだからいいか、と納得付けるにもこの街では何度祭りが行われるかなんてわかりきっている頭では、いつまでたっても離れてくれないことを示していた。 貴方にとって我慢できない時間と、男にとって我慢できない時間が違いすぎる。わかっていて押し付けた関係、いつ殺されても仕方ないなと気付いていたのはこの頃からだっただろうか。 (-39) 2022/08/26(Fri) 11:55:14 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー「せめて人知れず葬ってやるしかない事もある」 見切りをつけたような、或いはがっかりしたような。 或いは失望か諦めのような。その焼け残った灰のような冷たさは、 何れも向ける先はあなたではないものだけれど。 それはあなたの知った事ではないだろう。その逆も、また然り。 「わかるとは言わないが、わからないとも言えやしないな」 肯定はしないが、否定もしない。 共感と理解は必ずしも片一方を伴うものではない、別々のものだ。 何れも正しくそれを行う事ができるほど事情を知りもしない。 けれど空回る思考の末に選んだその選択が、 結局は何処までも生者の自己満足でしかない事は知っている。 今更道理や正しさを説いた所で、どうにもならない事なのだと。 ただどうしようもなく、その事だけを知っている。 だから他人事の男は、他人事ゆえに肯定も否定もしない。 客観的に見て、客観的な事実だけを認めて、ただそれだけを言う。 そもそもの話、あなたの話の何処までがはかりごとでないかなど あなたと死者の間柄を知らぬ者からすれば、 少なくともこの時点では、まったくわかったものではないのだ。 (-44) 2022/08/26(Fri) 22:06:42 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーけれど何れにしたって、どうだって良い事でもあって。 何せどうにもならない事なのだから、なるようにしかならない。 心の底にはいつだってそんな諦めが広がっているものだから。 リスクを、最善を、想定はするけれど、何れも信じてはいない。 尽くを失って来た人間は、何にも手を伸ばそうとはしない。 だからあなたが先に背を向けたなら、喪服姿はその影のように。 人間二人、三人ほどの距離を開けて、粛々と後ろをついて歩く。 嗚呼成る程、たしかに半分だ。 そうして開かれた扉の先。 別れ花じみた花弁と、後部座席に横たえられた女の上半身。 そんな光景を一瞥して、他人事の思考はただそれだけを思う。 名もなき烏は生者の顔など逐一覚えてはいないし、 そうでなくたって、今ここで眠る女は知った顔でもなかった。 けれど未だ記憶に新しい報告が脳裏を過りはしただろう。 それを聞いた時、思う事が無かったわけでもない。けれど。 今ここで言う事なんて、なんにもありはしない。 弔いの言葉一つ言いはしない。それは自分の役目ではないから。 (-45) 2022/08/26(Fri) 22:07:22 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー悪意に晒されて、酷い仕打ちを受けて、剰え既に朽ち始めていて。 今は善意によって、丁寧に整えられて、こうして庇護されている。 それでももうどうにもならないアンバランスな亡骸。 もはや何処にも行き場の無いそれを、せめても一思いに葬り去る。 いつだって、ただそれだけが自分のすべきこと。 あなたの痩せ我慢を気にする人なんて、今は何処にも居やしない。 「……このまま俺の仕事場まで送ってもらえます? 生憎と、今夜仕事があると思ってなかったもんで。 持ち歩くのに難儀する道具は一つも持って来てないんですよ」 「用向きのある奴をこれ以上待たせるのも酷な話だ。 何より今から取りに戻って、 それを待つなんてのはあんたも手間でしょう」 運転は任せます、免許持ってないんですよ。 思い出したようにそれだけを付け加えて、 仕事場である僻地の廃倉庫の場所は簡潔に伝えられる。 この男の根城たるその場所に赴くかは、あなた次第だけれど。 それをあなたが許容するなら、二人と一人の道中は何事も無く。 やろうと思えばやれる、なんてのはきっと互いに同じ事。 掃除屋が手を出す事は無い。あなたが何もしない限りは。 今この時に限り後部座席が死者の為の寝台であるならば。 乗り合わせるにしても、きっとそこは避けるべきなのだろうな。 (-47) 2022/08/26(Fri) 22:08:42 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルドかわいそう、と他人事みたいに口の中で呟いた。音になっていたかはわからない。 捨鉢な頭の中で、これが理不尽であることはわかっていて、されど止める理由もない。 小暗い高揚が胸の内を占めている。散々に虐げたことで、怒りそのものは収まった。 けれど、最初から怒りのためにこんなことをしているわけではない。 探しているのだ、 を。だから、狂人の行いだと言われたのだし、その謂れは正しいのだ。 碌な理屈も持ち合わせちゃいないのだから、感情が冷えたところで止まるわけでもない。 一度きりでそうそう具合がよくなるわけでもないが、薬は様々な助けにはなるだろう。 筋肉を緩めたり痛みを誤魔化したり、互いにとって都合がいい。それが喜ばしいかはさておき。 指先をねじ込んで開かせ、どれぐらい緩んだかを確かめ、頷いた。 「アンタの仲間たちはどう思ってくれるもんかな……少なくともアンタを知らない連中は。 本当は不誠実な人間だった、って。そおう思ってくれたなら、オレも気分がいいんだけどな」 代わりに手を動かすのはやはり僅かばかり燻る悋気だ。いつからか、貴方が羨ましかった。 仰ぎ見る誰かの隣にいられることか、それとも見たこともない親と同じポストにあることか。 もしかしたらそこに、理想的なものを見出していたのかもしれない、だからこそ。 ベルトを緩め、ボトムの前を寛げる。体裁だけでもそれらしく、とはしない。必要がないから。 緩く立ち上がりつつあった熱に指を添えて擦り上げて、陰惨な欲動を陽物に集める。 薄く滴りのあるうちに、今しがた押し開いた後孔へと亀頭を無理矢理ねじ込んだ。 皮膚であったり肉であったりのひきつるような感覚があった。ぐ、と息を詰まらせる。 深呼吸をして痛みを誤魔化する。人並み程度の大きさだが、それでも呼吸が苦しくなるほど。 ゆっくりと腸壁に馴染ませるように、男根を押し込んでいく。 (-48) 2022/08/26(Fri) 22:53:30 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ相手がどう感じているかだなんて知らぬままだ。手の届かないものと思っているから。 だから天上に向かって手を伸ばしている、何度も。幾度となくそれを繰り返してきた。 これだってその延長線で、響いているとは思わなかったから空振りし続けているつもりなのだけど。 「わかった、わかった。ちゃんとやる。別にやる気が無いわけじゃないってば。 ……待つ!」 やりとりだけならそれこそどうしようもなく大人と子供だ。 片付けの出来ない子供が急かされるみたいなやりとりの末に、差し出されたキャンディに視線が寄る。 唇に触れる透き通った甘味を、口づけるみたいに受け入れてから。 ばく! と指ごとかじった。実際にかじり取れたのは当然飴玉だけだ。してやったり、悪戯の成功した子供みたいに笑って見送る。 多少こうやって上回らせてみせてやれば、案外落ち着いて待ってみたりもできないわけじゃないのだ。 手持ち無沙汰に、伸ばした足を揺らしながら相手が帰ってくるのを待つ。 「まだ全然寒いけどもうちょっとで春が来るんだなあってわかるから、花祭り好きなんだよね。 母さん達からもちょうどこの時期に花が届くから…… あ、そうだ。もう一個報告あんだよね」 まだ、ガラスランプのシェードに細かな罅が入る前。内側の灯りがむき出しになって壊れる前。 いつだかの青年は、今の男よりもずっと素直で、明るくて。寂しそうな翳りなんてのもなかった。 他の誰かに傷つけられる前に貴方を殺さなければならない、なんて追い詰められたりも、しない。 キッチンの方に向かう背に、張った声を投げかけつつ思い出したように声をあげる。 言ってみてから、なんだかにやにやと。けれども仔細な話は相手が戻るまで待とう。 (-51) 2022/08/27(Sat) 0:05:31 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー――貴方が言う通り、 俺は、ソニーの過去を何でも知ってるわけではない。 あの方と過ごした日々を、ボスとの諍いを、親友とのあれこれを知っているわけではない。 それでも、ずっと見てきた。 気のおけない好敵手として、上司の大切な人として、見てきたんだ。 彼がどう言う存在なのかを。 笑顔を使い分けて、本当の自分を見せないようにする。 人懐こそうなくせして、独りになろうとしているようにすら見える。 たった一人以外は要らなくて、我儘を振りまく子供のような男。 「―――は、それでは、あの方は手に入らないというのになぁ……」 ぽつりと漏らした言葉が、貴方に届いたかはわからない。 直ぐにそれは溶けてしまって、言葉にならない喘ぎに変わってしまっただろうから。 どう思われようともう、構わないと思った。 これ以上の凶行を止める一手になるのなら、それくらいの事は何のブレーキにもならない。 たとえ自分が堕ちた淫魔と呼ばれようとも、それであの方の心が晴れるというのなら、これ以上幼馴染が、家族が狙われなければそれで良い。 「あ、あ、―――――――っ」 熱い、アツイ。衝撃に目の前に火花が散った。 舌や指とは比べ物もならない質量の異物が、自分を貫いていく。 痛いのに、痛いだけじゃなくて、それを待ち望んでいたかとでもいうように、体が悦んでいる。 きゅうきゅうに締め付けているのは、慣れきっていない狭さからなのか、それとも快楽によるものなのか最早自分にはわからない。 手が自由に使えていたならきっと、クッションにしがみついて耐えただろうけれど、それすらも敵わないから、肩をソファに押し付けて弓なりに背を反らせた。 けれども、それと反比例するかのように、自分自身のそれは萎えたまま。 それは、体内に回りきった薬の影響としか言えないのだろう。 (-56) 2022/08/27(Sat) 0:47:11 |
【秘】 風は吹く マウロ → 天使の子供 ソニー自分を求められたことも、自分から誰かを求めたこともない。 青年は、ただ自分の主導権を手放さないために意固地になっている。 理性を失い、相手に全てを預ける事を良しとしない。 実際のところ、君の手の内なのかもしれないけれど。 経験に長けているのは君の方だから、乱暴に相手を壊さないようなそれをしないようにするのが精いっぱいだ。 不意に口内で遊ぶ舌にぞくりと背筋を震わせる。 君が口を離すと、混ざり合った唾液が糸を引いた。 「ハッ……く…」 年下であろう君に、慣れたように行われる緩やかな前戯は、青年の余裕を奪い取っていく。 脚に、体幹に力を込めて、身体を支えながら。君の下着の上から満足するまで。爪先で弾き、引っ掻き、刺激を与え続けていく。 下着の中かがそれが取り出されたのなら、その手を止めてしまうのだけれど。 喉の奥から呻くような声が、君の手で擦られる度に漏れ出しそうになるものだから、歯を食いしばって耐える。 時には、もう一度その唇を奪って、気を紛らわす。 「は、お前 何して」 入り込んで来た手。他人に許したことのないそこに触れる、湿った指先。 少しばかり仰天したような顔で、顔を離す。 こんなところで、という思いと、俺がそっちなのかという気持ち。 男を抱いたことも、抱かれたこともないから。 結局のところは、今は快楽が与えられるのならどちらでも事は進んでいくのだろう。 君のそれを強く止める事はないはずだ。 (-58) 2022/08/27(Sat) 1:22:42 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ最初から本当に友達になりたくて近付いていたわけではない。最初は偶然から。 或いはいつからか男は貴方の素性を探って、ひとつの失われた者に近しいものを見つけたから。 甘やかな絆を築くつもりではなくなってしまったのだから、貴方の瞳に映る色も。 男にとっては知ったことではないし、その逆も同じだ。 此処で何を説かれたところで、何を変えられるわけじゃない。きっと納得しない。 罅の入ったまま幹を育てた植物はいつまでもその内側に傷を残したままに育つ。 いつか傷ついたままの幼いままの心は、他人の言葉で納得するほど良い人間ではない。 「……逃がそうとしてたんだ。こいつが面倒見てた子供と一緒にさ。 こいつらはオレたちの争い事なんかとは殆ど関係ない身分のやつだから。 自分は何処にも行かない、ここに残るなんて言うもんだから、どうにか説得しようとしてて。 逃がすつもりだったんだ。どっか遠く、別の生き方の出来る場所まで……」 説得しなければならないということは、彼女の望みとは違えたもので、勝手な押し付けだった。 それを喜んだかもわからない、けれどそうすべきだと思っていた、それは全て破綻したが。 相手にとっては少しも関係のない話は、同情を買うつもりというでもないのだろう。 後悔だとか、無力感だとか。耐えきれないものと向き合えば吐露せずにはいられなくなる。 死体はころりと分厚い毛布の中に転げて、座席から少しも身じろぎせず降りようとしない。 幅の圧迫痕のある両手首の先にある爪先には、新しく塗られたネイルがエナメルのように輝いていた。 中身のないからっぽの胴体は、頭は、折れた骨と伴う肉は直しきれずにそのままで、 その凄惨さが軽減されたわけではなく、ギャップが余計に物悲しいものを思わせた。 大事にしたかったのだ。友達のつもりだったから。それも手遅れなら全てが無意味だ。 相手の答えが欲しい訳では無い、けれど。壁と話して溜飲を下げられるものでもなかった。 → (-61) 2022/08/27(Sat) 13:10:06 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォわかった、と頷いて運転席に乗り込む。助手席は空いているから、座れやするだろう。 そこにもいくらか花びらが落ちている、干からびたものはなくて新鮮なもので。 まともに体と頭が動いているうちは、きちんと掃除されていたのだとわかるだろう。 裏の顔と表の顔が混在する。つい最近まではそういう場所ではなかったのだ。 エンジンキーを回せば、少し古びたエンジンが起動し始めた。ギアを入れて、夕闇の中を走り出す。 手はハンドルとギアを行き来して、その間に狙われたなら簡単にとは言わずとも殺されていただろう。 片方が何も出来ないのが理由で、どちらも血を流すことはなく車は走り続ける。 都市部の郊外から郊外へと抜けていく道中は、誰に邪魔されることもなく静かだっただろう。 今も尚互いのファミリーを狙う問題が解消されていない今であっても。 「ビアンカを、こいつを狙ったのがアンタらじゃないのはわかってる。 ……そう構えなくていいよ、疑ってるわけじゃないから。他はともかく。 アンタが、オレがやったことをどれだけ知ってるかもはわからないけど」 そろそろようやくはっきりと、言外に己が何者であるかを明かした。 本当なら、普段ならそんな無意味なことはしない。幾らでも黙ったまま取り繕う方法はある。 迂回せずに会話を続けることが気怠くなったのかもしれない。もうそんな必要さえないから。 さして車は走り続けたわけでもなかったろうに、長い長い道中。 ぽつぽつと時折口を開いた時に出てくる言葉は、以前よりも迂闊にさえ思えるものばかりだ。 相手がそれを気にすることはないだろうから、ただただ事実の羅列でしかないのだろうけれど。 (-62) 2022/08/27(Sat) 13:10:30 |
【秘】 グッドラック マキアート → 天使の子供 ソニー「こんな、ッ!ことで─── ハァ、死んだら、恨むからな……」 なんてことを口走るんだ、と叱るようなニュアンスを込めて。つられて苦笑をするものの、力強い突き上げに耐えかねて直ぐに表情はだらしなく崩される。 アナル全体から奥の一点まで甘い痺れを訴え始めたころ。散々嬲られたところを包み込まれる感触がすると、ひゅ、と息を呑む音がした。 腰を逸らそうとしても今度は杭のように突き込んで前立腺を擦るそれが許してくれないどころか、より一層絶頂へと押しやってきて、肌を打ち付け合うたびに気が狂うような射精欲が込み上げてくる。 「んはァッ、あっ、あぁ゛! わか、った、わかった、から……ぁン!」 天を仰ぎ、甘い善がり声で鳴かされる。こんなの直ぐにどうにかなってしまいそうだ! ただその中で、意図をなんとなく察する。向こうも限界が近いのだろう、背中に整えられた爪を突き立てたり掻き抱いたりして、一身に受ける快感への抗議としておいて。 けれど相手の顔を立たせるべく、抗わず瞼を閉じて腰から全身までに駆け巡るエクスタシーを懸命に拾い上げようとする。 蕩けきった声で名前を呼び、イキそうなことを何度も伝え、情欲に突き動かされるまま可愛らしく吠えた。 (-71) 2022/08/27(Sat) 19:55:49 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーあなたの素性にも、その腹の底にも、大して興味は無かった。 仮令何者であったとしても、もう誰も懐に入れるつもりは無くて。 初めから、これは何処までもそんな薄情な人間の言葉なのだから。 そのようなものが、誰の心に留まるなど期待するはずもない。 何れにしても、確かな事といえば。 あなたが何者であっても、掃除屋にとっては重要な事ではなかった。 あなたは死者の前で無粋な真似をするような人間ではなかった。 今はただそれだけが判れば十分だった。 「だが、何も得るものは無かった。」 「あんたも、あんたが手を差し伸べてやろうとした相手も。 少なくとも、あんたの思ったようなものは、何一つとして。」 死者は黙して語らない。 少なくとも、凡そ大半の人間にとってはそうだ。 ともすれば、それ以外の何かは得ていたのかもしれない。 それでも、あなたがそうして描いた望みの通りにはならなかった。 だから生者にとっては、今ここにある事実だけが全てでしかなく。 日常の中、薄っすらと死の気配が漂う車内は、静かなものだった。 死者は何も語らず横たわり、及ばなかったあなたの思慮を物語る。 後には破綻した願望の跡と手遅れの悔悟ばかりが虚しく転がって。 心の軋むようなその独白を、慰めるようなものは何処にも居ない。 その疵に寄り添うようなやさしい答えなどありはせず、 けれど、物言わぬ屍体や壁と言うには幾許か聞く耳を持って。 それを聞き届けるものだけが、確かにそこにあった。 (-72) 2022/08/27(Sat) 20:02:00 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー対話とも、一方通行の話ともつかない距離感の助手席で。 夕闇の中、目的地へと着くまでの、長くも短い道中の事。 取り繕わないあなたの言葉を聞いて、息吐くように笑った。 「俺があんたの仕出かした事を幾つか知っていた所で、 今更何にもなりやしませんよ。 起きた後に何をしたって、そこには何の意味もありはしない」 「後には何も残らない。たった一つ、俺達の、後悔を除いて。」 持ち込まれた遺体に何ら関わりが無いのは、言うまでも無い事。 あなたが何をしていたとて、何もしないのも本当の事。 無い仮定として、あなたが唯一の友人を殺めていたとしても この掃除屋はきっとここで何をしようともしなかっただろう。 「…そうは言っても、腹の底も知れない人間の前で、 ちっとも構えもしないなんてのは。 それはそれで、却って疑わしいもんでしょう?」 なんてのは、今のあなたの様子を鑑みれば 随分と皮肉の利いた言葉になってしまうのだろうけど。 たとえば付け入る隙があれば、誘い込むような怪しさがあれば。 魔が差す事は、或いは猜疑が首を擡げる事はあるだろう。 掃除屋は、相手が身内であっても、それ以外であっても。 何れにしても、同じだけの線を引いていた。 互いにそれをしない為の均衡は、必要なものだった。 事ここに至ってしまえば、それも不要なようだったけど。 (-73) 2022/08/27(Sat) 20:02:31 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー「結局は。さっきも言ったように、後は時間潰しなんだ」 「俺はこの後どうなろうと構いやしない。 あんたも、そこの知り合いを連れて帰ったら…… その後は、どうなるんだかな。」 回りくどく取り繕う事を止めたあなたの言葉は、 もはや殆どそれなりの事をしていると白状したようなもの。 そこには幾らかの差こそあれど、それはこちらも同じ事で そして今している事も、互いに随分と勝手な事だろう。 いったい、自分勝手に行動を起こしたツケというものは。 果たして誰にとって、どれほどのものになるのだろうかな。 結局の所、掃除屋もあなたに答えを求めてはいない。 互いに何を語った所で、恐らく殆どは互いに殆ど関係の無い話でしかなく、 だから何れに答えが返って来ようと、或いは何も無かろうとも。 きっとじきに二人と一人を乗せた車は目的地へと着いて、 そうしてきっと、この夜もまた、一つの死が葬られる。 名もなき烏の仕事場たる僻地の廃倉庫。 広くがらんとした庫内には、あたかもそこがガレージであるように 花屋のものとは違う、一台の商用バンが乗り入れられている。 暗い夜に、内部全てを照らせるだけの灯りは随分と目立つものだから。 灯されるのは幾らかの作業灯だけ。 薄暗く、人の営みの気配の感じられないその場所は、 ともすれば、その倉庫そのものが、一つの棺のようだった。 (-74) 2022/08/27(Sat) 20:03:21 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー噛まれた指をわざとらしく痛そうに振って立ち上がった。 冷蔵庫に入っていたのは男の得意料理。あえて教えてもいないが主食であり娯楽のひとつであるのは既に知られてもおかしくはない。 もっとも仕事ですら分け与えているのは20年来の友人と直属の部下ぐらいであり、プライベートでの付き合いなんて当の昔に潰してる上に、今では足を揺らして座っている子供ぐらいとしか面と向かって話さないのをきっと彼は知らない。 電話で今では何でもすむ、聞かれてもいい内容だけを話すのは厄介だが少しでも接点を作らないことが他人に疑われない秘訣だ。 伝えてやる機会なんて早々ないだろう、関係はないと言うにはあまりに冷たいがこれから離れ離れになっておかしくないのだ。向こうもファミリーからノッテの悪態をどれほど吹き込まれるかわかったもんじゃない。 「ブラーヴォ、ソニー。 相変わらず花が好きだなお前は、祭りならどこでも花が見れるだろ……まあ暖かくなってくるこの時期は嫌いじゃねえけどよ」 食べかけのタルトタタンを取り出し調理台の上に乗せ、一人分を綺麗に切り取れば残りの半人前は全部自分用に。 食事代わりにもしている甘味は、林檎の蕩けた甘味が凝縮されたような琥珀色をしていて作りなれているのがよくわかる。 「なんだ、まだ何かあったのか? 思い付かないな……教えてくれ」 表情からしていい報告なのだろうか。 お互いの機嫌や回りの視線を気にしなくていい最後の時間かもしれない、そう思っていた男は努めて気さくに。普段通りと、名残惜しさを含めて再び隣へと向かう。 銀のフォークを並べる頃にはその顔を覗き込もうとした仕草を抑えて、時間をかけて挽かれた珈琲へと手を伸ばしていた。 (-77) 2022/08/27(Sat) 21:21:28 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド「いいんだ。どうせもう会いには行かない」 しばらくは。この時にはまだそれくらいのつもりで、本当に二度と会えないとは思っていなかった。 知っていたならばもう少しくらいは考えた行動が出来ただろうか。それとも、余計に錯乱していたか。 互いに知ることの出来ない朝日の色を、想像したところで意味がない。 けれど相手の感じていたように、素のままの自分を見せていたのは、たった一人にだけだ。 手が届かないと思っていて、見上げるばかりだと思っていて。 手に入るなんて思っていたならもっとずっと、何もかも振り切って何でも出来ただろうに。 二人分の体重と身悶えを受け入れて、柔らかいソファが大げさなくらいに音を立てる。 初めは殆ど強引にこじ開けているようであったのも、ごくゆっくりと引き抜いて、押し込んでを繰り返すごとに段々と少しくらいは身動きがとれるようになってきた。 流し込まれた潤滑液を絡めて、体の中をぐらぐらと茹だったような熱が動くの感じるのだとしたら、 神経に由来する快だけでなく、痛みや単純な体温の上昇のためもある。 信号の全てを撚り集めて錯覚させたなら、それはそれは随分と脳を揺さぶるものだろう。 脳髄を突き抜けて飛び出すような快楽も、異常なほどに目の前を眩ますような昂揚感も。 精神論の一本で耐え足掻こうともままならないから、それは罪であり、薬なのだ。 「どんだけ吠えたって外には聴こえやしないから、安心してよ。スタッフにも少し騒ぐと伝えてある。 ……こんなのさ、味わったことないでしょ? クセになっても困らない状況で、良かったね」 空間を押し広げて奥まで突き込み、雁首の抜けそうになるまで腸壁を引きずる。 肉がぶつかるたびに、流れ落ちる液体が卑猥な音を立てた。それも耳に入ってるやら、どうか。 元々こうした行き過ぎた行いが好きな訳では無い。自分の気分を乗せるために、上体を傾ける。 背中を見下ろして、短い髪を指で梳いて。過剰に巡る血流の為に赤く染まるだろう首筋に触れる。 シャツ越しの肌が、背中に寄せられた。 → (-79) 2022/08/27(Sat) 22:02:54 |
【独】 天使の子供 ソニー果たして本当はあの日、自分はどうしたかったのだろう。 誰かに殺されるくらいならと恐れて、焦って。その前に自分で手をくださなければならないと思った。 それが叶わず指が震えるのなら、どうか殺して欲しいとさえ考えていた。 けれども結局は、向かい合う誰かに何を伝えるのも尻込みしてしまって、喉がつかえて。 何も言い出せず逃げるようにその場を後にしてしまった。 振り返ってもう少しだけでも言葉を交わしていれば、己の意思を伝えていれば。 何か違う結果を手にしたのだろうかと、今になってもそう思う。 それは敬愛だったし、性愛だったし、甘やかな思慕であったのだろう。 なんだってよかった。傍に在れるならどんな形であってもよかった。 それが壊れるのも、一度突き放されたように距離が離れたのも怖かった。 舌先に僅かに残った薬が己を錯覚させる。求めるものはこの場にはない。 けれども増幅された共感は、夢見る思いをほんのすこしだけ表層に押し出した。 (-78) 2022/08/27(Sat) 22:03:06 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド「、ずっと。こうしたかった」 腕を回し、自分よりも背の高い体を抱き寄せる。そうだ、多分これくらいだ。 微かに鼻に触れる甘い匂い、煙草の匂い。虚しいだけの錯覚を後押しする。 一度決壊し掛けたものがつんと鼻の奥をなでて、少しだけ声を震わせた。 ほとんど自分が満足するためだけのピストンを繰り返しながら、肩に頭を埋める。 首筋に、やけに控えめな浅い鬱血痕が残された。唇は柔らかい。 「先生、」 (-80) 2022/08/27(Sat) 22:06:24 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 風は吹く マウロ触れる位置にあった顔の距離が離れれば、ようやく息がしやすくなる。 けれどもなんだかそれも寂しがるみたいにちょっとだけ追って顎に顔をくっつけた。 潤滑も足りず未だ浅く触れているだけの指は、感触で相手が初であるのは理解したらしい。 「ダメ? 体験、してみたくない?」 けれどもそれでは退かず、追い縋る。大した意味はないんだけれども。 どうせするなら、という欲求が半分ほど、 殺すのならば不利な姿勢は取りたくないのが半分ほど。 そんな我侭ぶったようなやりとりをしている間にも手の甲は動いて、ボトムの後部をずらす。 素肌に感じられる外気の気配だって、酒気に追いやられてあまり気になるものじゃないだろう。 指を動かしやすくなったのなら、ポケットから個包装のローションを取り出して封を開ける。 やたらにビビッドなピンクの液体を指先に絡めて、相手の下肢の付け根に押し込んだ。 この日の為に持ち歩いてるのだかいつもなのだかは知らないが、遊び慣れた様子なのは確かだ。 前は相手の手先にまかせて、指は肉の輪に染み込ませるように動かす。 柔く馴染ませて、その先の行いが苦しくないように。時折、違和感をごまかすようにキスを重ねる。 しばらく指が一本入るくらいまで捩じ込むと、片腕で相手の膝を担ぎ上げた。 後ろを向かせるよりかは恥ずかしい格好じゃあないだろう。背中は少し擦れるかもだけど。 男の方が背は低いから、相手が片足を調節してさえくれればさほど苦しい体勢ではない。 「……ガマンしてるんだったら、遠慮しなくって、いいよ」 どちらが女役かというのを変えるわけではない。けれどもし相手が何かこの交合に引け目があるなら。 それを弾き飛ばせるくらいには、何もかも忘れられるくらい楽しんだほうがいい、そうだろう。 (-83) 2022/08/27(Sat) 22:59:58 |
【秘】 天使の子供 ソニー → グッドラック マキアートケラケラと笑う声は気の緩みのせいかもしれない。笑って喉が震えるのが耐えられず慌てて息を整えた。 ひとりで取り残されるのはいやだ。だから、相手にも手を伸ばす。 時折鼻を抜けてくうくうと鳴く声が、背伸びして振る舞いきれずに甘く空気を揺らす。 こうした行いの為よりかは仕事のためだろう爪が掠るのを、ため息のような喘ぎが迎え入れる。 「、は。……カフェえ……」 そのくせ返す声と言ったらなんとも弱々しくて、すがりつくみたいにしようもない。 この男はよく名前を呼ぶ。甘えて、追い縋って。狂おしく感じているのを知らせるみたいに。 わかりきった患部を何度も押し込むようにぐりぐりと責め立て、均整の取れた体を掻き抱く。 どちらもおそろかにせずにというのは難しくて、それでも男なりに頑張ってみせる。 姿勢と身長差のせいで顎下ばかり見える視界、その先を柔く唇が吸い上げる。 その頃にはちょっとばかし気遣いも頭の外に追いやられて、夢中になっているかもしれない。 押し返すように、包み込むように陰茎に刺激を与える中の蠕動に眉を寄せて、 捉えた快感を逃してしまわないように身をよじらせて。 「っ、ふ……!」 ひときわ弱々しい声を上げて、背筋が震えた。薄いゴムの中へと精液が放出される。 幹の中を通り開放される感覚に息を途切れさせながら、振れてしまいそうな呼吸を整えて。 何度か腹筋にぐっと力を入れてからようやく体を脱力させた。 なんだか、悪いことをしたあとの子供みたいに瞼を絞り、おそるおそる相手を見る。 (-85) 2022/08/28(Sun) 0:00:26 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー会いには行かないという言葉に、 器用そうに見えるのに、本当の貴方はとても、不器用な人間だなと思った。 それはあの方も、自分も同じだ。 誰か一人でも器用に動けていたなら、今このような事態にはなってはいなかっただろう。 ――だけど、そうなってしまった。 もう何処にも引き返せやしないのだ。 「は、ぁ、っあ”、あっ」 まるでイイ所探されているかのようなゆっくりとした動きに、身悶えした。 もっと、感じる間もなく痛みだけを与えてくれれば、こんなに苦しむことはなかったと思うのに。 貴方が、俺に良くする理由がわからなくて、混乱して、尚もその意識は快楽の海に溺れていく。 潤滑油を頼りに、中でごり、と何かを抉るように擦られれば、一際大きく鳴く声が上がっただろう。 もうそこに、普段の仏頂面の幹部候補など居やしない。 本来ならば排泄期間である場所が、濡らされて受け入れている。 雄を受け入れてきゅうっと締め付ける様は、雌にでもなってしまったかのようだ。 響く音も、擦れる感触も、痛みも、優しさも。 楽しんで性行為をしたことなどなかったから、それは正真正銘今まで感じたことがなかった快感で、頭の中をどろどろに溶かされている気分だった。 ▼ (-86) 2022/08/28(Sun) 0:08:15 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー恨みと嫉妬をぶつけられているのはわかっている。 自分が欠片でも好かれているとは思っていない。 自分が向けた好意にもにた感情と同じ物が返ってくるのではと思うのは、烏滸がましい、独りよがりな思考だ。 髪を梳かれ、温かい何かを背中に感じた。 それまで体の自由を奪われ、身悶えして捩ったり跳ねたりするだけだった体だったが、 包み込むようなそれが、腕であることに気づいた時には、はた、とそのの動きを止めて、 何が起きたのかとぼんやりした頭で考えたが、首筋を吸われて落とされた言葉に 今、背中にぴったりとくっついてきた男の目に、自分が何に視えているかを理解してしまった。 ――本当に、悲しいくらいに、 想いの一方通行しか、ここには存在していない。 「―――……、腕を解け。 これじゃ、お前の頭を撫でてやれないだろう」 あの人ならば、きっと、そうしてくれるだろう? (-87) 2022/08/28(Sun) 0:09:14 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ独り言、独り言だ。決して同情して欲しかったわけではない、では何を求めていたのか。 言った当人とてこれといった展望のあるような話ではないのだろう。 けれどもこれ見よがしに突き放されたなら、それを侮りとしてとったのかもしれない。 男が反応したのはどの言葉だったろう。ひょっとすると流れるような跳ね返しの全てか。 ハンドルを切り、カーブを過ぎて真っ直ぐな道を前に見据えたところでちらとミラーを覗いて。 頭の位置を確認すると、上腕と手首を固めて反動で打つように、 相手の顔に向かって裏拳を放った。 「……口の利き方に気をつけろよ、根暗野郎。掃除屋なんだろ。 オレにはいい、でも他人の結果については利いた風な口して語るなよ」 尤もらしく言葉を付け足したところで結局のところ相手の言葉が癪に障ったに過ぎない。 ただ、執拗に突き放されるように幾重にも渡って重ねられたなら、耐えられなかったのだろう。 線引だって行き過ぎればただの対外的な嘲りだ、そう言いたかったのかもしれない。 ただ、車中でそれ以上相手に手を出すことはなかったろう。お返しも一発なら看過したかもな。 段々と地平線向こうの太陽もまた、深く深く見えない向こうへと潜っていって。 アスファルトを照らす光は月光のそれに変わりつつある。 最早誰を相手が手掛けたか、なんてのは仔細に問い詰めるべき対象ではなくなっていた。 漠然と憎悪はある。けれどもそれを上回って無力感が強かった。 今更何をしたところで状況に変わりがない、そう骨身に滲みすぎてしまったから。 倉庫の中へと車を乗り入れ、都合の良いところで停める。運転席をおり、後部座席を開けて。 半分しかない女の死体を、ごく丁寧に抱えあげて目線で指示を仰ぐ。 既に肌の下の肉は腐臭に変わりつつあった。発見場所は水辺に近かったから。 それでも決して、粗末には扱わない。その後は切り刻んで燃やすのを了承しているくせに。 目に見え、己の手の内にあるうちだけは丁寧に扱おうと、そうしていた。 (-88) 2022/08/28(Sun) 2:04:57 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオどれくらい会えなくなって、どれくらい態度が変わって。 少しずつ変質していく互いの距離がどんなものになるかなんて、想像もしていない。 足を揺らして相手が帰るのを待ち望む仕草は、なんだかんだと今と変わらないことを期待している。 「好きだよ。散る花でもオレにとってはひとつひとつが思い出。 思い出せる記憶はなくても、それそのものが大切なんだから」 季節ごとに贈られる花は青年にとっては両親の思い出だった。 その時はそう思っていた。 一人息子を手放し、便りも少ない薄情にも思えるそれを、青年は大事に受け取っていた。 親というものの存在する人々に囲まれた環境ならまた受け取り方は違ったかもしれない。 皆にとってその思い出なんてない孤児院の中だからこそ、大切だと思えたのだ。 本当はとうにそこには、見たこともない二人の男女の意思は消え去っていたとしても。 焼き菓子の、まだふんわり鼻先をくすぐる甘く香ばしい匂いに頬を緩める。 煙草の匂いに、甘い匂いに、珈琲の匂い。いつからかいつだってそれを求めていたのかもしれない。 不良少年の口先から香るシガリロの煙が何を内包しているか、貴方は気付いていただろうか。 「一応さ。一人前になるわけだしさオレも。タトゥーパーラーでちょっと一筆入れてもらったんだよね。 ……見る?」 報告そのものは別段変なものでもないし、多少やんちゃではあるもののありふれた話だ。 行儀や品性は悪くはあるものの、年若い人間としてはそうした証を欲しがるものなのかもしれない。 それとして、なんだかにやにやといたずらの一つでも考えているように笑っていて。 貴方が見る、とも見ない、とも返事をしたかどうか、 ベルトに手を掛け、ボトムの内掛け釦とホックを外すと指を引っ掛けてぐっと大幅にずらす。 腰骨の外側右、下着を履いたら隠れてしまいそうなところに。 白で花房を塗った花の意匠が彫られているのを見せつける。 ちょうど部屋に転がされている、祭りの主役とおんなじアーモンドの花だ。 見えているのはタトゥーだけ。他に余計なものは見えてやしない、が。 (-90) 2022/08/28(Sun) 2:37:02 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルドこれ程に優しくする必要なんてのはない。丁寧にするということは身体的にも隙が出来る。 わざわざ拘束した腕を己の胸の下に敷いてしまって、縋り付くみたいに腕を絡めて。 ぎゅうと貴方よりも軽い体重を伸し掛けた体は、ぼんやりと体温の上がった手で体に触れる。 汗をかいた髪に、首筋に寄せられた唇は花に指を添えるみたいに柔らかい。 「先生、……好きだ、愛してる。ずっと、ずっと。 好きだった。あなたがオレに優しくしてくれた時から、ずっと」 終ぞ面の向かって言う事の出来なかった言葉が、震えた涙声と共に吐き出される。 伝える相手を違えている。これから男は貴方を殺すのだ。だから伝言というわけでもない。 もしも、だとかたらればを思えば、息をするごとに胸に抱いた熱が溶け出すのを抑えられない。 そのくせ、腕に絡んだシャツを解けという声には無言だけがはねのけるように返る。 単純に抵抗を恐れたのか、相手が伸べたそのものを退けたのかも自分でわからないくせに。 頭の奥底ではわかっている。相手が自分の愛しい人でないことも、口に出来ない己が悪いのも。 肌の上を熱っぽい指が這う。撫で竦めて、全てを掌の内に集めるみたいに掻き抱く。 甘くまとったベチバー、アンバー、キャンディアップル。融け込むように首筋を汗が流れる。 「 ヴェネリオ 、――……」普段は口にしない彼の名前を呼んで、耳朶に声を滑らせて。 はふ、とかすれたような声混じりの息が弾み、合わせるように何度も腰を打ち付けた。 女のようには柔らかくなくたって、きつく扱き上げられ続ければ下腹部に溜まる快は大きく。 随分と長くあったような交合の果てに、奥の奥まで腰を押し付けて体をまるめて。 凍えたようなかすれ声と共に、腸内の行詰りへと長く長く吐精した。 それが終わったにも関わらず、背中にしがみつくように頭を擦り付ける。 固い髪質の束がくしゃくしゃに押しつぶされている感触があった。 (-94) 2022/08/28(Sun) 6:50:51 |
【秘】 銀の弾丸 リカルド → 天使の子供 ソニー例え紡がれる言葉が自分へのものではなかったとしても、その声色は甘く震えて耳の奥に響くようだ。 頭の中が真っ白になっていくようで、どこかに連れて行かれてしまうような気分になる。 「ふ、あっ、んんっ」 快楽に堕ちた瞳には、何も映らない。 ただ、その頬に触れた硬い髪に頬ずりをしてやるだけだ。 受け止めたそれは愛ではなかったけれど、貴方とのこれまでを否定しやしない。 あれはあれで、駆け引きをちゃんと、楽しんでいたから。 でも、今はただ。熱くて、気持ちがいい。 奥を突かれて苦しいのに、たまらない。 名を呼ぶ囁きに、異常な熱がこもった。 ――馬鹿が……俺は、リカルドだ 否定する言葉は口からは出て来ない。 代わりに、絶え間なく嬌声と肌がぶつかる音が部屋の中に響かせて、頬を涙が伝って流れた。 それでも本来なら立ち上がるべき自分のそれは、そういう事なく萎えたまま。 何かせせり上がってくるような感覚が、体をぶるりと震わせている。 もう代わりでも、恨みでもなんでもいい。 ただ、どうか最後まで離さないでいてほしいと、ただそれだけを願って。 「っふ、は、あ、ゃ、ああ―――――っ」 長い吐精を腹の奥に受けながら、全身を強張らせ、震えるように弛緩する。 男を受け入れるのは初めてであったのに、後ろだけで深い快楽に達した身体の力が抜けて、背中にすり寄る頭を自由にさせている。 もう、身体の何処にも、力が入る余裕はなく、 ただ、静かに目を閉じて全てを受け入れていた。 (-97) 2022/08/28(Sun) 16:44:29 |
【秘】 グッドラック マキアート → 天使の子供 ソニー気遣いとか、そもそも身体の動かし方から何も考えられなくなってきて、ただ目の前の男との交わりに同じく夢中になり、目の前がちかちかとしてくる。 より快楽を貪ろうと、気づけば右手の人差し指を自分の乳頭に這わせて弾いて。腸内を圧迫されるたびに喉を使った嬌声がそのまま押し出されていく。恥ずかしくて抑えよう、なんて試みようとすることももうない。 「は、ソニー、いい、もっと……」 顎に舐るような感触にじわとした熱が胸に籠る。歪な形ではあるものの、赤子をあやすような心地でより一層抱きしめたくなって。 だけどせめてもの矜持で邪魔はしないように力は込めず、けど、離れたくはなくて縋りつく。 「あ゛、イッ、……は、ぁあ゛、!」 咳の混ざる、微かに枯れた喘ぎののちに全身を強張らせて精を吐き出した。 そのまま汚れるのも厭わずしな垂れかかり、余韻に浸って。 やっとの思いで身体を離したかと思えば眉間に皺を寄せて、ポーズではあるけれどあからさまに怒ってる、みたいな。とはいえ仕方ない奴だな、という受容の姿勢も見せている。 いちど、深々とため息を吐いて。けれど慈しむような口づけを、額にまた落とした。 (-98) 2022/08/28(Sun) 20:05:29 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 銀の弾丸 リカルド長く吐いた息はひと呼吸ごとにおさめられる。次第に平時の落ち着いたものとなっていった。 ぐらぐらと煮えたような熱を過ぎれば眼の前のある光景は至ってシンプルだった。 身を守るもののない体と、薬に溺れて熱く火照った背があるだけ。 どうして分かっていて身一つで来たんだろうな、なんてことは身勝手な男にはわからない。 会話らしい会話なんてのも、激高ののちには殆ど交わせやしなかった、なんてのもまた勝手な話だ。 言いようのない感情が目の端で汗と混じるのだって、見つめ直して考えやしない。 「……アンタがおとなしいから、工作の必要も少なさそうだ。 楽に仕事できて助かったよ、リカルド。それがお望みだったんなら何より」 いつ、何どきのうちであったなら貴方にとって納得の行く話が出来たのだろうかな。 或いは最初から対話を求めるならもっと別の人間だったらよかったのかもしれない。 託されたものを手放していれば、傷つかずに済んでいた? 細工したベルトから、片手に収まってしまうような大きさのデリンジャーを取り出す。 今の時代においては小型化が進んでいても威力は十二分にある、とはいえ。 こうした穏当なシチュエーションで手にすることを想定していなかったら、 もっと隠しようのない口径を手にしてこの場を訪れて、貴方に向けていたかもしれないのに。 そうしたら一人にすることはなかったし、そうしなかったら三人揃って肩を並べられはしなかった。 汗で湿った髪を指先で梳くように撫でる。 その感触の消えぬ内に、金属質の感触が突きつけられて。 「さようなら、リック。 案外さ、そのピアスも似合ってたよ」 軽薄な一言と入れ替わるように、軽い銃声が響いた。ステージはまだ音楽に包まれている。 フロアを揺らすミュージックは兇弾さえ知らぬふりをして、いつまでも熱狂し続ける。 すぐさま誰かが助けに来る、なんてその時の男は知らなかったし、今でさえそれを認識したかどうやら。 少なくともそれでおしまい、お別れ。その時点では確かに、互いの顔を見た最後だったのだ。 (-101) 2022/08/28(Sun) 20:40:52 |
【秘】 風は吹く マウロ → 天使の子供 ソニー一瞬、性器に触れていた腕を上げて 唾液に汚れた口元を袖で拭う。 そうしたところで、再開されればそれは意味を成さないのだが。 甘えるのが上手な男だ、と顔を摺り寄せる君を見て思う。 何となく、後頭部を支えていた手で襟足の辺りを撫でつけた。 「……チ…1度だけだ。終わったら、忘れろ……」 素直に頷くには、羞恥心とプライドが許さなくて。 口からはそんな言葉が出るけれど、君の触りやすいように少し足を動かしてやる。 何処に触れたいのか、どういった体勢でいれば楽になるのかくらいはわかる。 羞恥は酔いに任せることで紛らわせて、君が用意周到すぎるくらいである様子に 元々それ目当てで誘ったのかと思うくらいだ。 はあ、と熱くなった息を吐きだして。君のしたように、2つのそれを握って気分をたかめていく。 前に気を向けて、後ろに力が入りすぎないように。 時折貪るように自分からも君の唇を奪って、男は行為を止めろと言うことはない。 どうせこの昂りを治めるのは容易でない。であるならば、もう好きにしろと君に体を許している。 だから今は 互いに、満足するまで。 (-107) 2022/08/28(Sun) 22:33:21 |
【秘】 天使の子供 ソニー → グッドラック マキアートそろそろと息を吐いて、もたれかかる体を急かして起こすようにあちこちにキスをする。 痕がつかないくらいの戯れだけど、後戯を欠かしたくないくらいの感慨はあるらしい。 やたらに派手にではないにしろとくとくと騒ぐ心臓が落ち着いた頃に相手も離れ、 そして叱りつけるような目線と交差したなら、逃れるみたいにぎゅっと目を瞑った。 「ごめんってば。仕事邪魔した分はなんか払う、なんか奢る。 駅前んとこにあるパン屋でさあ新しいしょっぱい系のデニッシュ出たからそれで許して……」 相手も了承済みの戯れであるとはいえちょっとやりすぎたのは否めない。 ふにゃふにゃと言い訳じみたことを宣いながら、だらけたみたいに腕をだらりと垂らした。 相手が退いてくれれば最低限服を着て片付けはする、ただすぐにそうとは言わないだけ。 気の済むくらいまでもうちょっとくっついていたいことを、わざわざ口にはしないだけ。 「……ここシャワ〜ってどう通ってけるんだっけ……」 余韻もそこそこに口をついて出たのは、色気もなんにもありゃしない質問だった。 相手が全く考えもなしに、対象的に考えなしの話にノッてくれるわけはないので、 多分手頃なところに都合よく身支度を整えられる場所はあった、はず。 萎えた男根が自然と抜けて解放されたなら、ゴムも縛って撤収準備だ。 建物の外、街を囲む喧騒とは一切無縁の、お互いにとってはわりかしありふれたやりとりだ。 何を見るわけでもなくちらりと扉の向こうを見てから、額へのお返しにと肩口にキスをする。 「なんか。なんも変わんなきゃいいのにな」 本当はそう言う口の呑気さとは裏腹に、どこかに無力感を抱え続けていて。 けれどこの時間のうちだけは忘れられていた。貴重な時間だったのだと思う。 足首にボトムと下着の引っかかった間の抜けた格好をして、椅子にだらりと体を預けて。 そんないつかの、まだ何も起こっていなかったうちの日々の話だ。 (-112) 2022/08/28(Sun) 23:21:49 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー掃除屋というものは、依頼者を取り巻く諸般の事情に対して 如何なる理由があったとて、何を言うのも褒められた事ではない。 常ならば当たり障りのない相槌を返して、それで終わる事。 けれど今そうしなかったのは、どうしてだっただろう。 何を仕出かすかわからない、という後ろ向きな信用は続いている。 随分な言い方をしている自覚も。そうなる事も予想はしていた。 さりとて予想していて何になるでもなく。一度、鈍い音の後。 口の中で呟くように、遅れて広がる鈍痛に小さくぼやきを零した。 「……気は済みました? 他人に知ったような顔をされたくなかったのなら、 あんたはそれをもっと大事にしまい込んでおくべきだったよ」 「それともあんた、俺に何か期待してたんですか?」 その後にもう一度耳障りな言葉を吐いて、今はそれだけ。 何も死者の眠るすぐ傍で口論をしようってわけじゃない。 それは直接的な暴力も同じ事で、報復に手を出す事もなかった。 わかっている。それがもはや内に抱え切れず分水嶺を越え、 心の内から零れ落ちてしまった苦悩の表出でしかない事を。 摩耗しきった精神や思考に正論は何ら正の影響を及ぼさない。 そこに何を求めていたかなんて、あなたにさえ不明瞭な事だろう。 求めるものも、今よりもう少しましな道も、きっとわかりやしないこと。 それをわかっていて、態とその事を考えさせるような事を言う。 もはや正しさでは救われも納得もできやしないのだとしたら。 そんな思考の袋小路に行き着いた時、あなたは何を選ぶのだろう。 やがては自分と同じような考えに至るのだろうか。或いは、それとも。 (-114) 2022/08/28(Sun) 23:58:47 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー今は取り留めの無い思考に考えを巡らせる猶予も無く。 それから程なくして、配達車は目的地へと辿り着いてしまう。 助手席から降りて、男が腕の中に抱え上げたものを見遣る。 既に幾らかその中身を失ってしまった、華奢な女の上半身。 仮に今ここにあるのが全身であれば、話は違っただろうけれど。 けれど半分だけのそれは、解体するまでもないと判断した。 先に倉庫内に停められていた方の商用バン。 特別用向きもなしに連れて歩くには持て余す道具の最たるもの。 火葬車のバックドアを開け、炉内から火葬台を引き出し、 先に炉に火を入れて、男の抱えた遺体を火葬台に寝かせた。 そうして遺体を横たえた台は炉内へと収められ、 それきり火葬炉の扉は重く閉ざされて。 それが彼女の姿を見た最後の光景になる。 火葬に掛かる時間は焼かれるものの体格や体重に左右される。 女性の、それも上半身だけであれば、そう長い時間は掛からない。 たとえ既にその遺体が朽ち始めていたとしても、 火葬炉というのは、焼かれる臭いは殆どしないようにできている。 やがて、きっとまだ夜が深まり切らない内に扉は再び開かれる。 炉と焼け残った灰から幾らか熱が去った頃。 (-115) 2022/08/28(Sun) 23:59:26 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー灰と、幾らか残った骨は台の上から容れ物に移される。 骨壷なんて上等なものは無いから、何とも無骨な保存缶の中。 ただ淡々と納められて、あなたの方へ差し出された。 「どうぞ。連れて帰るくらいはするでしょう」 受け取らないなら、掃除屋の方で"処分"されるだけ。 少なくとも、それはあなたの望む事ではないだろう。 未だ目に見えて、あなたの手の内に戻るものだから。 「それで。先に用があった方は済んだわけですが。 あんたはどうしたいんでしたっけ?」 受け取るにしても、受け取らないにしても。 仕事は済んだとばかりにもう一つの用は切り出される。 あなたは最初に、自分より先に用事がある、と そう言って彼女の事をこの掃除屋に任せたものだった。 であれば結局、それだけが用向きの全てではないのだろうと。 (-116) 2022/08/29(Mon) 0:00:08 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 風は吹く マウロ狭い路地の、他人の視線が通わないうち。 遠くに聴こえる花火の音が大気を震わすたびに息を詰まらせる。 担いだ足を揺すって体を合わせるたびに上がった息が混じり合う。 身動きの取れないなりに押し付け合うように擦り合わせて、抱き合った体がぶつかり合う。 時々かつかつと当たる鼻っ柱に浮いた血の気であったり、腹筋を掠る熱の感触だったり。 混ざり合う熱を確かめるたびに荒く息を吐く。夏の夜気に、浮かされたみたいだった。 息を詰まらせ、吐き出して。互いに上り詰めて、その後だ。 余韻の残る内に胴をぴったりと寄せて、名残惜しむみたいに服越しの肌を重ね合う。 視界を奪うためであるなんてのは、今までの様子からしたら想像し辛いかもしれない。 身じろぎして、視界の外で腕を動かす姿もここまでのことがあったら、他にも想像の選択肢があった。 あちこち動く手は貴方の着衣を正す様子もあったし、納得させるに足る理由があってしまった。 少しまだ鼻の天井の方から甘ったれた声で鳴きながら、ぽつぽつと口を開く。 「……オレはさ、昔友達がいたんだ。四年くらい前かな。 この街で殺された。本当は、行方がわからなくなったって聞いてたけど。 そんなわけないだろうって調べてる内にさ、誰だかにやられたってわかって。 しんどかったな。何も知らずに過ごした時間があるのが余計にしんどかった。 アイツが苦しんだことを無視して生きていたような気がしてさ」 ほんの僅か、眉をひそめて囁くような声で語るのは己のことだ。 この路地を訪れた時にほんの少しだけ話したことの続きなのだろう。 同情に足る話ではあるんだろうが、けれどもどうして今口にしないといけないのだろう。 片足は担いで、壁を背中に押し付けたまま。貴方よりも背の低い男は言う。 → (-119) 2022/08/29(Mon) 1:11:51 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 風は吹く マウロ「数日前、アイツの仇が死んだ」 ありふれた自動拳銃が胸に突きつけられる。貴方の組織が取り扱っているものだ。 一番値段と性能のバランスがよく、下っ端にも持たせるような手頃なタイプ。 言い切る前に銃口が宛てがわれ、言い終わる頃にトリガーが引かれた。 サイレンサーを通した音はやけに滑稽に聴こえた。 「身勝手な話だと思わないか? あの男はジャンニを消したことを清算していないのに。 アウグストが居なくなったなら誰がそのツケを払ってくれるんだ?」 担いだ膝を相手に押し付けるようにして距離を離す。半ばパワーボムみたいに相手を突き飛ばした。 代わりに反動で路地の向こう側へと後ずさって、相手の様子を確認する。 これだけ見たらそう、一見通りすがりに単純に襲われたように見えるだろう? 酒の匂いも火照った体も、急速に現実感の内へと引き戻される。 少しの時間、手応えを確認したなら手にした銃は元持っていたようにしまい込まれる。 「……ああ。案外気分は晴れないもんだな。……やっぱ本人じゃないとダメだ」 独り言のように呟いた男は、身支度を整えながら路地を出ていく。 今までの親しげな様子が全部別人によるものだったみたいに、淡々とだ。 通りでファイヤーワークスの打ち上がる音が聴こえる。 砂利を踏む足は音も無く、白けた夜闇に消えていく。 (-120) 2022/08/29(Mon) 1:13:42 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ貴方は、男が何を失ったと感じていて何が残されていると感じているかなんて、 別段わかりゃしないんだろう。当たり前だ。表層上の情報以外知り及ぶ手段はない。 誰と、どんな関わり合いをしていたかなんてのを探るなんてのは警察の役目だ。 けれどそう、幹部候補であった男やその幼馴染らの事情までは探り当てることは出来なくても、 この数日間のうちに貴方の顔見知りはどれだけ失われたか。 その中にはやけに慣れたような手口で殺された人間がいくらか居たかもしれなかっただろう? はだかの体は、着せられた男物のジャケットごと火葬車の中へと消えていく。 これ以上誰にも辱められることのないように、世界の目を覆うように彼女の体が消えていく。 もしも、引き渡すに値する誰かが生きていたならば彼に渡すことも出来たろうに。 順番を違えたから、もしくは共に逝くことの出来なかったから、こうするしかなかった。 男は中も見えやしない車をじっと、無防備に思えるくらい只々に見つめていた。 何もかもが灰になってしまうまでは、傍に在ろうとするみたいだった。 やがて、夜にさえなってくれない内にあらわれた残響が容れ物へと移されるのを見たならば。 男は首を横に振った。とはいえ、これから起こることを考えたのなら結局は己で持ち去るのだろうけど。 今は、受け取らない。今は、手を塞いだりはしない。 「……今は、いい。そう、用事が、あるから」 歯切れが悪い。今までだったらもう少し滑らかに言葉を交わし、弄していくらでも誤魔化せたろうに。 火葬車から一歩離れ、倉庫を見渡す。誰もいないのを確認したのか、或いは言葉を探していたのか。 一歩。適切な間合いを取るように横にずれた足は、やはり少しの足音も立てやしなかった。 「ずっと追っていた男が、死んだ。 仲間も、友達も。おそらくきっと、父さんと母さんも。 ……ほかの何にも渡したくないくらい、好きだった人も、多分。 人は前向きに生きろって言うんだろうな。生きていく先に何かを見つけて、ってさ」 → (-121) 2022/08/29(Mon) 1:58:06 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォやっと語った言葉は結局、己の話だった。けれども説明と言うには端的に過ぎて。 指折り数えて階段を昇るような調子だ。身の回りから、多くが居なくなる。それをカウントする。 薄っすらと思い出されるのは、昨日言葉を交わした人間のこと。けれど、されど。 「どうする? アンタなら。 オレは、こうすることにした。 けれどもどんどん取り落としていくだけだった。 どうする? 何一つ変わるわけじゃなかったなら」 質問は、少なくとも形だけの投げかけではなかった、どうしたらいい、とジェイドの目が訴えていた。 されど答えを貴方から得るよりも前に、男はベルトに手を掛けた。 ジャケットを脱いだ下に纏った服装と装備は、割りかしわかりやすいものだった。 貴方の仕事着が重たいのとおんなじ理由が、そこにはあった。 答えを知りたいのに、なぜ待たないのか。理由は簡単なものだ。もう止まり方さえわからないからだ。 「いつかは気が晴れると思っていた。もうそいつは居ないってのは頭じゃわかってるしさ。 やりきれない思いが解消されるまでのつもりだった。けど、いつまでも消えないんだよ」 銃口が向けられる。掌に収まるくらいの素朴なデリンジャー。 真正面に向けられたなら避けるのは容易くも思えるし、狙いを定めた威圧感もありはするだろう。 此処で男が貴方を殺さなければならない理由なんてのは無い。無いんだ。けれど。 理由と理屈があれば止められるのだったら、きっともっと早くに誰かの言葉を聞けていた。 → (-122) 2022/08/29(Mon) 1:58:39 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ「怖いんだ、誰かが死なないと止められないんだ。 もうそれが誰で、何であったなら満足するかも自分じゃわからないのに。 誰も教えてくれないんだ。 助けてよ、 パスカル―― 」目の前の男は掃除屋の烏だとわかっているのに、男は教えられた仮の名前を呼んだ。 最初に出会った男の名を、互いを知らないうちに巡り合った人間の名を。 多少の探り合いはあったとしたって、未だ気軽に仲良くなるつもりだった時の貴方を。 助けを求める相手は、仕事人としての人間ではなかったから。 意思を聞きたいのは、答えを求める相手は敵としての貴方ではない、つもりだったから。 誰でもいいのに、誰かでなければいけない。 そんな矛盾を口にしたところで誰も真面には受け取らない。 己の中では確かなのに、己の中でさえ確からしいものはない。 貴方が答えを口にするにしろ、しないにしろ。動くにしろそうしないにしろ。 男は違えなく、迷いなく。烏に向かって、引き金を引いた。 (-123) 2022/08/29(Mon) 1:59:03 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー相手の全てなど、語られざる事など、他者に判るはずもなく。 失ったものを数えても、それが掌の中に戻る事は無い。 そしておそらく、今はもう、それらを知った所で手遅れだった。 つまるところ、全てはきっと、何ら意味の無い事で。 けれどこうして何かを選ぶことに、 僅かばかりであったとしても、意味らしきものがあったなら。 そんな届かぬ祈りじみた考えがあったのかも、最早定かではなく。 今はただ、何も言わず、あなたに干渉もしない事だけが確かな事。 軈て亡骸が形を失っても、やはり烏にはあなたに問う罪なんて一つも無かった。 結局の所は、何もかも全ては自己満足であって。 あなたを罪に問うた所で、烏は到底自分が納得できるとは思えなかった。 ああ、そう。 そうして首を振った後の返答に、ただそれだけを返して。 開いたままのバックドアの内側、火葬炉の手前。 その僅かなスペースに遺灰の納められた容れ物を一度置いて。 がつ、ごつ、重たい足音は対照的に。 あなたが訥々と言葉を語る間にも、何歩か火葬車から離れて行く。 掃除屋の仕事着が重たい理由は、数多の死を吸ったから。 そんなフィクションのような理由でなんか、あるわけもなく。 (-126) 2022/08/29(Mon) 4:46:02 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーその間にも、つたない問いがただ流れていく。 それを聞いていないわけじゃない。確かに聞いているからこそ。 結句気休めでしかなくとも、仕事の場からは離れる必要があった。 両親、仲間、友達、奪われたものを奪い返すべき相手。 その内の幾許かは、或いは、あなたの手によって。 名もなき烏はおおよそあなたと同じようなものを失って来た。 けれどそれが等価であるとは思わない。 その重みは人によって異なるような、似ているだけで違うもの。 何れにしても、手の届く限りの殆どのものを失ってしまった時。 後に残された者のやりきれなさというものは、 いったい何をどうすれば納得が、満足がいくものだろう。 「本当はもう、答えは出てるんだろう。 何も変わらない。あんたの空虚は、永遠に満たされる事は無い」 少なくとも、それを埋めてやれる人間は居なくなってしまった。 「あんたは、あんたが死ぬまでそのままだ」 生きている限り、この耐え難い苦しみは和らぐ事無く続く。 その言葉を否定できる人間も、今この場には居ない。 続いた先に、たった一握りさえも希望を信じられなかった人間が 生きていれば、いつかは、ひょっとしたら、なんて。 そんな何処までも無責任な希望を他者に語れるはずもない。 (-127) 2022/08/29(Mon) 4:47:26 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーだからただの一人の死にたがりからあなたに差し出すものは、 終わった先の安息の示唆と、それに行き着く手段だけ。 喪服の懐から音も無く拳銃が抜き出され、銃口をあなたへ向けて、 「楽になりたいなら、あんたは早く死ぬべきだったのさ」 「──Addio. ソニー・アモリーノ」 同じく自らに向けられたそれに構わず、引き金を引く。簡単な事。 殺すつもりはあったけれど、生きるつもりがあるでもなかった。 名もなき烏にも、或いはそれ以外の誰かにも ここであなたを殺さなければならない理由は無かった。 死にたい人間は、死ぬしかない人間は、死ぬべきだ。 そうでないなら、せいぜい生きていればいい。 このような行動に出た理由なんてのは、そんな思想だけで。 乾いた銃声が鳴り響いたなら、それは幾つだっただろう。 がらんどうの倉庫が誰かの棺となったなら、それは誰だっただろう。 誰に何処までの言葉が届いたかも定かではない。一つ確かな事と言えば、 夜が明ける頃には何れの姿もそこには無いという事。 願わくばどうか、殺すなら上手に殺してくれ。 もしもあんたがしくじった時は、俺もそうする事にしよう。 そんな思いがあったかは、やはり誰も知らぬこと。 何せそれを語る者は、結局は何処にも居やしないのだから。 (-128) 2022/08/29(Mon) 4:50:38 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー「なっ、お前」 花を与えることなんてしなければ。そんなこと、渡してやった花束をいちいち見せに来るその姿ですべてお釣りが帰ってきた。 お前ってやつはと頭を抱えてこずいたこの気持ちは 思惑通りとうとう永遠に知られないままになる。 親にもなれない、友にもなれない、恋人にもなれない、こんな中途半端な男の気持ちなんて伝わない方が幸せだと思い込んでいた。結ばれもしない、共に過ごすこともできない仲なんてすぐにその傷は癒えてしまうと信じつつも、苦い甘さを残し続けた。 「いいか、ソニー」 俺はお前の親でも何でもないし、 教鞭を振るう教師でもない。 それでもお前のことを心配している、ただの 「…… 似合ってる。 だからもう見せるな。 大人は頭が固いんだ」落ち着かない、甘い香りがいつのまにかひとつの印象しか与えなくなる頃には、脳が誰かを訴えることをやめない。 とっくにこれ以上上回ることのないお前への心が、態度が。 「歳を食っても変われない俺なんて気にせず。 バレないように、黙って好きなことしていろ」 怒気と呆れを含んだような声色は出せていたか。 視線をそらして見つめた先には白い花が置かれていて。 逃げ道がすくないその空間で人差し指を口許に当てて考え込む仕草をする。噛み跡がついておらずとも、そこにはすでにあなたを感じていた。 可愛げもない、素直でもない態度で吸い込むのはアーモンドの香り。そうして甘味で満たされた腹をどうしてやろうかとため息をついた。 (-129) 2022/08/29(Mon) 4:50:50 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ呆れを頭に受けていっときは唇を尖らせて不満を訴え、すぐに得意げな顔でしてやったりと笑う。 ほんのわずか、小さく鼓膜をくすぐる声を耳聡く聞き入れはするくせに、深くは考えない。 誉められたように捉えられなくもない叱咤だけを都合よく受け取ったなら、目を輝かせた。 深く透き通ったジェイドの色は幼い頃から翳りもせずに変わらない色をしている。 何も変わらずにあったなら幸せな終わりがあったか、なんて。想像こそすれど不確定なものでしかない。 「はぁ〜い、へへ…… 食べよ、もう厳しいこと言いっこなし! 先生のタルトタタンが一番美味しいんだよなあ」 食事を作るのは環境だ。いつだって貴方が傍に居たからにこそ、舌の上の甘味は幸福になった。 食い気が勝って人並みよりも若干食べ汚かった振る舞いは、いつしか完璧なものになってしまって。 貴方と貴方が仕掛けたものの思惑通りに、振る舞いと作用は完璧な刃へと育っていった。 貴方はそれを、喜ばしく思ってくれる? 2月、花祭りの名残のある日和。窓の外には白い小花があちらこちらに散って見える。 いつかの日。遠く過ぎ去った春の日。 ソファの隣に寄せた体温は触れ合わずとも暖かく、降り注ぐ視線はわざと突き放すものもなかった。 輝かしい未来を暗示するものでなくたって、青年は幸福だった。指に触れる温度が変わるまで。 8月の夜気が責め立てるような熱を肌身に迫らせる。 明かり取りの窓から差し込む月の光が、左手の薬指に嵌ったジェイドとアーモンドと<kanaとをきらきらと輝かせた。 あの安置室で共に、なんて身勝手な真似をしなかったのは、貴方が最後に見る己の顔が綺麗なままであるように。 己が最後に見る貴方の姿を己の血で汚してしまうことのないように。 誓われない指輪を揃いに嵌めていくくせに、慾するほどに共に傍に在ろうとするわけでもない。 奪うほどに己に正直だったなら、最後の瞬間くらいは一緒にいられたのかもしれない。 一滴、半滴でさえも、貴方の存在は天使の子供を救っただろう。 告げられることのなかった秘蹟は、遠く希望を繋ぐように口の中だけで唱えられた。 (-130) 2022/08/29(Mon) 10:06:26 |
ソニーは、ヴェネリオを、 愛している。 (a5) 2022/08/29(Mon) 10:07:10 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ互いに失ったものを比較するほど愚かしいこともない。されど二つは似通っていた。 決定的にそれ以外は何もかも違えていても、尚取りこぼしたものの多さは近しかった。 失い続けた結果、更に失い続けることは無いだなんて空論を誰が信じることができる? 希望が重たかった。期待が重たかった。一笑して否定されたことでようやく足元が見えた気がした。 失った時点で死ぬべきだったのかもしれない。他を失わせるくらいなら、確かにそうだろう。 影法師のような男の姿をサイト越しに見据えて、微かに溜息を溢す。 「……ああ、そう。 よくわかってくれるじゃんか。オレはもう、一歩も動けやしないよ」 ひどく熱のない声は、何もかもが腑に落ちてしまったからだった。 惑う脚も誰にも伝わらない恐慌も、全てがどこに向かわせればいいものなのかを理解してしまった。 貴方の言う通り最初から答えは己の中にあって、それを肯定することが今、出来てしまったから。 銃口は相手の眉間に向けられた。己が推理したアウグストの死因と同じく、頭骨を効率よく貫いて。 交わされた相手の銃弾は腕が跳ねたせいで致命の一撃を外してしまった。肩の骨が砕け鉛が減り込む。 利き腕の神経を元に戻すにはどれだけの賭けをせねばならないだろうか。その時点で暗殺者は死んだ。 それ以外の生き方もできないのに、ヒットマンでさえあれないならその価値と意義は一切を失われたのだ。 相手の姿がぐらつくのを見て照準を下げる。もう一発は胸元へと。心臓が傷付けば血が溢れる。 確実に殺すための二発。省みる必要が無いが故の二発。己の姿を隠す必要はもう無いのだから。 血の流れる腕は相手の体が痙攣を止めるまで向けられていて、呼吸の音が途絶えてやっと下された。 銃を握ったままの影法師を、銃を握ったままに見下ろしている。 「──Addio. コルヴォ・ロッソ」 (-155) 2022/08/29(Mon) 19:52:32 |
【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォそれから先は、どうしたっけな。 死体から服を剥ぐのも億劫なくらい片腕が重くて、そのままフルタングナイフの刃を入れた。 関節に刃を差し込み、ナイフのハンドルを足で抑えて軟骨を寸断してようやく死体を小さくしてやった。 それを、先程まで動いていた火葬車の中に寝かせた。入れ替わり、立ち代わり。 ここへ連れてきた彼女の灰を退かして、見様見真似に 異端者の地獄 へと押し込んだ。誰が来るのかもわからないのに、扉の向こうで燃える様子を眺めている。 いくらかに分けて、ひどく手間と時間を掛けて。ひとつ、ふたつ。全て灰になるまで。 途方もない時間は、宵の口の空をすっかりと昏れきった星色に変えてしまった。 そんなことをする義理なんてなかったし、望んでいるかどうかもわからないのに、 勝手にこんなことをしたところで文句を言う人間だって居やしないのだ。 自己満足、或いは酷く曲がりくねった感謝のつもりだったのかもしれない。 貴方の言葉と弾丸は、男をもう行き先の決まりきった道に押し込んだのだから。 最後のひとかけを押し込んで火を入れてから、腕の痺れが酷くなった頃に漸く離れた。 きっと用意周到な彼のことだから、あとのことを自分で何とかする手筈なんてのは済んでるんだろう。 遠くの街は祭りの最中とは言えすっかり静まっていて、そこから聴こえる音なんてのもなかった。 夏の気配だけが、なんでもなかった一週間を見下ろしてそこに或る。 血の滴る腕はそのままに、配達車へと戻っていく。片手には、娼婦の片割れであった灰。 焼け付いた死の匂いだけが、男の背中を押している。 エンジン音を最後に、廃倉庫からは誰一人いなくなってしまった。 もう、だれも。 (-156) 2022/08/29(Mon) 19:54:56 |
【独】 天使の子供 ソニー対向車線にさえ誰も通るもののいない僻地から伸びる道を、白いバンが駆けていく。 片手でハンドルを回し、助手席には女の焼けた灰を乗せて。 ハイビームが照らす道は、星明かりのために思いの外明るく感じられた。 「……なあ、ビアンカ。オレさ、お前のことお前んとこの子らに渡せる自信ないよ。 ヴェルデが持ってかれたところ聞いてたら、撒いてでもやれたのにな。 でももう誰にも会うつもり無いんだ。だから、書き置きだけで済ましちまうけど、ごめんな」 配達車は、花屋の倉庫へと押し込まれた。ドアの継ぎ目からは、溜まった血が滴っていた。 だから朝になれば店主が見に来て、中にあるものには気づく筈だ。誰に渡すべきかの意志も。 この花屋は唯の表稼業ばかりじゃなくて、みかじめ料の受付だったり資金洗浄の窓口だ。 ファミリーの息の掛かったきちんと託すに値する人々であり、野放図に投げ出したわけではない。 灰になった上半身がゆくべき先なんて、神の元へゆけないのだから他のどこともわからないのに。 誰か、何か。遺される人々の元へと渡るようにだけはきちんとしておこう。 (-160) 2022/08/29(Mon) 20:17:58 |
【秘】 紅烏 コルヴォ → 天使の子供 ソニー返る言葉を聞いて、最後の一瞬。 ただ息を吐くような、音のない笑いが、銃声に呑まれて消えた。 何もかも、諦めのついたような笑みだった。 斯くして血染めの烏は地に落ちた。 或いはあなたの影法師であって、 或いはいつかあなたの行き着く姿であったかもしれないもの。 それと向き合って、それを認めてしまったから。 それがすっかり姿を消したって、もうきっとあなたの道は変わらない。 ──曰く、ドッペルゲンガーを見る事は、死の前兆なのだと言う。 (-161) 2022/08/29(Mon) 20:33:12 |
【独】 天使の子供 ソニーそして、彼の運び込まれた病院へと足を運んで。 残された先の20年を、託されたのだろう未来をふいにして。 代わりに貴方の薬指へと、ささやかな愛を贈る。プラチナに比べればチープで子供らしいものだ。 ジェイドとアーモンドは、けれども言葉通りの贈り物のつもりでさえないのだろう。 ロマンチックな誰かの決めた意味でない。どちらも、己自身。 神様の元へ貴方が行った時に、見下ろした風景の中に己の瞳と同じ色があったなら、 少しでも思い出してくれるかな、なんて。子供っぽくていじましい、自信のない誓いなのだ。 そこに、その位置に輝く煌めきに意味を見出すのだなんて、自分のほうだけだと思っていたから。 涙を拭った左手に、いくらか星の色がきらきらと反射した。 お別れだから、なんてはっきりとした意識のために涙が出たわけでもなかった。 ただ、貴方がもう名前を呼んでくれないこと、頭を撫でてくれないことがわかってしまったから。 もう随分と大人らしくごつごつとして、貴方の手でも包み込めやしない手も。 人を効率的に害する為だけを目的として鍛えた、随分と堅くなってしまった体も。 言葉ほどには厳しくない指先が触れてくれることはない。 貴方がいなければ幸せになれない、なんてことはない。それほどの己惚れは持ち合わせていない。 ただ貴方が願った自身の未来だとか、楽しく笑っていられるような世界だとか、 そういうものを託されて目指すには交わした言葉は少なすぎて、まだ話したいことがたくさんあって。 あとほんのちょっとだけ指を伸ばして、声を聞いて、ほんの些細な望みが叶えばよかったのに、 それさえ出来ないままに背を向けてしまった己を許すことが出来ないだけの話だった。 ねえ、オレはあんまり頭もよくないからさ。 ちゃんと教えてくれないと、わかんないよ。 教えてほしいことが、たくさんあったんだ。 家の鍵をかけ、廊下と隔てる鍵をかけ。バスルームに鍵をかけて、窓を閉める。 思い出の中のメロディは、時々貴方が歌ってくれたものだ。覚えているかな。 「……♪……♪……」 (-162) 2022/08/29(Mon) 20:34:09 |
【置】 天使の子供 ソニー本名:ソニー・アモリーノ(Sonny Amorino) 死因:頭蓋部の損傷 発見場所:自宅バスルーム 遺体の様子: 頭部に二発、肩に一発銃撃の痕あり。頭部と肩からはそれぞれ別の口径の弾が摘出された。 一発目は喉から視床下部の下を通り後頭部へ抜け、貫通して後ろの壁に突き刺さっていた。 再度引き金を引いて、二発目は頭頂葉へ食い込み頭の中に弾丸が残っていた。 発見場所までの道は完全に施錠され、また荒らされた形跡もなかったことから、 拳銃は本人の所持物であり、自殺であると認定した。 器官のいくらかは壁にへばりつき、眼球からはすっかりと水分が抜けていた。 死亡から発見までは数日が経過しており、発見時には既に腐敗が進んでいた。 (L33) 2022/08/29(Mon) 20:44:09 公開: 2022/08/29(Mon) 20:45:00 |
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